医療用医薬品 : 塩化タリウム

List   Top

医薬品情報


総称名 塩化タリウム
薬効分類名 放射性医薬品
心臓疾患診断薬
副甲状腺疾患診断薬
腫瘍(脳,甲状腺,肺,骨・軟部,縦隔)診断薬
薬効分類番号 4300
ATCコード V09GX01
KEGG DRUG
D02402 塩化タリウム
JAPIC 添付文書(PDF)
この情報は KEGG データベースにより提供されています。
日米の医薬品添付文書はこちらから検索することができます。

添付文書情報2022年3月 改訂(第1版)


商品情報 3.組成・性状

販売名 欧文商標名 製造会社 YJコード 薬価 規制区分
塩化タリウム(201Tl)注NMP Thallium(201Tl) Chloride Injection NMP 日本メジフィジックス 4300432A1034 452.6円/MBq 処方箋医薬品注)

4. 効能または効果

○心筋シンチグラフィによる心臓疾患の診断
○腫瘍シンチグラフィによる脳腫瘍,甲状腺腫瘍,肺腫瘍,骨・軟部腫瘍及び縦隔腫瘍の診断
○副甲状腺シンチグラフィによる副甲状腺疾患の診断

6. 用法及び用量

<心筋シンチグラフィ>
通常,成人には201Tlとして74MBqを肘静脈より投与し,投与後5〜10分よりシンチレーションカメラで正面像,左前斜位像,左側面像を含む多方向におけるシンチグラムを得る。
なお,投与量は,年齢,体重及び検査方法により適宜増減する。
<腫瘍シンチグラフィ>
通常,成人には201Tlとして脳腫瘍では55.5〜111MBq,甲状腺腫瘍,肺腫瘍,骨・軟部腫瘍及び縦隔腫瘍では55.5〜74MBqを静脈内に投与し,投与後5〜10分よりシンチレーションカメラで被検部を撮像することによりシンチグラムを得る。必要に応じ,投与後約3時間に撮像を行う。
なお,投与量は,年齢,体重及び検査方法により適宜増減する。
<副甲状腺シンチグラフィ>
通常,成人には201Tlとして74MBqを静脈内に投与し,投与後5〜10分よりシンチレーションカメラで被検部を撮像することによりシンチグラムを得る。必要に応じ,甲状腺シンチグラフィによるサブトラクションを行う。
なお,投与量は,年齢,体重及び検査方法により適宜増減する。

8. 重要な基本的注意

診断上の有益性が被曝による不利益を上回ると判断される場合にのみ投与することとし,投与量は最小限度にとどめること。

9. 特定の背景を有する患者に関する注意

9.5 妊婦
妊婦又は妊娠している可能性のある女性には,診断上の有益性が被曝による不利益を上回ると判断される場合にのみ投与すること。
9.6 授乳婦
診断上の有益性及び母乳栄養の有益性を考慮し,授乳の継続又は中止を検討すること。
9.7 小児等
小児等を対象とした臨床試験は実施していない。
9.8 高齢者
患者の状態を十分に観察しながら慎重に投与すること。一般に生理機能が低下している。

11. 副作用

11.2 その他の副作用
次の副作用があらわれることがあるので,観察を十分に行い,異常が認められた場合には投与を中止するなど適切な処置を行うこと。
 頻度不明
過敏症皮膚発赤,多形滲出性紅斑,発疹,小丘疹,蕁麻疹,そう痒感,眼瞼浮腫等
消化器嘔吐,嘔気
循環器血圧低下,血圧上昇
呼吸器喘息様発作
その他気分不良,潮紅,手足の感覚異常,薬品臭,口内苦味感

14. 適用上の注意

<心筋シンチグラフィ>
14.1 薬剤投与時の注意
心臓と重なる肝臓等への集積増加を防止するため検査前の一食は絶食が望ましい1)

16. 薬物動態

16.1 血中濃度
本剤の初期血中クリアランスの半減期は約5分(ごく初期では1〜2分),24時間以降における半減期は4日であった。腎臓においては,5分後まで増加する傾向をとり,10分以後は緩やかに減少する傾向を示した。心臓及び肺においては,本剤投与直後に速い減少を示し,2〜5分以後緩やかな減少となった。減少の速度は常に肺が心臓より大きかった2)
16.3 分布
16.3.1 吸収線量
MIRD法により算出した吸収線量は次のとおりである。
 吸収線量(mGy/37MBq)
心臓6.4
肝臓4.7
脾臓4.5
腎臓4.0
2.4
卵巣7.1
全身1.7
16.4 代謝
生体内で代謝されなかった2)
16.5 排泄
本剤は尿より糞中に多く排泄され,120時間までの総排泄率は約29%(糞:21.6%,尿中:7.2%)であった2)

17. 臨床成績

17.1 有効性及び安全性に関する試験
17.1.1 国内臨床試験
本剤が有効であると報告された適応症は以下のとおりである。
<心筋シンチグラフィ>
心筋梗塞,狭心症,不整脈,他
疾患名有効例数/症例数有効率
心筋梗塞79/79100%
狭心症44/4597.8%
不整脈18/18100%
<腫瘍シンチグラフィ>
甲状腺癌,甲状腺腫,肺癌,脳腫瘍,骨腫瘍,軟部腫瘍,縦隔腫瘍,他
疾患名有効例数/症例数有効率
甲状腺癌43/4497.7%
甲状腺腫22/2395.7%
肺癌(原発性)40/4295.2%
(転移性)7/7100%
脳腫瘍39/4097.5%
骨腫瘍25/2889.3%
軟部腫瘍20/2290.9%
縦隔腫瘍9/9100%
<副甲状腺シンチグラフィ>
原発性副甲状腺機能亢進症,二次性副甲状腺機能亢進症,他
疾患名有効例数/症例数有効率
原発性副甲状腺機能亢進症14/1877.8%
二次性副甲状腺機能亢進症32/32100%

18. 薬効薬理

18.1 測定法
本剤の有効成分に含まれる放射性核種から放出される放射線(ガンマ線)が核医学検査装置により画像化される。
18.2 集積機序
Tlは周期律表III-B族に属する金属であるが,一価のイオンの場合には,I-A族に属するKと類似した生体内挙動を示すことが知られている。正常心筋では心筋細胞膜のNa-KATPase系によりKが心筋細胞内に能動的に取り込まれ心筋内に集積する。この正常心筋内への取込みは主に局所心筋血流に依存しており,Kでは初回冠動脈通過で約70%が取り込まれるとされている。したがって,Kと類似の体内動態を示す本剤を静脈内注射すると,全身の筋肉に分布するが,筋活動の活発な心筋に多く分布し,虚血等の障害部位には分布しない。またTlはCsと同様血流に応じた分布がみられ,腫瘍部では他の組織に比して貯留傾向が大であることから腫瘍像を得ることが可能である。Tlの腫瘍内集積はNa-KATPase系のKがTlによって置換することによると推測されている。また,Tlの集積の程度は腫瘍への血流分布に大きく左右される3)4)5)6)

19. 有効成分に関する理化学的知見

19.1.

核物理学的特性 201Tlとして):
・物理的半減期:3.0442日
・主γ線エネルギー:70.3keV(73.7% Hg-Kα),135keV(2.6%),167keV(10.0%)
理化学知見その他 19.1 塩化タリウム(201Tl)

20. 取扱い上の注意

本剤は,医療法その他の放射線防護に関する法令,関連する告示及び通知等を遵守し,適正に使用すること。

22. 包装

74MBq(1mL)[1シリンジ],
111MBq(1.5mL)[1シリンジ],
148MBq(2mL)[1シリンジ]

23. 主要文献

  1. 植原敏勇,他, 画像診断, 5, 1053-1057, (1985)
  2. 鈴木雅紹,他, 核医学, 15, 27-40, (1978) »PubMed
  3. Gehling PJ,et al., J Pharm Exp Therap, 155, 187-201, (1967) »PubMed
  4. Britten JS,et al., Bioch Bioph Acta, 159, 160-166, (1968) »PubMed
  5. 久田欣一,編, 最新核医学, 205, (1980), (金原出版,東京)
  6. 久田欣一,編, 最新核医学, 359, (1980), (金原出版,東京)

24. 文献請求先及び問い合わせ先

文献請求先
日本メジフィジックス株式会社 メディカルインフォメーション担当
〒136-0075 東京都江東区新砂3丁目4番10号
電話:0120-07-6941(フリーダイヤル)
製品情報問い合わせ先
日本メジフィジックス株式会社 メディカルインフォメーション担当
〒136-0075 東京都江東区新砂3丁目4番10号
電話:0120-07-6941(フリーダイヤル)

26. 製造販売業者等

26.1 製造販売元
日本メジフィジックス株式会社
東京都江東区新砂3丁目4番10号

[ KEGG | KEGG DRUG | KEGG MEDICUS ] 2025/08/20 版