医療用医薬品 : アネスタ

List   Top

医薬品情報


総称名 アネスタ
一般名 亜酸化窒素
欧文一般名 Nitrous Oxide
薬効分類名 全身麻酔剤
薬効分類番号 1116
ATCコード N01AX13
KEGG DRUG
D00102 亜酸化窒素
JAPIC 添付文書(PDF)
この情報は KEGG データベースにより提供されています。
日米の医薬品添付文書はこちらから検索することができます。

添付文書情報2022年4月 改訂(第1版)


商品情報 3.組成・性状

販売名 欧文商標名 製造会社 YJコード 薬価 規制区分
アネスタ 星医療酸器 1116700X1126 2.5円/g 処方箋医薬品注)

4. 効能または効果

○全身麻酔
○鎮痛

6. 用法及び用量

本剤は酸素と併用し、酸素の吸気中濃度は必ず20%以上に保つこと。使用目的・患者の状態に応じ、適宜酸素濃度を増加させること。

8. 重要な基本的注意

・ビタミンB12の不活性化により造血機能障害や神経障害を起こすことがあるので、患者の観察を十分に行い、このような症状があらわれた場合にはビタミンB12を投与するなど適切な処置を行うこと1)2)
・麻酔を行う際には原則としてあらかじめ絶食させておくこと。
・麻酔を行う際には原則として麻酔前投薬を行うこと。
・麻酔中は気道に注意して呼吸・循環に対する観察を怠らないこと。
・麻酔の深度は手術、検査に必要な最低の深さにとどめること。

9. 特定の背景を有する患者に関する注意

9.1 合併症・既往歴等のある患者
9.1.1 ビタミンB12欠乏症の患者
本剤の副作用が強くあらわれるおそれがある1)2)
9.1.2 造血機能障害のある患者
本剤の副作用が強くあらわれるおそれがある1)2)
9.1.3 耳管閉塞、気胸、腸閉塞、気脳症等、体内に閉鎖腔のある患者
閉鎖腔内容量及び内圧が変化する3)4)5)
9.1.4 タンポナーデに用いられた気体(パーフルオロプロパン、六フッ化硫黄等)が硝子体内に存在している眼手術後の患者
本剤の体内閉鎖腔内圧上昇作用により眼圧が急激に上昇し、失明するおそれがあるため、本剤を使用しないこと6)7)8)
9.5 妊婦
妊婦(3ヶ月以内)又は妊娠している可能性のある女性には、治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与すること。動物実験(ラット)で催奇形成作用が報告されている9)

10. 相互作用

10.2 併用注意
プロポフォール麻酔作用が増強されたり、収縮期血圧、拡張期血圧、平均動脈圧及び心拍出量が低下することがあるので、併用する場合には、プロポフォールの投与速度を減速するなど慎重に投与すること10)相互に作用(麻酔作用)を増強させる10)

11. 副作用

11.1 重大な副作用
本剤は使用成績調査等の副作用発現頻度が明確となる調査を実施していないため、頻度は不明であるが(再審査対象外)、次の副作用があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止するなど適切な処置を行うこと。
11.1.1 造血機能障害(顆粒球や血小板の減少等)
顆粒球や血小板の減少等、造血機能障害があらわれることがあるので、長期にわたって連用する場合には血液検査を行い、このような症状があらわれた場合には投与を中止すること。
11.2 その他の副作用
本剤は使用成績調査等の副作用発現頻度が明確となる調査を実施していないため、頻度は不明であるが(再審査対象外)、次の副作用があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止するなど適切な処置を行うこと。
消化器(覚醒時)
嘔気・嘔吐11)
精神神経系
末梢神経障害1)2)

14. 適用上の注意

14.1 ガスの使用にあたっての注意
・使用に当たっては換気をよくし、喫煙、火気の使用を禁止すること。
・亜酸化窒素が高濃度で存在し、かつ可燃物が存在する部位では、電気メス、レーザーメス等の火気を使用しないこと12)13)
・本剤は液化ガスのため容器は必ず立てて使用し、転倒しないように固定すること。また凍傷の危険性があるため、清潔で乾いた革手袋を使用すること。
・発火する場合があるので、容器の口金、圧力調整器、配管など本剤と直接接する全ての部位に油脂類、有機物、塵埃などが付着しないようにすること。
・容器内のガスは高圧ガスであるため、所定の圧力調整器を取り付けて使用すること。
・バルブの接続は、所定のパッキンを使用し、接続後、ガス漏れのないことを確かめてから使用すること。圧力調整器の取付部、および配管設備等のガス漏れの恐れのある箇所は使用に先立って、必ず漏れチェックをすること。
・使用する時はバルブをゆっくりと全開にし、使用を停止する時や使用後容器が空になった時はバルブを全閉にすること。
・容器内の亜酸化窒素の液状部がなくなってくるとガスのみとなり液化ガスの特性として急激に圧力が下がってくるため、圧力が下がり始めたら新しい容器と交換すること。
・使用後は残圧を残してバルブをしっかり閉め、袋ナット、バルブ保護キャップを取付けて空容器置場に保管すること。
・職業的に数年にわたり本剤に曝露された女性で、自然流産率が高いことが報告されているので、本剤の使用に際しては換気等に十分注意すること14)15)16)
14.2 投与時の注意
14.2.1 麻酔開始時の注意
・吸気中酸素濃度は30%を越えることが望ましい。
・麻酔開始の時には、亜酸化窒素の肺内残気による希釈を防ぐために十分な脱窒素を行うこと。
14.2.2 麻酔終了時の注意
麻酔終了と同時に空気呼吸を開始すると酸素欠乏症に陥ることがあるので、5分以上の100%酸素を吸入させることが望ましい。
14.3 ガスの吸入にあたっての注意
本剤のカフ内への拡散によりカフ内圧が高まり、カフの変形、破裂、その他のトラブルが生じることがあるので十分注意すること17)18)

15. その他の注意

15.1 臨床使用に基づく情報
・亜酸化窒素は反復摂取の体験により、依存性が生じることがあるので注意が必要である19)
・本剤の体内閉鎖腔内圧上昇作用により、中耳内圧の上昇が起こり、鼓膜破裂に至ったとの報告がある3)
・亜酸化窒素の長期間(3ヶ月〜数年)の摂取下で、亜急性脊髄変性様の神経障害が観察されている1)2)20)
・仰臥位での開頭術において、本剤の体内閉鎖腔内圧上昇作用により術後に緊張性気脳症が発症したとの報告がある5)
・ヒトにおいては持続吸入開始4日目に顆粒球や血小板の減少等の骨髄機能障害が認められるが21)、吸入を中止すれば3〜4日で寛解がみられるとの報告がある。総じてヒトにおける連続吸入は、48時間以内にとどめるのが望ましいとされている22)23)24)

16. 薬物動態

16.2 吸収
ヒトにおける本剤の吸収は、吸入開始直後は大量(約1000mL/分)に吸収されるが時間の経過とともに急速に減少し、20〜30分でほぼ飽和に達し、以後はごく僅かの量しか吸収されない25)26)。また、排泄は、吸収と同じパターンをとる25)26)

18. 薬効薬理

18.1 作用機序
亜酸化窒素の作用機序はまだ明らかではないが、マウスを使用した研究においては、鎮痛作用にκオピオイド受容体が関与することが示唆されている27)
18.2 麻酔・鎮痛作用
・血液/ガス分配係数が0.47と小さいため、麻酔の導入・覚醒が速やかである。MAC104と麻酔効果は弱い(手術患者、マウス)が、聴覚、視覚、触覚や特に痛覚を抑制する(手術患者、サル)。鎮痛効果の発現は早く強力なので術後の鎮痛を得るために用いられる28)
・単独使用では、手術刺激により麻酔深度が浅くなる(手術患者)傾向があるので、他の静脈麻酔薬29)30)又は吸入麻酔薬と併用されている30)
18.3 呼吸器系への影響
嗅覚を抑制する。鼻喉頭気管の感受性を低めるので、喉頭けいれんの危険も少ない。気管支粘膜の分泌腺は刺激されず気管支せん毛運動を抑制しない。
18.4 循環器系への影響
低酸素症や高炭酸ガス血症がない限り、心拍数、心拍出量、血圧に変化はなく、心筋層感応性エピネフリンに対する感受性亢進もない(手術患者)。
18.5 消化器系への影響
麻酔導入初期には唾液の分泌が増加するが、麻酔が深くなるに伴い減少する。また低酸素症がない限り、食道と胃腸の蠕動は影響を受けず消化液の分泌も影響を受けない(ウサギ)。
18.6 泌尿器系への影響
腎機能、尿管蠕動、膀胱緊張力及び尿形成は影響を受けない。

19. 有効成分に関する理化学的知見

19.1. 亜酸化窒素

一般的名称 亜酸化窒素
一般的名称(欧名) Nitrous Oxide
分子式 N2O
分子量 44.01
融点 −90.7℃(101.3kPa)
物理化学的性状 本品1mLは温度20℃、気圧101.3kPaで、水1.5mL又はエタノール(95)0.4mLに溶け、ジエチルエーテル又は脂肪油にやや溶けやすい。本品1000mLは温度0℃、気圧101.3kPaで約1.96gである。
比重 1.53(空気=1、0℃、101.3kPa)
沸点 −88.5℃(101.3kPa)
分配係数 0.47
理化学知見その他 燃焼:本剤は、不燃性で室温では不活性であるが300℃以上では熱分解し、酸素を遊離して支燃性を有する。 蒸気圧:5100kPa(20℃)
KEGG DRUG D00102

20. 取扱い上の注意

・亜酸化窒素は医薬品と同時に液化高圧ガスの状態で充填されている高圧ガスでもあるため、薬機法及び高圧ガス保安法に則り、取扱いに注意すること。
・本剤は、支燃性があるので、十分、火気、可燃物から遠ざけること。
・容器は転倒、落下等の衝撃を防止する措置を講じること。
・使用済となった容器はすみやかに販売店に返却すること。
・容器は、「高圧ガス容器置場」であることを明示した所定の場所に、充填容器と使用済容器に区別して保管すること。
・容器は温度が高くなると容器圧力が上昇し、安全弁からガスを放出する。直射日光を避け、火気、暖房、ボイラー、ラジエーターなどの高温付近に置かず、通風換気のよい40℃以下の所で鎖またはロープ等で固定して保管すること。特に夏季は容器温度の上昇に注意すること。
・可燃性ガスと同一貯蔵室に置かないこと。また、容器置場の周囲2m以内は火気又は引火性もしくは発火性の物を置かないこと。
・貯蔵場所内は関係者以外の立ち入りを禁止すること。
・ガスがもれたり、安全弁からガスが吹き出した時はまず容器を立て、風通しのよい安全な場所に移し、販売店へ連絡すること。なお、ガス漏洩時は低温になった金属部分に触れると凍傷を起こすおそれがあるので、取り扱う時は、清潔で乾いた革手袋を使用すること。液が皮膚に付着すると凍傷を起こすことがあるので付着した場合には、温水につける等その部分を温め凍傷を防ぐこと。
・本剤は火災を引き起こした場合、火勢を強め、より激しく燃焼させるので速やかにガスの供給を絶つこと。消火は、水、粉、炭酸ガスなどが有効である。
容器の昇温を防ぐため、水で容器を冷却すること。
・容器は直射日光を避け、40℃以下で固定して安全に運搬すること。

22. 包装

耐圧金属製密封容器(2.5kg、7.5kg、30kg等)

23. 主要文献

  1. Flippo TS,Holder WD Jr, Arch Surg., 128, 1391-1395, (1993) »PubMed
  2. Chanarin I, CRC Critical Reviews in Toxicology., 179-213, (1982) »PubMed
  3. Vohra SB,Mason CJ, J Laryngol Otol., 108 (7), 582-583, (1994) »PubMed
  4. 奥田隆彦, 臨床麻酔, 15 (1), 95-96, (1991)
  5. 吉田一博ら, 日臨麻会誌, 4 (3), 235-238, (1984) »DOI
  6. 森田一之ら, 第40回北日本眼科学会予稿集, 52, (2002)
  7. Yang YF,et al, Br Med J., 325, 533-534, (2002)
  8. 大路正人ら, 日眼会誌, 114 (2), 110-115, (2010) »PubMed
  9. Fink BR,et al, Nature., 214, 146-148, (1967) »PubMed
  10. 盛生倫夫ら, 麻酔と蘇生, 29 (1), 45-56, (1993)
  11. Bodman RI,et al, Br Med J., 30, 1327-1330, (1960)
  12. 粕谷由子ら, 岐阜県医師会医学雑誌, 6 (1), 347-349, (1993)
  13. 土田真奈美ら, 麻酔, 46 (7), 959-961, (1997) »PubMed
  14. Baird PA, N Engl J Med., 327 (14), 1026-1027, (1992) »PubMed
  15. Rowland AS,et al, N Engl J Med., 327 (14), 993-997, (1992) »PubMed
  16. 日本麻酔学会, 麻酔, 32 (9), 1136-1139, (1983) »PubMed
  17. 藤井一維ら, 日歯麻誌, 23 (1), 150-158, (1995)
  18. 重松久夫ら, 日歯麻誌, 19 (3), 602-606, (1991)
  19. 鈴木勝昭ら, 臨床精神医学, 23 (12), 1531-1535, (1994)
  20. 清水貴子ら, 臨床神経学, 29 (9), 1129-1135, (1989) »PubMed
  21. Lassen HCA,et al, Lancet., 270, 527-530, (1956)
  22. Green CD, Clinical Anesthesia(nitrous oxide)., 37-44, (1964)
  23. Parbrook GD, Br J Anaesth., 39, 730-735, (1967) »PubMed
  24. Parbrook GD, Br Med J., 2, 480-482, (1964) »PubMed
  25. 上久保康夫, 麻酔, 7 (3), 273-277, (1958)
  26. 上塚昭逸, 熊本医学会雑誌, 33 (8), 1522-1528, (1959)
  27. Fukagawa H,et al, Br J Anaesth., 113 (6), 1032-1038, (2014) »PubMed
  28. Eastwood DW, Clinical Anesthesia(nitrous oxide)., 21-35, (1964)
  29. 今井利和, 麻酔, 9 (7), 476-496, (1960)
  30. 山村秀夫ら, 麻酔, 8 (3), 211-220, (1959)

24. 文献請求先及び問い合わせ先

文献請求先
株式会社星医療酸器 生産本部
〒121-0836 東京都足立区入谷7-11-18
電話:03-3899-6511
FAX:03-3899-8984
製品情報問い合わせ先
株式会社星医療酸器 生産本部
〒121-0836 東京都足立区入谷7-11-18
電話:03-3899-6511
FAX:03-3899-8984

26. 製造販売業者等

26.1 製造販売元
株式会社星医療酸器
〒121-0836 東京都足立区入谷7-11-18

[ KEGG | KEGG DRUG | KEGG MEDICUS ] 2025/07/23 版