医療用医薬品 : シグマート

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医薬品情報


総称名 シグマート
一般名 ニコランジル
欧文一般名 Nicorandil
製剤名 ニコランジル錠
薬効分類名 狭心症治療剤
薬効分類番号 2171
ATCコード C01DX16
KEGG DRUG
D01810 ニコランジル
JAPIC 添付文書(PDF)
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添付文書情報2022年1月 改訂(第1版)


商品情報 3.組成・性状

販売名 欧文商標名 製造会社 YJコード 薬価 規制区分
シグマート錠2.5mg SIGMART Tablets 中外製薬 2171017F1028 7.1円/錠 処方箋医薬品注)
シグマート錠5mg SIGMART Tablets 中外製薬 2171017F2024 7.8円/錠 処方箋医薬品注)

2. 禁忌

次の患者には投与しないこと
ホスホジエステラーゼ5阻害作用を有する薬剤(シルデナフィルクエン酸塩、バルデナフィル塩酸塩水和物、タダラフィル)又はグアニル酸シクラーゼ刺激作用を有する薬剤(リオシグアト)を投与中の患者[10.1参照]

4. 効能または効果

狭心症

6. 用法及び用量

ニコランジルとして、通常、成人1日量15mgを3回に分割経口投与する。なお、症状により適宜増減する。

8. 重要な基本的注意

8.1 本剤の投与開始時には、硝酸・亜硝酸エステル系薬剤と同様に血管拡張作用による拍動性の頭痛を起こすことがあるので、このような場合には減量又は投与を中止するなど適切な処置を行うこと。

9. 特定の背景を有する患者に関する注意

9.1 合併症・既往歴等のある患者
9.1.1 緑内障の患者
眼圧を上昇させるおそれがある。
9.3 肝機能障害患者
9.3.1 重篤な肝障害のある患者
本剤投与中に肝機能検査値異常があらわれることがある。
9.5 妊婦
妊婦又は妊娠している可能性のある女性には投与しないことが望ましい。
9.6 授乳婦
治療上の有益性及び母乳栄養の有益性を考慮し、授乳の継続又は中止を検討すること。動物実験(ラット)でニコランジル及び/又はその代謝物の乳汁移行が認められている。
9.7 小児等
小児等を対象とした臨床試験は実施していない。
9.8 高齢者
本剤投与の際には少量から投与するなど慎重に投与すること。一般に生理機能が低下し、副作用が発現しやすいことが推定される。

10. 相互作用

10.1 併用禁忌
ホスホジエステラーゼ5阻害作用を有する薬剤
シルデナフィルクエン酸塩
(バイアグラ、レバチオ)
バルデナフィル塩酸塩水和物
(レビトラ)
タダラフィル
(シアリス、アドシルカ、ザルティア)
[2.参照]
併用により、降圧作用が増強することがある。
本剤投与前にこれらの薬剤を服用していないことを十分確認すること。また、本剤投与中及び投与後においてこれらの薬剤を服用しないよう十分注意すること。
本剤はcGMPの産生を促進し、一方、ホスホジエステラーゼ5阻害作用を有する薬剤はcGMPの分解を抑制することから、両剤の併用によりcGMPの増大を介する本剤の降圧作用が増強する。
グアニル酸シクラーゼ刺激作用を有する薬剤
リオシグアト
(アデムパス)
[2.参照]
併用により、降圧作用が増強することがある。
本剤投与前にこれらの薬剤を服用していないことを十分確認すること。また、本剤投与中及び投与後においてこれらの薬剤を服用しないよう十分注意すること。
本剤とグアニル酸シクラーゼ刺激作用を有する薬剤は、ともにcGMPの産生を促進することから、両剤の併用によりcGMPの増大を介する本剤の降圧作用が増強する。

11. 副作用

11.1 重大な副作用
次の副作用があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止するなど適切な処置を行うこと。
11.1.1 肝機能障害、黄疸(いずれも頻度不明)
AST、ALT、γ-GTPの上昇等を伴う肝機能障害、黄疸があらわれることがある。
11.1.2 血小板減少(頻度不明)
11.1.3 口内潰瘍、舌潰瘍、肛門潰瘍、消化管潰瘍(いずれも頻度不明)
11.2 その他の副作用
次の副作用があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止するなど適切な処置を行うこと。
 3%以上0.1〜3%未満0.1%未満頻度不明
循環器 動悸、顔面紅潮全身倦怠感、気分不良、胸痛、下肢のむくみ、のぼせ感等 
精神神経系頭痛めまい耳鳴、不眠、眠気、舌のしびれ、肩こり等第3脳神経麻痺、第6脳神経麻痺
過敏症 発疹等  
消化器 悪心、嘔吐、食欲不振下痢、便秘、胃もたれ、胃部不快感、胃痛、腹痛、腹部膨満感、口角炎、口渇等口内炎
肝臓  ビリルビンの上昇、ASTの上昇、ALTの上昇、Al-Pの上昇等 
血液   血小板減少
  複視角膜潰瘍、眼筋麻痺
生殖器   性器潰瘍
皮膚   皮膚潰瘍
その他  頸部痛血中カリウム増加

14. 適用上の注意

14.1 薬剤交付時の注意
14.1.1 PTP包装の薬剤はPTPシートから取り出して服用するよう指導すること。PTPシートの誤飲により、硬い鋭角部が食道粘膜へ刺入し、更には穿孔をおこして縦隔洞炎等の重篤な合併症を併発することがある。
14.1.2 湿気を避けて涼しいところに保管するよう指導すること。[20.参照]

16. 薬物動態

16.1 血中濃度
健康成人5例にシグマート錠5mg2錠(ニコランジルとして10mg)を単回投与注)したとき、以下のような薬物動態パラメータが得られた1)
 AUC0-4h(ng・hr/mL)Cmax(ng/mL)Tmax(hr)t1/2(hr)
平均262.5±43.1152.3±29.20.55±0.120.75
注)承認された用法及び用量は、ニコランジルとして、1日量15mgを3回に分割経口投与である。
16.3 分布
16.3.1 血清蛋白結合率
ヒト血清を用いたin vitro試験によると、血清蛋白結合率は34.2〜41.5%(ニコランジル濃度1〜100μg/mL)であった2)
16.4 代謝
健康成人4例にニコランジルの重水素標識体20mgを単回投与注)して代謝を調べたところ、ニコランジルのほとんどは脱ニトロ化されてN-(2-ヒドロキシエチル)ニコチンアミドへ代謝された。この代謝物はニコランジル投与後0.5時間ですでに血漿中に認められ、2時間後に最高濃度へ到達し、8時間後にはほとんどが消失した3)
16.5 排泄
健康成人4例にニコランジルの重水素標識体20mgを単回投与注)して排泄を調べたところ、投与量に対する24時間後の累積尿中排泄率は、ニコランジル0.7〜1.2%、代謝物N-(2-ヒドロキシエチル)ニコチンアミド6.8〜17.3%であった3)

17. 臨床成績

17.1 有効性及び安全性に関する試験
17.1.1 国内臨床試験
各種狭心症患者を対象とした二種の二重盲検比較試験において、本剤の有用性が認められた4)5)
17.1.2 国内臨床試験
各種狭心症患者を対象とした一般臨床試験(21報)における本剤の有効率は次のとおりであった。
疾患名有効率(有効以上)
合計72.2%(369/511)
労作狭心症69.8%(185/265)
労作兼安静狭心症69.1%(96/139)
安静狭心症94.3%(50/53)
異型狭心症73.0%(27/37)
梗塞後狭心症64.7%(11/17)
うち、不安定狭心症82.4%(14/17)

18. 薬効薬理

18.1 作用機序
冠血管拡張作用では、亜硝酸薬と同様に冠血管平滑筋のグアニル酸サイクラーゼ活性化によるcyclic-GMP産生量の増大が考えられている(in vitro)。これに加えて、冠血流増加作用及び冠血管攣縮抑制作用では膜部位の過分極などが検討されている。
18.2 薬理作用
18.2.1 冠血管拡張作用
イヌ・ランゲンドルフ標本において正常灌流圧時には比較的細い冠動脈を拡張するが、低灌流圧による虚血時にはむしろ太い冠動脈血管を拡張した。また、無麻酔犬に静注すると血流量に依存しないで、太い冠動脈を用量依存的に拡張させた6)7)
18.2.2 冠血流量に対する作用
(1)ニコランジルを、麻酔開胸犬に静注あるいは十二指腸内投与すると冠血流量の増加とその持続が用量依存的に認められた。同様の成績は覚醒犬、イヌ心肺標本、イヌ・ランゲンドルフ標本においても得られた7)8)9)10)11)
(2)左冠動脈狭窄及び左室収縮異常がない狭心症患者6例にシグマート錠をニコランジルとして5mg単回投与し、心拍数120/分まで増加の右心房ペーシング実施及び非実施下において冠静脈洞血流量を測定(持続熱希釈法)したところ、冠血流量はいずれの心拍数下でも有意な増加を示した12)
18.2.3 冠血管攣縮緩解作用
ニコランジルは、イヌ冠動脈の部分狭窄による周期的な冠血流量の減少及び心電図のST上昇を抑制し、更にミニブタの冠動脈内にメサコリンあるいはノルアドレナリンを投与して生じる冠血管の攣縮を抑制した13)14)
18.2.4 心・血行動態に対する作用
(1)ニコランジルを麻酔開胸犬に静注すると、用量依存的に血圧を低下させるが、その程度は軽微であり、冠血管抵抗を有意に低下させる用量において、心拍数、心筋収縮力、心筋酸素消費量、房室伝導時間に影響を及ぼさなかった8)9)15)
(2)左冠動脈狭窄及び左室収縮異常がない狭心症患者6例にシグマート錠をニコランジルとして5mg単回投与したところ、大動脈圧、Pressure Rate Productは有意な変化を示さなかった12)

19. 有効成分に関する理化学的知見

19.1. ニコランジル

一般的名称 ニコランジル
一般的名称(欧名) Nicorandil
化学名 N-[2-(Nitrooxy)ethyl]pyridine-3-carboxamide
分子式 C8H9N3O4
分子量 211.17
融点 約92℃(分解)
物理化学的性状 白色の結晶である。
メタノール、エタノール(99.5)、酢酸(100)に溶けやすく、無水酢酸にやや溶けやすく、水にやや溶けにくい。
KEGG DRUG D01810

20. 取扱い上の注意

アルミピロー包装開封後又はバラ包装開封後は、湿気を避けて保存すること。[14.1.2参照]

22. 包装

<シグマート錠2.5mg>
100錠(PTP10錠×10、乾燥剤入り)
420錠(PTP21錠×20、乾燥剤入り)
500錠(PTP10錠×50、乾燥剤入り)
1000錠(バラ、乾燥剤入り)
<シグマート錠5mg>
100錠(PTP10錠×10、乾燥剤入り)
420錠(PTP21錠×20、乾燥剤入り)
1000錠(PTP10錠×100、乾燥剤入り)
1000錠(バラ、乾燥剤入り)

23. 主要文献

  1. 東平靖雄,他, 社内資料:健康成人におけるニコランジル経口投与後の血中濃度推移, (1981)
  2. 飯田理文,他, 社内資料:ニコランジルのin vitroおよびin vivoにおける血清蛋白結合性, (1991)
  3. 神山博,他, 社内資料:健康成人におけるニコランジル経口投与後の代謝・排泄, (1983)
  4. 山田和生,他, 臨牀と研究, 59 (6), 2079-89, (1982)
  5. 村尾覚,他, 臨床薬理, 13 (2), 311-26, (1982) »DOI
  6. Yamada A,et al., Arzneim.-Forsch.(Drug Res.)., 37 (11), 1252-5, (1987)
  7. Nakagawa Y,et al., Jpn.Heart J., 20 (6), 881-95, (1979) »PubMed
  8. Uchida Y,et al., Jpn.Heart J., 19 (1), 112-24, (1978) »PubMed
  9. 佐藤慶祐,他, 心臓, 12 (4), 371-80, (1980) »DOI
  10. Mizukami M,et al., Arzneim.-Forsch.(Drug Res.)., 31 (8), 1244-7, (1981)
  11. 坂梨又郎,他, 応用薬理, 15 (3), 385-9, (1978)
  12. 関口弘道,他, Ther.Res., 13 (5), 1823-30, (1992)
  13. Uchida Y,et al., Jpn.Heart J., 19 (6), 904-12, (1978) »PubMed
  14. Sakai K,et al., J.Pharmacol.Exp.Ther., 227 (1), 220-8, (1983) »PubMed
  15. Sakai K,et al., J.Cardiovasc.Pharmacol., 3 (1), 139-50, (1981) »PubMed

24. 文献請求先及び問い合わせ先

文献請求先
中外製薬株式会社 メディカルインフォメーション部
〒103-8324 東京都中央区日本橋室町2-1-1
電話:0120-189706
FAX:0120-189705
URL:https://www.chugai-pharm.co.jp/
製品情報問い合わせ先
中外製薬株式会社 メディカルインフォメーション部
〒103-8324 東京都中央区日本橋室町2-1-1
電話:0120-189706
FAX:0120-189705
URL:https://www.chugai-pharm.co.jp/

26. 製造販売業者等

26.1 製造販売元
中外製薬株式会社
東京都中央区日本橋室町2-1-1

[ KEGG | KEGG DRUG | KEGG MEDICUS ] 2025/05/21 版