通常、1回1滴、1日2回点眼する。なお、症状により適宜増減する。
8.1 全身的に吸収される可能性があり、β遮断剤全身投与時と同様の副作用があらわれることがあるので、留意すること。
8.2 本剤の投与を受けている患者で、全身麻酔を施す場合、過度の心機能抑制があらわれることがあるので、本剤を徐々に減量し、全身麻酔を行う前には投与を休止すること。
8.3 血圧が下降することがあるので、長期投与する場合には、定期的に血圧測定を行うこと。
9.1 合併症・既往歴等のある患者
9.1.1 洞性徐脈、房室ブロック(II、III度)、心原性ショック、うっ血性心不全のある患者
9.1.2 コントロール不十分な糖尿病のある患者
血糖値に注意すること。低血糖症状を隠蔽することがある。
9.1.3 喘息、気管支痙攣、あるいはコントロール不十分な閉塞性肺疾患のある患者
9.5 妊婦
妊婦又は妊娠している可能性のある女性には投与しないこと。動物実験で、胚・胎児の死亡の増加が報告されている。[
2.3参照]
9.6 授乳婦
治療上の有益性及び母乳栄養の有益性を考慮し、授乳の継続又は中止を検討すること。動物実験で、乳汁中へ移行することが報告されている。
9.7 小児等
9.8 高齢者
一般に高齢者では生理機能が低下している。また、心血管系疾患のためにβ遮断剤の全身投与を受けている患者に対しては、注意すること。[
10.2参照]
11.1 重大な副作用
次の副作用があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止するなど適切な処置を行うこと。
11.1.1 眼類天疱瘡、全身性エリテマトーデス、脳虚血、脳血管障害、心不全、洞不全症候群(いずれも頻度不明)
11.2 その他の副作用
次の副作用があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止するなど適切な処置を行うこと。
| 5%以上 | 0.1〜5%未満 | 0.1%未満 | 頻度不明 |
眼 | 眼刺激症状(しみる感じ、灼熱感、眼痛、異物感、不快感等) | 流涙増加、羞明、霧視、眼そう痒症、眼瞼炎、結膜充血、角膜障害(角膜知覚低下、角膜炎、角膜びらん等) | 眼乾燥、眼脂 | 眼底黄斑部の浮腫・混濁注1)
|
循環器 | − | 徐脈、低血圧 | − | − |
呼吸器 | − | − | 喘息 | 呼吸困難 |
その他 | − | めまい、頭痛 | 蕁麻疹 | 不眠症、接触皮膚炎 |
15.1 臨床使用に基づく情報
アレルギー性結膜炎等に罹患している患者に対する安全性は確立していない(使用経験がない)。
16.1 血中濃度
16.1.1 健康成人の両眼にベタキソロール塩酸塩0.5%点眼液を1回1滴、1日2回、15日間点眼し、点眼1、8、15日における点眼前、点眼30分、及び2時間後の血漿中β
1、β
2受容体遮断活性をRadioligand binding法で測定したところ、ベースライン値との間に差は認められなかった
1)。また、健康成人の両眼にベタキソロール塩酸塩0.5%点眼液を1滴ずつ点眼し、点眼1時間後の血漿中濃度を測定したところ、検出限界(2ng/mL)以下であった
2)。
16.3 分布
16.3.1 白色家兎の両結膜のう内に0.5%ベタキソロール塩酸塩50μLを点眼して眼内組織濃度を測定したところ、角膜内、虹彩/毛様体、前房水、水晶体の順に高く、いずれも30〜45分後に最高となり、60分後には水晶体を除く他の組織では最高値と比べて著しく減少し、以後緩やかに低下した。
16.3.2 有色家兎に
3H-ベタキソロール0.5%点眼液を点眼して網膜及び脈絡膜の組織内の最大平均濃度を測定したところ、下記のとおりであった。
| 単回点眼 | 9回点眼†
|
網膜 | 2.45μmol/L | 2.47μmol/L |
脈絡膜 | 6.90μmol/L | 17.5μmol/L |
17.1 有効性及び安全性に関する試験
17.1.1 国内臨床試験
健常成人男子を対象に実施された単盲検クロスオーバー試験において、本剤の点眼時眼刺激感の程度はベトプティック点眼液0.5%に比べ有意に低かった。副作用発現頻度は12.5%(3/24例)であり、いずれも点状表層角膜症であった。
17.1.2 国内第III相試験
チモロールマレイン酸塩0.5%点眼液を対照薬とした眼圧24mmHg以上を示す緑内障、高眼圧症患者71例を対象に実施された二重盲検比較試験において、改善度及び安全度を指標とした有用度は85.7%(60/70)であった
3)。副作用発現頻度は18%(13/71例)であった。
17.1.3 国内臨床試験(呼吸機能への影響)
チモロールマレイン酸塩0.5%点眼液を対照薬として、60歳以上の緑内障または高眼圧症患者174例を対象に12週間点眼し、呼吸機能に及ぼす影響を多施設無作為化比較試験法により検討した。ベタキソロール塩酸塩群では呼吸機能の有意な変動は認められなかった
4)。
17.1.4 国内臨床試験(視野機能の維持・改善作用)
チモロールマレイン酸塩0.5%点眼液を対照薬として、原発開放隅角緑内障または正常眼圧緑内障患者95例を対象に各群1日2回2年間単独投与による視野への影響を比較検討した。
ベタキソロール塩酸塩群は、チモロールマレイン酸塩群と比較し、セクター解析では15セクター中、下方の2つのセクターにおいてTDスロープの有意(P<0.05)な上昇が認められた
5)。
18.1 作用機序
健康成人におけるフルオロフォトメトリー試験の結果から1%ベタキソロール塩酸塩はβ
1受容体遮断作用により房水産生を抑制し眼圧を下降させることが示唆されている
6)。
18.2 眼圧下降作用
18.2.1 カニクイザル高眼圧モデルを用いて本剤の眼圧下降作用及びその持続時間をベトプティック点眼液0.5%と比較した結果、投与後1、3及び6時間後の眼圧は、本剤投与群では14.9%、24.2%及び18.8%、ベトプティック点眼液0.5%投与群では13.0%、23.1%及び18.9%下降し、両剤の眼圧下降作用及びその持続時間は同等であった。また、ニュージーランド白ウサギ高眼圧モデルを用いた試験でも両剤の眼圧下降作用は同等であることが示唆された。
18.2.2 緑内障患者及び高眼圧症患者に点眼した場合、瞳孔径、視力にほとんど影響を及ぼすことなく眼圧を下降させ
3)、また眼圧下降作用は12時間持続することが認められた
7)。
18.3 β1受容体選択性
モルモット摘出心筋標本(β
1受容体)と気管標本(β
2受容体)でのイソプロテレノール(イソプレナリン)に対するベタキソロールの拮抗作用から、ベタキソロールはβ
2受容体よりβ
1受容体に対する親和性が高いことが認められた
8)(
in vitro)。
Radioligand binding法によるラット大脳皮質
9)及びウシ気管筋と心筋における結合実験
10)の結果、ベタキソロールはいずれの組織においてもβ
1受容体に対する選択性がみられた(
in vitro)。
18.4 心血管系に対する作用
健康成人を対象として行われた運動後の血圧と脈拍数に及ぼす影響についての試験において、本剤はプラセボと比較して負荷後の脈拍に有意な影響を及ぼさなかった
2)。
18.5 その他
ウシ摘出網膜微小動脈
11)及びブタ摘出後毛様動脈
12)を用いた実験において、直接的な血管拡張作用が認められた(
in vitro)。なお、同様の血管拡張作用が、ラット摘出大動脈を用いた実験
13)においても認められ、K
+及びCa
++による収縮作用を抑制し、高濃度K
+存在下で細胞内へのCa
++の流入を抑制した(
in vitro)。
また、イヌを用いた実験
14)でも直接的な血管拡張作用が認められている。