本剤による治療は原因療法ではなく、対症療法であることに留意し、本剤投与により期待する効果が得られない場合には手術療法等、他の適切な処置を考慮すること。
通常、成人にはナフトピジルとして1日1回25mgより投与を始め、効果が不十分な場合は1〜2週間の間隔をおいて50〜75mgに漸増し、1日1回食後経口投与する。
なお、症状により適宜増減するが、1日最高投与量は75mgまでとする。
8.1 起立性低血圧があらわれることがあるので、体位変換による血圧変化に注意すること。
8.2 本剤の投与初期又は用量の急増時等に、起立性低血圧に基づくめまい、立ちくらみ等があらわれることがあるので、高所作業、自動車の運転等危険を伴う作業に従事する場合には注意させること。
8.3 本剤投与開始時に降圧剤投与の有無について問診を行い、降圧剤が投与されている場合には血圧変化に注意し、血圧低下がみられたときには、減量又は中止するなど適切な処置を行うこと。[
10.2参照]
9.1 合併症・既往歴等のある患者
9.1.1 重篤な心疾患のある患者
9.1.2 重篤な脳血管障害のある患者
9.3 肝機能障害患者
健常人に比し、最高血漿中濃度が約2倍、血漿中濃度曲線下面積が約4倍に増加したとの報告がある。
9.8 高齢者
低用量(例えば12.5mg/日等)から投与を開始するなど、患者の状態を観察しながら慎重に投与すること。本剤は、主として肝臓から排泄されるが、高齢者では肝機能が低下していることが多いため、排泄が遅延し、高い血中濃度が持続するおそれがある。
11.1 重大な副作用
次の副作用があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止するなど適切な処置を行うこと。
11.1.1 肝機能障害、黄疸(頻度不明)
AST、ALT、γ-GTP等の上昇を伴う肝機能障害、黄疸があらわれることがある。
11.1.2 失神、意識喪失(頻度不明)
血圧低下に伴う一過性の意識喪失等があらわれることがある。
注)発現頻度は使用成績調査を含む
11.2 その他の副作用
次の副作用があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止するなど適切な処置を行うこと。
| 0.1〜1%未満 | 0.1%未満 | 頻度不明 |
過敏症 | 発疹 | そう痒感、蕁麻疹 | 多形紅斑 |
精神神経系 | めまい・ふらつき、頭痛・頭重 | 倦怠感、眠気、耳鳴、しびれ感、振戦、味覚異常 | 頭がボーッとする |
循環器 | 立ちくらみ、低血圧 | 動悸、ほてり、不整脈(期外収縮、心房細動等) | 頻脈 |
消化器 | 胃部不快感、下痢 | 便秘、口渇、嘔気、嘔吐、膨満感、腹痛 | |
肝臓 | AST、ALTの上昇 | LDH、Al-Pの上昇 | |
血液 | | | 血小板数減少 |
眼 | | 霧視 | 術中虹彩緊張低下症候群(IFIS)、色視症 |
その他 | | 浮腫、尿失禁、悪寒、眼瞼浮腫、肩こり、鼻閉、勃起障害 | 女性化乳房、胸痛 |
14.1 薬剤交付時の注意
PTP包装の薬剤はPTPシートから取り出して服用するよう指導すること。PTPシートの誤飲により、硬い鋭角部が食道粘膜へ刺入し、更には穿孔をおこして縦隔洞炎等の重篤な合併症を併発することがある。
15.1 臨床使用に基づく情報
15.1.1 類似化合物(プラゾシン塩酸塩)で腎及びその他の動脈狭窄、脚部及びその他の動脈瘤等の血管障害のある高血圧患者で、急性熱性多発性関節炎がみられたとの報告がある。
15.1.2 α1遮断薬を服用中又は過去に服用経験のある患者において、α1遮断作用によると考えられる術中虹彩緊張低下症候群(Intraoperative Floppy Iris Syndrome)があらわれるとの報告がある。
15.2 非臨床試験に基づく情報
動物実験(マウス)において、300mg/kg/日(臨床最大用量の約200倍)を2年間経口投与した場合、雌で乳腺腫瘍の発生頻度が対照群に比し有意に増加したとの報告がある。また、マウスに同用量を77週間経口投与した結果、血清プロラクチンが対照群に比し上昇したとの報告がある。
16.1 血中濃度
16.1.1 単回投与・反復投与
健康成人にナフトピジル25、50及び100mg
注)を空腹時に単回経口投与したとき、下記のデータが得られている
1)。
表16-1 単回投与時の薬動力学的パラメータ
| 25mg | 50mg | 100mg注) |
Tmax(時間) | 0.45±0.21 | 0.75±0.71 | 0.65±0.22 |
Cmax(ng/mL) | 39.3±10.3 | 70.1±32.9 | 134.8±55.8 |
半減期(時間) | 15.2±4.7 | 10.3±4.1 | 20.1±13.7 |
また、1回50mgを1日2回食後反復経口投与
注)すると、血清中濃度は4回目投与で定常状態に達した
1)。
16.1.2 生物学的同等性試験
ナフトピジル錠75mg「タカタ」とフリバス錠75mgをクロスオーバー法により、健康成人男子28名にそれぞれ1錠(ナフトピジルとして75mg)を空腹時に単回経口投与し、投与前、投与後0.17、0.33、0.5、0.67、0.83、1、1.25、1.5、2、4、6、8、12及び24時間に前腕静脈から採血した。LC/MS/MSにより測定したナフトピジルの血漿中濃度の推移及びパラメータは次のとおりであり、統計解析にて90%信頼区間を求めた結果、判定パラメータの対数値の平均値の差はlog(0.80)〜log(1.25)の範囲にあり、両剤の生物学的同等性が確認された
2)。
図16-1 血漿中濃度(錠75mg)
表16-2 薬物動態パラメータ(錠75mg)
| 判定パラメータ | 参考パラメータ |
AUCt(ng・hr/mL) | Cmax(ng/mL) | tmax(hr) | t1/2(hr) |
ナフトピジル錠75mg「タカタ」 | 209.59±62.01 | 81.51±43.14 | 0.8±0.8 | 9.7±4.2 |
フリバス錠75mg | 208.93±74.62 | 89.26±58.21 | 0.7±0.4 | 8.9±2.9 |
血漿中濃度並びにAUC、Cmax等のパラメータは、被験者の選択、体液の採取回数・時間等の試験条件によって異なる可能性がある。
16.2 吸収
16.2.1 食事の影響
健康成人にナフトピジル50mgを空腹時及び食後に単回経口投与すると、最高血清中未変化体濃度到達時間はそれぞれ0.75時間及び2.20時間であり、食後投与で遅延する傾向を示し、血清中濃度−時間曲線下面積はわずかに増大したが、最高血清中濃度及び消失相の半減期に変化がなく、ナフトピジルの吸収に及ぼす食事の影響は少なかった
1)。
16.3 分布
16.3.1 蛋白結合率
健康成人にナフトピジル100mg
注)を空腹時単回経口投与したときの血清蛋白結合率は98.5%であった
3)。
16.4 代謝
主要代謝反応は、未変化体のグルクロン酸抱合及びメトキシフェニル基の水酸化であった
3)。
16.5 排泄
健康成人にナフトピジル25、50及び100mg
注)を単回経口投与したときの投与後24時間までの尿中未変化体排泄率はいずれも0.01%以下であった
1)。
16.8 その他
16.8.1 ナフトピジル錠25mg「タカタ」
ナフトピジル錠25mg「タカタ」はナフトピジル錠75mg「タカタ」と含量が異なる製剤として開発されたことから、「含量が異なる経口固形製剤の生物学的同等性試験ガイドライン」に基づき、溶出挙動をナフトピジル錠75mg「タカタ」と比較したところ同等と判断され、両剤は生物学的に同等とみなされた
4)。
16.8.2 ナフトピジル錠50mg「タカタ」
ナフトピジル錠50mg「タカタ」はナフトピジル錠75mg「タカタ」と含量が異なる製剤として開発されたことから、「含量が異なる経口固形製剤の生物学的同等性試験ガイドライン」に基づき、溶出挙動をナフトピジル錠75mg「タカタ」と比較したところ同等と判断され、両剤は生物学的に同等とみなされた
5)。
注)本剤の承認された用法・用量は、「通常、成人にはナフトピジルとして1日1回25mgより投与を始め、効果が不十分な場合は1〜2週間の間隔をおいて50〜75mgに漸増し、1日1回食後経口投与する。なお、症状により適宜増減するが、1日最高投与量は75mgまでとする。」である。
18.1 作用機序
ナフトピジルは、アドレナリンα
1受容体の選択的遮断薬。α1受容体刺激作用に拮抗するが、尿道平滑筋のα
1受容体遮断作用による尿道緊張緩和に基づく排尿困難改善作用が臨床的に利用される
13)。
18.2 ヒトでの作用
18.2.1 交感神経系α受容体に対する親和性
ヒト前立腺膜標本を用いた受容体結合実験で、α
1受容体への親和性を示した
14)。
18.2.2 前立腺に対する作用
α
1受容体作動薬によるヒト摘出前立腺平滑筋の収縮を抑制した
10)。
18.2.3 排尿障害改善作用
前立腺肥大症に伴う排尿障害患者に対する臨床薬理試験において、最大尿道閉鎖圧及び最小尿道抵抗が有意に低下し、最大尿流率及び平均尿流率が有意に増加した
11)。
18.3 動物での作用
18.3.1 前立腺、尿道及び膀胱三角部に対する作用
α
1受容体作動薬によるウサギ摘出前立腺、尿道及び膀胱三角部平滑筋の収縮を抑制した
15)。
18.3.2 尿道内圧に対する作用
無麻酔雄ウサギにおいて、尿道内圧を用量依存的に低下させた
15)。麻酔雄イヌにおいては、α
1受容体作動薬による血圧上昇に対する抑制よりも、尿道内圧上昇を選択的に抑制した
16)。
外箱開封後は遮光して保存すること。本剤は光により変色することがある。変色したものは使用しないこと。