悪性腫瘍のある患者[本剤が細胞増殖作用を有するため。]
○下記疾患における高血糖、高インスリン血症、黒色表皮腫、多毛の改善
○下記疾患における成長障害の改善
<効能共通>
5.1 本剤の適用にあたっては、以下の点を踏まえ、患者における本剤の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与すること。
・関連性は明らかではないが、国内外において、メカセルミンによる治療中又は治療終了後に良性腫瘍及び悪性腫瘍が発生したとの報告がある
1)。
・SD系ラットに本剤を53週間投与した動物実験において腺癌を含む乳腺腫瘍が発生したとの報告がある。
<インスリン受容体異常症>
5.2 急を要する場合以外は、あらかじめ糖尿病治療の基本である食事療法、運動療法を十分行ったうえで適用を考慮すること。
| 効能・効果 | 用法・用量 |
下記疾患における高血糖、高インスリン血症、黒色表皮腫、多毛の改善 インスリン受容体異常症A型、インスリン受容体異常症B型、脂肪萎縮性糖尿病、妖精症、ラブソン・メンデンホール症候群 | 通常、1回0.1〜0.4mg/kgを1日1〜2回食前皮下に注射する。1日1回投与のときは朝食前に、1日2回投与のときは朝食前と夕食前に投与する。 |
下記疾患における成長障害の改善 成長ホルモン抵抗性の成長ホルモン単独欠損症Type1A、ラロン症候群 | 通常、1回0.05〜0.2mg/kgを1日1〜2回食前皮下に注射する。1日1回投与のときは朝食前に、1日2回投与のときは朝食前と夕食前に投与する。 |
投与量は原則として低用量より開始し、症状及び検査所見に応じて投与量、投与回数を上記の範囲内で適宜増減する。注射に際しては、本剤1バイアルに添付の日本薬局方生理食塩液1mLを加えて溶解する。
本剤の血糖低下作用はほぼ用量依存的であるが、血漿蛋白結合に非線形性(血漿蛋白結合率が血中ソマトメジンC濃度に依存して変化する)が認められるため、本剤の適用にあたっては、以下の基準を目安に投与量、投与回数の適宜増減を行う。[
16.3参照]
<インスリン受容体異常症>
7.1 治療開始に先立ち、症例ごとに本剤の低用量(0.1mg/kg)から順次適当量を朝食前に単回皮下投与し、投与後の血糖値、血中インスリン値、血中ソマトメジンC濃度等の検査値の推移及び随伴症状の観察に基づき、治療用量、1日投与回数を設定する。治療投与への移行後は、それらの項目及び臨床症状(成長促進作用から考えられる臨床所見を含む)の定期的観察を行い、投与量、投与回数を適宜増減する。
<成長ホルモン抵抗性の成長ホルモン単独欠損症Type1A、ラロン症候群>
7.2 治療開始に先立ち、症例ごとに本剤の低用量(0.05mg/kg)から順次適当量を朝食前に単回皮下投与し、投与2〜4時間後の血中ソマトメジンC濃度が同年代の生理的レベルの上限を著しく越えず、また随伴症状を認めない投与量を治療用量とする。1日投与回数は、単回投与後の血中ソマトメジンC濃度の持続時間から設定する。治療投与への移行後は、血中ソマトメジンC濃度及び血糖値を含む各種臨床所見の定期的観察を行い、投与量、投与回数を適宜増減する。
8.1 過敏症等の反応を予測するため、使用に際しては十分な問診を行うとともに、あらかじめ本剤によるプリック試験を行うことが望ましい。
8.2 低血糖を起こすことがあるので、注意すること。また、低血糖に関する注意について、患者及びその家族に十分徹底させ、患者自らも対処できるように十分指導すること。
8.3 低血糖があらわれることがあるので、高所作業、自動車の運転等、危険を伴う機械を操作する際には注意させること。
8.4 連続投与した場合、本剤に対する抗体が生じることがある。抗体の産生により効果の減弱がみられる場合には、投与を中止すること。
8.5 糖尿病性網膜症の発症・悪化があらわれることがあるので、定期的に検査を行うなど観察を十分に行うこと。[
11.2参照]
9.1 合併症・既往歴等のある患者
9.1.1 低血糖を起こすおそれのある以下の患者又は状態
・下垂体機能不全又は副腎機能不全
・下痢、嘔吐等の胃腸障害
・飢餓状態、不規則な食事摂取
・激しい筋肉運動
・過度のアルコール摂取者
・高齢者
9.2 腎機能障害患者
9.3 肝機能障害患者
9.5 妊婦
妊婦又は妊娠している可能性のある女性には、治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与すること。
9.6 授乳婦
治療上の有益性及び母乳栄養の有益性を考慮し、授乳の継続又は中止を検討すること。
9.7 小児等
低出生体重児又は新生児を対象とした有効性及び安全性を指標とした臨床試験は実施していない。
9.8 高齢者
用量に留意し、定期的に検査を行うなど慎重に投与すること。一般に生理機能が低下している。
14.1 薬剤調製時の注意
用時、添付の日本薬局方生理食塩液1mLを加えた後、静かに円を描くように回して溶解すること(激しく振盪しないこと)。溶解後はできるだけ速やかに使用すること。
14.2 薬剤投与時の注意
皮下注射にあたっては、注射部位を上腕、大腿、腹部、臀部等広範に求め、順序よく移動し、同一部位に短期間内に繰返し注射しないこと。
17.1 有効性及び安全性に関する試験
<インスリン受容体異常症>
17.1.1 国内臨床試験
インスリン受容体異常症12例を対象にした国内臨床試験において、血糖値、糖化蛋白及び血中インスリン値等の改善がみられ、臨床的にも、黒色表皮腫、多毛及び皮膚弾性欠如等の他覚所見の改善が認められた
8)9)10)。また、イギリスにおけるラブソン・メンデンホール症候群1例に対するソマゾン投与においても、血糖値、血中インスリン値の低下及びケトン体産生の抑制が認められている
11)12)。
<成長ホルモン抵抗性の成長ホルモン単独欠損症Type1A、ラロン症候群>
17.1.2 国内臨床試験
成長ホルモン抵抗性の成長ホルモン単独欠損症Type1A、ラロン症候群3例を対象にした国内臨床試験において、成長ホルモン単独欠損症Type1Aの1例では、成長ホルモンによる治療時の成長率が6.4cm/年であったのが、ソマゾン治療後8.2cm/年となり、ラロン症候群の1例では治療前の成長率3.2cm/年が治療後5.4cm/年といずれも改善が認められた
13)。また、イスラエルにおけるラロン症候群5例に対するソマゾン投与においても、治療前2.8〜5.8cm/年であった成長率が治療後8.8〜13.6cm/年となり、治療前に比べて1.5〜4.9倍(平均3.0倍)の改善が認められている
14)。
17.1.3 抗体産生
国内臨床試験の結果、14例中8例において抗メカセルミン抗体(抗体価:×1〜×10)がみられた。一方、大腸菌由来蛋白質(ECP)に対する抗体は検出されなかった
8)10)13)。
18.1 作用機序
本剤はインスリン様作用と成長促進作用を有する生体内蛋白であるIGF-1(ソマトメジンC)と同一蛋白であり、生体内において以下に示すような薬理作用を示す。
18.2 グルコース輸送促進作用及び血糖低下作用
18.2.1 ラットの肝、脂肪及び筋肉細胞で、細胞内へのグルコース輸送を促進し
15)16)17)、正常及び糖尿病ラットの血糖を低下させる
18)19)。
18.2.2 インスリンに対して抵抗性を示すインスリン受容体異常症患者の培養皮膚線維芽細胞においても、正常なグルコース輸送促進作用を示す
20)。
18.3 成長促進作用
18.3.1 ヒト軟骨細胞及びウサギ肋軟骨細胞のDNA及びプロテオグリカンの合成を促進し、マウス骨芽細胞様株化細胞のコラーゲン合成及びアルカリフォスファターゼ活性を亢進させる
21)22)23)。
18.3.2 下垂体摘除ラットにおいて体重及び骨長増加等の成長促進作用を示す
24)。
18.4 その他
遺伝性肥満ob/obマウスにおいて、成長ホルモンでみられるような耐糖能の低下を示さず、むしろ耐糖能を改善させる
25)。