2.1 本剤の成分又は他のビスホスホネート系薬剤に対し過敏症の既往歴のある患者
2.3 妊婦又は妊娠している可能性のある女性[
9.5参照]
本剤の適用にあたっては、日本骨代謝学会の診断基準等を参考に、骨粗鬆症との診断が確定している患者を対象とすること。
通常、成人にはイバンドロン酸として1mgを1カ月に1回、静脈内投与する。
7.1 本剤はできるだけ緩徐に静脈内投与すること。
7.2 本剤は月1回投与する薬剤である。本剤の投与が予定から遅れた場合は可能な限り速やかに投与を行い、以後、その投与を基点とし、1カ月間隔で投与すること。
8.1 低カルシウム血症や骨・ミネラル代謝障害がある場合には、本剤投与前にあらかじめ治療すること。[
2.2、
11.1.5参照]
8.2 本剤投与中は、必要に応じてカルシウム及びビタミンDを補給すること。また、本剤投与後は、一過性に血清カルシウム値が低下する可能性があるので、血清カルシウム値には注意すること。
8.3 ビスホスホネート系薬剤による治療を受けている患者において、顎骨壊死・顎骨骨髄炎があらわれることがある。報告された症例の多くが抜歯等の顎骨に対する侵襲的な歯科処置や局所感染に関連して発現している。リスク因子としては、悪性腫瘍、化学療法、血管新生阻害薬、コルチコステロイド治療、放射線療法、口腔の不衛生、歯科処置の既往等が知られている。
本剤の投与開始前は口腔内の管理状態を確認し、必要に応じて、患者に対し適切な歯科検査を受け、侵襲的な歯科処置をできる限り済ませておくよう指導すること。本剤投与中に侵襲的な歯科処置が必要になった場合には本剤の休薬等を考慮すること。
また、口腔内を清潔に保つこと、定期的な歯科検査を受けること、歯科受診時に本剤の使用を歯科医師に告知して侵襲的な歯科処置はできる限り避けることなどを患者に十分説明し、異常が認められた場合には、直ちに歯科・口腔外科を受診するように指導すること。[
11.1.2参照]
8.4 ビスホスホネート系薬剤を使用している患者において、外耳道骨壊死が発現したとの報告がある。これらの報告では、耳の感染や外傷に関連して発現した症例も認められることから、外耳炎、耳漏、耳痛等の症状が続く場合には、耳鼻咽喉科を受診するよう指導すること。[
11.1.3参照]
8.5 ビスホスホネート系薬剤を長期使用している患者において、非外傷性又は軽微な外力による大腿骨転子下、近位大腿骨骨幹部、近位尺骨骨幹部等の非定型骨折が発現したとの報告がある。これらの報告では、完全骨折が起こる数週間から数カ月前に大腿部、鼠径部、前腕部等において前駆痛が認められている報告もあることから、このような症状が認められた場合には、X線検査等を行い、適切な処置を行うこと。また、両側性の骨折が生じる可能性があることから、片側で非定型骨折が起きた場合には、反対側の部位の症状等を確認し、X線検査を行うなど、慎重に観察すること。X線検査時には骨皮質の肥厚等、特徴的な画像所見がみられており、そのような場合には適切な処置を行うこと。[
11.1.4参照]
9.2 腎機能障害患者
9.2.1 高度の腎障害のある患者
(2)国内の医療情報データベースを用いた疫学調査において、骨粗鬆症の治療にビスホスホネート系薬剤を使用した腎機能障害患者のうち、特に、高度な腎機能障害患者(eGFRが30mL/min/1.73m
2未満)で、腎機能が正常の患者と比較して低カルシウム血症(補正血清カルシウム値が8mg/dL未満)のリスクが増加したとの報告がある
1)。[
11.1.5参照]
9.4 生殖能を有する者
妊娠する可能性のある女性へは、治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与すること。ビスホスホネート系薬剤は骨基質に取り込まれた後に全身循環へ徐々に放出される。全身循環への放出量はビスホスホネート系薬剤の投与量・期間に相関する。ビスホスホネート系薬剤の中止から妊娠までの期間と危険性との関連は明らかではない。
9.5 妊婦
妊婦又は妊娠している可能性のある女性には投与しないこと。妊娠が認められた場合には、本剤の投与を中止すること。他のビスホスホネート系薬剤と同様、生殖試験(ラット)において、低カルシウム血症による分娩障害の結果と考えられる母動物の死亡等がみられている。[
2.3参照]
9.6 授乳婦
治療上の有益性及び母乳栄養の有益性を考慮し、授乳の継続又は中止を検討すること。母動物(ラット)へ投与した場合、乳汁中に移行することが示されている。
9.7 小児等
小児等を対象とした有効性及び安全性を指標とした臨床試験は実施していない。
11.1 重大な副作用
次の副作用があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止するなど適切な処置を行うこと。
11.1.1 アナフィラキシーショック、アナフィラキシー反応(頻度不明)
投与に際しては、適切な処置のとれる準備をしておくこと。なお、海外では死亡に至った例も報告されている。
11.1.2 顎骨壊死・顎骨骨髄炎(頻度不明)[
8.3参照]
11.1.3 外耳道骨壊死(頻度不明)[
8.4参照]
11.1.4 大腿骨転子下、近位大腿骨骨幹部、近位尺骨骨幹部等の非定型骨折(頻度不明)[
8.5参照]
11.1.5 低カルシウム血症(頻度不明)
痙攣、テタニー、しびれ、失見当識、QT延長等を伴う低カルシウム血症が認められることがある。[
2.2、
8.1、
9.2.1参照]
11.2 その他の副作用
次の副作用があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止するなど適切な処置を行うこと。
| 1〜5%未満 | 1%未満 | 頻度不明 |
消化器 | 胃炎 | 胃不快感、下痢、逆流性食道炎、便秘、食欲不振 | 悪心、嘔吐 |
精神神経系 | 頭痛 | 感覚異常、めまい | |
肝臓 | | 肝機能異常[AST上昇、ALT上昇、ALP上昇等] | |
皮膚 | | 発疹、蕁麻疹 | 多形紅斑、水疱性皮膚炎 |
眼 | | 結膜炎 | ぶどう膜炎、強膜炎、上強膜炎 |
筋・骨格系 | 背部痛、筋肉痛、関節痛、骨痛 | 関節炎、筋骨格硬直、四肢痛 | |
その他 | 倦怠感、注射部位反応(腫脹、疼痛、紅斑等)、インフルエンザ様症状注) | 疼痛、ほてり(熱感等)、高血圧、発熱、胸痛、尿検査異常(尿中血陽性等)、浮腫(末梢、顔面等)、上気道感染(鼻咽頭炎等)、貧血 | 喘息増悪 |
13.1 症状
低カルシウム血症、低リン酸血症、低マグネシウム血症が発現する可能性がある。
13.2 処置
必要に応じ、カルシウム、リン酸、マグネシウムを含有する製剤の静脈内投与を行う。
14.1 薬剤投与時の注意
14.1.1 本剤は静脈内注射にのみ使用すること。静脈内投与以外の経路から投与すると組織障害を起こすおそれがある。
14.1.2 カルシウム又はマグネシウムを含有する溶液と混合しないこと。カルシウム又はマグネシウムイオンと結合して錯体を形成することがある。
16.1 血中濃度
16.1.1 単回投与
健康成人男性にイバンドロン酸として0.125、0.25又は0.5mgを単回静脈内投与
注)したときの血清中未変化体濃度推移及び薬物動態パラメータは下記のとおりであり、血中濃度−時間曲線下面積(AUC
inf)は投与量に比例して増加し、血中半減期(t
1/2)、全身クリアランス(CL
tot)及び腎クリアランス(CL
r)は投与量に依存せずほぼ一定であった
4)。
健康成人男性に単回静脈内投与したときの血清中未変化体濃度推移(平均値,n=8)
健康成人男性に単回静脈内投与したときの薬物動態パラメータ(平均値±標準偏差,n=8)
投与量(mg) | AUCinf(ng・h/mL) | t1/2(h) | CLtot(mL/min) | CLr(mL/min) |
0.125 | 17.1±1.9 | 15.7±8.8 | 123±14 | 86.5±12.3 |
0.25 | 34.4±5.1 | 20.2±4.4 | 124±21 | 83.6±9.9 |
0.5 | 77.2±10.4 | 21.3±2.0 | 109±13 | 81.8±14.3 |
16.1.2 反復投与
閉経後骨減少女性にイバンドロン酸として0.25、0.5、1又は2mgを13週間隔で2回静脈内投与
注)したときの血清中未変化体濃度推移及び初回投与時の薬物動態パラメータは下記のとおりであった。血清中未変化体濃度推移は初回投与と2回目投与で同様であり、AUC
infは投与量に比例して増加し、t
1/2、CL
tot及びCL
rは投与量に依存せずほぼ一定であった
5)。
閉経後骨減少女性に反復静脈内投与したときの血清中未変化体濃度推移(平均値,n=10)
閉経後骨減少女性に反復静脈内投与したときの初回投与時の薬物動態パラメータ(平均値±標準偏差,n=10)
投与量(mg) | AUCinf(ng・h/mL) | t1/2(h) | CLtot(mL/min) | CLr(mL/min) |
0.25 | 74.4±9.8 | 18.7±1.7 | 56.8±6.9 | 34.3±4.6 |
0.5 | 136.8±16.3 | 18.5±1.7 | 61.7±7.1 | 34.8±6.8 |
1 | 239.9±22.7 | 18.5±0.9 | 70.1±7.3 | 43.9±7.4 |
2 | 540.7±95.9 | 18.9±2.0 | 63.3±10.7 | 41.9±9.8 |
16.3 分布
16.3.1 蛋白結合率
in vitro試験において、ヒト血清蛋白結合率は、イバンドロン酸濃度が5ng/mLのとき90%であった
6)。
16.4 代謝
16.4.1 in vitro試験において、イバンドロン酸ナトリウム水和物をヒト肝ミクロソーム中でインキュベートした場合、代謝物の生成は認められなかった
7)。
16.4.2 in vitro試験において、イバンドロン酸ナトリウム水和物はヒト肝ミクロソームの7種類のCYP酵素分子種(CYP1A2、CYP2A6、CYP2C9、CYP2C19、CYP2D6、CYP2E1及びCYP3A4)に対して阻害作用を示さなかった
8)。
16.5 排泄
閉経後骨減少女性にイバンドロン酸として0.25、0.5、1又は2mgを静脈内投与
注)したとき、72時間までの尿中未変化体排泄率は47.0〜64.6%であった
5)。
16.6 特定の背景を有する患者
16.6.1 腎障害時の薬物動態
クレアチニンクリアランス(CLcr)が90mL/minを超える健康成人、CLcrが40〜70mL/min及び30mL/min未満の腎障害患者にイバンドロン酸として0.5mgを静脈内投与
注)したときのAUCinf及びCmax(C
5min)は下記のとおりであり、腎機能の低下に伴った上昇を示し、CLrはCLcrと比例した
9)(外国人データ)。[
9.2.1参照]
健康成人及び腎障害患者に静脈内投与したときの薬物動態パラメータ(平均値±標準偏差)
CLcr(mL/min) | 例数 | AUCinf(ng・h/mL) | AUCinfの比a) | Cmax(C5min)(ng/mL) | Cmax(C5min)の比a) | CLr(mL/min) |
>90 (範囲92〜133) | 14 | 67.6±14.4 | 1 | 47.5±14.8 | 1 | 77.0±24.2 |
40〜70 (範囲42〜69) | 8 | 105±14.5 | 1.55 | 61.9±6.86 | 1.30 | 48.9±15.2 |
<30 (範囲13〜29) | 12 | 201±47.5 | 2.97 | 116±127 | 2.44 | 17.9±7.67 |
注)承認された用法・用量は、「通常、成人にはイバンドロン酸として1mgを1カ月に1回、静脈内投与する。」である。
18.1 作用機序
イバンドロン酸は、骨基質であるハイドロキシアパタイトに対する高い親和性を有しており
11)、投与後骨に分布する
12)。破骨細胞に取り込まれた後ファルネシルピロリン酸合成酵素を阻害し
13)、これにより破骨細胞の機能を抑制することで骨吸収抑制作用を示すと考えられる。
18.2 骨吸収抑制作用
ウサギ破骨細胞培養系を用いた
in vitro試験において、破骨細胞が象牙切片に形成する吸収窩を減少させる
14)。
18.3 骨粗鬆症モデル動物における作用
18.3.1 ラット卵巣摘除モデルにおいて、12カ月間連日皮下投与したとき、骨密度及び骨強度の低下を用量依存的に抑制した
15)。また、12カ月間間欠(25日に1回)皮下投与したときにも、骨密度及び骨強度の低下を抑制した
15)。
18.3.2 カニクイザル卵巣摘除モデルにおいて、16カ月間間欠(30日に1回)静脈内投与したとき、骨密度及び骨強度の低下を抑制し、骨密度と骨強度には正の相関が認められた。また、血清・尿中の骨代謝マーカー(血清骨型アルカリホスファターゼ、血清オステオカルシン、尿中I型コラーゲン架橋N−テロペプチド、尿中デオキシピリジノリン)の上昇を抑制した
16)17)。
18.4 骨石灰化に及ぼす影響
18.4.1 成長期ラットにおいて、7日間連日皮下投与したとき、イバンドロン酸として4780μg/kg(1000μgP/kg
注1):骨量増加作用を示す用量の約100倍)の用量まで、骨石灰化過程の障害は認められなかった
注2),18)。
18.4.2 イヌ卵巣・子宮摘除モデルにおいて、イバンドロン酸として100μg/kg(骨量減少抑制作用を示す用量の約100倍)の用量まで、類骨幅の増加や石灰化速度の低下は認められなかった
注3),19)。
18.4.3 カニクイザル卵巣摘除モデルにおいて、骨量減少抑制作用を示す30及び150μg/kg(イバンドロン酸としての用量:16カ月間間欠(30日に1回)静脈内投与)では、類骨幅の増加は認められなかった
16)。
注1)分子内に含まれるリン原子の重量をもとにした重量表示
注2)4780μg/kgの用量では、脛骨骨幹端の成長板直下に骨基質添加の抑制に基づくと考えられる低石灰化領域が認められた。
注3)投与前値との比較
18.5 骨折修復に及ぼす影響
骨髄除去及び骨欠損孔作製イヌ骨折モデルに、イバンドロン酸として1μg/kgの用量を36週間連日皮下投与したとき、骨髄除去大腿骨皮質骨における骨単位数及び脛骨骨欠損孔における仮骨形成に影響は認められなかった
20)。
苛酷試験(光)においてわずかに類縁物質の増加が認められたため、外箱開封後は光を避けて保存すること。