医療用医薬品 : ミドドリン塩酸塩

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医薬品情報


総称名 ミドドリン塩酸塩
一般名 ミドドリン塩酸塩
欧文一般名 Midodrine Hydrochloride
製剤名 ミドドリン塩酸塩錠
薬効分類名 低血圧治療剤
薬効分類番号 2160
ATCコード C01CA17
KEGG DRUG
D01307 ミドドリン塩酸塩
JAPIC 添付文書(PDF)
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添付文書情報2023年9月 改訂(第1版)


商品情報 3.組成・性状

販売名 欧文商標名 製造会社 YJコード 薬価 規制区分
ミドドリン塩酸塩錠2mg「サワイ」 (後発品) MIDODRINE HYDROCHLORIDE Tablets [SAWAI] 沢井製薬 2160002F1109 8.8円/錠 処方箋医薬品

2. 禁忌

次の患者には投与しないこと
2.1 甲状腺機能亢進症の患者[甲状腺機能亢進症の患者は、ノルアドレナリン等と類似の作用を持つ交感神経刺激薬により過度な反応を起こす可能性が知られている。本剤は、薬理学的にこれらの薬剤と同様な反応を起こすおそれがある。]
2.2 褐色細胞腫又はパラガングリオーマの患者[褐色細胞腫又はパラガングリオーマの患者は、カテコールアミンの過剰放出があり、本剤が病態を悪化させるおそれがある。]

4. 効能または効果

本態性低血圧、起立性低血圧

6. 用法及び用量

成人にはミドドリン塩酸塩として、通常1日4mgを2回に分けて経口投与する。なお、症状により適宜増減する。ただし、重症の場合は1日8mgまで増量できる。
小児にはミドドリン塩酸塩として、通常1日4mgを2回に分けて経口投与する。なお、症状により適宜増減するが、1日最高量は6mgとする。

8. 重要な基本的注意

外国において、神経原性起立性低血圧に対する二重盲検試験が実施された。臥位血圧が過度に上昇した症例が報告されているので注意すること。動悸、頭痛などの症状は臥位血圧の上昇による場合が考えられる。臥位血圧の上昇は本剤の減量、または頭部を高くして寝ることで調節できるが、臥位高血圧が続く場合には投与を中止すること。

9. 特定の背景を有する患者に関する注意

9.1 合併症・既往歴等のある患者
9.1.1 重篤な心臓障害のある患者
本剤は静脈還流量増加作用を介した心臓への作用を有しているため、静脈還流を治療上抑制している患者等に投与する場合、病態を悪化させるおそれがある。
9.1.2 重篤な血管障害のある患者
閉塞性動脈硬化症等の重篤な血管狭窄のある患者に投与する場合、病態を悪化させるおそれがある。
9.1.3 高血圧の患者
基礎疾患として高血圧がある起立性低血圧患者に使用する場合、過度の血圧上昇が起こるおそれがある。
9.1.4 前立腺肥大に伴う排尿困難のある患者
本剤が膀胱頸部のα受容体に作用するため、排尿困難を悪化させるおそれがある。
9.2 腎機能障害患者
9.2.1 重篤な腎機能障害のある患者
投与間隔をあけて使用すること。消失半減期の延長により血中濃度が持続する。
9.5 妊婦
妊婦又は妊娠している可能性のある女性には投与しないことが望ましい。ラットで胎児への移行、吸収胚の増加、胎児体重低値及び骨化遅延、ウサギで死胚胎児の増加及び骨化遅延が認められている。
9.6 授乳婦
治療上の有益性及び母乳栄養の有益性を考慮し、授乳の継続又は中止を検討すること。ラットで乳汁中へ移行することが報告されている。
9.8 高齢者
減量するなど注意すること。一般に生理機能が低下している。

11. 副作用

11.2 その他の副作用
次の副作用があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止するなど適切な処置を行うこと。
 0.1〜1%未満0.1%未満頻度不明
精神神経系 眠気
いらいら感
 
消化器悪心
腹痛
嘔吐
口内炎
腹部膨満感
便秘
下痢
循環器 高血圧
動悸
心室性期外収縮
 
中枢神経系頭痛めまい 
皮膚注) 発疹
立毛感
そう痒感
蕁麻疹
発赤
 
肝臓 肝機能障害
ALT上昇
AST上昇
Al-P上昇
 
その他 ほてり感
悪寒
倦怠感
頻尿
発汗亢進
肩こり
異常感覚
排尿困難

14. 適用上の注意

14.1 薬剤交付時の注意
PTP包装の薬剤はPTPシートから取り出して服用するよう指導すること。PTPシートの誤飲により、硬い鋭角部が食道粘膜へ刺入し、更には穿孔をおこして縦隔洞炎等の重篤な合併症を併発することがある。

16. 薬物動態

16.1 血中濃度
16.1.1 単回投与
健康成人12名にミドドリン塩酸塩として2mgを空腹時単回経口投与したときの血清中未変化体及び脱グリシン体(活性本体)の薬物動態パラメータの平均値は以下のとおりであった1)
 Cmax
(ng/mL)
Tmax
(hr)
T1/2
(hr)
AUC0-24
(ng・hr/mL)
ミドドリン塩酸塩
(未変化体)
2.81.11.05.2
脱グリシン体
(活性本体)
5.31.52.419.1
2mgを空腹時単回経口投与すると、血清中未変化体濃度は投与後1.1時間で最高に達し、その後は急激に低下して4時間以降はほとんど検出されなかった。
一方、活性本体の濃度は1.5時間で最高に達し、最高血清中濃度は未変化体濃度を大きく上回り、その後は半減期2.4時間で減衰した。
16.1.2 反復投与
健康成人6名にミドドリン塩酸塩として1回2mgを1日2回、1回4mgを1日2回で7日間反復経口投与時の血清中濃度は単回投与時と比較して差は認められず、蓄積性はないものと考えられた1)2)
16.1.3 生物学的同等性試験
ミドドリン塩酸塩錠2mg「サワイ」とメトリジン錠2mgを健康成人男子にそれぞれ1錠(ミドドリン塩酸塩として2mg)空腹時単回経口投与(クロスオーバー法)し、活性代謝物であるジメトキシフェニルアミノエタノール(DMAE)の血漿中濃度を測定した。得られた薬物動態パラメータ(AUC、Cmax)について統計解析を行った結果、両剤の生物学的同等性が確認された3)
各製剤1錠投与時の薬物動態パラメータ
 Cmax
(ng/mL)
Tmax
(hr)
T1/2
(hr)
AUC0-12hr
(ng・hr/mL)
ミドドリン塩酸塩錠2mg「サワイ」9.57±2.041.3±0.42.7±0.642.11±8.78
メトリジン錠2mg8.91±1.311.3±0.53.0±0.441.07±5.44
血漿中濃度ならびにAUC、Cmax等のパラメータは、被験者の選択、体液の採取回数・時間等の試験条件によって異なる可能性がある。
16.2 吸収
16.2.1 プロドラッグ化によるバイオアベイラビリティの改善
健康成人にミドドリン塩酸塩(2mg)と等モルの活性本体の塩酸塩(1.6mg)を単回経口投与し、活性本体のAUCを比較すると、AUCは直接活性本体の塩酸塩を投与した時よりミドドリン塩酸塩投与時の方が有意に高く、プロドラッグ化によるバイオアベイラビリティの改善が示された4)
16.2.2 食事の影響
健康成人にミドドリン塩酸塩として2mgを食後又は空腹時に単回経口投与したところ、未変化体及び活性本体の体内動態は食事による影響を受けなかった5)
16.3 分布
ヒト血清蛋白結合率は未変化体では24〜31%、活性本体では27〜28%であった(in vitro6)
16.4 代謝
健康成人にミドドリン塩酸塩として4mgを単回経口投与後1〜2時間の血清中代謝物は活性本体が67%、未変化体が28%であった。投与後8時間までの尿中代謝物は活性本体のO-脱メチル・酸化的脱アミノ体及びその抱合体が35%と最も多く、ついで活性本体が21%であった4)
16.5 排泄
16.5.1 尿中排泄
健康成人にミドドリン塩酸塩として2mgを空腹時単回経口投与すると、尿中排泄は投与後24時間までにほぼ終了した1)
また1回2mgを1日2回、1回4mgを1日2回での7日間反復経口投与時の尿中排泄率は単回投与時と比較して差は認められなかった1)2)
16.6 特定の背景を有する患者
16.6.1 小児における尿中排泄
起立性低血圧の小児患者にミドドリン塩酸塩として2mgを単回経口投与したところ、未変化体、活性本体の尿中排泄は成人とほぼ同様であった7)

18. 薬効薬理

18.1 作用機序
ミドドリン塩酸塩の血圧上昇作用(ラット、ネコ)、摘出血管平滑筋収縮作用(ウサギ胸部大動脈など)はα1遮断薬で抑制されるが、α2遮断薬ではほとんど抑制されず、またβ受容体刺激作用、β遮断作用はないことから、末梢血管収縮作用は、選択的α1受容体刺激作用に基づくものと考えられた8)9)10)
18.2 血圧に対する作用(ヒト)
18.2.1 本態性低血圧、起立性低血圧患者への1回2mg1日2回〜1回2mg1日3回の2〜4週間投与において、坐位、臥位、立位後1分の血圧を有意に上昇させた11)
18.2.2 本態性低血圧、起立性低血圧患者への1回2mgを1日2回の1週間投与において、起立時の血圧低下を有意に抑制した12)
18.2.3 健康成人男性への1回4mgを1日2回の1週間投与において、血圧に影響を及ぼさなかった2)
18.3 血圧に対する作用(動物)
18.3.1 血圧上昇作用
(1)イヌにおいて、骨格筋、消化管血管床の末梢血管を収縮させることにより総末梢血管抵抗を増大させて血圧を上昇させた8)13)14)。イヌにおいて、ミドドリン塩酸塩の血圧上昇作用は心臓作用によるものではないと考えられた9)
(2)イヌにおいて、経口投与における血圧上昇作用の発現は緩徐であり、作用時間は長かった8)
18.3.2 起立性低血圧モデルに対する作用
(1)ウサギにおいて、両側迷走神経、頸動脈洞神経、減圧神経を切断し、さらにhead-up 30°体軸変換させることで誘発した血圧の低下を抑制した15)
(2)イヌにおいて、ヘキサメトニウム投与後にhead-up 30°体軸変換させることで誘発した血圧、大脳組織血流量、心拍出量などの低下を抑制した16)
(3)サルにおいて、脱血負荷時の脳血流量の低下を抑制した14)

19. 有効成分に関する理化学的知見

19.1. ミドドリン塩酸塩

一般的名称 ミドドリン塩酸塩
一般的名称(欧名) Midodrine Hydrochloride
化学名 (±)-2-Amino-N-(2,5-dimethoxy-β-hydroxyphenethyl)acetamide hydrochloride
分子式 C12H18N2O4・HCl
分子量 290.74
融点 約200℃(分解)
物理化学的性状 白色の結晶性の粉末である。ギ酸に溶けやすく、水にやや溶けやすく、エタノール(95)に溶けにくく、アセトニトリルにほとんど溶けない。水溶液(1→25)は旋光性を示さない。
KEGG DRUG D01307

20. 取扱い上の注意

アルミ袋開封後は湿気を避けて保存すること。

22. 包装

PTP:100錠(10錠×10)
バラ:1,000錠

23. 主要文献

  1. 筒井末春, 基礎と臨床, 21 (2), 694-712, (1987)
  2. 永田勝太郎他, 薬理と治療, 15 (3), 1225-1238, (1987)
  3. 社内資料:生物学的同等性試験
  4. 筒井末春他, 基礎と臨床, 21 (4), 1795-1807, (1987)
  5. 諏訪俊男他, 基礎と臨床, 23 (8), 3155-3159, (1989)
  6. 諏訪俊男他, 薬物動態, 2 (1), 21-31, (1987) »DOI
  7. 阿部忠良他, 小児科臨床, 40 (4), 1013-1025, (1987)
  8. 土田勝晴他, 薬理と治療, 15 (1), 89-104, (1987)
  9. Pittner,H.et al., Arzneimittelforschung, 26 (12), 2145-2154, (1976) »PubMed
  10. 臼杵知香他, 応用薬理, 29 (6), 903-911, (1985)
  11. 岸本進他, 循環器科, 21 (5), 475-487, (1987)
  12. 田中信行他, 薬理と治療, 15 (3), 1297-1303, (1987)
  13. Tsuchida,K.et al., Arzneimittelforschung, 36 (12), 1745-1748, (1986) »PubMed
  14. 於本淳, 自律神経, 24 (2), 88-95, (1987) »DOI
  15. 福原武彦他, 慈恵医大誌, 102 (3), 649-660, (1987)
  16. Tsuchida,K.et al., Arzneimittelforschung, 36 (12), 1748-1751, (1986) »PubMed

24. 文献請求先及び問い合わせ先

文献請求先
沢井製薬株式会社 医薬品情報センター
〒532-0003 大阪市淀川区宮原5丁目2-30
電話:0120-381-999
FAX:06-7708-8966
製品情報問い合わせ先
沢井製薬株式会社 医薬品情報センター
〒532-0003 大阪市淀川区宮原5丁目2-30
電話:0120-381-999
FAX:06-7708-8966

26. 製造販売業者等

26.1 製造販売元
沢井製薬株式会社
大阪市淀川区宮原5丁目2-30

[ KEGG | KEGG DRUG | KEGG MEDICUS ] 2024/05/22 版