本剤は喘息発作に対する対症療法剤であるので、本剤の使用は発作発現時に限ること。
プロカテロール塩酸塩水和物として、通常成人1回20μg(4吸入)、小児1回10μg(2吸入)を吸入する。なお、年齢、症状により適宜増減する。
成人1回4吸入、小児1回2吸入の用法及び用量を守り、1日4回(原則として成人16吸入、小児8吸入)までとすること。[
8.2、
13.1参照]
8.1 本剤の使用は、患者又は保護者が適正な使用方法について十分に理解しており、過量投与になるおそれのないことが確認されている場合に限ること。
8.2 過度に使用を続けた場合、不整脈、場合により心停止を起こすおそれがあり、特に発作発現時の吸入投与の場合には使用が過度になりやすいので十分に注意すること。また、患者又は保護者に対し、過度の使用による危険性を理解させ、7.の注意及びその他必要と考えられる注意を与えること。[7.、
13.1参照]
8.3 投与にあたっては、過度の使用を防止するために、用法及び用量を正しく指導し、経過の観察を十分に行うこと。用法及び用量どおり正しく使用しても効果が認められない場合には、気道炎症の増悪が疑われ、本剤の効果が認められないままに過度の使用になる可能性があるので、本剤の投与を中止し、他の適切な治療法に切り替えること。
8.4 発作が重篤で吸入投与の効果が不十分な場合には、可及的速やかに医療機関を受診し治療を受けるよう注意を与えること。
9.1 合併症・既往歴等のある患者
9.1.1 甲状腺機能亢進症の患者
9.1.2 高血圧の患者
9.1.3 心疾患の患者
動悸、不整脈、症状の増悪等があらわれることがある。
9.1.4 糖尿病の患者
9.1.5 低酸素血症の患者
血清カリウム値をモニターすることが望ましい。低酸素血症は血清カリウム値の低下が心リズムに及ぼす作用を増強することがある。[
11.1.2参照]
9.5 妊婦
妊婦又は妊娠している可能性のある女性には、治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与すること。動物実験(ラット)で胎児への移行が報告されている
1)。
9.6 授乳婦
治療上の有益性及び母乳栄養の有益性を考慮し、授乳の継続又は中止を検討すること。動物実験(ラット)で乳汁中への移行が報告されている
1)。
9.7 小児等
9.7.1 小児に対する投与は、使用法を正しく指導し、経過の観察を十分に行うこと。
9.7.2 低出生体重児、新生児又は乳児を対象とした有効性及び安全性を指標とした臨床試験は実施していない。
9.8 高齢者
減量するなど注意すること。一般に生理機能が低下している。
11.1 重大な副作用
次の副作用があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止するなど適切な処置を行うこと。
11.1.1 ショック、アナフィラキシー(頻度不明)
11.1.2 重篤な血清カリウム値の低下(頻度不明)
キサンチン誘導体、ステロイド剤及び利尿剤の併用により増強することがあるので、重症喘息患者では特に注意すること。[
9.1.5、
10.2参照]
11.2 その他の副作用
次の副作用があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止するなど適切な処置を行うこと。
| 0.1〜5%未満 | 0.1%未満 | 頻度不明 |
循環器 | 動悸、頻脈、心電図異常、血圧上昇、ほてり等 | | 上室性期外収縮・上室性頻拍・心室性期外収縮等、顔面蒼白、血圧低下 |
精神神経系 | 振戦、頭痛・頭重感、手のしびれ感、めまい | 冷汗、眠気等 | 筋痙直、神経過敏 |
消化器 | 嘔気・嘔吐等 | | |
呼吸器 | 気管・咽喉頭部異常感 | 鼻閉、呼吸困難等 | |
過敏症 | | | 発疹、そう痒感等 |
その他 | | 脱力感、聴覚異常、血小板減少等 | 全身倦怠感、一過性(吸入後1〜2時間)の血清カリウム値の低下 |
本剤はアレルゲンによる皮膚反応に抑制的に作用するので、皮膚テストを実施する場合には、12時間前より本剤の投与を中止することが望ましい。
15.2 非臨床試験に基づく情報
15.2.1 プロカテロール塩酸塩水和物の経口投与毒性試験(ラット、イヌ)において、他のβ刺激薬と同様に心筋障害が認められた。
15.2.2 ラットを用いた104週間混餌投与試験において、薬物投与により、卵巣間膜腫が出現した。この腫瘍はラットに特異的なものであると考えられており、また、各種β刺激薬を長期間反復投与することにより発現することが報告されている
2)。
18.1 作用機序
プロカテロール塩酸塩水和物は気管支平滑筋のβ2受容体を選択的に刺激し、気管支拡張作用を発現する。
18.2 気管支拡張作用
18.2.1 イヌ、ネコ及びモルモットでのヒスタミン等による気道抵抗増大に対する抑制効果でみると、プロカテロール塩酸塩水和物の気管支拡張作用はイソプレナリンと同等かそれ以上の強さで、サルブタモール硫酸塩及びオルシプレナリン硫酸塩より強いことが確認された
7)8)9)10)11)。
18.2.2 無麻酔モルモットや麻酔イヌにおけるプロカテロール塩酸塩水和物吸入時の気管支拡張効果の発現は、吸入後1〜5分で、経口投与に比べて速やかであった
11)12)。
18.2.3 プロカテロール塩酸塩水和物吸入により、小児気管支喘息患者の中枢気道のみならず末梢気道も拡張させることが確認された
13)。
18.3 気管支拡張作用持続時間
18.3.1 イヌ、ネコ及びモルモットで検討したプロカテロール塩酸塩水和物の気管支拡張作用持続時間は、イソプレナリン、トリメトキノール、オルシプレナリン硫酸塩及びサルブタモール硫酸塩より長いことが確認された
7)8)9)11)。
18.3.2 麻酔イヌでのプロカテロール塩酸塩水和物10μg吸入によるヒスタミン気道抵抗増大に対する抑制効果は、サルブタモール硫酸塩200μgの吸入と同程度の抑制効果を示し、作用持続時間は長かった
12)。
18.4 β2受容体への選択性
心循環器系のβ受容体と気道系のβ受容体への臓器選択性をイヌ、ネコ及びモルモットで検討したところ、プロカテロール塩酸塩水和物はイソプレナリン、トリメトキノール、オルシプレナリン硫酸塩及びサルブタモール硫酸塩よりも優れた臓器選択性を示した
7)8)9)11)。
18.5 抗アレルギー作用
モルモットあるいはラットでのレアギン性の気道抵抗増大、PCA反応及び肺からのヒスタミン遊離、成人気管支喘息患者での皮膚反応及びアレルゲン吸入誘発に対する抑制を指標としたプロカテロール塩酸塩水和物の抗アレルギー作用はイソプレナリン、オルシプレナリン硫酸塩及びサルブタモール硫酸塩より強いことが確認された
14)15)16)17)18)。
18.6 気道分泌系に対する作用
プロカテロール塩酸塩水和物はハトの気道繊毛運動を亢進した
19)。
18.7 実験的誘発喘息発作抑制作用
プロカテロール塩酸塩水和物はトレッドミル又はエルゴメーター運動負荷やメサコリン吸入により誘発された気管支喘息患者の喘息発作を抑制した
20)21)22)。
18.8 その他
気管支喘息患者を対象に実施した肺機能(FEV1.0)を指標とした薬力学的試験において本剤と同一組成であるメプチンエアー10μgとメプチンエアー(クロロフルオロカーボン類(特定フロン)等を含有)の気管支拡張作用は同等であった。