通常、成人にはオザグレル塩酸塩水和物として1日量400mgを朝食後及び就寝前の2回に分けて経口投与する。
なお、年齢、症状により適宜増減する。
8.1 本剤は気管支拡張剤、ステロイド剤等と異なり、すでに起こっている発作を緩解する薬剤ではないので、このことは患者に十分説明しておく必要がある。
8.2 本剤を投与中、大発作をみた場合は、気管支拡張剤あるいはステロイド剤を投与する必要がある。
8.3 本剤投与によりステロイド維持量を減量し得た患者で、本剤の投与を中止する場合は、原疾患再発のおそれがあるので、注意すること。
8.4 本剤投与により効果が認められない場合には、漫然と長期にわたり投与しないように注意すること。
9.1 合併症・既往歴等のある患者
9.1.1 出血している患者
9.1.2 長期ステロイド療法を受けている患者
本剤投与によりステロイドの減量をはかる場合は十分な管理下で徐々に行うこと。
9.5 妊婦
妊婦又は妊娠している可能性のある女性には、治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与すること。
9.6 授乳婦
治療上の有益性及び母乳栄養の有益性を考慮し、授乳の継続又は中止を検討すること。動物実験(ラット)で乳汁への移行が認められている。また、ラットの周産期及び授乳期投与において大量投与(1000mg/kg)で新生児に体重増加抑制が報告されている。
9.7 小児等
投与しないこと。小児気管支喘息患者を対象とした臨床試験において、副作用として関節痛が報告されている。[
2.1参照]
14.1 薬剤交付時の注意
PTP包装の薬剤はPTPシートから取り出して服用するよう指導すること。PTPシートの誤飲により、硬い鋭角部が食道粘膜へ刺入し、更には穿孔をおこして縦隔洞炎等の重篤な合併症を併発することがある。
16.1 血中濃度
健康成人に200mgを単回経口投与すると、血漿中濃度は約1.3時間で最高に達し、その濃度は約1.9μg/mLで、血漿中半減期は約1.45時間である
1)。
200mg単回投与時の速度論的パラメータ
薬物・代謝物 | Tmax(hr) | Cmax(ng/mL) | AUC(ng・hr/mL) | T1/2(hr) |
オザグレル | 1.3 | 1928.8 | 3913.2 | 1.45 |
M-1 | 1.5 | 1821.9 | 4151.7 | − |
M-2 | 1.5 | 587.3 | 1132.5 | − |
16.4 代謝
血漿中及び尿中主要代謝物は、プロペン酸部のβ酸化体(M-1)及び還元体(M-2)である。
16.5 排泄
投与後48時間までに投与量の74.6%が尿中に排泄され、その大部分が投与後8時間までに排泄される。M-1、M-2及び未変化体の一部がグルクロン酸抱合体として尿中に排泄される
1)2)。
17.1 有効性及び安全性に関する試験
17.1.1 国内後期第II相臨床試験
成人気管支喘息患者266例を対象に、本剤1回100mg1日4回
注)(400mg/日:L群)と1回200mg1日2回(400mg/日:H群)及びプラセボ(P群)を4週間投与にて二重盲検比較試験を行った。最終全般改善度を、著明改善、中等度改善、軽度改善、不変、軽度悪化、中等度悪化、著明悪化の7段階区分にて評価した結果、中等度改善以上の改善率はP群16.5%(13/79例)、L群42.5%(34/80例)、H群48.1%(39/81例)であり、L群、H群ともP群と比較して有意に高かった。副作用はP群2.3%(2/87例)、L群1.1%(1/90例)、H群2.2%(2/89例)にみられた。副作用の内訳はL群にて高度の皮疹1.1%(1/90例)、H群にて軽度の悪心、嘔吐、顔面のしびれ各1.1%(1/89例)であった
3)。
17.1.2 国内第III相二重盲検試験
成人気管支喘息患者234例を対象に、本剤1回200mg1日2回(400mg/日)又はアゼラスチン塩酸塩1回2mg1日2回(4mg/日)を8週間投与にて二重盲検比較試験を行った。最終全般改善度を、著明改善、中等度改善、軽度改善、不変、軽度悪化、中等度悪化、著明悪化の7段階区分にて評価した結果、中等度改善以上の改善率は本剤群35.8%(38/106例)、アゼラスチン塩酸塩群24.3%(25/103例)であり、本剤群が有意に高かった。副作用は本剤群7.0%(8/115例)、アゼラスチン塩酸塩群18.5%(22/119例)にみられた。本剤群における副作用の内訳はGPT上昇2.6%(3/115例)、GOT上昇1.7%(2/115例)、眠気、全身倦怠感、悪心、嘔吐、便秘、腹痛、食欲不振各0.9%(1/115例)であった
4)。
17.1.3 国内第III相一般臨床試験
成人気管支喘息患者173例を対象に、本剤1回200mg1日2回(400mg/日)を4週間又は8週間投与した一般臨床試験において、最終全般改善度を、著明改善、中等度改善、軽度改善、不変、軽度悪化、中等度悪化、著明悪化の7段階区分にて評価した結果、中等度改善以上の改善率は39.6%(67/169例)であった。副作用は4.6%(8/173例)にみられ、その内訳は尿潜血1.2%(2/173例)、嘔気、腹部異和感、肝機能異常、電解質異常、頭痛、かゆみ、咳の悪化、尿の異臭・尿道口のあれ各0.6%(1/173例)であった
5)6)7)8)9)10)。
17.1.4 国内第III相長期投与試験
成人気管支喘息患者94例を対象に、本剤1回200mg1日2回(400mg/日)を24週間以上を目標として投与した長期投与試験において、最終全般改善度を、著明改善、中等度改善、軽度改善、不変、軽度悪化、中等度悪化、著明悪化の7段階区分にて評価した。投与期間は12週未満5例、12週以上24週未満8例、24週以上36週未満56例、36週以上25例であった。中等度改善以上の改善率は48.9%(45/92例)であった。副作用は5.3%(5/94例)にみられ、その内訳は血清脂質代謝異常2.1%(2/94例)、PTの延長、肝機能異常、発熱、心悸亢進、顔面浮腫各1.1%(1/94例)であった
11)12)13)14)。
注)本剤の承認されている用法及び用量は「通常、成人にはオザグレル塩酸塩水和物として1日量400mgを朝食後及び就寝前の2回に分けて経口投与する。なお、年齢、症状により適宜増減する。」である。
18.1 作用機序
本剤はトロンボキサン合成酵素を選択的に阻害してトロンボキサンA2の産生を抑制することにより、気管支喘息の基本的病態である気道過敏性を抑制し、また、気道収縮も抑制する。
18.2 アラキドン酸代謝酵素に対する作用
ヒト血小板、ウサギ肺及び血小板、モルモット肺のトロンボキサン合成酵素に対し強い阻害作用を示す。一方、シクロオキシゲナーゼ、プロスタグランジンI
2合成酵素、プロスタグランジンE
2イソメラーゼ及び5-リポキシゲナーゼに対しては影響を及ぼさない(
in vitro)
15)16)17)。
18.3 トロンボキサンA2の産生抑制作用
18.3.1 気管支喘息患者に経口投与すると、血漿中トロンボキサンA
2量の低下傾向が認められる
18)。
18.3.2 感作ラット及び感作モルモットのアレルギー性気道収縮モデル、モルモットの抗原、血小板活性化因子(PAF)及びフォルミル・メチオニル・ロイシル・フェニルアラニン(FMLP)吸入気道過敏性モデルに経口または十二指腸内投与すると、気管支肺胞洗浄液中のトロンボキサンA
2産生を抑制する
19)20)21)22)。
18.4 気道過敏性抑制作用
18.4.1 気管支喘息患者に経口投与すると、アセチルコリン又はロイコトリエンD
4吸入誘発試験において、気道過敏性を改善する
23)。
18.4.2 モルモットの抗原、PAFおよびFMLP吸入による気道反応性の亢進を経口又は十二指腸内投与で抑制する
17)19)22)24)。
18.4.3 イヌのオゾン及び抗原吸入による気道反応性の亢進を経口又は静脈内持続投与で抑制する
25)26)。
18.5 気道収縮抑制作用
18.5.1 感作ラット、感作モルモットの抗原誘発気道収縮を経口又は十二指腸内投与で抑制する
20)。
18.5.2 モルモットのロイコトリエンC
4及びPAF投与による気道収縮を経口投与で抑制する
27)。