医療用医薬品 : ドブタミン

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医薬品情報


総称名 ドブタミン
一般名 ドブタミン塩酸塩
欧文一般名 Dobutamine Hydrochloride
製剤名 希釈型ドブタミン塩酸塩注射液
薬効分類名 急性循環不全改善剤
薬効分類番号 2119
ATCコード C01CA07
KEGG DRUG
D00632 ドブタミン塩酸塩
JAPIC 添付文書(PDF)
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添付文書情報2021年2月 改訂(第1版)


商品情報 3.組成・性状

販売名 欧文商標名 製造会社 YJコード 薬価 規制区分
ドブタミン持続静注50mgシリンジ「KKC」 (後発品) Dobutamine Hydrochloride Continuous Intravenous Infusion 50mg syringe[KKC] テルモ 2119404G5040 305円/筒 劇薬, 処方箋医薬品注)
ドブタミン持続静注150mgシリンジ「KKC」 (後発品) Dobutamine Hydrochloride Continuous Intravenous Infusion 150mg syringe[KKC] テルモ 2119404G6047 470円/筒 劇薬, 処方箋医薬品注)
ドブタミン持続静注300mgシリンジ「KKC」 (後発品) Dobutamine Hydrochloride Continuous Intravenous Infusion 300mg syringe[KKC] テルモ 2119404G7035 897円/筒 劇薬, 処方箋医薬品注)

2. 禁忌

次の患者には投与しないこと
2.1 肥大型閉塞性心筋症(特発性肥厚性大動脈弁下狭窄)の患者[左室からの血液流出路の閉塞が増強され、症状を悪化するおそれがある。]
2.2 ドブタミン塩酸塩に対し過敏症の既往歴のある患者

4. 効能または効果

急性循環不全における心収縮力増強

6. 用法及び用量

通常、ドブタミンとして、1分間あたり1〜5μg/kgを持続静注する。投与量は患者の病態に応じて、適宜増減し、必要ある場合には1分間あたり20μg/kgまで増量できる。

7. 用法及び用量に関連する注意

7.1 参考として、体重あたりの投与量は以下のとおりである。
7.1.1 ドブタミン持続静注50mgシリンジ「KKC」
体重(kg)ドブタミン投与量(μg/kg/min)
35101520
50.91.53.04.56.0
101.83.06.09.012.0
152.74.59.013.518.0
203.66.012.018.024.0
305.49.018.027.036.0
407.212.024.036.048.0
509.015.030.045.060.0
6010.818.036.054.072.0
7012.621.042.063.084.0
8014.424.048.072.096.0
7.1 参考として、体重あたりの投与量は以下のとおりである。
7.1.2 ドブタミン持続静注150mgシリンジ「KKC」
体重(kg)ドブタミン投与量(μg/kg/min)
35101520
50.30.51.01.52.0
100.61.02.03.04.0
150.91.53.04.56.0
201.22.04.06.08.0
301.83.06.09.012.0
402.44.08.012.016.0
503.05.010.015.020.0
603.66.012.018.024.0
704.27.014.021.028.0
804.88.016.024.032.0
7.1 参考として、体重あたりの投与量は以下のとおりである。
7.1.3 ドブタミン持続静注300mgシリンジ「KKC」
体重(kg)ドブタミン投与量(μg/kg/min)
35101520
50.10.20.50.71.0
100.30.51.01.52.0
150.40.71.52.23.0
200.61.02.03.04.0
300.91.53.04.56.0
401.22.04.06.08.0
501.52.55.07.510.0
601.83.06.09.012.0
702.13.57.010.514.0
802.44.08.012.016.0

8. 重要な基本的注意

8.1 本剤の投与前に、体液減少の是正、呼吸管理等の必要な処置を行うこと。
8.2 本剤の投与は、血圧、心拍数、心電図及び尿量、また可能な限り肺動脈楔入圧及び心拍出量等、患者の状態を観察しながら行うこと。
8.3 本剤は通常、末梢血管収縮作用を示さないので、過度の血圧低下を伴う急性循環不全患者においては、末梢血管収縮剤を投与するなど他の適切な処置を考慮すること。
8.4 本剤の投与中に過度の心拍数増加・収縮期血圧上昇のあらわれた場合には、過量投与の可能性があるので、このような場合には、減量するなど適切な処置を行うこと。[13.2参照]
8.5 72時間以上投与すると耐性がみられることがあり、増量の必要な場合がある。

9. 特定の背景を有する患者に関する注意

9.1 合併症・既往歴等のある患者
9.1.1 重篤な冠動脈疾患のある患者
複数の冠動脈主枝に高度の閉塞性変化のある患者では、本剤投与時の冠血流増加が少なく、心筋局所灌流が不均一になることがある。また、心収縮力及び心拍数を増す薬剤は、一般に、心筋虚血を強め心筋梗塞を拡大するおそれがあるとの報告がある。
9.1.2 高血圧症の患者
過度の昇圧を来すおそれがある。
9.1.3 高度の大動脈弁狭窄等、重篤な血流閉塞がある患者
本剤による改善がみられない可能性がある。
9.1.4 心房細動のある患者
本剤には房室伝導を促進する作用があるので、心房細動のある患者では心拍数を増加するおそれがある。
9.1.5 境界型糖尿病及び糖尿病の患者
本剤はブドウ糖を含んでいるので、境界型糖尿病及び糖尿病の患者の血糖コントロールを乱すおそれがある。他の希釈剤で希釈したドブタミン塩酸塩を使用する。
9.1.6 新生児・乳幼児、高齢者等の重篤な心疾患患者
水分摂取量が過剰にならないように十分注意して投与する。また、必要に応じ高濃度製剤の使用も考慮する。
9.5 妊婦
妊婦又は妊娠している可能性のある女性には、治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与すること。
9.6 授乳婦
治療上の有益性及び母乳栄養の有益性を考慮し、授乳の継続又は中止を検討すること。
9.7 小児等
低出生体重児、新生児、乳児、幼児又は小児に投与する場合には、観察を十分に行い、少量より慎重に開始すること。開心術後に心拍数が多い小児等に投与し、過度の頻拍を来したとの報告がある。
9.8 高齢者
少量から投与を開始するなど慎重に投与すること。一般に生理機能が低下している。

10. 相互作用

10.2 併用注意
β遮断剤
プロプラノロール塩酸塩等
本剤の効果の減弱、末梢血管抵抗の上昇等が起こるおそれがある。機序:本剤のβ受容体刺激作用が遮断され、α受容体刺激作用があらわれるおそれがある。
危険因子:β遮断剤の投与を受けている患者及び最近にβ遮断剤の投与を受けていた患者

11. 副作用

11.2 その他の副作用
次の副作用があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止するなど適切な処置を行うこと。
 5%以上0.1〜5%未満頻度不明
循環器不整脈(頻脈・期外収縮)等過度の血圧上昇、動悸、胸部不快感、狭心痛、前胸部熱感、息切れ血圧低下
消化器 悪心、腹部痛等 
投与部位 注射部位の発赤、腫脹等 
その他 頭痛、発疹、好酸球増多血清カリウムの低下

13. 過量投与

13.1 症状
食欲不振、悪心、嘔吐、動悸、息切れ、胸痛等、また、陽性変力作用及び変時作用による血圧上昇、頻拍性不整脈、心筋虚血、心室細動、血管拡張による低血圧等が生じるおそれがある1)2)
13.2 処置
ドブタミン塩酸塩の半減期は短いため、通常、血圧上昇は減量あるいは投与中止により回復する。回復しない場合には、短時間型α遮断薬の投与を考慮する。重症の心室性頻拍性不整脈には、プロプラノロール塩酸塩あるいはリドカインの投与も考慮する。[8.4参照]

14. 適用上の注意

14.1 全般的な注意
14.1.1 使用時には、以下の点に注意すること。
・感染に対する配慮をすること。
・シリンジが破損するおそれがあるので、シリンジを鉗子等で叩くなど、強い衝撃を与えないこと。
・液漏れする可能性があるので、外筒(バレル)を強く握らないこと。
14.2 薬剤投与時の注意
14.2.1 使用に際しては、ブリスター包装を開封口からゆっくり開け、外筒を持って取り出すこと。
14.2.2 押子(プランジャー)を時計回りに回転させ、押子接続用部品にしっかり接続すること。使用中に押子が外れた場合、サイフォニング(自然落下による急速注入)や逆流が起こるおそれがある。
14.2.3 押子や押子接続用部品が外れたり、ガスケットが変形し薬液が漏出したりするおそれがあるので、押子のみを持たないこと。
14.2.4 押子を反時計回りに回転させると接続にゆるみが生じ、ガスケットから押子接続部品とともに押子が外れるおそれがあるので、押子を反時計回りに回転させないこと。
14.2.5 筒先のキャップをゆっくり回転させながら外して、注入ラインを確実に接続すること。キャップを外した後は、筒先に触れないこと。
14.2.6 押子を引かないこと。
14.2.7 本剤の投与にあたっては、シリンジポンプを使用し、針をつけて直接投与しないこと。また、以下の点に注意すること。
・本剤が使用可能な設定であることを必ず確認するとともに、シリンジポンプの取扱説明書に従って投与すること。
・シリンジポンプの送り機構(スライダー)のフックに確実にセットすること。正しくセットされていない場合、サイフォニングや逆流が起こるおそれがある。
14.2.8 他の薬剤を混注して投与しないこと。
14.2.9 血管外へ漏れた場合、注射部位を中心に発赤、腫脹又は壊死を起こすことがあるので慎重に投与すること。
14.3 薬剤投与後の注意
開封後の使用は1回限りとし、使用後の残液はシリンジとともに速やかに廃棄すること。

15. その他の注意

15.1 臨床使用に基づく情報
本剤では承認外であるが、外国で急性心筋梗塞後早期に実施したドブタミン負荷試験中に、致死的な心破裂が起きたとの報告がある。

16. 薬物動態

16.1 血中濃度
健康成人男子にドブタミン塩酸塩を2μg/kg/minで40分間点滴静注したときの血漿中濃度及び薬物動態パラメータを図1・表1に示す3)
図1 点滴静注時の血漿中濃度
表1 薬物動態パラメータ
投与量nCss注1)(ng/mL)T1/2(min)
2μg/kg/min、40分間5253.58±0.86
16.3 分布
ラットに14C-標識ドブタミン塩酸塩を1回静脈内投与したとき、心臓、副腎、肝臓、腎臓に高濃度に分布し、その他の組織は血液より高いか同程度の放射活性を示した。多くの組織からの消失は、投与後急速に、2時間以降はやや緩やかに減少した4)
16.4 代謝
尿中の主代謝産物は3-O-メチルドブタミンのグルクロン酸抱合体である。
モルモット摘出心筋において3-O-メチルドブタミンの心筋収縮力増強作用はドブタミンに比して著しく弱い5)(in vitro)
16.5 排泄
主要排泄部位
点滴静注後10時間までに3-O-メチルドブタミン及びそのグルクロン酸抱合体として約35%が尿中に排泄された3)
16.8 その他
血漿蛋白結合率
38.2±12.8%(mean±S.D.)6)

17. 臨床成績

17.1 有効性及び安全性に関する試験
17.1.1 国内一般臨床試験
急性循環不全患者における改善率は表2のとおりであり、安全性評価対象例88例中、臨床検査値の異常変動を含む副作用は3例(3%)に認められた7)
表2 臨床成績
投与量「改善」以上の症例数/有効性評価対象例数改善率(%)
通常用量(1〜5μg/kg/min)39/5078.0

18. 薬効薬理

18.1 作用機序
18.1.1 心筋のβ1受容体に直接作用し心収縮力を増強する。
18.1.2 軽度ではあるが、血管のβ2及びα1受容体に作用し末梢血管抵抗を軽減する。
18.2 薬理作用
18.2.1 冠動脈結紮等により心原性ショックを起こさせたイヌ及びその他の急性循環不全病態モデルにおいて、ドブタミン塩酸塩は心収縮力を増強し、心拍出量の増加、冠血流量の増加、左室拡張終期圧の低下等の循環動態の改善を来す。
18.2.2 イヌ等において他のカテコールアミン剤(ドパミン、イソプロテレノール、ノルアドレナリン)と同等の心筋収縮力増強作用をあらわす用量で、心拍数増加作用、催不整脈作用及び血管に対する作用はいずれも他のカテコールアミン剤よりも弱い。

19. 有効成分に関する理化学的知見

19.1. ドブタミン塩酸塩

一般的名称 ドブタミン塩酸塩
一般的名称(欧名) Dobutamine Hydrochloride
化学名 4-{2-[(1RS)-3-(4-Hydroxyphenyl)-1-methylpropylamino]ethyl}benzene-1,2-diol monohydrochloride
分子式 C18H23NO3・HCl
分子量 337.84
融点 188〜192℃
物理化学的性状 白色〜ごく薄い橙色の結晶性の粉末又は粒である。
メタノールに溶けやすく、水又はエタノール(95)にやや溶けにくく、ジエチルエーテルにほとんど溶けない。
水溶液(1→100)は旋光性を示さない。
KEGG DRUG D00632

20. 取扱い上の注意

20.1 脱酸素剤を入れて安定性を保持しているので、ブリスター包装は使用時まで開封しないこと。
20.2 以下の場合には使用しないこと。
・包装フィルム表面に減圧によるへこみがない場合
・ブリスター包装が破損している場合
・シリンジから薬液が漏れている場合
・性状その他薬液に異状が認められる場合
・シリンジに破損等の異状が認められる場合
・キャップが外れている場合

22. 包装

<ドブタミン持続静注50mgシリンジ「KKC」>
50mLシリンジ×5本[脱酸素剤入り]
<ドブタミン持続静注150mgシリンジ「KKC」>
50mLシリンジ×5本[脱酸素剤入り]
<ドブタミン持続静注300mgシリンジ「KKC」>
50mLシリンジ×5本[脱酸素剤入り]

23. 主要文献

  1. Goethals M,et al., Acta Cardiologica., 39 (5), 373-378, (1984) »PubMed
  2. Paulman PM,et al., JAMA., 264 (18), 2386-2387, (1990) »PubMed
  3. 山崎登自ほか, 共和薬品工業株式会社社内資料(持続静脈内注入時の薬動力学的検討), (1979)
  4. 菅野浩一ほか, 薬理と治療, 7 (2), 338-342, (1979)
  5. 上田元彦ほか, 共和薬品工業株式会社社内資料(摘出心筋標本に対する作用), (1977)
  6. 沼田弘明ほか, 実中研・前臨床研究報, 4 (1), 23-30, (1978)
  7. 早崎和也ほか, 基礎と臨床, 24 (13), 6999-7020, (1990)

24. 文献請求先及び問い合わせ先

文献請求先
協和キリン株式会社 くすり相談窓口
〒100-0004 東京都千代田区大手町1-9-2
電話:0120-850-150 受付時間 9:00〜17:30(土・日・祝日及び弊社休日を除く)
製品情報問い合わせ先
協和キリン株式会社 くすり相談窓口
〒100-0004 東京都千代田区大手町1-9-2
電話:0120-850-150 受付時間 9:00〜17:30(土・日・祝日及び弊社休日を除く)

26. 製造販売業者等

26.1 製造販売元
テルモ株式会社
東京都渋谷区幡ヶ谷2丁目44番1号
26.2 販売元
協和キリン株式会社
東京都千代田区大手町1-9-2

その他の説明

操作方法
<各部の名称>
プレフィルドシリンジ
<使用方法>
注意
適合するシリンジポンプを使用し、本シリンジが使用可能な設定であることを必ず確認すること。
1 押子をまっすぐ挿入し、押子接続用部品に軽く突き当てた後、押子を時計回りに回し、しっかりと接続すること(カチッという音がしたら、それ以上押子を回転させないこと)。[押子の接続が適切でない場合、“サイフォニング(自然落下による急速注入)”や“逆流”が起こるおそれがある。また、ガスケットが歪んだり、ガスケットと押子接続用部品の間に隙間があると、エアー混入、液漏れやシリンジポンプの残量警報が発報しないおそれがある。]
2 キャップを矢印の方向に回して外す。
3 シリンジポンプにセットする前に、十分注意して外筒内のエアーを抜き取る。シリンジ先端部に直接手が触れないよう注意し、注入ラインの接合部をしっかりと装着・ロックさせる。
4 シリンジポンプの取扱説明書に従い、スライダーのフックに確実にセットし、投与する。[正しくセットされていない場合、“サイフォニング”や“逆流”が起こるおそれがある。]

[ KEGG | KEGG DRUG | KEGG MEDICUS ] 2024/06/19 版