1.1 動脈内へ使用しないこと。切断の必要があるかもしれない重篤な壊死が起こることが外国の使用例で報告されている。
1.2 本剤投与により、肺塞栓症、深部静脈血栓症等の重篤な副作用が発現するおそれがあるので、症状等を注意深く観察し、発症が疑われた場合は適切な処置を行うこと。[
2.1、
8.1、
11.1.2参照]
1.3 本剤は下肢静脈瘤硬化療法に十分な知識及び経験のある医師が使用すること。
<ポリドカスクレロール0.5%注2mL>
一次性下肢静脈瘤(伏在静脈瘤の本幹を除く)の硬化退縮
<ポリドカスクレロール1%注2mL>
<ポリドカスクレロール3%注2mL>
ポリドカスクレロール0.5%注2mL
5.2 液状硬化療法について、直径8mmを超える一次性下肢静脈瘤に対する本剤の有効性及び安全性は確認されていない。
5.4 患者の選択にあたっては、下肢静脈瘤硬化療法の適応患者(一次性下肢静脈瘤患者)であることを確認し、医療上の必要性を十分に勘案した上で本剤投与の是非を判断すること。
ポリドカスクレロール1%注2mL
5.1 伏在静脈瘤本幹の治療を行う場合には、ポリドカスクレロール1%注2mL又はポリドカスクレロール3%注2mLを用いて、フォーム硬化療法にて行うこと。
5.2 液状硬化療法について、直径8mmを超える一次性下肢静脈瘤に対する本剤の有効性及び安全性は確認されていない。
5.3 フォーム硬化療法について、直径12mmを超える一次性下肢静脈瘤に対する本剤の有効性及び安全性は確認されていない。
5.4 患者の選択にあたっては、下肢静脈瘤硬化療法の適応患者(一次性下肢静脈瘤患者)であることを確認し、医療上の必要性を十分に勘案した上で本剤投与の是非を判断すること。
ポリドカスクレロール3%注2mL
5.1 伏在静脈瘤本幹の治療を行う場合には、ポリドカスクレロール1%注2mL又はポリドカスクレロール3%注2mLを用いて、フォーム硬化療法にて行うこと。
5.2 液状硬化療法について、直径8mmを超える一次性下肢静脈瘤に対する本剤の有効性及び安全性は確認されていない。
5.3 フォーム硬化療法について、直径12mmを超える一次性下肢静脈瘤に対する本剤の有効性及び安全性は確認されていない。
5.4 患者の選択にあたっては、下肢静脈瘤硬化療法の適応患者(一次性下肢静脈瘤患者)であることを確認し、医療上の必要性を十分に勘案した上で本剤投与の是非を判断すること。
<ポリドカスクレロール0.5%注2mL>
直径1mm未満の一次性下肢静脈瘤を対象に、1穿刺あたり0.1〜0.5mLを基準として静脈瘤内に1箇所又は2箇所以上投与する。なお、1回の総投与量はポリドカノールとして2mg/kg以下とする。
1回の処置で治療が終了しない場合、次回の投与は原則として1週間後とする。
<ポリドカスクレロール1%注2mL>
液状硬化療法で使用する場合
直径1mm以上3mm未満の一次性下肢静脈瘤を対象に、1穿刺あたり0.5〜1mLを基準として静脈瘤内に1箇所又は2箇所以上投与する。なお、1回の総投与量はポリドカノールとして2mg/kg以下とする。
1回の処置で治療が終了しない場合、次回の投与は原則として1週間後とする。
フォーム硬化療法で使用する場合
小型の一次性下肢静脈瘤を対象に、静脈瘤内に1箇所又は2箇所以上投与する。1穿刺あたりの最大投与量は、対象となる静脈瘤の大きさに応じてフォーム硬化剤として2〜6mLとする。なお、1回の総投与量はポリドカノールとして2mg/kg以下、かつ、フォーム硬化剤として10mL以下とする。
1回の処置で治療が終了しない場合、次回の投与は原則として1週間後とする。
<ポリドカスクレロール3%注2mL>
液状硬化療法で使用する場合
直径3mm以上8mm以下の一次性下肢静脈瘤を対象に、1穿刺あたり0.5〜1mLを基準として静脈瘤内に1箇所又は2箇所以上投与する。なお、1回の総投与量はポリドカノールとして2mg/kg以下とする。
1回の処置で治療が終了しない場合、次回の投与は原則として1週間後とする。
フォーム硬化療法で使用する場合
中型又は大型の一次性下肢静脈瘤を対象に、静脈瘤内に1箇所又は2箇所以上投与する。1穿刺あたりの最大投与量は、対象となる静脈瘤の大きさに応じてフォーム硬化剤として4〜6mLとする。なお、1回の総投与量はポリドカノールとして2mg/kg以下、かつ、フォーム硬化剤として10mL以下とする。
1回の処置で治療が終了しない場合、次回の投与は原則として1週間後とする。
8.1 ショック、深部静脈血栓、肺塞栓等の重篤な症状を起こすことがあるので、下肢静脈瘤硬化療法施行に際しては、十分に問診を行うとともに、患者の全身状態を観察し、異常が生じた場合は直ちに投与を中止し、適切な処置を行うこと。
使用に際しては、救急処置がとれるようにすること。また肺塞栓が疑われる場合は、早急に精査の上、血栓溶解剤投与などの処置を行うこと。[
1.2、
2.1、
2.7、
2.8、
2.9、
9.1.1、
11.1.1、
11.1.2、
15.1参照]
8.2 脳血管障害(一過性脳虚血発作等)、視覚障害、片頭痛があらわれることがあり、外国においてフォーム硬化療法施行によりこれらの事象の発生頻度が高まることが報告されている。その機序の一つとして卵円孔開存症による動静脈(右左)シャントを介した原因物質の体循環への流入に起因する奇異性塞栓症が関与している可能性が報告されているので、重症の脳卒中、肺高血圧症、前兆のある片頭痛の既往のある患者においてフォーム硬化療法を施行する場合には、施行前に卵円孔開存症の有無等を確認すること。また、患者の全身状態を観察し、異常が生じた場合は直ちに投与を中止する等の適切な処置を行うこと。[
2.13、
9.1.3、
9.1.4、
11.1.3参照]
9.1 合併症・既往歴等のある患者
<用法共通>
9.1.1 心疾患のある患者
9.1.2 発熱のある患者
<フォーム硬化療法で使用する場合>
9.1.3 卵円孔開存症のある患者(ただし、卵円孔開存症を介した奇異性塞栓症による脳卒中、一過性脳虚血発作等の疾患のある患者及びその既往のある患者を除く)
9.1.4 過去に本剤による下肢静脈瘤硬化療法において視覚症状、精神症状又は神経症状を起こしたことのある患者。
9.2 腎機能障害患者
9.3 肝機能障害患者
9.5 妊婦
妊婦又は妊娠している可能性のある女性には投与しないこと。動物実験(ウサギ)において、器官形成期の投与により胚胎児死亡率の増加及び胎児体重の低下が報告されている。[
2.11参照]
9.6 授乳婦
治療上の有益性及び母乳栄養の有益性を考慮し、授乳の継続又は中止を検討すること。動物実験(ラット)において、乳汁中への移行が報告されている。
9.7 小児等
9.8 高齢者
用量に注意すること。一般に生理機能が低下している。
11.1 重大な副作用
次の副作用があらわれることがあるので、観察を十分に行い異常が認められた場合には投与を中止するなど適切な処置を行うこと。
11.1.1 アナフィラキシー(頻度不明)
外国においてアナフィラキシーショックにより致死的な転帰をたどることが報告されているので、喘息発作、血圧低下、意識消失、全身性蕁麻疹、血管浮腫(眼瞼浮腫等)、呼吸困難等があらわれることがある。[
2.8、
2.9、
2.10、
8.1、
9.1.1、
15.1参照]
11.1.2 血栓塞栓症(頻度不明)
肺塞栓症、深部静脈血栓症、血栓性静脈炎等の血栓塞栓症があらわれることがあるので、投与後の観察を十分に行い、呼吸困難、息切れ、胸部不快感、下肢の疼痛・浮腫等の異常が認められた場合には早急に精査の上、血栓溶解剤投与などの適切な処置を行い、次回の投与を中止すること。[
1.2、
2.1、
8.1参照]
11.1.4 心停止、循環虚脱(いずれも頻度不明)
外国において心停止により致死的な転帰をたどること及び循環虚脱が報告されているので、息切れ、動悸、心電図異常等が認められた場合には投与を中止し、適切な処置を行うこと。[
2.7、
9.1.1参照]
11.1.5 肺水腫(頻度不明)
肺水腫があらわれることがあるので、投与後の観察を十分に行い、異常が認められた場合には適切な処置を行い、次回の投与を中止すること。
11.1.6 錯乱(頻度不明)
錯乱があらわれることがあるので、投与後の観察を十分に行い、異常が認められた場合には適切な処置を行い、次回の投与を中止すること。
11.1.7 局所組織障害(壊死、潰瘍、瘤内血栓、色素沈着)(頻度不明)
局所組織障害(壊死、潰瘍)があらわれることがあるので、投与後の局所の観察を十分に行い、異常が認められた場合には次回の投与を中止し、適切な処置を行うこと。承認時までの臨床試験では、瘤内血栓の発現率は高濃度ほど高く0.5%製剤で10.2%、1%製剤で37.5%、3%製剤で56.1%、色素沈着は0.5%製剤で16.9%、1%製剤で34.7%、3%製剤で36.6%であった。[
2.12、
7.2参照]
発現頻度は、承認時までの臨床試験、使用成績調査及び製造販売後臨床試験の結果を合わせて算出した。
11.2 その他の副作用
次の副作用があらわれることがあるので、観察を十分に行い異常が認められた場合には投与を中止するなど適切な処置を行うこと。
| | 5%以上 | 0.1〜5%未満 | 0.1%未満 | 頻度不明 |
| 皮膚 | 瘤内血栓、色素沈着 | 水疱、皮下出血、異常感覚、掻痒、浮腫、発赤、静脈炎、皮膚炎、びらん、疼痛、圧痛、湿疹、アレルギー性皮膚反応 | 痂皮、血腫 | |
| 血液 | | 白血球減少 | ヘモグロビン低下、プロトロンビン時間短縮 | |
| 肝臓 | | 中性脂肪上昇、LDH上昇、γ-GTP上昇 | γ-GTP低下、AL-P低下、総コレステロール上昇・低下 | |
| 腎臓 | | | 尿蛋白 | |
| その他 | | CRP上昇、CK上昇、めまい | 悪心、嘔気、多毛症、発熱、ほてり | 頭痛、片頭痛、錯感覚、胸痛、視覚障害、味覚異常、血圧低下 |
14.1 薬剤投与時の注意
本剤は、いずれのアンプルも1回使い切りの製剤であり、未使用の残液は廃棄すること。
15.1 臨床使用に基づく情報
15.2 非臨床試験に基づく情報
動物実験(ラット、イヌ)で溶血に起因すると考えられる血液学的検査異常が報告されている。
18.1 作用機序
本剤の主成分ポリドカノールは分子内に疎水性部分(ドデシル基)と親水性部分(ポリオキシエチレン基)をもつ非イオン性の界面活性剤である。本剤はポリドカノールが有する界面活性作用により細胞膜を障害することで血管内皮細胞を障害すると考えられる
6)。下肢静脈瘤硬化療法において本剤は、血管内皮細胞を障害することにより内皮皮下組織の露出を起こし、圧迫により過剰な血栓形成を抑制しながら障害された血管を線維化することで、静脈瘤を退縮させるものと考えられる。
18.2 血管内皮細胞障害作用
18.2.1 ウサギ耳介静脈に対する作用(in vivo)
静脈内投与後の圧迫処置なしでは、0.5%ポリドカノールで血栓形成とそれに続く器質化(血栓が肉芽組織で置き換えられていく)がみられたが30日後には再疎通した。1%ポリドカノールでは投与後60日後まで投与血管の消失が認められたが、潰瘍の形成がみられた
7)8)。
投与後の圧迫処置により血栓の形成は抑制された
9)。
18.2.2 イヌ足皮下静脈に対する作用(in situ)
1%ポリドカノールをヒト血液で希釈した各種濃度のポリドカノールを30秒間暴露させたところ、0.9〜1%のポリドカノール濃度で血管内皮細胞障害及び血栓形成がみられた
10)。
18.2.3 培養血管内皮細胞に対する作用(in vitro)
ウシ肺動脈内皮細胞由来株細胞
11)及びヒト臍帯静脈内皮細胞
6)に対して濃度依存的な細胞障害作用がみられた。血清による希釈により細胞障害作用は減弱された。
本剤は「ワンポイントカットアンプル」を使用しているので、ヤスリを用いず、アンプル玉部のマークの反対方向に折り取ること。
[1]ポイントマークが真正面になるようアンプル胴部を持つ。
[2]次に玉部のポイントマーク真上に親指を置いて人差し指を添え、頭部をポイントマークと反対方向に折る。このときカット部分で手指を傷つけないよう十分注意すること。
参考:フォーム硬化剤の調製方法(ポリドカスクレロール1%注2mL、ポリドカスクレロール3%注2mL)
フォーム硬化剤は、本剤と空気又は二酸化炭素を混和し泡状に調製する。調製方法の一例は以下のとおりである。
1)ディスポーザブルシリンジ2本、滅菌済み三方活栓1個、滅菌済みシリンジフィルター(孔径0.2μm)1個を準備する。
なお、調製時には、2本のシリンジを三方活栓で連結して混和操作を行うため、シリンジはルアーロック式シリンジの使用が望ましい。
2)必要量の本剤をシリンジに吸引する。
3)無菌的に調製するため、必要量の空気又は二酸化炭素(本剤の4〜5倍容量)を、滅菌済みシリンジフィルター(孔径0.2μm)を通して、もう1本のシリンジに吸引する。
4)それぞれのシリンジを流路が直角になるように滅菌済み三方活栓にしっかり接続する。
ルアーロック式シリンジを使用する際は、シリンジのオスコネクタ及びメスコネクタが三方活栓としっかりと接続していることを確認する。
5)プランジャーを交互に押して本剤と空気又は二酸化炭素を混和する。プランジャーの往復運動は10秒以内に20回行う。
6)シリンジの内容物の性状を肉眼で観察し、次の条件に適合することを確認した後使用する。
・肉眼で観察できる粒子径の大きな泡を認めないこと
・本剤又は気体の分離を認めないこと
なお、粒子径の大きな泡等を認めた場合には、プランジャーの往復運動を数回繰り返した後、上記の条件に適合することを確認し使用する。