2.1 重篤な低血圧、又は心原性ショックのある患者[本剤は降圧作用を有するため、その病態を悪化させる可能性がある。][
9.1.1参照]
2.2 右室梗塞のある患者[一般的に、右室梗塞のある患者に対して血管拡張薬や利尿薬を用いると、静脈還流が減少し、低心拍出状態を増悪させるといわれている。]
2.3 脱水症状の患者[本剤は利尿作用を有するので、循環血漿量の減少している患者に投与した場合、その病態を更に悪化させる可能性がある。][
9.1.3参照]
本剤は日本薬局方注射用水5mLに溶解し、必要に応じて日本薬局方生理食塩液又は5%ブドウ糖注射液で希釈し、カルペリチドとして1分間あたり0.1μg/kgを持続静脈内投与する。なお、投与量は血行動態をモニターしながら適宜調節するが、患者の病態に応じて1分間あたり0.2μg/kgまで増量できる。
8.1 本剤投与中に過度の血圧低下、徐脈等がみられた場合には、過量投与の可能性がある。[
11.1.1参照]
8.2 本剤の投与は、血圧、心拍数、尿量、電解質又は可能な限り肺動脈楔入圧、右房圧、心拍出量等の患者の状態を十分監視しながら行うこと。
8.3 本剤の投与開始後60分経過しても血行動態、臨床症状に改善の傾向がみられない場合には、他の治療方法を施すこと。
8.4 本剤の投与により臨床症状が改善し、患者の状態が安定した場合(急性期の状態を脱した場合)には、他の治療方法に変更すること。
8.5 本剤とPDE5阻害薬(シルデナフィルクエン酸塩等)との併用により降圧作用が増強し、過度の血圧低下を来すおそれがあるので、本剤投与前にPDE5阻害薬を服用していないことを確認すること。[
10.2参照]
9.1 合併症・既往歴等のある患者
9.1.1 低血圧の患者(重篤な低血圧の患者を除く)
過剰の前負荷軽減、利尿効果が強く発現し、過度の血圧低下が起こる可能性が高い。[
2.1参照]
9.1.2 右房圧が正常域にある患者
例えば5mmHg以下の患者においては、過剰の前負荷軽減、利尿効果が強く発現し、過度の血圧低下が起こる可能性が高い。
9.1.3 脱水傾向にある患者(脱水症状の患者を除く)
過剰の前負荷軽減、利尿効果が強く発現し、過度の血圧低下が起こる可能性が高い。[
2.3参照]
9.1.4 ネフローゼ症候群の患者
本邦で実施された臨床試験において尿蛋白が増加した例が認められた。
9.1.5 ヘマトクリット値が著しく高い患者
ヘマトクリット値が上昇した例が報告されている
1)。
9.2 腎機能障害患者
9.2.1 重篤な腎機能障害を有する患者
重篤な腎機能障害を有する患者は主要な臨床試験では除外されている。なお、末期腎不全患者では、血漿中濃度が健康人の2倍程度に上昇し、血漿中からの消失半減期はほぼ同様の値を示したという報告がある
2)。
9.3 肝機能障害患者
9.3.1 重篤な肝機能障害を有する患者
重篤な肝機能障害を有する患者は主要な臨床試験では除外されている。
9.5 妊婦
妊婦又は妊娠している可能性のある女性には、治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与すること。ラット及びウサギ胎児の器官形成期投与試験(Seg.II)において、カルペリチド10mg/kg/日を静脈内投与したとき、ラットで胎児体重及び胎盤重量の低下がみられたが、ウサギでは影響は認められなかった。また、ラット及びウサギのいずれにおいても催奇形性は認められなかった
3)4)。
9.6 授乳婦
治療上の有益性及び母乳栄養の有益性を考慮し、授乳の継続又は中止を検討すること。動物実験(ラット)で乳汁中に移行することが報告されている。
9.7 小児等
9.8 高齢者
血圧、心拍数、尿量、電解質又は肺動脈楔入圧、右房圧、心拍出量等の患者の状態を十分監視し、過量投与にならないよう投与量に注意すること。肝機能、腎機能が低下している場合が多く、副作用が発現しやすい。
11.1 重大な副作用
次の副作用があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止するなど適切な処置を行うこと。
11.1.1 血圧低下(8.6%)、低血圧性ショック(0.2%)、徐脈(0.2%)
上記のような症状があらわれた場合は減量又は中止等、また、血圧等の回復が不十分な場合あるいは徐脈を伴う場合には、輸液、アトロピン硫酸塩水和物の静注等の適切な処置を行うこと。[
8.1、
13.2参照]
11.1.2 過剰利尿(脱水)に伴う電解質異常(1.8%)、心室性不整脈(心室頻拍(0.2%)、心室細動(0.1%)等)、赤血球増加(0.1%)、血小板増加(0.1%)
11.1.3 肝機能障害(頻度不明)
11.1.4 血小板減少(0.1%)
11.2 その他の副作用
次の副作用があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止するなど適切な処置を行うこと。
| 0.1〜5%未満 | 0.1%未満 | 頻度不明 |
循環器 | 不整脈(心房細動、上室性頻脈) | 顔のほてり | |
消化器 | | 嘔気、嘔吐 | |
精神神経系 | | めまい | |
血液 | 血小板減少、赤血球減少、白血球増加、白血球減少、白血球分画の異常、ヘマトクリット値・ヘモグロビン値の変動 | | |
肝臓 | AST上昇、ALT上昇、ALP上昇、γ-GTP上昇、LDH上昇、総ビリルビン上昇 | | |
腎臓 | BUN上昇、クレアチニン上昇 | 尿酸の上昇 | |
過敏症 | | 蕁麻疹 | 発疹、そう痒 |
その他 | 血清蛋白の低下、血清電解質の変動、尿蛋白の増加 | 胸部不快感、呼吸困難 | 注射部位静脈炎 |
13.1 症状
本剤投与中に過度の血圧低下、徐脈等がみられた場合には、過量投与の可能性がある。
14.1 薬剤調製時の注意
14.2 薬剤投与時の注意
アミノ酸輸液、亜硫酸塩(亜硫酸水素ナトリウム等)を含有する製剤、ヘパリンナトリウム製剤等と混合すると24時間までに外観変化・含量低下が認められるため、これらの製剤と混合せず別の静脈ラインから投与すること。
16.1 血中濃度
16.1.1 持続静脈内投与
急性心不全患者10例にカルペリチド0.1μg/kg/分の投与量で60分間持続静脈内投与したとき、血漿中カルペリチド濃度は投与後30分以内に定常状態に達したのち、投与終了とともに速やかに減衰した。その消失半減期はα相2.8分、β相25.3分であった
5)。
血漿中カルペリチド濃度の推移
16.1.2 急速静脈内投与
健康成人男性6例にカルペリチドを50μgの投与量で急速静脈内投与
注)したとき、α相の半減期は2.12分、分布容積は368mL/kg、全身クリアランスは91.4mL/min/kgであった
6)。
注)本剤の承認された用法及び用量は、0.1〜0.2μg/kg/分の投与量で持続静脈内投与である。
16.3 分布
ラットに
125I標識カルペリチド5μg/kgを静脈内投与したとき、臓器中の放射能濃度を比較したところ、腎臓、肝臓、肺、副腎、小腸においては血液と同レベルであり、その他の臓器においては血液より低く、大脳、小脳、精巣ではほとんど認められなかった
7)。
16.4 代謝
カルペリチドは臓器に広く分布し、特に腎臓には高濃度に分布している中性エンドペプチダーゼなどのペプチダーゼにより速やかに代謝される。
16.5 排泄
健康成人男性6例にカルペリチドを0.2μg/kg/分の投与量で60分間持続静脈内投与したとき、投与開始後4時間までに投与量のおよそ0.001%が尿中に認められた。
16.6 特定の背景を有する患者
16.6.1 腎機能障害患者
塩化水銀により誘発した腎障害ラットにおいて、カルペリチド0.1μg/kg/分の投与時の定常状態の血漿中濃度は、正常ラットに比べ約2倍の値を示した。このとき、血漿中からの消失半減期はほとんど変化せず、分布容積及び全身クリアランスの減少(それぞれ正常ラットの約1/2)が観察された
8)。
18.1 作用機序
カルペリチドはα型ヒト心房性ナトリウム利尿ポリペプチドの受容体に結合し、膜結合型グアニル酸シクラーゼを活性化させることにより細胞内のcGMPを増加させ、血管拡張作用、利尿作用等を発現する。
18.2 血管に対する作用
18.2.1 カルペリチドはラット動脈血管粗膜酵素画分において、濃度依存的に膜結合型グアニル酸シクラーゼを活性化させた
13)(
in vitro)。
18.2.2 カルペリチドはノルアドレナリン
13)又はフェニレフリン
14)で収縮させたイヌの各種摘出動・静脈血管条片を濃度依存的に弛緩させ、その作用は動・静脈ともに肺血管で強くみられた(
in vitro)。
18.3 腎臓に対する作用
カルペリチドはイヌにおいて腎血流量、糸球体濾過率を増加させることにより、尿量及び尿中ナトリウム排泄を増加させた
15)。
18.4 内分泌系に対する作用
18.4.1 カルペリチドはラット腎臓スライス標本においてイソプロテレノールによるレニンの分泌亢進を抑制する傾向がみられた
13)(
in vitro)。
18.4.2 カルペリチドはウシ副腎皮質球状層遊離細胞標本においてアンジオテンシンIIによるアルドステロンの分泌亢進を抑制した
13)(
in vitro)。
18.5 実験的心不全に対する作用
カルペリチドは冠状動脈結紮、容量負荷、プロプラノロール塩酸塩及びメトキサミン塩酸塩で作製した低拍出量型急性心不全モデルイヌにおいて、平均肺動脈圧及び全身血管抵抗を低下させ、心拍出量を増加させることにより、急性心不全時の血行動態を改善した
16)。