16.3.1 99mTc-リン酸化合物の骨への集積機序は現在十分解明されていない。しかし、X線写真が骨中のカルシウム量という静態を反映しているのに対して、骨シンチグラムは骨のミネラルのturn-overという動態を反映しており
8)、このメカニズムの相違が両検査の感度の相違となっている。
メチレンジホスホン酸テクネチウム(
99mTc)(
99mTc-MDP)の血中よりの消失は、最初の2時間までは急速で、それ以降は緩やかで、投与後3時間では平均5.8%doseであり、尿中排泄は投与後6時間までで平均49.2%doseであると報告されている
9)。また、投与後3時間での骨/軟部組織摂取比は、平均4.9と高値を示すと報告されており
9)、骨以外の軟部組織への集積は非常に少ない
10)。
投与後2〜3時間での骨/軟部組織摂取比は大差なく、投与後2時間で臨床的に満足出来る骨イメージが得られる
9)11)12)13)14)。
99mTc-リン酸化合物が心筋梗塞や脳梗塞等の病巣に集積することは以前より良く知られているが、
99mTc-リン酸化合物がこれら梗塞巣に取り込まれる機序についても未解決の問題である。
99mTcO
4−等では脳腫瘍集積の機序として血液脳関門の破壊による組織への浸透というメカニズムが考えられるが、
99mTc-リン酸化合物では、それ以外に異常組織へのactiveな取込み機序が存在すると推定されている
15)。
虚血性脳血管障害、特に脳梗塞では
99mTc-MDPによるRIアンギオグラフィで特有のflip-flopパターンを呈することが多く
16)、遅延(delayed)シンチグラムにて
99mTcO
4−に比し高い集積例が多い
15)17)。脳シンチグラムが大脳血管支配領域に一致した帯状や楔状の集積をした場合は、脳梗塞と診断できることが多い
17)。髄膜炎でも
99mTcO
4−に比し陽性率が高く、パーキンソン病ではシンチグラム上、大小不均一な多くの点状活性が散在した特異な所見が得られるという報告もある
15)。
16.3.2 吸収線量
MIRD法により計算した吸収線量は次のとおりである。
臓器 | 吸収線量(mGy/37MBq) |
全身 | 0.07 |
骨 | 0.46 |
肺 | 0.05 |
肝臓 | 0.07 |
脾臓 | 0.06 |
腎臓 | 0.81 |
睾丸 | 0.13 |
卵巣 | 0.09 |