1.1 本剤は肺炎、敗血症等の感染症を含む緊急時に十分に対応できる医療施設において、本剤についての十分な知識と適応疾患の治療に十分な知識・経験をもつ医師のもとで、本剤による治療の有益性が危険性を上回ると判断される患者のみに使用すること。本剤は感染症のリスクを増大させる可能性があり、また結核の既往歴を有する患者では結核を活動化させる可能性がある。また、本剤との関連性は明らかではないが、悪性腫瘍の発現が報告されている。治療開始に先立ち、本剤が疾病を完治させる薬剤でないことも含め、本剤の有効性及び危険性を患者に十分説明し、患者が理解したことを確認した上で治療を開始すること。[
2.1、
2.2、
8.1、
8.2、
8.6、
9.1.1、
9.1.2、
11.1.1、
15.1.2参照]
1.2 重篤な感染症
ウイルス、細菌、真菌等による重篤な感染症が報告されているため、十分な観察を行うなど感染症の発症に注意し、本剤投与後に感染症の徴候又は症状があらわれた場合には、速やかに担当医に連絡するよう患者を指導すること。[
2.1、
8.1、
9.1.1、
11.1.1参照]
1.3 本剤の治療を開始する前に、ステロイド又は免疫調節剤等の使用を十分に勘案すること。[5.参照]
過去の治療において、他の薬物療法(ステロイド、アザチオプリン等)等による適切な治療を行っても、疾患に起因する明らかな臨床症状が残る場合に投与すること。[
1.3参照]
ミリキズマブ(遺伝子組換え)点滴静注製剤による導入療法終了4週後から、通常、成人にはミリキズマブ(遺伝子組換え)として1回200mgを4週間隔で皮下投与する。
7.1 本剤による維持療法中に効果が減弱し、ミリキズマブ(遺伝子組換え)点滴静注製剤3回投与により治療効果が得られた場合には、3回目投与の4週後から本剤の投与を再開すること(効果減弱時における用法及び用量は、ミリキズマブ(遺伝子組換え)点滴静注製剤の電子添文を参照すること)。また、本剤による維持療法中に再び効果が減弱した場合には、他の治療法への切替えを考慮すること。維持療法中の2回目以降の効果減弱時に、ミリキズマブ(遺伝子組換え)点滴静注製剤を投与した場合の安全性及び有効性を評価する臨床試験は実施していない。
7.2 ミリキズマブ(遺伝子組換え)200mgを投与するために、本剤2本を皮下に投与すること。
7.3 本剤と他の生物製剤又はヤヌスキナーゼ(JAK)阻害剤との併用について安全性及び有効性は確立していないので併用を避けること。
8.1 本剤は、感染のリスクを増大させる可能性がある。そのため、本剤の投与に際しては、十分な観察を行い、感染症の発症や増悪に注意すること。感染症の徴候又は症状があらわれた場合には、速やかに担当医に連絡するよう患者を指導すること。[
1.1、
1.2、
2.1、
9.1.1、
11.1.1参照]
8.2 本剤投与に先立って結核に関する十分な問診及び胸部X線検査に加え、インターフェロンγ遊離試験又はツベルクリン反応検査を行い、適宜胸部CT検査等を行うことにより、結核感染の有無を確認すること。また、本剤投与中も、胸部X線検査等の適切な検査を定期的に行うなど結核の発現には十分に注意し、結核を疑う症状(持続する咳、体重減少、発熱等)が発現した場合には速やかに担当医に連絡するよう患者に指導すること。なお、結核の活動性が確認された場合は結核の治療を優先し、本剤を投与しないこと。[
1.1、
2.2、
9.1.2参照]
8.3 生ワクチン接種による感染症発現のリスクを否定できないため、本剤投与中は生ワクチン接種を行わないこと。
8.4 他の生物製剤又はJAK阻害剤から変更する場合は感染症の徴候について患者の状態を十分に観察すること。
8.5 本剤投与中にアミノトランスフェラーゼ(ALT、AST)上昇が認められているため、定期的に肝機能検査を行うなど、患者の状態を十分に観察すること。本剤投与中にALT上昇又はAST上昇が認められ、本剤に関連する肝障害が疑われる場合は、本剤の投与を中止すること。
8.6 臨床試験において皮膚及び皮膚以外の悪性腫瘍の発現が報告されている。本剤との因果関係は明確ではないが、悪性腫瘍の発現には注意すること。[
1.1、
15.1.2参照]
8.7 本剤の自己投与にあたっては、以下の点に留意すること。
・本剤の投与開始にあたっては、医療施設において、必ず医師によるか、医師の直接の監督のもとで投与を行うこと。
・自己投与の適用については、その妥当性を慎重に検討し、十分な教育訓練を実施したのち、本剤投与による危険性と対処法について患者が理解し、患者自ら確実に投与できることを確認した上で、医師の管理指導のもとで実施すること。
・自己投与適用後、感染症等本剤による副作用が疑われる場合や自己投与の継続が困難な状況となる可能性がある場合には、直ちに自己投与を中止させ、医師の管理下で慎重に観察するなど適切な処置を行うこと。[
11.参照]
・自己投与を適用する場合は、使用済みのオートインジェクターあるいはシリンジを再使用しないように患者に注意を促し、安全な廃棄方法について指導を徹底すること。
9.1 合併症・既往歴等のある患者
9.1.1 感染症(重篤な感染症を除く)の患者又は感染症が疑われる患者
9.1.2 結核の既往歴を有する患者又は結核感染が疑われる患者
(1)結核の既往歴を有する患者では、結核を活動化させるおそれがある。
(2)結核の既往歴を有する場合及び結核感染が疑われる場合には、結核の診療経験がある医師に相談すること。以下のいずれかの患者には、原則として抗結核薬を投与した上で、本剤を投与すること。
・胸部画像検査で陳旧性結核に合致するか推定される陰影を有する患者
・結核の治療歴(肺外結核を含む)を有する患者
・インターフェロンγ遊離試験やツベルクリン反応検査等の検査により、既感染が強く疑われる患者
・結核患者との濃厚接触歴を有する患者
9.5 妊婦
妊婦又は妊娠している可能性のある女性には、治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与すること。妊娠サルを用いた発生毒性試験において、本剤の胎児への移行が報告されているが、胎児・出生児に毒性及び催奇形性は認められなかった
1)。
9.6 授乳婦
治療上の有益性及び母乳栄養の有益性を考慮し、授乳の継続又は中止を検討すること。本剤のヒトの乳汁への移行や授乳された乳児の血液中への移行の有無は不明である。
9.7 小児等
14.1 薬剤投与前の注意
14.1.1 投与30分前に冷蔵庫から取り出し、直射日光を避け、室温に戻しておくこと。
14.1.2 投与前に異物や変色が認められないことを目視により確認すること。濁りや異物が認められる場合は使用しないこと。
14.2 薬剤投与時の注意
投与時は以下の点を注意すること。
・注射部位は、腹部、大腿部又は上腕部とする。同一箇所へ繰り返し注射を行わないこと。また、皮膚が敏感な部位、傷、発赤、硬結がある部位には注射しないこと。
・投与予定日に投与できなかった場合は、可能な限り速やかに投与し、以降はその投与日を起点として4週間隔で投与すること。
15.1 臨床使用に基づく情報
15.1.1 ミリキズマブを12ヵ月間投与された潰瘍性大腸炎患者のうち、23.3%(88/378例)でミリキズマブに対する抗体が産生され、そのうち93.2%(82/88例)は中和抗体であった。日本人患者では、53.2%(25/47例)でミリキズマブに対する抗体が産生され、そのうち92.0%(23/25例)は中和抗体であった。抗ミリキズマブ抗体価の上昇に伴い、治療効果が減弱する傾向が認められた。抗ミリキズマブ抗体の発現状況と過敏症又は注射関連の有害事象との間に明確な関連は認められなかった。抗ミリキズマブ抗体が陽性となった患者では、血清中ミリキズマブ濃度が低下し、治療効果が減弱する可能性がある。
15.1.2 潰瘍性大腸炎患者を対象とした国際共同臨床試験(第II相及び第III相試験)の併合解析の結果(例数:1442例、総曝露期間:2250.9人年)、本剤投与群の悪性腫瘍の発現率は0.7/100人年(発現割合:1.1%、16/1442例)であった。本剤投与群の悪性腫瘍の発現率は、潰瘍性大腸炎患者で報告されている悪性腫瘍の発現率(0.33〜1.34/100人年)の範囲内であった
2)3)。本剤投与群の非黒色腫皮膚癌の発現率は0.2/100人年(発現割合:0.3%、4/1442例)であった。本剤投与群の非黒色腫皮膚癌の発現率は、潰瘍性大腸炎患者で報告されている非黒色腫皮膚癌の発現率(0.28〜0.33/100人年)と同程度であった
3)4)。[
1.1、
8.6参照]
16.1 血中濃度
16.1.1 単回投与
日本人及び外国人健康成人(各3例)に本剤200mgを単回皮下投与したとき、血清中ミリキズマブ濃度は投与3日後に最高濃度に達した後、約11日の消失半減期で低下した。AUC
0-∞及びCmaxの幾何平均値(CV%)は、それぞれ210μg・day/mL(29%)及び11.8μg/mL(39%)であった
5)。本剤の薬物動態は線形であり、本剤120〜250mg
注)を潰瘍性大腸炎患者又は健康成人に皮下投与したときの曝露量は用量に比例して増加した
6)。
図1)健康成人に本剤200mgを単回皮下投与したときの血清中ミリキズマブ濃度推移(平均値±SD、6例:日本人及び外国人各3例)
注)ミリキズマブの承認された用法及び用量は点滴静注製剤300mgを4週ごとに静脈内投与後、本剤200mgを4週ごとに皮下投与である。
16.1.2 反復投与
母集団薬物動態解析より、日本人及び外国人潰瘍性大腸炎患者(121例及び1008例)に、本剤を用法及び用量に従って投与したとき、血清中ミリキズマブ濃度は皮下投与開始後8週目までに定常状態に達した。本剤を4週ごとに皮下投与したとき、顕著な蓄積は認められなかった。日本人潰瘍性大腸炎患者(121例)におけるミリキズマブのAUC
τ,ss及びCmax,ssの幾何平均値(CV%)はそれぞれ205μg・day/mL(43%)及び12.4μg/mL(36%)と推定された
6)。
16.2 吸収
ミリキズマブは皮下投与後2〜3日で最高濃度に達した。母集団薬物動態解析より、絶対的バイオアベイラビリティは約44%と推定された。皮下投与部位の違いによる本剤の吸収への顕著な影響は認められなかった
6)。
16.3 分布
母集団薬物動態解析より、ミリキズマブを投与したときの分布容積は4.83Lと推定された
6)。
16.4 代謝
ミリキズマブは、ヒト化IgG4モノクローナル抗体であることから、内因性免疫グロブリンと同様に異化経路により低分子ペプチド及びアミノ酸に代謝されると推察される。
16.5 排泄
母集団薬物動態解析より、全身クリアランスは0.0229L/hrであり、消失半減期は約9.3日と推定された。クリアランスは用量によらず一定であった
6)。
17.1 有効性及び安全性に関する試験
17.1.1 国際共同第III相試験(AMBG試験:維持療法)
中等症から重症の活動性潰瘍性大腸炎患者を対象としたミリキズマブ点滴静注製剤の寛解導入試験を終了した患者を対象とした並行群間比較試験を実施した。寛解導入試験でミリキズマブの投与を受けて臨床的改善を達成した被験者を無作為に割り付け、本剤200mg又はプラセボを4週間隔で皮下投与した。mITT解析対象集団544例(日本人72例を含む)において、40週(寛解導入試験での投与期間を含めると52週)時点で臨床的寛解
注1)が得られた被験者の割合は表1)のとおりであった
7)。
注1)排便回数サブスコア0又は1かつ寛解導入試験のベースラインからの1ポイント以上の低下、かつ直腸出血サブスコア0、かつ内視鏡所見サブスコア0又は1(脆弱性を除く)
表1)40週時点で臨床的寛解が認められた被験者の割合
| 臨床的寛解(%)注2) | プラセボとの差(95%信頼区間) p値 |
| 本剤200mg | プラセボ |
全体集団 | 182/365(49.9) | 45/179(25.1) | 23.2(15.2,31.2) <0.001注3)、注4) |
日本人集団 | 23/47(48.9) | 7/25(28.0) | 16.2(−6.8,39.2) |
各投与群における有害事象、重篤な有害事象、治験薬投与中止に至った有害事象の発現頻度は表2)のとおりであった。主な副作用は本剤群389例において、注射部位疼痛4.1%(16例)、注射部位反応2.6%(10例)、注射部位紅斑2.1%(8例)であった。
表2)有害事象の発現頻度
| 本剤200mg(N=389) | プラセボ(N=192) |
有害事象 | 64.5%(251例) | 68.8%(132例) |
重篤な有害事象 | 3.3%(13例) | 7.8%(15例) |
治験薬投与中止に至った有害事象 | 1.5%(6例) | 8.3%(16例) |
20.1 本剤は遮光保存する必要があるため、使用直前に外箱から取り出すこと。
20.2 凍結を避けること。凍結した場合は使用しないこと。
20.3 冷蔵庫から出した後は30℃を超えない場所で保存し、2週間以内に使用すること。
20.4 激しく振とうしないこと。
20.5 上記の保存条件を満たさない場合は廃棄すること。
医薬品リスク管理計画を策定の上、適切に実施すること。