<ハンセン病(多菌型)>
通常成人には、クロファジミンとして50mgを1日1回または200mg〜300mgを週2〜3回に分割して、食直後に経口投与する。年齢・症状により適宜増減する。
投与期間は最低2年とし、可能であれば皮膚塗抹陰性になるまで投与すること。
原則として、他剤と併用して使用すること。
<ハンセン病(らい性結節性紅斑)>
通常成人には、クロファジミンとして100mgを1日1回、食直後に経口投与する。らい反応が安定した場合には100mgを週3回に減量する。
投与期間は3ヵ月以内とする。
8.1 本剤の使用にあたっては、「ハンセン病診断・治療指針」(厚生省・(財)藤楓協会発行)を参考に治療を行うことが望ましい。
8.2 ハンセン病の治療にあたっては、本剤による治療についての科学的データの蓄積が少ないことを含め、患者に十分な説明を行い、インフォームド・コンセントを得ること。
8.3 本剤を高用量で長期投与した場合、腸間膜リンパ節、脾臓等に蓄積し、沈殿する。空腸粘膜の固有層や腸間膜リンパ節に本剤の結晶が蓄積すると、腸疾患が発症する可能性があり、まれに腸閉塞、脾臓梗塞を起こすことが報告されている。胃腸症状(下痢・腹痛等)が発現した場合には、減量、休薬、投与間隔をあけるなどの処置を行うこと。[
11.1.1、
11.1.2参照]
8.4 本剤服用による皮膚の着色で、結果的に抑うつ症状を生じる可能性があるので、患者の精神状態に十分注意すること。また皮膚及び毛髪の着色は可逆的である。皮膚の着色は、本剤中止後、消失までに数ヵ月〜数年かかることをあらかじめ患者に説明しておくこと。なお、皮膚の着色は日光曝露によって濃くなることが報告されている。
8.5 本剤投与中にめまい、視力低下、疲労、頭痛を訴える患者には、自動車の運転、機械の操作等危険を伴う作業に従事させないよう十分注意すること。
9.1 合併症・既往歴等のある患者
9.1.1 胃腸障害(頻回の下痢・腹痛等)のある患者
9.5 妊婦
9.5.1 妊婦又は妊娠している可能性のある女性には、治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与すること。動物実験(マウス・ラット)で着床数の減少、胎児体重の減少及び新生児死亡率の増加がみられている。また、マウスでは胎児死亡数及び胎児頭骨の化骨遅延の増加がみられている。
9.5.2 妊娠中に投与した場合、胎盤を通過し、出生児に皮膚着色がみられることがある。
9.5.3 本剤投与中に妊娠が確認された場合には、継続治療の必要性について検討すること。妊娠中はハンセン病の症状が悪化しやすい。
9.6 授乳婦
授乳を避けさせること。ヒト母乳中へ移行し、母乳及び乳児の皮膚が着色することがある。[
16.3.2参照]
9.8 高齢者
減量するなど慎重に投与すること。一般に生理機能が低下している。
11.1 重大な副作用
次の副作用があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止するなど適切な処置を行うこと。
11.1.3 血栓塞栓症(頻度不明)
11.2 その他の副作用
次の副作用があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止するなど適切な処置を行うこと。
| 頻度不明 |
皮膚 | 皮膚着色(皮膚病変及び皮膚が暗赤色〜黒褐色に着色)、色素沈着障害、毛髪の着色、皮膚乾燥、光線過敏症、魚鱗癬、ざ瘡様発疹、紅皮症、発疹、そう痒、剥脱性皮膚炎 |
消化器 | 胃腸出血、好酸球性腸炎、悪心、嘔吐、腹痛、下痢、便秘、食欲不振、胃不快感 |
眼 | 結膜・角膜・涙液の着色、黄斑部・角膜上皮下の色素沈着、眼の乾燥・刺激・灼熱感、視力低下 |
精神神経系 | めまい、頭痛、嗜眠、神経痛、皮膚着色による抑うつ症状 |
肝臓 | 肝炎、黄疸、肝腫大、AST上昇、ビリルビン上昇 |
血液 | 貧血、好酸球増多 |
その他 | 汗・痰・尿・便・鼻汁・精液・母乳等の着色、リンパ節症、膀胱炎、骨痛、浮腫、疲労、発熱、血管痛、レイノー様現象、体重減少、味覚障害、モニリア口唇炎、低カリウム血症、血糖値上昇、血沈亢進、血清アルブミン増加 |
14.1 薬剤交付時の注意
本剤はチョコレート様の外観でバニラのにおいがするので、小児の手の届かない所に保管するよう患者に説明すること。
14.2 薬剤服用時の注意
消化管からの吸収促進を図るため、食直後に服用又は食事・ミルク等とともに服用すること。
15.1 臨床使用に基づく情報
高用量(300mg/日)の本剤とイソニアジド(300mg/日)の併用投与を受けている患者で、本剤の皮膚の濃度は低かったが、血漿中及び尿中濃度は上昇したとの報告がある。
17.2 製造販売後調査等
ハンセン病患者を対象とした使用成績調査において、有効性評価対象症例96例における有効率は96.9%(93/96例)であった。また、多菌型に対する有効率は97.8%(90/92例)、WHOのMTDの有効率は94.9%(37/39例)であった。さらに、らい性結節性紅斑に対する有効率は100%(24/24例)であった。ハンセン病患者を対象にした使用成績調査において、97例中報告された副作用は38.1%(37例)に66件で、主な副作用は、色素沈着障害22件、胃不快感4件等であった。
18.1 作用機序
クロファジミンのらい菌(Mycobacterium leprae)に対する作用の詳細な機序は不明であるが、らい菌のDNAに直接結合することによるDNA複製阻害作用及びマクロファージのライソゾーム酵素を活性化することによる作用が寄与すると考えられる。
18.1.1 細菌DNAへの結合
クロファジミンのDNA結合性を赤色波長の吸収変化を指標に、分光光度計により測定した結果、
MycobacteriumのDNAに結合性を示した
10)。
18.1.2 ライソゾーム酵素の活性化
クロファジミンを混和した餌を21日間連続摂餌投与したマウスの腹腔内マクロファージにおける、ライソゾーム酵素に対する影響を検討した結果、クロファジミン1及び10mg/kg/日投与群において、N-アセチル-β-グルコサミニダーゼ、β-ガラクトシダーゼ、カテプシンCの活性がコントロール群に比較して有意に上昇した
11)。
18.2 抗菌作用
18.2.1 In vitroにおける作用
クロファジミンのin vitroにおけるM.lepraeに対するMIC測定法は確立されていない。
18.2.2 In vivo感染モデルにおける作用
ヌードマウスを用いたらい菌感染モデルにおいて、クロファジミンを0.003%含有混餌にて7週及び14週間連続投与した場合、薬物非投与群に比較して有意な増殖抑制作用を認めた
12)。
マウスを用いたらい菌感染モデルにおいて、増殖初期から定常期まで(0〜183日間)薬物投与を行った時、クロファジミンの0.01%混餌による連続投与群において、また対数増殖初期から定常期まで(76〜167日間)薬物投与を行った時、クロファジミンの0.0001、0.001、0.01%混餌による連続投与群において、それぞれ薬物非投与群に比較して有意な増殖抑制作用を認めた
13)。
18.3 抗炎症作用
健康成人及びハンセン病患者から採取、精製した好中球を用い、エンドトキシン活性化血清刺激による好中球遊走に対するクロファジミンの作用を検討した結果、いずれの好中球に対しても、クロファジミンは1×10
−3Mから1×10
−5Mにおいて濃度依存的な遊走阻害作用を示した
14)。
過酷な温度条件で崩壊遅延を認める場合があるので、35℃以上で保存しないこと。