医療用医薬品 : エラプレース

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医薬品情報


総称名 エラプレース
一般名 イデュルスルファーゼ(遺伝子組換え)
欧文一般名 Idursulfase(Genetical Recombination)
製剤名 イデュルスルファーゼ(遺伝子組換え)点滴静注用製剤
薬効分類名 遺伝子組換えムコ多糖症II型治療剤
薬効分類番号 3959
ATCコード A16AB09
KEGG DRUG
D04499 イデュルスルファーゼ
JAPIC 添付文書(PDF)
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添付文書情報2022年7月 改訂(第2版)


商品情報 3.組成・性状

販売名 欧文商標名 製造会社 YJコード 薬価 規制区分
エラプレース点滴静注液6mg ELAPRASE for I.V.Infusion サノフィ 3959413A1029 284799円/瓶 生物由来製品, 劇薬, 処方箋医薬品

1. 警告

1.1 本剤の投与によりinfusion reactionのうち重篤なアナフィラキシー、ショックが発現する可能性があるので、緊急時に十分な対応のできる準備をした上で投与を開始し、投与終了後も十分な観察を行うこと。また、重篤なinfusion reactionが発現した場合には、本剤の投与を中止し、適切な処置を行うこと。[7.、8.18.211.1.1参照]
1.2 重症な呼吸不全又は急性呼吸器疾患のある患者に投与した場合、infusion reactionによって症状の急性増悪が起こる可能性があるので、患者の状態を十分に観察し、必要に応じて適切な処置を行うこと。[7.、9.1.211.1.1参照]

2. 禁忌

次の患者には投与しないこと
本剤の成分に対しアナフィラキシーショックの既往歴のある患者[8.18.211.1.1参照]

4. 効能または効果

ムコ多糖症II型

5. 効能または効果に関連する注意

中枢神経系症状に対する有効性は認められていない。

6. 用法及び用量

通常、イデュルスルファーゼ(遺伝子組換え)として、1回体重1kgあたり0.5mgを週1回点滴静脈内投与する。

7. 用法及び用量に関連する注意

日局生理食塩液で希釈した後に投与すること。下の表を参考に1〜3時間かけて投与すること。なお、本剤の投与開始初期の時点では、投与速度は、患者の忍容性を十分確認しながら段階的に上げ、投与することが望ましい。Infusion reactionが発現するおそれがあるため、一部の患者には長時間かけて点滴静注する必要があるが、その場合は8時間を超えないようにする。[1.11.28.211.1.1参照]
3時間投与の例
投与速度投与時間備考
8mL/時15分間バイタルサインを測定し、安定していれば次の段階の速度まで上げる。
16mL/時15分間
24mL/時15分間
32mL/時15分間
40mL/時2時間投与終了までこの速度で投与する。

8. 重要な基本的注意

8.1 本剤はたん白質製剤であり、アナフィラキシーショックが起こる可能性が否定できないため、観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止し、適切な処置を行うこと。また、このような症状の発現に備え、緊急処置を取れる準備をしておくこと。[1.1、2.、9.1.111.1.1参照]
8.2 本剤投与により、infusion reaction(頭痛、発熱、発疹、そう痒症、紅斑、蕁麻疹、高血圧等)が発現することがある。Infusion reactionが現れた場合、投与速度の減速又は投与の一時中止、適切な薬剤治療(副腎皮質ホルモン剤、抗ヒスタミン剤、解熱鎮痛剤又は抗炎症剤等)、もしくは緊急処置を行うこと。また、次回投与以降は、本剤投与前に抗ヒスタミン剤や副腎皮質ホルモン剤の投与を考慮すること。[1.1、2.、7.、9.1.111.1.1参照]
8.3 IgG抗体産生が予測されるため、定期的にイデュルスルファーゼ(遺伝子組換え)に対するIgG抗体検査を行うことが望ましい。

9. 特定の背景を有する患者に関する注意

9.1 合併症・既往歴等のある患者
9.1.1 本剤の成分に対する過敏症の既往歴のある患者8.18.2参照]
9.1.2 重症な呼吸不全又は急性呼吸器疾患のある患者
患者の状態を十分に観察し、必要に応じて適切な処置を行うこと。急性呼吸器疾患のある患者のうち、発熱がみられる患者では、投与日を遅らせることを考慮すること。Infusion reactionによって症状の急性増悪が起こる可能性がある。[1.2参照]
9.5 妊婦
妊婦又は妊娠している可能性のある患者には、治療上の有益性が危険性を上まわると判断される場合にのみ投与すること。動物実験(ラット)において胎児へ移行することが報告されている。
9.6 授乳婦
治療上の有益性及び母乳栄養の有益性を考慮し、授乳の継続又は中止を検討すること。動物実験(ラット)において乳汁中へ移行することが報告されている。
9.7 小児等
5歳未満の小児を対象とした臨床試験は実施していない。
9.8 高齢者
副作用の発現に特に注意し、慎重に投与すること。一般に生理機能が低下していることが多い。

11. 副作用

11.1 重大な副作用
以下のような副作用があらわれることがあるので、観察を十分に行い異常が認められた場合には投与を中止するなど適切な処置を行うこと。
11.1.1 重度のinfusion reaction(本剤投与中又は本剤投与開始24時間以内に発現する本剤投与と関連する反応)(頻度不明)
アナフィラキシー(呼吸窮迫、低酸素症、低血圧、血管浮腫、発作等)を起こすことがある。投与中あるいは投与終了後は、観察を十分に行い、異常が認められた場合には直ちに投与を中止し、解熱鎮痛剤、抗ヒスタミン剤、副腎皮質ホルモン剤の投与及び気道確保等の適切な処置を行うこと。特に重度及び難治性のアナフィラキシーが発現した患者では、初回発現24時間以降にも、アナフィラキシーが発現する可能性があるので、観察期間を延長し、適切な薬剤治療を行うこと。[1.11.2、2.、7.、8.18.2参照]
11.2 その他の副作用
以下のような副作用があらわれることがあるので、観察を十分に行い異常が認められた場合には投与を中止するなど適切な処置を行うこと。
 5%以上5%未満頻度不明
血液およびリンパ系 貧血、リンパ節炎、血小板減少症 
精神系 不安 
神経系頭痛、浮動性めまい、振戦意識レベルの低下、知覚過敏 
流涙増加アレルギー性結膜炎、霧視 
耳および迷路 回転性眩暈 
心臓 不整脈、チアノーゼ、動悸 
血管高血圧、潮紅、低血圧  
呼吸器、胸郭および縦隔咳嗽、頻呼吸、喘鳴音呼吸困難、鼻閉、気管支痙攣、咽頭炎、肺塞栓症、鼻漏 
胃腸腹痛、悪心、下痢、舌腫脹上腹部痛、胃腸炎、軟便 
皮膚および皮下組織発疹、そう痒症、蕁麻疹、そう痒性皮疹、紅斑斑状皮疹、湿疹、顔面浮腫 
筋骨格系および結合組織 関節痛、筋痛、筋痙攣、頚部痛、背部痛、骨痛 
腎および尿路 遺尿、夜間頻尿 
全身障害および投与局所発熱、末梢性浮腫悪寒、倦怠感、冷感、局所の炎症、注射部位関節腫脹、疼痛、異物感注射部位腫脹
臨床検査 血中アルカリホスファターゼ増加、血中乳酸脱水素酵素増加、血中ビリルビン増加、血中尿酸増加、ヘモグロビン減少、心拍数減少、心拍数増加 

14. 適用上の注意

14.1 薬剤調製時の注意
14.1.1 調製方法
以下の通り調製すること。
(1)患者の体重に基づいて0.5mg/kgの用量で本剤の投与量を算出し、投与に必要なバイアル数を決定する。
(2)調製前に本剤の変色及びバイアル内に異物が含まれていないか各バイアルを目視検査すること。本剤は無色澄明、又はわずかに乳白色の溶液である。変色の見られるものまたは異物が混入しているものは使用しないこと。本剤の急激な振盪は避けること。
(3) (1)で算出した必要数量のバイアルから、本剤の投与量を取る。
(4)本剤の全投与量を日局生理食塩液100mLで希釈する。日局生理食塩液の輸液バッグに本剤を添加し、静かに混和する。急激な振盪は避けること。
(5)必要量を抜き取った後のバイアル内の残液は、施設の手順に従って廃棄すること。
14.1.2 本剤は保存剤を使用していないので、希釈液は速やかに使用すること。遅くとも希釈後8時間以内に投与を完了することとし、やむをえず保管する場合には2〜8℃で24時間以内とすること。
14.1.3 他剤との混注を行わないこと。
14.1.4 各バイアルは一回限りの使用とすること。
14.1.5 本剤は0.2μmのインラインフィルターを通して投与すること。

15. その他の注意

15.1 臨床使用に基づく情報
ムコ多糖症II型はX連鎖劣性遺伝疾患であるが、稀に女性患者の報告がある。臨床試験に女性患者の参加はなく、女性における本剤の安全性は確立していない。

16. 薬物動態

16.1 血中濃度
16.1.1 単回投与
ムコ多糖症II型患者12例を対象とした臨床第1/2相試験において本剤の薬物動態を検討した。血清中イデュルスルファーゼ濃度はELISA法により測定した。本剤0.15、0.5及び1.5mg/kgを1時間の点滴静注にて単回投与したとき、血清中濃度−時間曲線下面積(AUC)は増量比率以上に増加した(外国人データ)。
16.1.2 反復投与
本剤の推奨用法・用量(本剤0.5mg/kgを毎週1回3時間の点滴静注にて投与)の薬物動態パラメータを、臨床第2/3相試験で本剤0.5mg/kgを毎週1回又は2週間に1回あるいはプラセボを週に1回52週間、ムコ多糖症II型患者96例(日本人患者4例を含む)に反復投与し、投与1週目及び27週目に測定した(表)。投与1週目及び27週目のパラメータに顕著な差は認められなかった1)
薬物動態パラメータ(平均値(SD))
 0.5mg/kg、毎週3時間点滴投与
薬物動態パラメータ初回投与時27回目投与時
Cmax(μg/mL)1.5(0.6)1.1(0.3)
AUC(min・μg/mL)206(87)169(55)
t1/2(min)44(19)48(21)
Cl(mL/min/kg)3.0(1.2)3.4(1.0)
Vss(%BW)21(8)25(9)

17. 臨床成績

17.1 有効性及び安全性に関する試験
17.1.1 海外第2/3相試験
海外においてムコ多糖症II型患者96例(日本人4例を含む)を対象に無作為化二重盲検プラセボ対照試験2)を行い、本剤の安全性ならびに有効性を評価した。本試験の対象患者は、努力肺活量の予測値に対する百分率(%FVC)が80%未満で、イズロン酸-2-スルファターゼの酵素活性が認められない5〜31歳の男性とし、肺機能検査を行うことができない患者、又は治験実施計画書を遵守できない患者は除外した。本剤0.5mg/kgを毎週(n=32)又は隔週(n=32)、あるいはプラセボ(n=32)のいずれかを53週間投与した。有効性の主要評価項目は、6分間歩行試験(6MWT)及び%FVCにおけるベースラインから53週目までにみられた変化量を順位付けし、順位を合計したスコアとした。本スコアに3群間で統計的有意差が見られ、プラセボ群と本剤毎週投与群との差が最大であった(本剤毎週投与群対プラセボ群:p=0.0049)。本スコアを構成する個々の項目の変化量を比較したところ、6MWTでは、本剤毎週投与群はプラセボ群に比べて歩行距離が35m増加していた。%FVCでは、両群の変化量に有意差はなかった(下表)。なお、中枢神経系症状の改善については評価していない。
臨床試験結果
 本剤毎週群 n=32aプラセボ群 n=32a本剤毎週群−プラセボ群
ベースライン53週目変化量bベースライン53週目変化量b変化量の差
6分間歩行試験結果(6MWT、m)
平均±SD392±108436±13844±70(19,69)392±106400±1067±54(−12,27)37±16(6〜68)c
35±14(7.66〜62.52)
(p=0.01)d
中央値39742931403412−4
分位点(25,75)317,486369,5331,94341,469362,459−30,30
努力肺活量試験結果(%FVC、%)
平均±SD55.3±15.958.7±19.33.4±10.0(−0.2,7.1)55.6±12.356.3±15.70.8±9.6(−2.7,4.2)2.7±2.5(−2.2〜7.6)c
4.3±2.3
(−0.27〜8.83)
(p=0.07)e
中央値54.959.22.157.454.6−2.5
分位点(25,75)43.6,69.344.4,70.7−0.8,9.546.9,64.443.8,67.5−5.4,5.0
尿中GAG濃度測定結果(μg/mg creatinine)
平均±SD325.6±145.9136.4±70.7−189.2±145.7(−241.8,−136.7)419.4±194.4437.6±142.018.2±169.4(−42.9,79.2)−207.4±39.5
(−286.3〜−128.4)c
−275.5±30.1
(−335.8〜−215.3)
(p<0.0001)f
中央値301.4111.1−158.9405.8412.430.2
分位点(25,75)208.4,420.984.4,178.1−256.6,−92.7308.6,529.5360.1,530.7−88.0,94.8
全被験者のベースライン時の尿中GAG濃度は異常高値を示していた。プラセボ群では、尿中GAG濃度は低下せず、治験期間中、基本的に変化はなかった。一方、本剤毎週投与群では、53週目の平均尿中GAG濃度は正常範囲の上限値付近まで著明に低下した。肝臓及び脾臓容積はプラセボ群と比較して、本剤毎週投与群では53週間をとおして減少した(p<0.0001)が、プラセボ群では変化がみられなかった。
副作用は、本剤毎週群(32例)で23例(71.9%)、本剤隔週群(32例)で24例(75.0%)及びプラセボ群(32例)で23例(71.9%)認められた。本剤毎週群の主な副作用は、頭痛9例(28.1%)、発熱7例(21.9%)、そう痒症7例(21.9%)、高血圧6例(18.8%)、蕁麻疹5例(15.6%)及び発疹5例(15.6%)であった。
17.2 製造販売後調査等
17.2.1 特定使用調査
安全性解析対象症例172例中83例に副作用が認められた。主な副作用は蕁麻疹35例(20.3%)、発熱20例(11.6%)、発疹19例(11.0%)、喘鳴10例(5.8%)、紅斑8例(4.7%)であった。このうち、小児症例102例中56例に副作用が認められ、小児のみで複数発現した副作用は、気管支炎、アナフィラキシー、腫脹及び注入に伴う反応各3例(2.9%)、血小板減少症、不眠症、気分変化、上気道の炎症及び下痢各2例(2.0%)であった。
17.3 その他
17.3.1 抗体産生
海外におけるプラセボ対照試験及びその非盲検継続試験では、本剤の投与を受けた被験者94例注)中47例(50.0%)に抗イデュルスルファーゼIgG抗体が発現した。IgG抗体陽性被験者では陰性被験者に比べ尿中GAG濃度の減少効果は弱かったが、本剤の有効性に与える抗体産生の影響は不明である。また、抗体陽性被験者では、陰性被験者に比べinfusion reactionが発現しやすい傾向にあったが、抗体産生に関わらず、全体的な発現頻度は、本剤の投与継続に伴って、経時的に減少した。プラセボ対照試験では、抗体陽性被験者のうち、5例に中和抗体の産生が認められた。
注)プラセボ対照試験で死亡した2例(本剤を1回のみ投与した毎週投与群の1例、いずれの時点でも実薬を投与しなかったプラセボ群の1例)を除外した。

18. 薬効薬理

18.1 作用機序
ムコ多糖症II型はリソソーム酵素であるイズロン酸-2-スルファターゼが不足することで生じるX染色体劣性遺伝病である。この酵素はGAGのデルマタン硫酸及びヘパラン硫酸から末端の2-o-硫酸を加水分解する。ムコ多糖症II型ではイズロン酸-2-スルファターゼが欠損、又は欠乏しているため、GAGが複数の細胞内のリソソームに蓄積し続け、細胞肥大をはじめ、臓器肥大、組織障害、臓器機能不全の原因となる。ムコ多糖症II型患者に本剤を投与することで、細胞内のリソソームに酵素を取り込むことが可能となる。オリゴ糖鎖上にあるマンノース-6-リン酸(M6P)部分を介して、酵素が細胞表面のM6P受容体と特異的に結合することで細胞内に取り込まれ、リソソームに蓄積したGAGを分解する3)4)5)

19. 有効成分に関する理化学的知見

19.1. イデュルスルファーゼ(遺伝子組換え)

一般的名称 イデュルスルファーゼ(遺伝子組換え)
一般的名称(欧名) Idursulfase(Genetical Recombination)
分子量 約76,000
KEGG DRUG D04499

20. 取扱い上の注意

凍結、振盪を避け、外箱開封後は遮光にて保存すること。

22. 包装

3mL×1バイアル

23. 主要文献

  1. 社内資料:第2/3相プラセボ対照二重盲検比較試験
  2. Muenzer J,et al., Genet Med., 8 (8), 465-73, (2006) »PubMed
  3. Ghosh P,et al., Nat Rev Mol Cell Biol., 4 (3), 202-12, (2003) »PubMed
  4. Kornfeld S,et al., Annu Rev Cell Biol., 5, 483-525, (1989) »PubMed
  5. Griffiths G,et al., Cell., 52 (3), 329-41, (1988) »PubMed

24. 文献請求先及び問い合わせ先

文献請求先
サノフィ株式会社 コールセンター くすり相談室
〒163-1488 東京都新宿区西新宿三丁目20番2号
電話:フリーダイヤル 0120-109-905
製品情報問い合わせ先
サノフィ株式会社 コールセンター くすり相談室
〒163-1488 東京都新宿区西新宿三丁目20番2号
電話:フリーダイヤル 0120-109-905

26. 製造販売業者等

26.1 製造販売業者
サノフィ株式会社
〒163-1488 東京都新宿区西新宿三丁目20番2号
26.2 製造元
Shire Human Genetic Therapies,Inc.
米国

[ KEGG | KEGG DRUG | KEGG MEDICUS ] 2025/05/21 版