医療用医薬品 : ホーリン

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医薬品情報


総称名 ホーリン
一般名 エストリオール
欧文一般名 Estriol
薬効分類名 卵胞ホルモン製剤
薬効分類番号 2475
ATCコード G03CA04 G03CC06
KEGG DRUG
D00185 エストリオール
KEGG DGROUP
DG01986 卵胞ホルモン
DG01584 エストロゲン受容体作動薬
DG03232 骨粗鬆症治療薬
JAPIC 添付文書(PDF)
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添付文書情報2022年2月 改訂(第2版)


商品情報 3.組成・性状

販売名 欧文商標名 製造会社 YJコード 薬価 規制区分
ホーリン錠1mg HOLIN TABLETS あすか製薬 2475001F3050 12.1円/錠 処方箋医薬品注)

2. 禁忌

次の患者には投与しないこと
2.1 エストロゲン依存性悪性腫瘍(例えば、乳癌、子宮内膜癌)及びその疑いのある患者[腫瘍の悪化あるいは顕性化を促すことがある。][8.2参照]
2.2 未治療の子宮内膜増殖症のある患者[子宮内膜増殖症は細胞異型を伴う場合がある。][8.2参照]
2.3 乳癌の既往歴のある患者[乳癌が再発するおそれがある。][8.2参照]
2.4 血栓性静脈炎、肺塞栓症又はその既往歴のある患者[血液凝固能の亢進により、これらの症状が増悪することがある。][11.1.1参照]
2.5 動脈性の血栓塞栓疾患(例えば、冠動脈性心疾患、脳卒中)又はその既往歴のある患者[11.1.115.1.315.1.4参照]
2.6 重篤な肝障害のある患者[9.3.1参照]
2.7 診断の確定していない異常性器出血のある患者[出血が子宮内膜癌による場合は、癌の悪化あるいは顕性化を促すことがある。][8.2参照]
2.8 妊婦又は妊娠している可能性のある女性[9.5.1参照]

4. 効能または効果

更年期障害、腟炎(老人、小児及び非特異性)、子宮頸管炎並びに子宮腟部びらん、老人性骨粗鬆症

6. 用法及び用量

<更年期障害、腟炎(老人、小児及び非特異性)、子宮頸管炎並びに子宮腟部びらん>
エストリオールとして、通常、成人1回0.1〜1.0mgを1日1〜2回経口投与する。
なお、年齢・症状により適宜増減する。
<老人性骨粗鬆症>
エストリオールとして、通常1回1.0mgを1日2回経口投与する。
なお、症状により適宜増減する。

7. 用法及び用量に関連する注意

<老人性骨粗鬆症>
投与後6カ月〜1年後に骨密度を測定し、効果が認められない場合には投与を中止し他の療法を考慮すること。

8. 重要な基本的注意

8.1 外国において、卵胞ホルモン剤と黄体ホルモン剤を長期併用した女性では、乳癌になる危険性が対照群の女性と比較して高くなり、その危険性は併用期間が長期になるに従って高くなるとの報告があるので、本剤の投与にあたっては、患者に対し本剤のリスクとベネフィットについて十分な説明を行うとともに必要最小限の使用にとどめ、漫然と長期投与を行わないこと。[15.1.2参照]
8.2 女性に投与する場合には、投与前に病歴、家族素因等の問診、乳房検診並びに婦人科検診(子宮を有する患者においては子宮内膜細胞診及び超音波検査による子宮内膜厚の測定を含む)を行い、投与開始後は定期的に乳房検診並びに婦人科検診を行うこと。[2.1-2.32.79.1.19.1.39.1.4参照]

9. 特定の背景を有する患者に関する注意

9.1 合併症・既往歴等のある患者
9.1.1 乳癌家族素因が強い患者、乳房結節のある患者、乳腺症の患者又は乳房レントゲン像に異常がみられた患者
症状が増悪するおそれがある。[8.2参照]
9.1.2 術前又は長期臥床状態の患者
血液凝固能が亢進され、心血管系の副作用の危険性が高くなることがある。[11.1.1参照]
9.1.3 子宮筋腫のある患者
子宮筋腫の発育を促進するおそれがある。[8.2参照]
9.1.4 子宮内膜症のある患者
症状が増悪するおそれがある。[8.2参照]
9.1.5 心疾患又はその既往歴のある患者
ナトリウムや体液の貯留により、症状が増悪するおそれがある。
9.1.6 てんかん患者
体液の貯留により、症状が増悪するおそれがある。
9.1.7 糖尿病患者
十分コントロールを行いながら投与すること。耐糖能が低下することがある。
9.1.8 全身性エリテマトーデスの患者
症状が増悪するおそれがある。
9.1.9 骨成長が終了していない可能性がある患者、思春期前の患者
骨端の早期閉鎖、性的早熟を来すおそれがある。[9.7参照]
9.2 腎機能障害患者
9.2.1 腎疾患又はその既往歴のある患者
ナトリウムや体液の貯留により、症状が増悪するおそれがある。
9.3 肝機能障害患者
9.3.1 重篤な肝障害のある患者
投与しないこと。代謝能が低下しており肝臓への負担が増加するため、症状が増悪することがある。[2.6参照]
9.3.2 肝障害のある患者(重篤な肝障害のある患者を除く)
代謝能が低下しており肝臓への負担が増加するため、症状が増悪することがある。
9.5 妊婦
9.5.1 妊婦又は妊娠している可能性のある女性には投与しないこと。[2.8参照]
9.5.2 卵胞ホルモン剤を妊娠動物(マウス)に投与した場合、児の成長後腟上皮及び子宮内膜の癌性変性を示唆する結果が報告されている1)2)。また、新生児(マウス)に投与した場合、児の成長後腟上皮の癌性変性を認めたとの報告がある3)
9.6 授乳婦
治療上の有益性及び母乳栄養の有益性を考慮し、授乳の継続又は中止を検討すること。
9.7 小児等
9.1.9参照]
9.8 高齢者
減量するなど注意すること。一般に生理機能が低下している。

10. 相互作用

10.2 併用注意
血糖降下剤
インスリン製剤、
スルフォニル尿素系製剤、
ビグアナイド系製剤等
血糖降下剤の作用が減弱することがある。
血糖値その他患者の状態を十分観察し、血糖降下剤の用量を調節するなど注意する。
卵胞ホルモン剤の血糖上昇作用による。

11. 副作用

11.1 重大な副作用
次の副作用があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止するなど適切な処置を行うこと。
11.1.1 血栓症(頻度不明)
長期連用により、血栓症が起こることが報告されている。[2.42.59.1.2参照]
11.2 その他の副作用
次の副作用があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止するなど適切な処置を行うこと。
 頻度不明
過敏症発疹等
子宮不正出血、帯下増加等
乳房乳房痛、乳房緊満感等
肝臓AST、ALTの上昇等
消化器悪心、嘔吐、食欲不振等
その他めまい、脱力感、全身熱感、体重増加

14. 適用上の注意

14.1 薬剤投与時の注意
生理的月経の発現に障害を及ぼすような投与を避けること。
14.2 薬剤交付時の注意
PTP包装の薬剤はPTPシートから取り出して服用するよう指導すること。PTPシートの誤飲により、硬い鋭角部が食道粘膜へ刺入し、更には穿孔をおこして縦隔洞炎等の重篤な合併症を併発することがある。

15. その他の注意

15.1 臨床使用に基づく情報
15.1.1 ホルモン補充療法(HRT)と子宮内膜癌の危険性
卵胞ホルモン剤を長期間(約1年以上)使用した閉経期以降の女性では、子宮内膜癌になる危険性が対照群の女性と比較して高く、この危険性は、使用期間に相関して上昇し(1〜5年間で2.8倍、10年以上で9.5倍)、黄体ホルモン剤の併用により抑えられる(対照群の女性と比較して0.8倍)との疫学調査の結果が報告されている4)
15.1.2 HRTと乳癌の危険性
(1)米国における閉経後女性を対象とした無作為化臨床試験〔Women's Health Initiative(WHI)試験〕の結果、結合型エストロゲン・黄体ホルモン配合剤投与群では、乳癌になる危険性がプラセボ投与群と比較して有意に高くなる(ハザード比:1.24)との報告がある5)。並行して行われた子宮摘出者に対する試験の結果、結合型エストロゲン単独投与群では、乳癌になる危険性がプラセボ投与群と比較して有意差はない(ハザード比:0.80)との報告がある6)7)。[8.1参照]
(2)英国における疫学調査〔Million Women Study(MWS)〕の結果、卵胞ホルモン剤と黄体ホルモン剤を併用している女性では、乳癌になる危険性が対照群と比較して有意に高くなり(2.00倍)、この危険性は、併用期間が長期になるに従って高くなる(1年未満:1.45倍、1〜4年:1.74倍、5〜9年:2.17倍、10年以上:2.31倍)との報告がある8)。[8.1参照]
15.1.3 HRTと冠動脈性心疾患の危険性
米国におけるWHI試験の結果、結合型エストロゲン・黄体ホルモン配合剤投与群では、冠動脈性心疾患の危険性がプラセボ投与群と比較して高い傾向にあり、特に服用開始1年後では有意に高くなる(ハザード比:1.81)との報告がある9)。並行して行われた子宮摘出者に対する試験の結果、結合型エストロゲン単独投与群では、冠動脈性心疾患の危険性がプラセボ投与群と比較して有意差はない(ハザード比:0.91)との報告がある6)。[2.5参照]
15.1.4 HRTと脳卒中の危険性
米国におけるWHI試験の結果、結合型エストロゲン・黄体ホルモン配合剤投与群では、脳卒中(主として脳梗塞)の危険性がプラセボ投与群と比較して有意に高くなる(ハザード比:1.31)との報告がある10)。並行して行われた子宮摘出者に対する試験の結果、結合型エストロゲン単独投与群では、脳卒中(主として脳梗塞)の危険性がプラセボ投与群と比較して有意に高くなる(ハザード比:1.37)との報告がある6)11)。[2.5参照]
15.1.5 HRTと認知症の危険性
米国における65歳以上の閉経後女性を対象とした無作為化臨床試験〔WHI Memory Study(WHIMS)〕の結果、結合型エストロゲン・黄体ホルモン配合剤投与群では、アルツハイマーを含む認知症の危険性がプラセボ投与群と比較して有意に高くなる(ハザード比:2.05)との報告がある12)。並行して行われた子宮摘出者に対する試験の結果、結合型エストロゲン単独投与群では、アルツハイマーを含む認知症の危険性がプラセボ投与群と比較して有意ではないが、高い傾向がみられた(ハザード比:1.49)との報告がある13)
15.1.6 HRTと卵巣癌の危険性
(1)卵胞ホルモン剤を長期間使用した閉経期以降の女性では、卵巣癌になる危険性が対照群の女性と比較して高くなるとの疫学調査の結果が報告されている14)15)16)
(2)米国におけるWHI試験の結果、結合型エストロゲン・黄体ホルモン配合剤投与群において、卵巣癌になる危険性がプラセボ投与群と比較して有意ではないが、高い傾向がみられた(ハザード比:1.58)との報告がある17)
15.1.7 HRTと胆嚢疾患の危険性
米国におけるWHI試験の結果、結合型エストロゲン・黄体ホルモン配合剤投与群において、胆嚢疾患になる危険性がプラセボ投与群と比較して有意に高くなる(ハザード比:1.59)との報告がある18)。並行して行われた子宮摘出者に対する試験の結果、結合型エストロゲン単独投与群では、胆嚢疾患になる危険性がプラセボ投与群と比較して有意に高くなる(ハザード比:1.67)との報告がある18)

16. 薬物動態

16.4 代謝
肝において3位水酸基のグルクロン酸抱合などを受けた後、胆汁排泄などにより消失する19)
16.5 排泄
子宮全摘出を行った女性に、摘出1〜2週間後、1日3mg注)、1週間連日経口投与を行ったところ、尿中エストリオール値の著しい上昇が認められた19)
注)本剤の承認最大用量は1日2mgである。

17. 臨床成績

17.1 有効性及び安全性に関する試験
<更年期障害>
更年期障害患者30例に1日2錠、14〜20日間経口投与した結果、有効率は73%で、特に血管運動神経障害様症状、精神神経障害様症状、疲労感などに効果がみられた20)

18. 薬効薬理

18.1 作用機序
エストラジオールが肝臓で代謝されて出来る物質で、エストロゲンとしての作用を現す19)
18.2 子宮及び腟に対する作用
18.2.1 子宮頸部・腟部を軟化させるが、子宮肥大作用は弱い(ラット21)、モルモット22)23)24)、家兎22)、ヒト25)26)27)28))。
18.2.2 腟粘膜上皮の肥厚・増殖、血管形成を促す(マウス29)、ラット21)、ヒト25)30)31)32))。
18.2.3 子宮頸部のアミノ態窒素及びリンの取込みを増加させる(モルモット24))。
18.3 ゴナドトロピン分泌抑制作用
脳下垂体性ゴナドトロピンの分泌を抑制する(ラット33)34)、ヒト35))。
18.4 骨密度減少抑制作用
卵巣摘出により作製した骨粗鬆症モデルで、骨密度の減少を抑制する(ラット36))。

19. 有効成分に関する理化学的知見

19.1. エストリオール

一般的名称 エストリオール
一般的名称(欧名) Estriol
化学名 Estra-1,3,5(10)-triene-3,16α,17β-triol
分子式 C18H24O3
分子量 288.38
融点 281〜286℃
物理化学的性状 白色の結晶性の粉末で、においはない。
メタノールにやや溶けにくく、エタノール(99.5)に溶けにくく、水にほとんど溶けない。
KEGG DRUG D00185

22. 包装

100錠[10錠(PTP)×10]
500錠[10錠(PTP)×50]

23. 主要文献

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24. 文献請求先及び問い合わせ先

文献請求先
あすか製薬株式会社 くすり相談室
〒108-8532 東京都港区芝浦二丁目5番1号
電話:0120-848-339
FAX:03-5484-8358
製品情報問い合わせ先
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〒108-8532 東京都港区芝浦二丁目5番1号
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26. 製造販売業者等

26.1 製造販売元
あすか製薬株式会社
東京都港区芝浦二丁目5番1号
26.2 販売元
武田薬品工業株式会社
大阪市中央区道修町四丁目1番1号

[ KEGG | KEGG DRUG | KEGG MEDICUS ] 2025/07/23 版