2.1 本剤によるショックの既往歴のある患者
2.2 ベンジルペニシリンによるショックの既往歴のある患者[本剤はベンジルペニシリンを含有している。]
<胃癌(手術例)患者及び原発性肺癌患者における化学療法との併用による生存期間の延長>
化学療法に併用し、各投与量(KE)を生理食塩液で懸濁溶解して、筋肉内、皮下又は皮内投与する。通常、初回0.2〜0.5KEより開始し、患者の状態を観察しつつ、連日又は隔日1回の投与で2〜3週間かけて2〜5KEまで漸増する。維持量は1回2〜5KE、週1〜2回とする。
<消化器癌患者及び肺癌患者における癌性胸・腹水の減少>
通常、1回5〜10KEを生理食塩液で懸濁溶解して、週に1〜2回漿膜腔内投与する。
<他剤無効の、頭頸部癌(上顎癌、喉頭癌、咽頭癌、舌癌)及び甲状腺癌>
通常、1回5〜10KEを生理食塩液で懸濁溶解して、毎日又は数日に1回、腫瘍内又は腫瘍辺縁部に注入する。
ただし、同日内に同一患者に対し、2経路による投与は行わない。
<リンパ管腫>
本剤の投与に際しては、生理食塩液で懸濁溶解して、0.05〜0.1KE/mL濃度の懸濁溶解液を調製する。通常、吸引リンパ管腫液量と同量の懸濁溶解液を局所に注入する。1回総投与量2KEを上限として、年齢、症状により適宜増減する。
<消化器癌患者及び肺癌患者における癌性胸・腹水の減少、他剤無効の、頭頸部癌(上顎癌、喉頭癌、咽頭癌、舌癌)及び甲状腺癌>
患者によって本剤に対する発熱などの感受性が異なるため、少量投与から始め、患者の状態を観察しつつ漸増することが望ましい。
8.1 本剤によるショック、アナフィラキシーの発生を確実に予知できる方法がないので、以下の措置をとること。[
11.1.1参照]
・事前に既往歴等について十分な問診を行うこと。なお、本剤はベンジルペニシリンを含有しているので抗生物質等によるアレルギー歴は必ず確認すること。
・投与に際しては、必ずショック等に対する救急処置のとれる準備をしておくこと。
・投与開始から投与終了後まで、患者を安静の状態に保たせ、十分な観察を行うこと。特に、投与開始直後は注意深く観察すること。
・休薬期間を置いた後、投与を再開する場合には少量から慎重に投与すること。
8.2 本剤は培地に増殖不能の生菌で、全菌体を生体に連続して投与する薬剤であるので、副作用等に十分注意すること。
9.1 合併症・既往歴等のある患者
9.1.1 本剤又はペニシリン系抗生物質に対し過敏症の既往歴のある患者
9.1.2 セフェム系抗生物質に対し過敏症の既往歴のある患者
9.1.3 本人又は両親、兄弟に気管支喘息、発疹、蕁麻疹等のアレルギー症状を起こしやすい体質を有する患者
9.1.4 心疾患のある患者
動物による毒性実験において、大量長期投与した場合に溶連菌感染症類似の所見(心障害、腎障害、アミロイドーシス等)がみられている。
9.2 腎機能障害患者
動物による毒性実験において、大量長期投与した場合に溶連菌感染症類似の所見(心障害、腎障害、アミロイドーシス等)がみられている。
9.5 妊婦
妊婦又は妊娠している可能性のある女性には、治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与すること。
9.7 小児等
<胃癌(手術例)患者及び原発性肺癌患者における化学療法との併用による生存期間の延長、消化器癌患者及び肺癌患者における癌性胸・腹水の減少、他剤無効の、頭頸部癌(上顎癌、喉頭癌、咽頭癌、舌癌)及び甲状腺癌>
9.8 高齢者
用量に注意すること。一般に生理機能が低下している。
11.1 重大な副作用
次の副作用があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止するなど適切な処置を行うこと。
11.1.1 ショック、アナフィラキシー(いずれも頻度不明)[
8.1参照]
11.1.2 間質性肺炎(頻度不明)
間質性肺炎が発現又は増悪することがある。発熱、咳嗽、呼吸困難及び胸部X線検査異常等が認められた場合には、本剤の投与を中止し、副腎皮質ホルモン剤の投与等の適切な処置を行うこと。
11.1.3 急性腎障害(頻度不明)
BUN、クレアチニンの上昇、尿量の減少等が認められた場合には、投与を中止し適切な処置を行うこと。
11.2 その他の副作用
次の副作用があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止するなど適切な処置を行うこと。
| 5%以上 | 5%未満 | 頻度不明 |
過敏症 | | そう痒感、発疹 | 紫斑 |
注射部位反応 | 腫脹(79.3%注1))、発赤(59.7%注1))、疼痛 | 硬結、熱感 | |
血液 | 白血球増加(18.2%注1)) | 血小板増加、貧血 | |
肝臓 | | AST上昇、ALT上昇、Al-P上昇 | |
消化器 | | 食欲不振、悪心・嘔吐、下痢 | |
腎臓 | | 蛋白尿 | BUN上昇、クレアチニン上昇、尿量減少 |
その他 | 発熱(86.1%注1)、23.1%注2))、CRP上昇(22.7%注1)) | 全身倦怠、頭痛、CK上昇、関節痛 | |
14.1 薬剤調製時の注意
14.1.1 溶解後の注射液は速やかに使用すること。
14.1.2 投与方法、投与量に基づき適宜生理食塩液にて薬液を調製すること。
14.2 薬剤投与時の注意
<胃癌(手術例)患者及び原発性肺癌患者における化学療法との併用による生存期間の延長>
14.2.1 筋肉内又は皮下投与により注射部位に疼痛、発赤、硬結をみることがある。繰り返し投与する場合には、同一部位の反復投与は避けること。
14.2.2 筋肉内投与にあたっては、組織・神経等への影響を避けるため以下の点に注意すること。
・神経走行部位を避けるよう注意すること。
・注射針を刺入したとき、激痛を訴えたり、血液の逆流をみた場合は、直ちに針を抜き、部位を変えて投与すること。
・乳児、幼児又は小児に適用する場合は必要最小限度にとどめること。
<リンパ管腫>
14.2.3 投与にあたっては以下の点に注意すること。
・腫脹等の注射部位反応、発熱、白血球増加等の発現が高頻度のため、投与後は患者状態を十分観察すること。
・投与後の腫脹により、注射部位(特に頸部)によっては気管圧迫、喘鳴の可能性があるため、投与量は必要最小限度にとどめ経過観察を十分行うこと。
15.1 臨床使用に基づく情報
本剤の局所又は漿膜腔内への大量投与により遅発性ショック(1〜数時間後)があらわれたとの報告がある。
17.1 有効性及び安全性に関する試験
<胃癌(手術例)患者及び原発性肺癌患者における化学療法との併用による生存期間の延長>
17.1.1 国内臨床試験
非治癒切除胃癌46例(ピシバニール併用群27例、化学療法単独群19例)を解析対象とした無作為比較試験で、化学療法と本剤筋肉内投与(0.2KEより開始し、4週間かけて2KEまで漸増、以後2KEを週1回投与)の併用により、化学療法単独群に比較して生存期間の延長が認められた(図1)
1)。
図1:非治癒切除胃癌症例における生存曲線
17.1.2 国内臨床試験
手術可能肺癌311例(ピシバニール併用群159例、化学療法単独群152例)を対象とした無作為比較試験で、化学療法と本剤筋肉内投与(0.2KEより開始し2.0KEまで漸増。維持量は2.0KEを週1回)の併用により、化学療法単独群に比較し、生存期間の延長が認められた(図2)
2)。
図2:手術可能肺癌症例における生存曲線
17.1.3 国内臨床試験
非切除肺癌73例(ピシバニール併用群37例、化学療法単独群36例)を解析対象とした無作為比較試験で、化学療法と本剤(筋肉内投与又は皮下投与、0.2KEより投与を開始し漸増。維持量2.0KE)の併用により、化学療法単独群に比較し、生存期間の延長が認められた
3)。
<消化器癌患者及び肺癌患者における癌性胸・腹水の減少>
17.1.4 国内臨床試験
消化器癌の進展、再発により腹水の貯留を来した症例134例に本剤を腹腔内投与したところ、76例(56.7%)で腹水の消失が、8例(6.0%)で腹水の減少が認められた
4)。
17.1.5 国内臨床試験
肺癌の進展により胸水の貯留を来した症例25例に本剤を単独又は化学療法と併用し胸腔内投与したところ、17例(68.0%)で胸水の消失が、6例(24.0%)で胸水の減少が認められた
5)。
<他剤無効の、頭頸部癌(上顎癌、喉頭癌、咽頭癌、舌癌)及び甲状腺癌>
17.1.6 国内臨床試験
各種頭頸部癌52例、甲状腺癌10例に対し、本剤を初回5KE、以後10KEを維持量として週2〜3回、腫瘍内及び腫瘍辺縁部に投与し有効性が認められた
6)。
癌種 | 評価対象例数 | 奏功率 |
頭頸部癌 | 52 | 17.3% |
甲状腺癌 | 10 | 20.0% |
<リンパ管腫>
17.1.7 国内一般臨床試験
原則15歳未満
注)のリンパ管腫症例(60例)に対し本剤0.5KE/10mL又は、1.0KE/10mLを20mLを上限として管腫内へ局所投与し、有効性が認められた
7)。
評価時期 | 評価対象例数 | 有効率 |
投与2ヶ月後 | 53 | 75.5% |
投与6ヶ月後 | 48 | 85.4% |
安全性評価対象例60例中60例(100%)に副作用が認められた。主な副作用は、腫脹・発赤56例(93.3%)、発熱50例(83.3%)等であった。
注)18歳5カ月の1例を含む