1.1 本剤の調製(解凍洗浄等)は、製造販売業者等が実施する研修を修了し、必要な技能や手技を十分に習得した医師または医療従事者のもと、必要な体制が整った施設で行うこと。
1.2 次の点について留意して輸血療法を行うこと。
1.2.1 輸血について十分な知識・経験を持つ医師のもとで使用すること。
1.2.2 輸血に際しては副作用発現時に救急処置をとれる準備をあらかじめしておくこと。
5.1 輸血は補充療法であって、根治的な療法ではない。
5.2 輸血には同種免疫等による副作用
4)やウイルス等に感染する危険性
5)があり得るので、他に代替する治療法等がなく、その有効性が危険性を上回ると判断される場合にのみ実施すること。
<輸血>
ろ過装置を具備した輸血用器具を用いて、静脈内に必要量を輸注する。
7.1 血球洗浄装置
血球洗浄装置、洗浄用バッグ及び洗浄用キットは医療機器として承認又は認証を受けたものを使用すること。
7.2 輸血用器具
生物学的製剤基準・通則44に規定する輸血に適当と認められた器具であって、そのまま直ちに使用でき、かつ、1回限りの使用で使い捨てるものを用いる。
7.3 輸血速度
成人の場合は、通常、最初の10〜15分間は1分間に1mL程度で行い、その後は1分間に5mL程度で行うこと。また、うっ血性心不全が認められない低出生体重児の場合、通常、1〜2mL/kg(体重)/時間の速度を目安とすること。なお、輸血中は患者の様子を適宜観察すること。[
8.4、
9.7参照]
8.1 輸血は、放射線照射ガイドライン
6)、血液製剤の使用指針
1)、輸血療法の実施に関する指針
1)及び血液製剤保管管理マニュアル
7)に基づき、適切に行うこと。
8.2 輸血を行う場合は、その必要性とともに感染症・副作用等のリスクについて、患者又はその家族等に文書にてわかりやすく説明し、同意を得ること。
8.3 本剤は、ABO血液型、RhD血液型及び赤血球不規則抗体の検査を行っているが、本剤と患者血液の不適合により溶血等の副作用があらわれることがある。したがって、患者のABO血液型、RhD抗原の確認及び交差適合試験を含む輸血前検査を適切に行うこと。なお、交差適合試験は、本剤に付属するセグメントチューブではなく、調製時に作製する交差適合試験用血液(調製後のセグメントチューブ)を用いて実施すること。
8.4 輸血中は患者の様子を適宜観察すること。少なくとも輸血開始後約5分間は患者の観察を十分に行い、約15分経過した時点で再度観察すること。[
7.3参照]
8.5 短時間に大量輸血した場合、凝固因子や血小板の減少・希釈に伴う出血傾向があらわれることがある。これらの症状があらわれた場合には輸血を中止し、適切な処置を行うこと。
8.6 本剤の使用により、同種免疫による赤血球、白血球、血小板、血漿蛋白等に対する抗体が産生され、溶血、ショック、過敏症等の免疫学的副作用があらわれることがある(本剤はリンパ球を不活化するために放射線照射を行っているが、その抗原性は保持されている)。
8.7 本剤は、問診等の健診により健康状態を確認した国内の献血者から採血し、梅毒トレポネーマ、B型肝炎ウイルス(HBV)、C型肝炎ウイルス(HCV)、ヒト免疫不全ウイルス(HIV-1及びHIV-2)、ヒトTリンパ球向性ウイルス1型(HTLV-1)及びヒトパルボウイルスB19についての血清学的検査、肝機能(ALT)検査、HBV-DNA、HCV-RNA、HIV-RNA及びE型肝炎ウイルス(HEV)-RNAについての核酸増幅検査に適合した献血血液を原料としている。しかし、このような措置によっても、これら及びその他血液を介するウイルス、細菌、原虫等に感染することがある。[
8.8、
8.9、
11.1.2参照]
8.8 本剤は、HBV、HCV、HIV-1・HIV-2等のウイルスについての検査には適合しているが、供血者がウインドウ期等にあることによる感染リスクを考慮し、感染が疑われる場合等には、患者の輸血前後の肝炎ウイルスマーカー検査あるいはHIV抗体検査等を実施し、患者の経過観察を行うこと
1)。[
8.7、
11.1.2参照]
8.9 本剤の使用により、細菌等によるエンドトキシンショック、敗血症等
8)9)があらわれることがあるので、観察を十分に行い、症状があらわれた場合には輸血を中止し、適切な処置を行うこと。[
8.7、
11.1.2参照]
8.10 本剤は血漿の大部分を除去しているため血漿成分等による副作用の低減が期待できるが、IgA等の血漿蛋白の欠損症のある患者への輸血では、ショック、過敏症等の免疫学的副作用があらわれる可能性を否定できないので、慎重に行うこと。
8.11 輸血による変異型クロイツフェルト・ヤコブ病(vCJD)伝播が疑われる報告
10)がある。本剤の使用によるvCJD等の伝播のリスクを完全には排除できないので、使用の際には患者への説明を十分に行い、治療上の必要性を十分検討の上使用すること。
8.12 放射線照射による有核血液細胞のがん化(malignant transformation)
11)、及び潜在ウイルスの活性化・発がんの誘導
12)の可能性を否定できない。
8.13 血液バッグの可塑剤(フタル酸ジ-2-エチルヘキシル:DEHP)が製剤中に溶出し、保存に伴い増加することが確認されているが、溶出したDEHPにより直接的健康被害が発生したとの報告は現在までにない。
9.1 合併症・既往歴等のある患者
9.1.1 本剤の成分に対し、ショック等の免疫学的副作用の既往歴がある患者[
11.1.1参照]
9.1.2 サイトメガロウイルス(CMV)抗体陰性の造血幹細胞移植患者及び免疫不全患者
間質性肺炎、肝炎等のCMV感染症に伴う重篤な症状があらわれることがある。[
11.1.2参照]
9.2 腎機能障害患者
アデニン、マンニトールを含有するので、腎機能障害を増強するおそれがある。[
11.1.6参照]
9.5 妊婦
妊婦又は妊娠している可能性のある女性には、治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ輸血を実施すること。妊婦へのヒトパルボウイルスB19、CMV等の感染によって、胎児への障害がまれに報告されている。[
11.1.2参照]
9.7 小児等
腎機能、心機能等の未発達な低出生体重児、新生児への輸血は患者の状態を観察しながら慎重に行うこと。また、CMV抗体陰性の胎児、低出生体重児、新生児では、間質性肺炎、肝炎等のCMV感染症に伴う重篤な症状があらわれることがある。[
7.3、
11.1.2参照]
9.8 高齢者
患者の状態を観察しながら慎重に輸血すること。一般に生理機能が低下していることが多い。
11.1 重大な副作用
次の副作用・感染症があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には輸血を中止するなど適切な処置を行うこと
13)14)。
11.1.1 ショック、アナフィラキシー(頻度不明)
ショック、チアノーゼ、皮膚潮紅、血管浮腫、喘鳴等のアナフィラキシー
15)があらわれることがある(初期症状は全身違和感、皮膚潮紅、腹痛、頻脈等で、アナフィラキシーの多くは輸血開始後10分以内に発現する)。[
9.1.1参照]
11.1.2 感染症(頻度不明)
11.1.3 呼吸障害・輸血関連急性肺障害(TRALI:transfusion-related acute lung injury)(頻度不明)
輸血中あるいは輸血後に喘鳴、低酸素血症、チアノーゼ、肺水腫、TRALI
25)等を生じることがある。特にTRALIは輸血中あるいは輸血終了後6時間以内に、急激な肺水腫、低酸素血症、頻脈、低血圧、チアノーゼ、呼吸困難を伴う呼吸障害で、時に死亡に至ることがある。これらの症状があらわれた場合には直ちに輸血を中止し、酸素投与、呼吸管理等の適切な処置を行うこと。
11.1.4 輸血後紫斑病(PTP:post transfusion purpura)(頻度不明)
輸血後約1週間経過して、急激な血小板減少、粘膜出血、血尿等があらわれることがある
26)。
11.1.5 心機能障害・不整脈(頻度不明)
心不全、心筋障害、心房細動・心室細動等の重篤な心機能障害や不整脈があらわれることがある。
11.1.6 腎機能障害(頻度不明)
急性腎障害等の重篤な腎機能障害があらわれることがある。[
9.2参照]
11.1.7 肝機能障害(頻度不明)
AST、ALTの著しい上昇を伴う肝機能障害があらわれることがある。
11.2 その他の副作用
次の副作用・感染症があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には輸血を中止するなど適切な処置を行うこと
13)14)。
| 頻度不明 |
過敏症 | 蕁麻疹、発疹、発赤、そう痒感 |
血液 | 凝固因子や血小板の減少・希釈に伴う出血傾向注1)、白血球数の変動 |
肝・胆道系 | 黄疸、血中ビリルビンの上昇 |
腎臓 | 血尿、ヘモグロビン尿、BUN・クレアチニンの上昇 |
消化器 | 悪心、嘔吐 |
精神神経系 | 痙攣 |
循環器 | 血圧の上昇又は低下、頻脈又は徐脈 |
電解質異常 | 血中カリウム濃度の上昇 |
全身状態 | 発熱、悪寒、戦慄、頭痛・胸痛その他痛み、チアノーゼ、倦怠感 |
その他 | 鉄の沈着症注2)、鉄過剰症注2) |
本剤の過量投与により容量負荷となり、心不全、チアノーゼ、呼吸困難、肺水腫等があらわれることがある(輸血関連循環過負荷、TACO:transfusion-associated circulatory overload)
27)。
20.1 本剤は凍結製剤であり、凍った状態ではバッグは非常にもろく破損し易いため、取扱いには十分注意すること。
20.2 調製後の本剤は、過冷により溶血することがあるので保存時の温度管理を適正に行うこと。
20.3 本剤は特定生物由来製品に該当することから、本剤を使用した場合はその名称(販売名)、製造番号、使用年月日、患者の氏名・住所等を記録し、少なくとも20年間保存すること。
本剤は、その一部を含むセグメントチューブを付属する。
セグメントチューブは製剤由来の凍害保護液を含有する。
照射凍結赤血球-LR「日赤」用時解凍洗浄
Ir-FRC-LR-TW-2
血液400mLに由来する赤血球量(2単位)[1袋]
本剤は保険給付の対象とならない(薬価基準未収載)。
26.1 製造販売元
日本赤十字社
〒105-0011
東京都港区芝公園一丁目2番1号