医療用医薬品 : チバセン

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医薬品情報


総称名 チバセン
一般名 ベナゼプリル塩酸塩
欧文一般名 Benazepril Hydrochloride
製剤名 ベナゼプリル塩酸塩錠
薬効分類名 アンジオテンシン変換酵素阻害剤
薬効分類番号 2144
ATCコード C09AA07
KEGG DRUG
D00620 ベナゼプリル塩酸塩
KEGG DGROUP
DG01501 アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬
DG03231 血圧降下薬
JAPIC 添付文書(PDF)
この情報は KEGG データベースにより提供されています。
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添付文書情報2024年7月 改訂(第2版)


商品情報 3.組成・性状

販売名 欧文商標名 製造会社 YJコード 薬価 規制区分
チバセン錠2.5mg Cibacen Tablets サンファーマ 処方箋医薬品注)
チバセン錠5mg Cibacen Tablets サンファーマ 処方箋医薬品注)
チバセン錠10mg Cibacen Tablets サンファーマ 処方箋医薬品注)

2. 禁忌

次の患者には投与しないこと
2.1 本剤の成分に対し過敏症の既往歴のある患者
2.2 血管浮腫の既往歴のある患者(アンジオテンシン変換酵素阻害剤等の薬剤による血管浮腫、遺伝性血管浮腫、後天性血管浮腫、特発性血管浮腫等)〔高度の呼吸困難を伴う血管浮腫を発現することがある。〕[11.1.1参照]
2.3 デキストラン硫酸固定化セルロース、トリプトファン固定化ポリビニルアルコール又はポリエチレンテレフタレートを用いた吸着器によるアフェレーシスを施行中の患者[10.1参照]
2.4 アクリロニトリルメタリルスルホン酸ナトリウム膜(AN69)を用いた血液透析施行中の患者[10.1参照]
2.5 妊婦又は妊娠している可能性のある女性[9.5参照]
2.6 アリスキレンフマル酸塩を投与中の糖尿病患者(ただし、他の降圧治療を行ってもなお血圧のコントロールが著しく不良の患者を除く)[10.1参照]

4. 効能または効果

高血圧症

6. 用法及び用量

通常、成人にはベナゼプリル塩酸塩として5〜10mgを1日1回経口投与する。
なお、年齢、症状により適宜増減する。ただし、重症高血圧症又は腎障害を伴う高血圧症の患者では2.5mgから投与を開始することが望ましい。

8. 重要な基本的注意

8.1 本剤投与に伴い急激な血圧低下を起こすことがあるため手術前24時間は投与しないことが望ましい。
8.2 降圧作用に基づくめまい、ふらつきがあらわれることがあるので、高所作業、自動車の運転等危険を伴う機械を操作する際には注意させること。

9. 特定の背景を有する患者に関する注意

9.1 合併症・既往歴等のある患者
9.1.1 両側性腎動脈狭窄のある患者又は片腎で腎動脈狭窄のある患者
治療上やむを得ないと判断される場合を除き、投与は避けること。腎血流量の減少や糸球体濾過圧の低下により急速に腎機能を悪化させるおそれがある。
9.1.2 高カリウム血症の患者
治療上やむを得ないと判断される場合を除き、投与は避けること。高カリウム血症を増悪させるおそれがある。
また、腎機能障害、コントロール不良の糖尿病等により血清カリウム値が高くなりやすい患者では、血清カリウム値に注意すること。
9.1.3 重症の高血圧症患者
少量より開始し、増量する場合は患者の状態を十分に観察しながら徐々に行うこと。まれに急激な血圧低下を起こすおそれがある。
9.1.4 厳重な減塩療法中の患者
少量より開始し、増量する場合は患者の状態を十分に観察しながら徐々に行うこと。まれに急激な血圧低下を起こすおそれがある。
9.2 腎機能障害患者
9.2.1 重篤な腎機能障害のある患者(クレアチニンクリアランスが30mL/分以下、又は血清クレアチニン値が3mg/dL以上)
投与量を減らすなど慎重に投与すること。本剤の活性代謝物の血中濃度が上昇し、過度の血圧低下、腎機能の悪化を起こすおそれがある。[16.6.1参照]
9.2.2 血液透析中の患者
少量より開始し、増量する場合は患者の状態を十分に観察しながら徐々に行うこと。まれに急激な血圧低下を起こすおそれがある。
9.4 生殖能を有する者
9.4.1 妊娠する可能性のある女性
妊娠していることが把握されずアンジオテンシン変換酵素阻害剤又はアンジオテンシンII受容体拮抗剤を使用し、胎児・新生児への影響(腎不全、頭蓋・肺・腎の形成不全、死亡等)が認められた例が報告されている1)2)
本剤の投与に先立ち、代替薬の有無等も考慮して本剤投与の必要性を慎重に検討し、治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与すること。また、投与が必要な場合には次の注意事項に留意すること。[9.5参照]
(1)本剤投与開始前に妊娠していないことを確認すること。本剤投与中も、妊娠していないことを定期的に確認すること。投与中に妊娠が判明した場合には、直ちに投与を中止すること。
(2)次の事項について、本剤投与開始時に患者に説明すること。また、投与中も必要に応じ説明すること。
・妊娠中に本剤を使用した場合、胎児・新生児に影響を及ぼすリスクがあること。
・妊娠が判明した又は疑われる場合は、速やかに担当医に相談すること。
・妊娠を計画する場合は、担当医に相談すること。
9.5 妊婦
妊婦又は妊娠している可能性のある女性には投与しないこと。また、投与中に妊娠が判明した場合には、直ちに投与を中止すること。妊娠中期及び末期にアンジオテンシン変換酵素阻害剤又はアンジオテンシンII受容体拮抗剤を投与された患者で羊水過少症、胎児・新生児の死亡、新生児の低血圧、腎不全、高カリウム血症、頭蓋の形成不全及び羊水過少症によると推測される四肢の拘縮、頭蓋顔面の変形、肺の低形成等があらわれたとの報告がある。また、海外で実施されたレトロスペクティブな疫学調査で、妊娠初期にアンジオテンシン変換酵素阻害剤を投与された患者群において、胎児奇形の相対リスクは降圧剤が投与されていない患者群に比べ高かったとの報告がある。[2.59.4.1参照]
9.6 授乳婦
授乳しないことが望ましい。ベナゼプリル、ベナゼプリラート共に母乳中にごくわずかに移行する。(外国人データ)[16.3.2参照]
9.7 小児等
小児等を対象とした臨床試験は実施していない。
9.8 高齢者
低用量(例えば2.5mg/日)から投与を開始するなど患者の状態を観察しながら慎重に投与すること。一般に過度の降圧は好ましくないとされている。脳梗塞等が起こるおそれがある。

10. 相互作用

10.1 併用禁忌
デキストラン硫酸固定化セルロース、トリプトファン固定化ポリビニルアルコール又はポリエチレンテレフタレートを用いた吸着器によるアフェレーシスの施行
リポソーバー
イムソーバTR
セルソーバ
2.3参照]
ショックを起こすことがある。陰性に荷電したデキストラン硫酸固定化セルロース、トリプトファン固定化ポリビニルアルコール又はポリエチレンテレフタレートにより血中キニン系の代謝が亢進し、本剤によりブラジキニン代謝が妨げられ蓄積すると考えられている。
アクリロニトリルメタリルスルホン酸ナトリウム膜(AN69)を用いた血液透析
2.4参照]
アナフィラキシーを発現することがある。多価イオン体であるAN69により血中キニン系の代謝が亢進し、本剤によりブラジキニン代謝が妨げられ蓄積すると考えられている。
アリスキレンフマル酸塩
ラジレス
(糖尿病患者に使用する場合。ただし、他の降圧治療を行ってもなお血圧のコントロールが著しく不良の患者を除く)
2.6参照]
非致死性脳卒中、腎機能障害、高カリウム血症及び低血圧のリスク増加が報告されている。併用によりレニン−アンジオテンシン系阻害作用が増強される可能性がある。
10.2 併用注意
アリスキレンフマル酸塩腎機能障害、高カリウム血症及び低血圧を起こすおそれがあるため、腎機能、血清カリウム値及び血圧を十分に観察すること。
なお、eGFRが60mL/min/1.73m2未満の腎機能障害のある患者へのアリスキレンとの併用については、治療上やむを得ないと判断される場合を除き避けること。
併用によりレニン−アンジオテンシン系阻害作用が増強される可能性がある。
アンジオテンシンII受容体拮抗剤腎機能障害、高カリウム血症及び低血圧を起こすおそれがあるため、腎機能、血清カリウム値及び血圧を十分に観察すること。併用によりレニン−アンジオテンシン系阻害作用が増強される可能性がある。
カリウム保持性利尿剤
スピロノラクトン
トリアムテレン等
カリウム製剤
血清カリウム値が上昇することがあるので、血清カリウム値に注意すること。本剤はアンジオテンシンIIの生成を阻害することにより、血中アルドステロン濃度を減少させ、カリウム保持の方向に働くため。
危険因子:腎機能障害
シクロスポリン血清カリウム値が上昇することがあるので、血清カリウム値に注意すること。高カリウム血症の副作用が相互に増強されると考えられる。
カリジノゲナーゼ製剤本剤との併用により過度の血圧低下が引き起こされる可能性がある。本剤のキニン分解抑制作用とカリジノゲナーゼ製剤のキニン産生作用により、血中キニン濃度が増大し血管平滑筋の弛緩が増強される可能性がある。
降圧作用を有する他の薬剤
利尿降圧剤
ニトログリセリン製剤等
降圧作用が増強されることがあるので、患者の状態を十分に観察しながら両剤の用量に注意すること。いずれも降圧作用を有するため。
危険因子:利尿降圧剤投与開始時
リチウム製剤
炭酸リチウム
リチウム中毒を起こすことがある。血中リチウム濃度に注意すること。アンジオテンシン変換酵素阻害剤は腎尿細管におけるリチウムの再吸収を促進するため。
非ステロイド性消炎鎮痛剤(NSAIDs)
COX-2選択的阻害剤
インドメタシン等
降圧作用が減弱されることがあるので、本剤の用量に注意すること。本剤の降圧作用は一部プロスタグランジンの増加によるとされる。非ステロイド性消炎鎮痛剤はプロスタグランジン合成を阻害するため、その阻害の程度により降圧作用が減弱されることが考えられる。
非ステロイド性消炎鎮痛剤(NSAIDs)
COX-2選択的阻害剤
インドメタシン等
腎機能を悪化させるおそれがある。プロスタグランジン合成阻害作用により、腎血流量が低下するためと考えられる。
危険因子:高齢者
ジペプチジルペプチダーゼ-IV阻害剤
ビルダグリプチン等
ビルダグリプチンとアンジオテンシン変換酵素阻害剤を併用している患者では、併用していない患者に比べて血管浮腫の発現頻度が高かったとの報告がある。機序は不明である。

11. 副作用

11.1 重大な副作用
次の副作用があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止するなど適切な処置を行うこと。
11.1.1 血管浮腫
呼吸困難を伴う顔面、口唇、舌、声門、喉頭の腫脹を症状とする血管浮腫(0.1%未満)、また、腹痛を伴う小腸血管浮腫(頻度不明)[2.2参照]
11.1.2 急性腎障害(頻度不明)
11.1.3 高カリウム血症(頻度不明)
11.1.4 肝炎、肝機能障害、黄疸(いずれも頻度不明)
11.1.5 無顆粒球症、好中球減少(いずれも頻度不明)
アンジオテンシン変換酵素阻害剤で、腎障害のある患者、自己免疫疾患を有する患者(特に全身性エリテマトーデス)又は免疫抑制剤の投与を受けている患者であらわれやすいとの報告がある。
11.1.6 膵炎(頻度不明)
11.2 その他の副作用
次の副作用があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止するなど適切な処置を行うこと。
 0.1%〜5%未満0.1%未満頻度不明
過敏症光線過敏症発疹、そう痒
腎臓BUN、血清クレアチニンの上昇蛋白尿頻尿
血液貧血白血球減少、血小板減少、好酸球増多
精神神経系めまい・ふらつき、頭痛協調異常、いらいら感、抑うつ、眠気、不眠、不安
循環器血圧低下、胸部不快感、動悸起立性低血圧、過度の血圧低下
消化器嘔気・嘔吐、胃のもたれ、心窩部痛、腹部膨満感下痢、便秘
肝臓AST、ALT、ALP、LDHの上昇
呼吸器咳嗽、咽頭部不快感副鼻腔炎
電解質血清カリウム値の上昇注)血清ナトリウム値の低下
その他CK上昇、尿酸上昇、肩こり、味覚異常、視覚障害(霧視等)、口唇乾燥感、手指腫脹けん怠感、脱力感、浮腫背部痛、インポテンス、低血糖、関節痛、筋肉痛、ほてり、耳鳴、知覚異常、性欲減退、口渇

13. 過量投与

13.1 徴候・症状
主な症状は、過度の低血圧である。また、電解質異常及び腎不全が起こる可能性がある。
13.2 処置
通常、次の様な処置を行う。
・本剤服用直後である場合、活性炭を投与する。また、患者の状態に応じて、早期に胃洗浄や催吐等を行う。
・活性代謝物ジアシド体(ベナゼプリラート)は透析によってわずかしか除去されないが、高度な腎機能障害の患者では、透析を考慮すること。又は、血液灌流(血漿交換法)を考慮すること。

14. 適用上の注意

14.1 薬剤交付時の注意
PTP包装の薬剤はPTPシートから取り出して服用するよう指導すること。PTPシートの誤飲により、硬い鋭角部が食道粘膜へ刺入し、更には穿孔をおこして縦隔洞炎等の重篤な合併症を併発することがある。

15. その他の注意

15.1 臨床使用に基づく情報
15.1.1 インスリン又は経口血糖降下剤の投与中にアンジオテンシン変換酵素阻害剤を投与したとき、低血糖が起こりやすいとの報告がある。
15.1.2 外国において、アンジオテンシン変換酵素阻害剤服用中の患者が膜翅目毒(ハチ毒)による脱感作中にアナフィラキシーを発現したとの報告がある。

16. 薬物動態

16.1 血中濃度
16.1.1 単回投与
健康成人にベナゼプリル塩酸塩2.5mg、5mg、10mgを空腹時に単回経口投与した場合、吸収後速やかに活性代謝物ジアシド体(ベナゼプリラート)に変換され、投与後1.2〜1.5時間で最高血漿中濃度に達し、血漿中から緩徐に消失した3)
ベナゼプリラート投与量Cmax(ng/mL)Tmax(hr)AUC(0-72)(ng・hr/mL)
2.5mg32.71.5251.2
5mg87.21.5419.0
10mg199.31.2988.5
16.1.2 反復投与
健康成人にベナゼプリル塩酸塩5mgを1日1回7日間投与した時、投与1日目と7日目で、ベナゼプリルのTmax及び半減期(T1/2)に差はなく、投与後8時間には血漿中から消失した。また、ベナゼプリラートのTmax、T1/2も1日目及び7日目で差はなく、また、最低血漿中濃度は2日目以降一定し、定常状態に達したと示唆された4)。[16.8.1参照]
16.3 分布
16.3.1 蛋白結合
健康成人にベナゼプリル塩酸塩10mgを単回経口投与したとき、ベナゼプリル、ベナゼプリラートの血清中蛋白結合率はそれぞれ96.2%及び91.4%(投与30分後)であった。
16.3.2 乳汁中への移行性
ベナゼプリル、ベナゼプリラート共、ごくわずかに移行する5)(ベナゼプリル塩酸塩20mgを1日1回3日間経口投与した時、ベナゼプリルの最高濃度における乳汁/血漿比は0.006である。)(外国人データ)。[9.6参照]
16.4 代謝
16.4.1 主な代謝経路は肝臓である。
16.4.2 肝硬変患者及び健康成人にベナゼプリル塩酸塩20mgを単回経口投与したとき、ベナゼプリラートのバイオアベイラビリティは両者でほぼ同等であった。このことから、肝におけるベナゼプリラートへの変換は、肝硬変によりほとんど影響を受けないことが示唆された6)(外国人のデータ)。
16.5 排泄
16.5.1 主に腎臓から排泄されるが、一部胆汁からの排泄も認められている。
16.5.2 健康成人にベナゼプリル塩酸塩2.5mg、5mg、10mgを単回経口投与したとき、投与後72時間までに投与量の17.0〜20.9%がベナゼプリラートとして、1%未満が未変化体ベナゼプリルとして尿中排泄された。また、ベナゼプリル、ベナゼプリラートともにグルクロン酸抱合を受け、健康成人にベナゼプリル塩酸塩10mgを単回経口投与したとき、尿中抱合型/非抱合型の比はベナゼプリルで約13.0、ベナゼプリラートで0.7を示した3)
16.5.3 胆管・胆のう疾患のため胆管ドレナージを施した患者(3例)にベナゼプリル塩酸塩10mgを単回経口投与した時、投与量の4.8、15.5、4.9%(投与後24時間)がベナゼプリラートとして胆汁中に排泄された7)(外国人のデータ)。
16.6 特定の背景を有する患者
16.6.1 腎機能障害時の体内動態
腎機能障害患者を含む高血圧症患者にベナゼプリル塩酸塩5mgを1日1回8日間反復投与したとき、腎機能低下に伴うベナゼプリラートのAUC(0-24)(血中濃度曲線下面積)の増加、半減期の延長が認められ、消失の遅延が示唆されている。一方、未変化体ベナゼプリルのバイオアベイラビリティは腎機能低下の影響を受けないことが認められている8)。[9.2.1参照]
16.8 その他
16.8.1 蓄積性
健康成人にベナゼプリル塩酸塩5mgを1日1回7日間反復経口投与した場合のベナゼプリラートの血漿中濃度推移から、蓄積性は示唆されていない。なお、反復投与による尿中排泄率の変化は認められていない4)。[16.1.2参照]

17. 臨床成績

17.1 有効性及び安全性に関する試験
17.1.1 国内第II相試験
本態性高血圧症患者141例を対象に、本剤1日1回2.5〜20mg注)を単独投与した一般臨床試験における本剤の降圧率は、67.7%(90/133)であった。
副作用発現率は、136例中15例(11.0%)であった。主な副作用は、咳6件(4.4%)、めまい3件(2.2%)、掻痒性発疹2件(1.5%)、頭痛2件(1.5%)等であった。また、臨床検査値異常は1例(0.7%)に認められ、主な臨床検査値異常はALT上昇1件(0.7%)であった9)
17.1.2 国内第II相試験(延長試験)
軽症〜中等症の本態性高血圧症86例を対象に、本剤1日1回2.5〜20mg注)を単独または基礎薬として投与されている利尿剤に併用し、1年間投与した長期投与試験における本剤の降圧率は単独投与例で78.6%(44/56)、利尿薬との併用投与例で85.2%(23/27)であった。
安全性に関しては、単独投与群58例中4例(6.9%)、利尿薬との併用投与(以下、併用投与群と略)27例中1例(3.7%)の副作用が認められた。主な副作用は、単独投与群で咳3件(5.1%)、めまい1件(1.7%)、併用投与群で咳1件(3.7%)であった。また、臨床検査値異常は、単独投与群58例中2例(3.4%)、併用投与群27例中2例(7.4%)であった。主な臨床検査値異常は、単独投与群でALT上昇1件(1.7%)、白血球数減少1件(1.7%)、併用投与群でALT上昇1件(3.7%)、AST上昇1件(3.7%)、BUN上昇1件(3.7%)、尿酸上昇1件(3.7%)であった。
長期投与による特異的な副作用は認められず、安全性に関し特に大きな問題点は認めなかった10)
注)本剤の承認された用法・用量は「通常、成人にはベナゼプリル塩酸塩として5〜10mgを1日1回経口投与する。なお、年齢、症状により適宜増減する。ただし、重症高血圧症又は腎障害を伴う高血圧症の患者では2.5mgから投与を開始することが望ましい。」である。
17.1.3 国内第III相臨床試験
軽症〜中等症の本態性高血圧症を対象に、エナラプリル群(以下、ENP群)との二重盲検比較試験の結果、降圧率は、ベナゼプリル群(以下、BZP群)で73.6%、ENP群で68.2%であった。
副作用発現率は、BZP群で113例中15例(13.3%)15件、ENP群で111例中8例(7.2%)8件であった。主な副作用は、BZP群で咳12件(10.6%)、嘔気・嘔吐1件(0.9%)、腹部膨満感1件(0.9%)、胃のもたれ1件(0.9%)であり、ENP群では咳8件(7.2%)であった。また、臨床検査値異常はBZP群113例中2例(1.8%)3件及びENP群で111例中4例(3.6%)6件であった。主な臨床検査値異常はBZP群でALT上昇1件(0.9%)、AST上昇1件(0.9%)、CPK上昇1件(0.9%)であり、ENP群で好酸球増多1件(0.9%)、赤血球数減少1件(0.9%)、ヘモグロビン低下1件(0.9%)、CPK上昇1件(0.9%)、総蛋白低下1件(0.9%)、抗核抗体陽性化1件(0.9%)であった11)
17.3 その他
17.3.1 重症高血圧症における検討
重症高血圧症を対象とした一般臨床試験の降圧率は88.6%(31/35)であった。
安全性に関しては、臨床検査値異常が34例中3例(8.8%)に認められたが副作用症状の発現はなく、安全性に問題は認めなかった12)
17.3.2 腎障害を伴う高血圧症における検討
腎障害を伴う高血圧症を対象とした一般臨床試験の降圧率は88.2%(30/34)であった。
安全性に関しては、34例中2例(17.6%)4件に副作用が認められ、主な副作用はふらつき感1件(2.9%)、嘔気1件(2.9%)、冷や汗感1件(2.9%)、咳1件(2.9%)であった。また、臨床検査値異常は、34例中4例(35.2%)12件に認められ、主な臨床検査値異常は、BUN上昇2件(5.9%)、血清クレアチニン上昇2件(5.9%)、血清K上昇2件(5.9%)、CRP陽性1件(2.9%)であった13)

18. 薬効薬理

18.1 作用機序
ベナゼプリル塩酸塩は経口投与後、加水分解により活性代謝物であるジアシド体(ベナゼプリラート)に変換される。ベナゼプリラートは、血中・組織中のアンジオテンシン変換酵素(ACE)を特異的に阻害することで、アンジオテンシンIIの生成を抑制し、末梢血管抵抗を減弱させる。また、アンジオテンシンIIの減少は、アルドステロン分泌抑制につながり、腎での水・Naの再吸収抑制による体液量減少が降圧機序の一部として寄与する。さらにブラジキニンを不活性化するキニナーゼIIとACEは同一酵素であるため、ベナゼプリラートはブラジキニンの不活性化を抑制し、ブラジキニンの降圧作用を増強する。
18.2 ACE阻害作用
18.2.1 In vitro試験において、ベナゼプリラートはウサギ肺粗標本から調製したACEの活性を阻害した。
18.2.2 ベナゼプリル塩酸塩、ベナゼプリラートをラット及びイヌに経口投与あるいは静脈内投与すると、外因性アンジオテンシンIによる昇圧反応は抑制された。
18.2.3 高血圧自然発症ラット(SHR)への反復経口投与試験において、ベナゼプリル塩酸塩は血管壁の組織中ACE活性に対して持続的な阻害作用を示した14)
18.2.4 健康成人に対してベナゼプリル塩酸塩5mgを反復経口投与(1日1回7日間)すると、血清ACE活性は24時間にわたり持続的に抑制された4)
18.3 降圧作用
18.3.1 SHR及び腎性高血圧ラットへのベナゼプリル塩酸塩単回経口投与は用量依存的な降圧作用を示したが、正常血圧ラットの血圧に対する影響は極めて小さかった15)
18.3.2 SHR、腎性高血圧ラットにおいてベナゼプリル塩酸塩の1日1回28日間の連続経口投与は安定した降圧作用を示した。また、休薬に伴う血圧のリバウンド現象はみられなかった15)
18.3.3 本態性高血圧症患者において、通常用量のベナゼプリル塩酸塩を1日1回反復経口投与したとき、24時間にわたって安定した降圧作用が持続し、血圧日内変動幅及び日内較差にはほとんど影響がみられなかった16)
18.3.4 SHRにベナゼプリル塩酸塩を1ヵ月間経口投与したとき、心臓、腎臓、脳等の主要臓器の血流量に有意な影響を及ぼすことなく血圧低下がみられた。
18.4 カリクレイン−キニン系への作用
イヌへのベナゼプリル塩酸塩及びベナゼプリラートの静脈内投与はブラジキニンによる降圧作用を有意に増強した。
18.5 その他の作用
18.5.1 SHRにベナゼプリル塩酸塩を12週間連続経口投与したとき、降圧作用に伴い高血圧性心肥大の抑制作用が認められた17)
18.5.2 腎障害のあるSHRへのベナゼプリル塩酸塩の4週間連続経口投与試験において、降圧作用とともに尿蛋白排泄の抑制が認められた18)

19. 有効成分に関する理化学的知見

19.1. ベナゼプリル塩酸塩

一般的名称 ベナゼプリル塩酸塩
一般的名称(欧名) Benazepril Hydrochloride
化学名 (−)-(3S)-3-[[(1S)-1-Ethoxycarbonyl-3-phenyl-propyl]amino]-2-oxo-2,3,4,5-tetrahydro-1H-1-benzazepine-1-acetic acid monohydrochloride
分子式 C24H28N2O5・HCl
分子量 460.95
融点 約182℃(分解)
物理化学的性状 白色〜微黄白色の結晶又は結晶性の粉末で、においはない。水、メタノール、エタノール(99.5)、無水酢酸又は酢酸(100)に溶けやすく、ジエチルエーテルにほとんど溶けない。
分配係数 1.33(1-オクタノール/pH7緩衝液)
KEGG DRUG D00620

20. 取扱い上の注意

PTPシートから取り出した後は、湿気を避けて保存すること。

22. 包装

<チバセン錠2.5mg>
100錠[10錠×10:PTP、乾燥剤入り]
<チバセン錠5mg>
100錠[10錠×10:PTP、乾燥剤入り]
<チバセン錠10mg>
100錠[10錠×10:PTP、乾燥剤入り]

23. 主要文献

  1. 阿部真也ほか, 周産期医学, 47, 1353-1355, (2017)
  2. 齊藤大祐ほか, 鹿児島産科婦人科学会雑誌, 29, 49-54, (2021)
  3. 中島光好ほか, 臨床医薬, 7 (5), 949, (1991)
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24. 文献請求先及び問い合わせ先

文献請求先
サンファーマ株式会社 くすり相談センター
〒105-0011 東京都港区芝公園1-7-6
電話:0120-22-6880 受付時間:9時〜17時(土、日、祝日、その他当社の休業日を除く)
URL:https://jp.sunpharma.com/
製品情報問い合わせ先
サンファーマ株式会社 くすり相談センター
〒105-0011 東京都港区芝公園1-7-6
電話:0120-22-6880 受付時間:9時〜17時(土、日、祝日、その他当社の休業日を除く)
URL:https://jp.sunpharma.com/

26. 製造販売業者等

26.1 製造販売元
サンファーマ株式会社
東京都港区芝公園1-7-6

[ KEGG | KEGG DRUG | KEGG MEDICUS ] 2025/03/19 版