<効能共通>
1.1 本剤投与により、結核、敗血症を含む重篤な感染症及び脱髄疾患の悪化等があらわれることがあり、本剤との関連性は明らかではないが、悪性腫瘍の発現も報告されている。本剤が疾病を完治させる薬剤でないことも含め、これらの情報を患者に十分説明し、患者が理解したことを確認した上で、治療上の有益性が危険性を上まわると判断される場合にのみ投与すること。また、本剤の投与において、重篤な副作用により、致命的な経過をたどることがあるので、緊急時に十分に措置できる医療施設及び医師のもとで投与し、本剤投与後に副作用が発現した場合には、主治医に連絡するよう患者に注意を与えること。[
1.2.1、
1.2.2、
1.4、
2.1、
2.2、
2.4、
8.2、
8.7、
9.1.1、
9.1.2、
9.1.4、
11.1.1、
11.1.2、
11.1.4、
15.1.4参照]
1.2 感染症
1.2.1 重篤な感染症
敗血症、真菌感染症を含む日和見感染症等の致死的な感染症があらわれることがあるため、十分な観察を行うなど感染症の発症に注意すること。[
1.1、
2.1、
9.1.1、
11.1.1参照]
1.2.2 結核
播種性結核(粟粒結核)及び肺外結核(髄膜、胸膜、リンパ節等)を含む結核が発症し、死亡例も認められている。結核の既感染者では症状の顕在化及び悪化のおそれがあるため、本剤投与に先立って結核に関する十分な問診及び胸部レントゲン検査に加え、インターフェロン-γ遊離試験又はツベルクリン反応検査を行い、適宜胸部CT検査等を行うことにより、結核感染の有無を確認すること。川崎病患者において、本剤の投与に緊急を要する場合には、少なくとも十分な問診、胸部レントゲン検査等を行うことにより、結核感染の有無を十分に確認すること。また、結核の既感染者には、抗結核薬の投与をした上で、本剤を投与すること。ツベルクリン反応等の検査が陰性の患者において、投与後活動性結核が認められた例も報告されている。[
1.1、
2.2、
8.2、
9.1.2、
11.1.2参照]
1.3 本剤投与に関連する反応
1.3.1 Infusion reaction
本剤投与中あるいは投与終了後2時間以内に発現するinfusion reactionのうち、重篤なアナフィラキシー(呼吸困難、気管支痙攣、血圧上昇、血圧低下、血管浮腫、チアノーゼ、低酸素症、発熱、蕁麻疹等)、痙攣があらわれることがある。本剤は緊急時に十分な対応のできる準備をした上で投与を開始し、投与終了後も十分な観察を行うこと。また、重篤なinfusion reactionが発現した場合には、本剤の投与を中止し、適切な処置を行うこと。[
2.3、
8.6、
8.8、
9.1.7、
11.1.3、
14.2.2参照]
1.3.2 遅発性過敏症(再投与の場合)
本剤投与後3日以上経過後に重篤なものを含む遅発性過敏症(筋肉痛、発疹、発熱、多関節痛、そう痒、手・顔面浮腫、嚥下障害、蕁麻疹、咽頭痛、頭痛等)があらわれることがある。再投与には遅発性過敏症の発現に備え、十分な観察を行うこと。[
2.3、
8.6、
9.1.7、
11.1.7参照]
1.4 脱髄疾患の臨床症状及び/又は画像診断上の悪化が、本剤を含むTNF抑制作用を有する薬剤であらわれることがある。脱髄疾患(多発性硬化症等)及びその既往歴のある患者には投与しないこととし、脱髄疾患を疑う患者や家族歴を有する患者に投与する場合には、適宜画像診断等の検査を実施するなど、十分な観察を行うこと。[
1.1、
2.4、
9.1.4、
11.1.4参照]
<関節リウマチ>
1.5 本剤の治療を行う前に、非ステロイド性抗炎症剤及び他の抗リウマチ薬等の使用を十分勘案すること。また、本剤についての十分な知識とリウマチ治療の経験をもつ医師が使用すること。
<ベーチェット病による難治性網膜ぶどう膜炎>
1.6 本剤の治療を行う前に、既存治療薬(シクロスポリン等)の使用を十分勘案すること。また、ベーチェット病による難治性網膜ぶどう膜炎の治療経験を持つ眼科医と本剤について十分な知識を有する内科等の医師が診断と治療に対して十分な連携をとり使用すること。
<乾癬>
1.7 本剤の治療を行う前に、既存の全身療法(紫外線療法を含む)の使用を十分勘案すること。また、乾癬の治療経験を持つ医師と本剤について十分な知識を有する医師が連携をとり使用すること。
<強直性脊椎炎>
1.8 本剤の治療を行う前に、既存治療薬(非ステロイド性抗炎症剤等)の使用を十分勘案すること。また、本剤についての十分な知識と強直性脊椎炎の診断及び治療の経験をもつ医師が使用すること。
<腸管型ベーチェット病、神経型ベーチェット病及び血管型ベーチェット病>
1.9 本剤の治療を行う前に、既存治療薬の使用を十分勘案すること。また、本剤についての十分な知識と腸管型ベーチェット病、神経型ベーチェット病又は血管型ベーチェット病治療の十分な知識・経験をもつ医師が使用すること。
<川崎病の急性期>
1.10 本剤の治療を行う前に、免疫グロブリン療法等の実施を十分勘案すること。また、本剤についての十分な知識と川崎病治療の経験をもつ医師が使用すること。
<クローン病>
1.11 本剤の治療を行う前に、既存治療薬の使用を十分勘案すること。また、本剤についての十分な知識とクローン病治療の経験をもつ医師が使用すること。
<潰瘍性大腸炎>
1.12 本剤の治療を行う前に、既存治療薬の使用を十分勘案すること。また、本剤についての十分な知識と潰瘍性大腸炎治療の経験をもつ医師が使用すること。
既存治療で効果不十分な下記疾患
○次のいずれかの状態を示す
クローン病の治療及び維持療法(既存治療で効果不十分な場合に限る)
○中等症から重症の
潰瘍性大腸炎の治療(既存治療で効果不十分な場合に限る)
<関節リウマチ>
5.1 過去の治療において、非ステロイド性抗炎症剤及び他の抗リウマチ薬(メトトレキサート製剤を含む)等による適切な治療を行っても、疾患に起因する明らかな臨床症状が残る場合に投与を行うこと。また、メトトレキサート製剤に本剤を上乗せすることのリスク・ベネフィットを判断した上で使用すること。
<ベーチェット病による難治性網膜ぶどう膜炎>
5.2 過去の治療において、他の薬物療法(シクロスポリン等)等の適切な治療を行っても、疾患に起因する明らかな臨床症状が残る場合に本剤の投与を行うこと。
<乾癬>
5.3 過去の治療において、既存の全身療法(紫外線療法を含む)等の適切な治療を行っても、皮疹が体表面積の10%以上に存在する場合、もしくは難治性の皮疹、関節症状又は膿疱を有する場合に本剤の投与を行うこと。
<強直性脊椎炎>
5.4 過去の治療において、他の薬物療法(非ステロイド性抗炎症剤等)等の適切な治療を行っても、疾患に起因する明らかな臨床症状が残る場合に本剤の投与を行うこと。
<腸管型ベーチェット病、神経型ベーチェット病、血管型ベーチェット病>
5.5 過去の治療において、他の薬物療法等の適切な治療を行っても、疾患に起因する明らかな臨床症状が残る場合に本剤の投与を行うこと。
<川崎病の急性期>
5.6 過去の治療において、免疫グロブリン療法等を行っても、疾患に起因する明らかな臨床症状が残る場合に本剤の投与を行うこと。
<クローン病>
5.7 過去の治療において、栄養療法、他の薬物療法(5-アミノサリチル酸製剤、ステロイド、アザチオプリン等)等の適切な治療を行っても、疾患に起因する明らかな臨床症状が残る場合に本剤の投与を行うこと。なお、寛解維持投与は漫然と行わず経過を観察しながら行うこと。
<潰瘍性大腸炎>
5.8 過去の治療において、他の薬物療法(5-アミノサリチル酸製剤、ステロイド、アザチオプリン等)等の適切な治療を行っても、疾患に起因する明らかな臨床症状が残る場合に本剤の投与を行うこと。寛解維持効果は確認されていないため、寛解導入後には本剤の継続投与の必要性を検討し、他の治療法への切替えを考慮すること。
<関節リウマチ>
通常、インフリキシマブ(遺伝子組換え)として、体重1kg当たり3mgを1回の投与量とし点滴静注する。初回投与後、2週、6週に投与し、以後8週間の間隔で投与を行うこと。なお、6週の投与以後、効果不十分又は効果が減弱した場合には、投与量の増量や投与間隔の短縮が可能である。これらの投与量の増量や投与間隔の短縮は段階的に行う。1回の体重1kg当たりの投与量の上限は、8週間の間隔であれば10mg、投与間隔を短縮した場合であれば6mgとする。また、最短の投与間隔は4週間とする。本剤は、メトトレキサート製剤による治療に併用して用いること。
<ベーチェット病による難治性網膜ぶどう膜炎>
通常、インフリキシマブ(遺伝子組換え)として、体重1kg当たり5mgを1回の投与量とし点滴静注する。初回投与後、2週、6週に投与し、以後8週間の間隔で投与を行うこと。
<乾癬>
通常、インフリキシマブ(遺伝子組換え)として、体重1kg当たり5mgを1回の投与量とし点滴静注する。初回投与後、2週、6週に投与し、以後8週間の間隔で投与を行うこと。なお、6週の投与以後、効果不十分又は効果が減弱した場合には、投与量の増量や投与間隔の短縮が可能である。これらの投与量の増量や投与間隔の短縮は患者の状態に応じて段階的に行う。1回の体重1kg当たりの投与量の上限は、8週間の間隔であれば10mg、投与間隔を短縮した場合であれば6mgとする。また、最短の投与間隔は4週間とする。
<強直性脊椎炎>
通常、インフリキシマブ(遺伝子組換え)として、体重1kg当たり5mgを1回の投与量とし点滴静注する。初回投与後、2週、6週に投与し、以後6〜8週間の間隔で投与を行うこと。
<腸管型ベーチェット病、神経型ベーチェット病、血管型ベーチェット病>
通常、インフリキシマブ(遺伝子組換え)として、体重1kg当たり5mgを1回の投与量とし点滴静注する。初回投与後、2週、6週に投与し、以後8週間の間隔で投与を行うこと。なお、6週の投与以後、効果不十分又は効果が減弱した場合には、体重1kg当たり10mgを1回の投与量とすることができる。
<川崎病の急性期>
通常、インフリキシマブ(遺伝子組換え)として、体重1kg当たり5mgを単回点滴静注する。
<クローン病>
通常、インフリキシマブ(遺伝子組換え)として、体重1kg当たり5mgを1回の投与量とし点滴静注する。初回投与後、2週、6週に投与し、以後8週間の間隔で投与を行うこと。なお、6週の投与以後、効果が減弱した場合には、投与量の増量又は投与間隔の短縮が可能である。投与量を増量する場合は、体重1kg当たり10mgを1回の投与量とすることができる。投与間隔を短縮する場合は、体重1kg当たり5mgを1回の投与量とし、最短4週間の間隔で投与することができる。
<潰瘍性大腸炎>
通常、インフリキシマブ(遺伝子組換え)として、体重1kg当たり5mgを1回の投与量とし点滴静注する。初回投与後、2週、6週に投与し、以後8週間の間隔で投与を行うこと。
<効能共通>
なお、本剤投与時には、1.2ミクロン以下のメンブランフィルターを用いたインラインフィルターを通して投与すること。
<効能共通>
7.1 本剤と他の生物学的製剤の併用について安全性及び有効性は確立していないので併用を避けること。
<関節リウマチ>
7.2 国内及び海外の臨床試験により、メトトレキサート製剤併用での有効性及び安全性が確認されている。国内臨床試験におけるメトトレキサート製剤の併用量は、6mg/週以上であり、メトトレキサート併用時の本剤に対する抗体の産生率は、メトトレキサート非併用時よりも低かった。なお、メトトレキサート製剤以外の抗リウマチ薬併用の有用性は確立していない。[
8.8、
16.1.5-
16.1.7参照]
7.3 初回、2週、6週投与までは10mg/kg等への増量投与は行わないこと。また、増量により感染症の発現頻度が高まる恐れがあるため、感染症の発現には十分注意すること。10mg/kg等の高用量を初回投与から行うことにより、重篤な感染症の発現頻度が高まったとの報告がある
1)。
7.4 本剤による効果は、通常投与開始から14週以内に得られることが確認されている。14週以内に全く効果が得られない場合や、増量や投与間隔の短縮を行っても効果が得られない場合には、現在の治療計画の継続を慎重に再考すること。
7.5 本剤とアバタセプト(遺伝子組換え)の併用は行わないこと。海外で実施したプラセボを対照とした臨床試験において、本剤を含む抗TNF製剤とアバタセプト(遺伝子組換え)の併用療法を受けた患者では併用による効果の増強は示されておらず、感染症及び重篤な感染症の発現率が本剤を含む抗TNF製剤のみによる治療を受けた患者での発現率と比べて高かった。
<乾癬>
7.6 初回、2週、6週投与までは10mg/kg等への増量投与は行わないこと。また、増量により感染症の発現頻度が高まる恐れがあるため、感染症の発現には十分注意すること。本剤による効果が全く認められない場合や、増量や投与間隔の短縮を行っても症状の改善が認められない場合には、現在の治療計画の継続を慎重に再考すること。
<腸管型ベーチェット病、神経型ベーチェット病、血管型ベーチェット病>
7.7 初回、2週、6週投与までは10mg/kgへの増量投与は行わないこと。増量を行っても、症状や検査所見の改善が認められない場合には、現在の治療計画の継続を慎重に再考すること。
<クローン病>
7.8 本剤を初回投与後、2週、6週と投与した後、臨床症状や内視鏡所見等により治療効果を評価すること。効果が認められない場合には、さらに継続投与を行っても効果が得られない可能性があり、他の治療法を考慮すること。また、10mg/kgへの増量や投与間隔の短縮は、5mg/kg 8週間隔投与による治療により効果は認められたものの、維持療法中に効果が減弱し、症状の再燃が認められた患者に対して行うこと。増量又は投与間隔の短縮を行っても効果が認められない場合には、他の治療法を考慮すること。
<潰瘍性大腸炎>
7.9 本剤を初回投与後、2週、6週と投与した後、8週時点で臨床症状や内視鏡所見等により治療効果を評価すること。効果が認められない場合には、さらに継続投与を行っても効果が得られない可能性があり、他の治療法を考慮すること。
8.1 本剤は血中濃度が長期にわたり持続するため(5mg/kg投与時は少なくとも8〜12週間)、この間には副作用の発現に注意すること。また、他の生物製剤との切り替えの際も注意すること。
8.2 本剤投与に先立って結核に関する十分な問診及び胸部レントゲン検査に加え、インターフェロン-γ遊離試験又はツベルクリン反応検査を行い、適宜胸部CT検査等を行うことにより、結核感染の有無を確認すること。川崎病患者において、本剤の投与に緊急を要する場合には、少なくとも十分な問診、胸部レントゲン検査等を行うことにより、結核感染の有無を十分に確認すること。
また、本剤投与中も、胸部レントゲン検査等の適切な検査を定期的に行うなど結核症の発現には十分に注意し、患者に対し、結核を疑う症状が発現した場合(持続する咳、発熱等)には速やかに主治医に連絡するよう説明すること。[
1.1、
1.2.2、
2.2、
9.1.2、
11.1.2参照]
8.3 本剤を含む抗TNF製剤によるB型肝炎ウイルスの再活性化が報告されているので、本剤投与に先立って、B型肝炎ウイルス感染の有無を確認すること。[
9.1.3参照]
8.4 本剤を投与した後、発熱、咳嗽、呼吸困難等の間質性肺炎の症状があらわれた場合には速やかに主治医に連絡するよう患者に説明すること。[
9.1.5、
11.1.5参照]
8.5 本剤治療中は、生ワクチン接種を行わないこと。また、本剤の投与と生ワクチン接種との間隔は十分にあけることが望ましい。やむを得ず生ワクチン接種から本剤の投与まで十分な間隔をあけることができない場合には、リスク・ベネフィットを慎重に判断した上で使用すること。生ワクチンによる感染症発現の可能性が否定できない。
8.6 本剤投与中はinfusion reactionに対する適切な薬剤治療(アドレナリン、副腎皮質ホルモン剤、抗ヒスタミン剤又はアセトアミノフェン等)や緊急処置を直ちに実施できるよう十分な体制のもとで、投与を開始し、投与終了後も十分な観察を行うこと。また、遅発性過敏症(3日以上経過後)があらわれることがあるので、患者に十分説明し、発疹、発熱、そう痒、手・顔面浮腫、蕁麻疹、頭痛等が発現した場合、主治医に連絡するよう指示するなど適切な対応をとること。[
1.3.1、
1.3.2、
2.3、
8.8、
9.1.7、
11.1.3、
11.1.7、
14.2.2参照]
8.7 臨床試験における投与後3年間の追跡調査で、悪性リンパ腫等の悪性腫瘍の発現が報告されている。慢性炎症性疾患のある患者に長期の免疫抑制剤を投与した場合、感染症や悪性リンパ腫の発現の危険性が高まることが報告されている。また、本剤を含む抗TNF製剤を使用した小児や若年成人においても、悪性リンパ腫等の悪性腫瘍が報告されている。本剤に起因するか明らかでないが、悪性腫瘍等の発現には注意すること。[
1.1、
15.1.4参照]
8.9 本剤を投与した患者において、乾癬が悪化又は新規発現したとの報告がある。重症な場合には本剤投与の中止を考慮すること。
9.1 合併症・既往歴等のある患者
9.1.1 感染症(重篤な感染症を除く)の患者又は感染症が疑われる患者
9.1.2 結核の既感染者(特に結核の既往歴のある患者及び胸部レントゲン上結核治癒所見のある患者)又は結核感染が疑われる患者
(1)結核の既感染者は、問診及び胸部レントゲン検査等を定期的(投与開始後2ヵ月間は可能な限り1ヵ月に1回、以降は適宜必要に応じて)に行うことにより、結核症状の発現に十分に注意すること。結核を活動化させるおそれがある。[
1.1、
1.2.2、
2.2、
8.2、
11.1.2参照]
(2)結核の既往歴を有する場合及び結核が疑われる場合には、結核の診療経験がある医師に相談すること。以下のいずれかの患者には、原則として抗結核薬の投与をした上で、本剤を投与すること。
・胸部画像検査で陳旧性結核に合致するか推定される陰影を有する患者
・結核の治療歴(肺外結核を含む)を有する患者
・インターフェロン-γ遊離試験やツベルクリン反応検査などの検査により、既感染が強く疑われる患者
・結核患者との濃厚接触歴を有する患者
9.1.3 B型肝炎ウイルスキャリアの患者又は既往感染者(HBs抗原陰性、かつHBc抗体またはHBs抗体陽性)
肝機能検査値や肝炎ウイルスマーカーのモニタリングを行うなど、B型肝炎ウイルスの再活性化の徴候や症状の発現に注意すること。本剤を含む抗TNF製剤が投与されたB型肝炎ウイルスキャリアの患者又は既往感染者において、B型肝炎ウイルスの再活性化が報告されている。なお、これらの報告の多くは、他の免疫抑制作用をもつ薬剤を併用投与した患者に起きている。[
8.3参照]
9.1.4 脱髄疾患が疑われる徴候を有する患者及び家族歴のある患者
(1)脱髄疾患が疑われる徴候を有する患者については、神経学的評価や画像診断等の検査を行い、慎重に危険性と有益性を評価した上で本剤適用の妥当性を検討し、投与後は十分に観察を行うこと。脱髄疾患発現のおそれがある。[
1.1、
1.4、
2.4、
11.1.4参照]
(2)脱髄疾患の家族歴のある患者は、適宜画像診断等の検査を実施し、十分に注意すること。脱髄疾患発現のおそれがある。[
1.1、
1.4、
2.4、
11.1.4参照]
9.1.5 間質性肺炎の既往歴のある患者
定期的に問診を行うなど、注意すること。間質性肺炎が増悪又は再発することがある。[
8.4、
11.1.5参照]
9.1.6 重篤な血液疾患(汎血球減少、再生不良性貧血等)の患者又はその既往歴のある患者
9.1.7 本剤投与経験のある患者
9.5 妊婦
9.5.1 妊婦又は妊娠している可能性のある女性には、治療上の有益性が危険性を上まわると判断される場合にのみ投与すること。本剤投与による生殖発生毒性試験は実施されていない(本剤がヒトTNFα特異的で動物実験が実施できないため)。また、マウスTNFαを中和する抗体投与により、マウスを用いて検討された結果では、催奇形性、母体毒性、胎児毒性は認められていない。
9.5.2 本剤は胎盤通過性があるとの報告がある。従って、本剤の投与を受けた患者からの出生児においては、感染のリスクが高まる可能性があるため、生ワクチンを接種する際には注意が必要である。
9.6 授乳婦
治療上の有益性及び母乳栄養の有益性を考慮し、授乳の継続又は中止を検討すること。
9.7 小児等
<クローン病及び潰瘍性大腸炎>
9.7.1 6歳未満の幼児等を対象とした国内臨床試験は実施していないため、これらの患者には治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合のみ投与し、副作用の発現に十分注意すること。
<川崎病の急性期>
9.7.2 1歳未満の乳児を対象とした国内臨床試験は実施していないため、これらの患者には治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合のみ投与し、副作用の発現に十分注意すること。
<上記以外の効能>
9.7.3 小児等を対象とした臨床試験は実施していない。
9.8 高齢者
感染症等の副作用の発現に留意し、十分な観察を行うこと。一般に生理機能(免疫機能等)が低下している。
11.1 重大な副作用
次の副作用があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止するなど適切な処置を行うこと。
11.1.1 感染症(3.5%)
敗血症、肺炎(ニューモシスティス肺炎を含む)、真菌感染症、脳炎、髄膜炎(リステリア菌性髄膜炎を含む)、骨髄炎等の重篤な感染症(日和見感染症を含む)があらわれることがある。なお、死亡に至った症例の多くは、感染症によるものであった。[
1.1、
1.2.1、
2.1、
9.1.1参照]
11.1.2 結核(0.3%)
結核の発症は、投与初期からあらわれる可能性がある。また、肺外結核(髄膜、胸膜、リンパ節等)もあらわれることがあることからその可能性も十分考慮した観察を行うこと。[
1.1、
1.2.2、
2.2、
8.2、
9.1.2参照]
11.1.3 重篤なinfusion reaction(0.6%)
ショック、アナフィラキシー(呼吸困難、気管支痙攣、血圧上昇、血圧低下、血管浮腫、チアノーゼ、低酸素症、発熱、蕁麻疹等の重篤な副作用)、痙攣があらわれることがある。また、infusion reactionに引き続き脳出血、脳梗塞があらわれることがある。[
1.3.1、
2.3、
8.6、
8.8、
9.1.7、
14.2.2参照]
11.1.4 脱髄疾患(0.1%)
11.1.5 間質性肺炎(0.5%)
発熱、咳嗽、呼吸困難等の呼吸器症状に十分に注意し、異常が認められた場合には、速やかに胸部レントゲン検査、胸部CT検査及び血液ガス検査等を実施し、本剤及びメトトレキサート製剤の投与を中止するとともにニューモシスティス肺炎との鑑別診断(β-Dグルカンの測定等)を考慮に入れ、副腎皮質ホルモン剤の投与等の適切な処置を行うこと。主としてメトトレキサート製剤併用時において、間質性肺炎を発現し致命的な経過をたどった症例が報告されている。[
8.4、
9.1.5参照]
11.1.6 肝機能障害(0.1%)
AST、ALT、γ-GTP、LDH等の著しい上昇を伴う重篤な肝機能障害があらわれることがある。
11.1.7 遅発性過敏症(0.6%)
筋肉痛、発疹、発熱、多関節痛、そう痒、手・顔面浮腫、嚥下障害、蕁麻疹、咽頭痛、頭痛等を伴う遅発性過敏症(3日以上経過後)があらわれることがある。[
1.3.2、
2.3、
8.6、
9.1.7参照]
11.1.8 抗dsDNA抗体の陽性化を伴うループス様症候群(0.4%)
抗dsDNA抗体が陽性化し、関節痛、筋肉痛、皮疹等の症状があらわれることがある。このような場合には、投与を中止すること。
11.1.9 重篤な血液障害(0.1%)
汎血球減少、血小板減少、白血球減少、顆粒球減少、血球貪食症候群、血小板減少性紫斑病があらわれることがある。[
9.1.6参照]
11.1.10 横紋筋融解症(頻度不明)
脱力感、筋肉痛、CK上昇、血中及び尿中ミオグロビン上昇に注意し、このような症状があらわれた場合には投与を中止し、適切な処置を行うこと。
11.2 その他の副作用
次の副作用があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止するなど適切な処置を行うこと。
| 5%以上 | 1%以上〜5%未満 | 1%未満 | 頻度不明 |
精神・神経系 | 頭痛 | 浮動性めまい、感覚鈍麻、異常感覚 | 頭部不快感、体位性めまい、知覚過敏、失神、嗅覚錯誤、味覚異常、神経痛、不随意性筋収縮、片頭痛、振戦、運動過多、ジスキネジー、脳梗塞、協調運動異常、不眠症、不安、神経過敏、うつ病、感情不安定、多幸気分、錯乱、傾眠(眠気) | 多発性神経障害、ニューロパシー、てんかん発作 |
血液 | | 貧血(鉄欠乏性貧血、溶血性貧血)、カリウム減少、血小板数増加 | リンパ節炎、脾腫、単球減少症、リンパ球減少症、リンパ球増加症、単球増加症、白血球増加症、好中球増加症、好酸球増加症、赤血球異常、低カリウム血症、好酸球数減少、骨髄球数増加、アミラーゼ増加、総蛋白減少、総蛋白増加、アルブミン減少、クロール減少、ナトリウム減少、血沈亢進、リンパ球形態異常(異形リンパ球)、リンパ節症、後骨髄球数増加、尿酸増加、カリウム増加、CRP増加、ヘマトクリット減少 | 血栓性血小板減少性紫斑病 |
循環器 | | ほてり、潮紅、高血圧、低血圧、動悸、血圧低下、血圧上昇 | 血腫、蒼白、末梢性虚血、徐脈、不整脈、頻脈、心室性期外収縮、狭心症、心不全、心拍数増加 | 血管炎(IgA血管炎) |
呼吸器 | 気道感染、咽喉頭炎 | 呼吸困難、気管支炎、咳嗽、鼻炎、副鼻腔炎 | 発声障害、咽喉絞扼感、鼻出血、胸膜炎、胸水、喘息、気管支痙攣、胸部X線(CT)異常、PaO2低下、KL-6増加、扁桃炎 | 間質性肺線維症 |
肝臓 | | ALP増加 | 脂肪肝、肝炎、胆嚢炎、肝腫大、高ビリルビン血症 | |
泌尿器 | 血尿(尿潜血) | 尿路感染、尿中ブドウ糖陽性、尿中蛋白陽性、BUN増加、尿沈渣 | 腎盂腎炎、排尿困難、尿中白血球陽性、頻尿、クレアチニン増加、尿中ウロビリノーゲン増加、膀胱炎 | |
消化器 | 悪心 | 嘔吐、下痢、腹痛、便秘、胃腸炎 | 上腹部痛、嚥下障害、逆流性食道炎、腸閉塞、腸管狭窄、消化不良、血便、腸管穿孔、胃炎、痔核、肛門周囲痛、憩室炎、腹部膨満、胃ポリープ、胃潰瘍、腹膜炎、腹部不快感、腸炎、胃不快感、軟便、放屁 | |
消化器 | | 口内炎、歯周病 | 口腔内潰瘍形成、歯痛、口唇炎、口腔内痛、齲歯、唾液腺炎、口渇、舌炎 | |
皮膚 | 発疹(膿疱性皮疹、斑状皮疹、斑状丘疹状皮疹、小水疱性皮疹、そう痒性皮疹、湿疹、紅斑性皮疹、頭部粃糠疹、丘疹、血管炎性皮疹) | 白癬、皮膚炎(脂漏性皮膚炎、水疱性皮膚炎、乾癬様皮膚炎、ざ瘡様皮膚炎)、毛包炎、そう痒症、蕁麻疹、紅斑(発赤)、多汗症 | 麦粒腫、せつ、皮膚真菌感染、皮膚裂傷、皮膚嚢腫、ざ瘡、皮膚乾燥、皮膚変色、皮膚剥脱、脱毛症、乾癬、斑状出血、点状出血、皮膚潰瘍、脂漏、過角化、光線過敏性反応、皮膚腫瘤、多毛症、アトピー性皮膚炎 | |
投与部位 | | | 注射部位反応(注射部位疼痛、注射部位炎症、注射部位腫脹、注射部位出血、注射部位そう痒感) | |
眼 | | | 眼内炎、涙器障害、角膜炎、眼瞼炎、視覚障害、眼痛、眼球乾燥、羞明、強膜炎、緑内障、眼圧上昇、眼脂、結膜炎、結膜充血、視野欠損、網膜静脈閉塞 | |
耳 | | | 耳痛、回転性めまい、耳鳴、耳不快感(耳閉感)、耳感染(外耳炎、中耳炎、迷路炎) | |
筋・骨格系 | | 関節痛、筋痛 | 関節腫脹、背部痛、筋骨格硬直、頚部痛、関節炎、骨痛、腱炎、筋力低下、滑液包炎、CK増加、筋骨格痛 | 皮膚筋炎、多発性筋炎 |
抵抗機構 | 自己抗体陽性(抗DNA抗体陽性、抗カルジオリピン抗体陽性、抗核抗体陽性)、ウイルス感染(帯状疱疹、単純ヘルペス、インフルエンザ様疾患、インフルエンザ) | 膿瘍 | 免疫グロブリン増加、爪周囲炎、限局性感染、サイトメガロウイルス抗原陽性、食道カンジダ症、蜂巣炎 | ニューモシスティス症、サルモネラ症、サルコイドーシス、非結核性マイコバクテリア感染(非結核性抗酸菌症)、クリプトコッカス症 |
代謝 | | 高コレステロール血症 | 糖尿病、高血糖、抗利尿ホルモン不適合分泌、コレステロール減少、トリグリセリド増加 | |
その他 | 発熱 | 悪寒、熱感、倦怠感、疲労、胸痛、疼痛、浮腫(末梢性浮腫、顔面浮腫、全身性浮腫、眼窩周囲浮腫、血管浮腫、咽頭浮腫、喉頭浮腫) | 腟感染、勃起不全、乳房肥大、亀頭包皮炎、不規則月経、腟出血、性器分泌物(白帯下)、無力症、不快感、胸部不快感、嚢胞、食欲不振、食欲亢進、過敏症、体重増加、体重減少、子宮平滑筋腫、リビドー減退、末梢腫脹 | |
15.1 臨床使用に基づく情報
15.1.1 本剤の臨床試験は、国内では62週間(1年)まで、海外では102週間(2年)までの期間で実施されている。また、本剤の長期使用に関する特定使用成績調査は2年間までの期間で実施されている。これらの期間を超えた本剤の長期投与時の安全性は確立していない。
15.1.2 150例の中等度から重度のうっ血性心不全の患者(左室駆出率35%以下で、NYHA心機能分類III/IV度)に、プラセボ及び本剤5、10mg/kgを初回、2週後、6週後に3回投与した海外での臨床試験を実施した。その結果、本剤投与群、特に10mg/kg群において心不全症状の悪化及び死亡が高率に認められたとの報告がある。初回投与後28週時点において、10mg/kg群で3例、5mg/kg群で1例の死亡が認められ、プラセボ群では死亡例はなかった。また、症状悪化による入院は、10mg/kg群51例中11例、5mg/kg群50例中3例、プラセボ群49例中5例であった。さらに、1年後の評価における死亡例は、10mg/kg群で8例であったのに対し、5mg/kg群及びプラセボ群ではそれぞれ4例であった。[
2.5参照]
15.1.3 乾癬患者において、本剤と紫外線療法又は既存の全身治療との併用に対する有効性と安全性は確立していない(使用経験がない)。
15.1.4本剤の臨床試験及び臨床試験終了後3年間又は5年間の追跡調査において、悪性リンパ腫、乳癌、黒色腫、扁平上皮癌、直腸腺癌、基底細胞癌及び皮膚癌等が169例に報告されている。本剤投与と悪性腫瘍発現の関連性を検討するため、実際に悪性腫瘍が認められた例数並びに大規模なデータベースから抽出した同一背景を有する一般集団からの予測例数を表1〜3に示した。この予測例数は、症例毎の性、年齢、追跡期間等よりNIH SEERデータベース(National Institute of Health(NIH)Surveillance,Epidemiology,and End Results(SEER)database)から推定した値を用いた。表1のクローン病患者での比較では、本剤投与群における悪性腫瘍の予測例数14.49例に対し観察例数は21例であった。一方、プラセボ群においては予測例数0.20例に対し観察例数は1例であった。[
1.1、
8.7参照]
表1.クローン病全試験での悪性腫瘍の観察例数及び予測例数
クローン病全試験※a | プラセボ投与例 |
全例追跡期間(人・年) | 悪性腫瘍観察例数 | 悪性腫瘍予測例数 |
a.悪性リンパ腫 | 97 | 0 | 0.01 |
b.非黒色腫性皮膚癌 | 96 | 1 | NA |
c.上記以外の悪性腫瘍 | 96 | 1 | 0.19 |
悪性腫瘍計(a+c)※b | 96 | 1 | 0.20 |
クローン病全試験※a | レミケード投与例 |
全例追跡期間(人・年) | 悪性腫瘍観察例数 | 悪性腫瘍予測例数 |
a.悪性リンパ腫 | 4094 | 2 | 0.65 |
b.非黒色腫性皮膚癌 | 4085 | 8 | NA |
c.上記以外の悪性腫瘍 | 4055 | 19 | 13.85 |
悪性腫瘍計(a+c)※b | 4055 | 21 | 14.49 |
また、関節リウマチ患者での悪性腫瘍の観察例数及び予測例数を表2に示した。本剤投与群では予測例数52.37例に対し観察例数は50例、プラセボ群では、予測例数13.61例に対し観察例数は10例であった。
表2.関節リウマチ全試験での悪性腫瘍の観察例数及び予測例数
関節リウマチ全試験※a | プラセボ投与例 |
全例追跡期間(人・年) | 悪性腫瘍観察例数 | 悪性腫瘍予測例数 |
a.悪性リンパ腫 | 1626 | 0 | 0.46 |
b.非黒色腫性皮膚癌 | 1611 | 6 | NA |
c.上記以外の悪性腫瘍 | 1604 | 10 | 13.16 |
悪性腫瘍計(a+c)※b | 1604 | 10 | 13.61 |
関節リウマチ全試験※a | レミケード投与例 |
全例追跡期間(人・年) | 悪性腫瘍観察例数 | 悪性腫瘍予測例数 |
a.悪性リンパ腫 | 6391 | 9 | 1.79 |
b.非黒色腫性皮膚癌 | 6357 | 24 | NA |
c.上記以外の悪性腫瘍 | 6343 | 41 | 50.80 |
悪性腫瘍計(a+c)※b | 6331 | 50 | 52.37 |
また、全臨床試験における悪性腫瘍の観察例数及び予測例数を表3に示した。本剤投与群の予測例数105.18例に対し観察例数は106例、プラセボ群では予測例数19.46例に対して観察例数が15例であった。
表3.全試験での悪性腫瘍の観察例数及び予測例数
全試験※a | プラセボ投与例 |
全例追跡期間(人・年) | 悪性腫瘍観察例数 | 悪性腫瘍予測例数 |
a.悪性リンパ腫 | 2906 | 1 | 0.72 |
b.非黒色腫性皮膚癌 | 2887 | 12 | NA |
c.上記以外の悪性腫瘍 | 2877 | 14 | 18.75 |
悪性腫瘍計(a+c)※b | 2877 | 15 | 19.46 |
全試験※a | レミケード投与例 |
全例追跡期間(人・年) | 悪性腫瘍観察例数 | 悪性腫瘍予測例数 |
a.悪性リンパ腫 | 17852 | 14 | 4.13 |
b.非黒色腫性皮膚癌 | 17721 | 67 | NA |
c.上記以外の悪性腫瘍 | 17720 | 92 | 101.30 |
悪性腫瘍計(a+c)※b | 17707 | 106 | 105.18 |
15.2 非臨床試験に基づく情報
本剤はヒト及びチンパンジーのTNFαのみに結合能を有し、ラットやカニクイザル等の一般的に動物実験に使用される動物種のTNFαと結合しない。このため、がん原性試験は実施されていない。
16.1 血中濃度
<クローン病>
16.1.1 反復投与における薬物動態
国内クローン病患者に本剤を5mg/kgの用量で3回(0、2、6週)持続静脈内投与後、10週評価時に効果が認められた患者を対象に14週以降8週間隔で投与した時の薬物動態を検討した。8週間隔投与例の投与前の血清中インフリキシマブ濃度(メジアン)は維持された。
クローン病患者にレミケード5mg/kgを複数回持続静脈内投与した時の8週間隔投与群の血清中インフリキシマブ濃度推移(メジアン,n=31〜38,0,22,46週は投与前および投与終了1時間後も表示)
薬物動態パラメータ | 0週C1H | 14週Cpre | 30週Cpre | 54週 |
投与量 | 5mg/kg (n=31〜38) | 平均値±標準偏差 | 80.4±16.9 | 3.1±2.4 | 2.6±2.1 | 2.0±1.6 |
メジアン | 78.9 | 3.1 | 2.6 | 2.0 |
16.1.2 増量投与における薬物動態
5mg/kg 8週間隔投与で効果が維持できない患者の5mg/kg投与8週後の血清中インフリキシマブ濃度(メジアン)は0.30μg/mLであったが、これらの患者に10mg/kgを投与した場合、10mg/kg投与8週後の血清中インフリキシマブ濃度(メジアン)は1.29μg/mLまで上昇した。
5mg/kg 8週間隔投与で効果が維持できないクローン病患者にレミケード10mg/kgを複数回持続静脈内投与した時の血清中インフリキシマブ濃度推移(メジアン,n=26〜39,0,16週は投与前および投与終了1時間後も表示)
薬物動態パラメータ | 増量 0週Cpre | 増量 0週C1H | 増量 8週Cpre | 増量 16週Cpre | 増量 40週 |
投与量 | 10mg/kg (n=26〜39) | 平均値±標準偏差 | 1.45±2.67 | 199.23±41.71 | 3.24±5.10 | 3.73±5.85 | 4.10±5.58 |
メジアン | 0.30 | 191.24 | 1.29 | 1.31 | 2.18 |
16.1.3 投与間隔短縮時における薬物動態
5mg/kg 8週間隔投与で効果が維持できない患者19例に5mg/kg 4週間隔投与を行ったときの4週後の血清中濃度は、投与間隔短縮前と比較して増加した。また、血清中濃度は40週まで維持された。
クローン病患者にレミケード5mg/kgを4週間隔で持続静脈内投与した時の血清中インフリキシマブ濃度推移(メジアン,n=4〜19,4週間隔投与移行時点を基点とした)
薬物動態パラメータ※ | 短縮 0週Cpre | 短縮 0週C1H | 短縮 4週Cpre | 短縮 8週Cpre | 短縮 40週 |
投与量 | 5mg/kg (n=4〜19) | 平均値±標準偏差 | 1.83±2.74 | 85.50±8.65 | 6.49±6.15 | 8.96±7.25 | 14.73±9.20 |
メジアン | 0.80 | 86.75 | 4.90 | 6.90 | 8.70 |
16.1.4 単回及び反復投与における薬物動態
5mg/kgの単回投与では最高血中濃度(Cmax)の中央値は118μg/mL、分布容積(Vd値)の中央値は3.0L、消失半減期は9.5日であった。臨床試験において、患者の性、年齢、体重、肝及び腎機能等の背景別の薬物動態的な差は認められなかった。副腎皮質ホルモン剤を使用した患者では、使用しない患者に対してVd値の有意な増加(17%)が認められたが、副腎皮質ホルモン剤が電解質バランスに影響するために、体液貯留へ作用した結果と考えられた。5mg/kgの単回投与を受けた20例では2例に本剤に対する抗体が検出された。瘻孔を形成している疾患の患者に本剤5mg/kgを初回、2週後、6週後に反復投与した後の蓄積性はなかった。本剤のクリアランスは、患者のクレアチニン値あるいはAST、ALTと相関は認められず、腎機能・肝機能障害者における動態の差は認められなかった。5mg/kgの反復投与を受けた31例では1例に本剤に対する抗体が検出された(外国人における成績)。[
8.8参照]
外瘻を有するクローン病患者にレミケードを3回持続静脈内投与した時の血清中インフリキシマブ濃度推移(メジアン±四分位間領域)
薬物動態パラメータ | 0週C1H | 2週Cpre | 6週Cpre | 14週 |
投与量 | 5mg/kg (n=28〜30) | メジアン | 168 | 33.7 | 21.8 | 5.4 |
四分位間領域 | 113-206 | 26.7-46.4 | 13.8-33.3 | 1.4-10.6 |
10mg/kg (n=29〜32) | メジアン | 359.5 | 75.1 | 50.6 | 17.6 |
四分位間領域 | 274-419 | 54.1-93.7 | 31.7-69.1 | 9.3-23.6 |
<関節リウマチ>
16.1.5 反復投与における薬物動態
メトトレキサート併用下(6mg/週以上)で、本剤3、10mg/kgを初回、2週後、6週後に反復投与したときの血清中濃度は用量にほぼ比例して増加した(二重盲検比較試験)。また、性、年齢、副腎皮質ホルモン剤あるいは非ステロイド性抗炎症剤併用による背景別の薬物動態の差はみられなかったが、肥満度(BMI)の増加に伴って血清中濃度が増加する傾向がみられた。肝又は腎機能障害を有する患者に薬物動態の差が存在するか否かは不明である。3mg/kgの反復投与を受けた49例では2例、10mg/kgの反復投与を受けた50例では4例に、本剤に対する抗体が検出された。[
7.2、
8.8参照]
関節リウマチ患者にレミケードをメトトレキサート併用下(6mg/週以上)3回持続静脈内投与した時の血清中インフリキシマブ濃度推移(メジアン)
薬物動態パラメータ | 0週C1H | 2週Cpre | 6週Cpre | 14週 |
投与量 | 3mg/kg (n=49) | 平均値±標準偏差 | 47.9±11.3 | 11.5±4.1 | 5.6±4.1 | 0.8±1.1 |
メジアン | 47.5 | 10.8 | 4.8 | 0.5 |
10mg/kg (n=48〜51) | 平均値±標準偏差 | 168.4±48.6 | 35.6±15.2 | 22.3±13.7 | 5.4±5.8 |
メジアン | 168.3 | 33.7 | 20.6 | 3.6 |
16.1.6 増量投与における薬物動態
メトトレキサート併用下(6mg/週以上)で、本剤3mg/kgを初回、2週後、6週後に持続静脈内投与し、引き続き3mg/kg、6mg/kgあるいは10mg/kgを8週間隔で反復投与したときの血清中濃度は用量にほぼ比例して増加した(増量試験)。3mg/kg投与を受けた99例では27例、6mg/kg投与を受けた104例では24例、10mg/kg投与を受けた104例では13例に、本剤に対する抗体が検出された。[
7.2、
8.8参照]
薬物動態パラメータ | 0週C1H | 14週C1H | 22週Cpre | 54週 |
投与量 | 3mg/kg (n=86〜99) | 平均値±標準偏差 | 57.77±14.23 | 60.82±13.60 | 0.85±0.98 | 0.90±1.13 |
メジアン | 58.14 | 60.35 | 0.50 | 0.44 |
6mg/kg (n=91〜104) | 平均値±標準偏差 | 58.86±11.74 | 110.94±23.83 | 2.18±2.30 | 2.88±2.80 |
メジアン | 58.52 | 113.41 | 1.81 | 2.28 |
10mg/kg (n=95〜104) | 平均値±標準偏差 | 58.23±11.34 | 188.70±39.61 | 4.73±4.78 | 6.50±6.26 |
メジアン | 57.16 | 186.12 | 3.13 | 5.47 |
本剤3mg/kgあるいは6mg/kgを8週間隔で反復投与したとき、投与22週時点でACR基準20%改善に達しなかった症例に対して、投与間隔を4週に短縮した場合の推定血清中インフリキシマブ濃度(定常状態の血清中トラフ濃度)注1)は、3mg/kgで3.35[0.83〜10.46]、6mg/kgで7.19[1.27〜21.62]μg/mL(中央値[最小値〜最大値])であった。
注1)増量試験の患者(327例、5104点)を対象とした母集団薬物動態解析(NONMEM version VI)に基づく薬物動態パラメータを用いたシミュレーション結果
16.1.7 反復投与における薬物動態
欧米第III相試験(ATTRACT試験)において、メトトレキサート併用下(12.5mg/週以上)で、本剤3、10mg/kgを初回、2週後、6週後に持続静脈内投与し、引き続き4週間隔あるいは8週間隔で102週間反復投与した維持治療期にも蓄積性はなく、安定した血清中濃度を長期間にわたり維持することが観察された。3mg/kgの反復投与(4週間隔)を受けた73例では10例、3mg/kgの反復投与(8週間隔)を受けた71例では8例、10mg/kgの反復投与(4週間隔)を受けた74例では1例、10mg/kgの反復投与(8週間隔)を受けた77例では6例に、本剤に対する抗体が検出された(外国人における成績)。[
7.2、
8.8参照]
注2)本剤の承認最大用量は1回10mg/kgである。
<ベーチェット病による難治性網膜ぶどう膜炎>
16.1.8 反復投与における薬物動態
本剤5、10mg/kgを初回、2週後、6週後に投与し、引き続き8週間隔で46週後まで反復投与したときの血清中濃度は投与量の増加に伴って高くなり、安定した血清中濃度を長期間にわたり維持することが観察された。本試験では5、10mg/kgの反復投与を受けた8例において本剤に対する抗体は検出されなかった。[
8.8参照]
ベーチェット病による難治性網膜ぶどう膜炎患者にレミケードを複数回持続静脈内投与した時の血清中インフリキシマブ濃度推移(メジアン)
薬物動態パラメータ | 0週C1H | 2週Cpre | 6週Cpre | 30週Cpre | 54週 |
投与量 | 5mg/kg (n=3〜4) | 平均値±標準偏差 | 114.9±20.3 | 15.9±9.9 | 14.3±7.7 | 6.7±4.5 | 6.8±4.7 |
メジアン | 119.0 | 15.7 | 13.3 | 6.3 | 7.0 |
10mg/kg (n=3〜4) | 平均値±標準偏差 | 193.1±17.2 | 32.5±22.7 | 26.0±17.6 | 5.9±6.3 | 4.8±6.1 |
メジアン | 185.9 | 32.9 | 32.1 | 5.2 | 2.6 |
注3)本剤の承認最大用量は1回5mg/kgである。
<乾癬>
16.1.9 反復投与における薬物動態
尋常性乾癬患者と乾癬性関節炎患者に本剤5mg/kgを初回、2週後、6週後に投与し、引き続き8週間隔で62週後まで投与したとき、安定した血清中濃度を維持することが観察された(検証的試験及び継続投与試験)。5mg/kgの反復投与を受けた35例中8例に、本剤に対する抗体が検出された。尋常性乾癬患者、乾癬性関節炎患者、膿疱性乾癬患者及び乾癬性紅皮症患者に本剤5mg/kgを初回、2週後、6週後に投与し、引き続き8週間隔で46週後まで投与したとき、14週後から54週後までの投与8週後の血清中濃度(中央値)は0.39μg/mLから2.27μg/mLの範囲で推移した(長期投与試験)。5mg/kgの反復投与を受けた64例中19例に、本剤に対する抗体が検出された。[
8.8参照]
尋常性乾癬患者と関節症性乾癬患者にレミケード5mg/kgを複数回持続静脈内投与したときの血清中インフリキシマブ濃度推移(メジアン,n=27〜35)
薬物動態パラメータ | 0週C1H | 14週Cpre | 30週Cpre | 70週 |
投与量 | 5mg/kg (n=27〜35) | 平均値±標準偏差 | 97.18±19.40 | 3.34±2.95 | 2.16±2.18 | 2.22±2.26 |
メジアン | 98.33 | 2.45 | 1.48 | 2.09 |
16.1.10 増量投与における薬物動態
5mg/kg 8週間隔投与で効果が維持できない尋常性乾癬、乾癬性関節炎、膿疱性乾癬、乾癬性紅皮症患者の5mg/kg投与8週後の血清中インフリキシマブ濃度(メジアン)は定量限界(0.1μg/mL)未満であったが、これら患者に10mg/kgを投与した場合、10mg/kg投与40週後(8週間隔投与)の血清中インフリキシマブ濃度(メジアン)は1.10μg/mLまで上昇した。
5mg/kg 8週間隔投与で効果が維持できない乾癬患者にレミケード10mg/kgを複数回持続静脈内投与した時の血清中インフリキシマブ濃度推移(メジアン,n=44〜51)
薬物動態パラメータ | 増量 0週Cpre | 増量 0週C1H | 増量 8週Cpre | 増量 16週Cpre | 増量 40週 |
投与量 | 10mg/kg (n=51〜44) | 平均値±標準偏差 | 1.45±2.23 | 230.99±51.77 | 2.70±4.05 | 3.18±4.30 | 3.60±4.56 |
メジアン | 0.00 | 237.99 | 0.00 | 0.47 | 1.10 |
本剤5mg/kg 8週間隔投与で効果が維持できない乾癬患者に対して、本剤6mg/kgを4週間隔で反復投与した場合の推定血清中インフリキシマブ濃度(定常状態の血清中トラフ濃度)注4)は、4.63[0.00〜37.69]μg/mL(中央値[最小値〜最大値])であった。
注4)増量試験の患者(58例、790点)を対象とした母集団薬物動態解析(NONMEM ver.7.2.0)に基づく薬物動態パラメータを用いたシミュレーション結果
<強直性脊椎炎>
16.1.11 反復投与における薬物動態
本剤5mg/kgを初回、2週後、6週後に投与し、引き続き6週間隔で42週後まで投与したとき、安定した血清中濃度を維持することが観察された。5mg/kgの反復投与を受けた33例では2例に、本剤に対する抗体が検出された。[
8.8参照]
強直性脊椎炎患者にレミケード5mg/kgを複数回持続静脈内投与した時の血清中インフリキシマブ濃度推移(メジアン,n=32〜33)
薬物動態パラメータ | 0週C1H | 24週Cpre | 48週 |
投与量 | 5mg/kg (n=32〜33) | 平均値±標準偏差 | 91.76±21.10 | 7.40±4.33 | 6.96±4.48 |
メジアン | 86.28 | 7.01 | 7.37 |
<潰瘍性大腸炎>
16.1.12 反復投与における薬物動態
本剤5mg/kgを初回、2週後、6週後に投与し、引き続き8週間隔で22週後まで投与したとき、安定した血清中濃度を維持することが観察された。5mg/kgの反復投与を受けた104例では10例に本剤に対する抗体が検出された。[
8.8参照]
潰瘍性大腸炎患者にレミケード5mg/kgを複数回持続静脈内投与した時の血清中インフリキシマブ濃度推移(メジアン,n=62〜104)
薬物動態パラメータ | 0週C1H | 6週Cpre | 14週Cpre | 22週Cpre | 30週 |
投与量 | 5mg/kg (n=62〜104) | 平均値±標準偏差 | 95.88±21.50 | 11.09±7.19 | 3.45±3.98 | 2.52±2.73 | 2.46±2.73 |
メジアン | 93.72 | 10.88 | 2.31 | 1.46 | 1.46 |
16.1.13 反復投与における薬物動態
ACT1試験において、本剤5mg/kgを初回、2週後、6週後に点滴静脈内投与し、引き続き8週間隔で46週後まで投与したとき、安定した血清中濃度を長期間にわたり維持することが観察された。5mg/kgの反復投与を受けた116例では9例に本剤に対する抗体が検出された(外国人における成績)。[
8.8参照]
<腸管型ベーチェット病、神経型ベーチェット病、血管型ベーチェット病>
16.1.14 反復投与における薬物動態
本剤5mg/kgを初回、2週後、6週後に投与し、引き続き8週間隔で46週後まで反復投与したとき、病型別に差は認められず、安定した血清中濃度を維持することが観察された。5mg/kgの反復投与を受けた18例において本剤に対する抗体は検出されなかった。[
8.8参照]
腸管型、神経型及び血管型ベーチェット病患者にレミケード5mg/kgを複数回持続静脈内投与した時の血清中インフリキシマブ濃度推移(メジアン)
・腸管型ベーチェット病
薬物動態パラメータ | 0週C1H | 14週Cpre | 30週Cpre | 54週 |
投与量 | 5mg/kg (n=8〜11) | 平均値±標準偏差 | 114.36±27.22 | 8.59±4.53 | 6.72±3.98 | 6.51±3.96 |
メジアン | 104.55 | 7.78 | 7.30 | 6.77 |
・神経型ベーチェット病
薬物動態パラメータ | 0週C1H | 14週Cpre | 30週Cpre (n=2) | 54週 (n=2) |
投与量 | 5mg/kg (n=2〜3) | 平均値±標準偏差 | 116.05±29.09 | 9.45±4.09 | 6.99 | 7.95 |
メジアン | 130.00 | 8.40 | 6.99 | 7.95 |
・血管型ベーチェット病
薬物動態パラメータ | 0週C1H | 14週Cpre | 30週Cpre | 54週 |
投与量 | 5mg/kg (n=4) | 平均値±標準偏差 | 127.09±38.00 | 8.86±3.27 | 4.95±1.43 | 5.62±1.38 |
メジアン | 117.69 | 8.18 | 4.73 | 5.90 |
16.1.15 増量投与における薬物動態
本剤5mg/kg 8週間隔投与で効果が維持できない腸管型ベーチェット病患者3例に本剤10mg/kgを投与したときの8週後の血清中濃度は、増量前と比較して増加した。
10mg/kgの投与を受けた3例において本剤に対する抗体は検出されなかった。[
8.8参照]
薬物動態パラメータ※ | 0週Cpre | 0週C1H | 8週Cpre | 8週C1H (n=1) | 16週 (n=1) |
投与量 | 10mg/kg (n=1〜3) | 平均値±標準偏差 | 4.38±3.41 | 209.69±51.45 | 11.51±6.54 | 170.77 | 5.06 |
メジアン | 4.39 | 190.57 | 9.77 | − | − |
<川崎病の急性期>
16.1.16 単回投与における薬物動態
本剤5mg/kgを単回静脈内投与したときの最高血中濃度(Cmax)は69.80±9.26μg/mL(平均値±標準偏差)、69.73μg/mL(中央値)、消失半減期は179.3±71.2時間(平均値±標準偏差)、183.8時間(中央値)であった。本剤投与56日後には16例中11例の血清中インフリキシマブ濃度が定量下限値(0.1μg/mL)未満であった。5mg/kgの単回投与を受けた16例では7例に本剤に対する抗体が検出された。[
8.8参照]
16.3 分布
ヒトTNFαトランスジェニックマウス及び同系統野生型マウスに、35S標識体インフリキシマブ約10mg/kgを静脈内投与したときの臓器・組織内放射能濃度はいずれも心臓、肺、脾臓に高く、腎臓、肝臓、前肢及び後肢に中程度、消化管では比較的低かった。
16.4 代謝
ヒトTNFαトランスジェニックマウスに35S標識体インフリキシマブ約10mg/kgを静脈内投与したところ、血清中には主として未変化体が検出され、代謝物は検出されなかった。また、ヒトIgG1と同様に細網内皮系細胞等により体内で分解再吸収されるものと推測される。
16.5 排泄
ヒトTNFαトランスジェニックマウスに、35S標識体インフリキシマブ約10mg/kgを静脈内投与したところ、投与14日目までの尿及び糞中へは投与放射能量のそれぞれ11.5%及び12.2%が排泄され、総排泄率は23.7%であった。
16.6 特定の背景を有する患者
16.6.1 小児
<クローン病>
(1)本剤を5mg/kgの用量で3回(0、2、6週)持続静脈内投与後、10週評価時に効果が認められた患者を対象に14週以降8週間隔で投与した時の薬物動態を検討した。8週間隔投与例の投与前の血清中インフリキシマブ濃度(メジアン)は維持された。5mg/kgの反復投与を受けた14例において本剤に対する抗体は検出されなかった。[
8.8参照]
小児クローン病患者にレミケード5mg/kgを複数回持続静脈内投与した時の血清中インフリキシマブ濃度推移(メジアン,n=8〜14,0,22,46週は投与前および投与終了1時間後も表示↑:レミケード投与)
薬物動態パラメータ | 0週C1H | 14週Cpre | 30週Cpre | 54週 |
投与量 | 5mg/kg (n=8〜14) | 平均値±標準偏差 | 91.19±10.60 | 4.71±3.36 | 4.28±3.32 | 4.19±3.69 |
メジアン | 91.48 | 4.54 | 3.75 | 3.62 |
(2)増量投与における薬物動態
本剤5mg/kg 8週間隔投与で効果が維持できない患者5例に本剤10mg/kgを投与したときの8週後の血清中濃度は、増量前と比較して増加した。10mg/kgの投与を受けた5例において本剤に対する抗体は検出されなかった。[
8.8参照]
薬物動態パラメータ※ | 増量 0週Cpre | 増量 0週C1H | 増量 8週Cpre | 増量 16週 |
投与量 | 10mg/kg (n=3〜5) | 平均値±標準偏差 | 2.85±3.74 | 173.87±8.44 | 4.57±5.11 | 7.82±6.93 |
メジアン | 0.38 | 173.20 | 1.16 | 9.61 |
<潰瘍性大腸炎>
(3)本剤5mg/kgを初回、2週後、6週後に投与し、引き続き8週間隔で22週後まで投与したとき、安定した血清中濃度を維持することが観察された。5mg/kgの反復投与を受けた21例では本剤に対する抗体は検出されなかった。[
8.8参照]
小児の潰瘍性大腸炎の被験者にレミケード5mg/kgを複数回持続静脈内投与した時の血清中インフリキシマブ濃度推移(メジアン,n=14〜21)
薬物動態パラメータ | 0週C1H | 6週Cpre | 14週Cpre | 22週Cpre | 30週 |
投与量 | 5mg/kg (n=14〜21) | 平均値±標準偏差 | 96.18±15.65 | 12.34±7.51 | 3.30±3.03 | 2.68±3.02 | 2.74±3.52 |
メジアン | 97.17 | 10.35 | 2.58 | 1.54 | 1.34 |
17.1 有効性及び安全性に関する試験
<クローン病>
17.1.1 国内第II相試験(単回投与)
活動期クローン病患者25例を対象とし、本剤1、3、5、10mg/kgを単回投与した。本剤5mg/kgを投与した群のうち、IOIBD指標(投与4週後の値が投与前より2点以上減少もしくは1点以下)では5例中4例、CDAI指標(投与4週後の値が投与前より70ポイント以上減少)では4例中3例が有効であった
2)。
副作用発現頻度(臨床検査値異常変動は除く)は、本剤5mg/kg投与群で71.4%(5/7例)であった。主な副作用は、眠気42.9%(3/7例)であった。
17.1.2 国内第III相試験(維持投与)
本剤5mg/kgを初回、2週後、6週後に投与し10週までに改善(CDAI値が25%以上かつ70ポイント以上の減少)を認めた中等から重度のクローン病患者57例に6週以降は8週間隔で46週まで投与し、効果が消失した場合はそれ以降4週間隔で50週まで投与した。54週後の改善率は82.5%(47/57例)、寛解率(CDAI値が150未満)は61.4%であった(4週間隔投与を行った症例も含む)。なお、4週移行例の最終評価時の改善率は83.3%(15/18例)、寛解率は55.6%(10/18例)であった。
副作用発現頻度は、89.1%(57/64例)であった。主な副作用は、DNA抗体陽性53.1%(34/64例)であった。
17.1.3 国内第III相試験(増量投与)
本剤5mg/kg 8週間隔投与では効果が維持できないクローン病患者39例を対象とし、本剤10mg/kg 8週間隔で32週まで投与した。増量8週時点における10mg/kg投与前からのCDAI値の減少量(中央値及び平均値±標準偏差)は95.0及び103.5±87.2(33例)であり、増量40週時点では95.0及び109.7±98.8(26例)であった。
副作用発現頻度は、本剤5mg/kg 8週間隔投与群で91.5%(65/71例)及び本剤10mg/kg 8週間隔投与群で53.8%(21/39例)であった。主な副作用は、5mg/kg群でDNA抗体陽性25.4%(18/71例)、鼻咽頭炎22.5%(16/71例)、10mg/kg群で鼻咽頭炎10.3%(4/39例)、DNA抗体陽性10.3%(4/39例)であった。
17.1.4 国内試験(増量投与含む)(小児)
本剤5mg/kgを初回、2週後、6週後に投与し10週までに改善(PCDAIが15ポイント以上減少、かつ30以下)を認めた中等症から重症の小児のクローン病患者14例に6週以降は8週間隔で46週まで投与し、効果が減弱した場合はそれ以降10mg/kgを8週間隔で46週まで投与した。54週後の改善率は91.7%(11/12例)、寛解率(PCDAI値が10以下)は75.0%(9/12例)であった(10mg/kg 8週間隔投与の増量投与を行った症例も含む)。本剤5mg/kg 8週間隔で効果が減弱した5例において、本剤10mg/kg 8週間隔で投与したとき、増量8週後の寛解率は60.0%(3/5例)であった。
副作用発現頻度は、64.3%(9/14例)であった。主な副作用は、二本鎖DNA抗体陽性50.0%(7/14例)であった。
<中等度から重度の活動期にあるクローン病患者>
17.1.5 海外第II/III相試験(単回投与)
既存治療で効果不十分な中等度から重度の活動期にあるクローン病患者に、プラセボ及び本剤5mg/kgを単回投与した。その結果、有効率(投与4週後におけるCDAI値が投与前より70ポイント以上減少)はプラセボ群17%(4/24例)に対して、5mg/kg群では81%(22/27例)であり、有意差が認められた
3)。
副作用発現頻度は、本剤投与群で44.4%(12/27例)及びプラセボ群で24.0%(6/25例)であった。主な副作用は、本剤投与群でめまい7.4%(2/27例)、疲労感7.4%(2/27例)であった。
17.1.6 海外第III相試験(維持投与)(ACCENTI試験)
本剤5mg/kgを単回投与し、2週に改善(CDAI値が25%以上かつ70ポイント以上減少)が認められた活動期クローン病患者に、その後2、6週、以降は8週間隔で46週までプラセボ又は本剤5mg/kg又は10mg/kgを投与した。その結果、初回投与後に認められた効果が消失するまでの期間は本剤維持群で有意に長く(p=0.002)、その期間はプラセボ維持群19週に対して、5mg/kg、10mg/kg維持群ではそれぞれ38週(p=0.002)、54週以上(p<0.001)であった
4)。
副作用発現頻度は、本剤5mg/kg維持群で65.3%(126/193例)、本剤10mg/kg維持群で58.9%(113/192例)、プラセボ維持群で53.2%(100/188例)であった。主な副作用は、5mg/kg群で頭痛14.0%(27/193例)、不眠症10.9%(21/193例)、10mg/kg群で頭痛16.1%(31/192例)、咳嗽10.4%(20/192例)であった。
<外瘻を有するクローン病患者>
17.1.7 海外第III相試験(3回投与)
既存治療で効果不十分な外瘻を有するクローン病患者に、プラセボ及び本剤5mg/kgを3回(初回、2週後、6週後)投与した。その結果、有効率(連続した2回の観察時に半数以上の瘻孔が閉鎖)はプラセボ群26%(8/31例)に対して、5mg/kg群では68%(21/31例)であり、有意差が認められた
5)。
副作用発現頻度は、本剤5mg/kg投与群で48.4%(15/31例)、本剤10mg/kg投与群で53.1%(17/32例)、プラセボ群で45.2%(14/31例)であった。主な副作用は、5mg/kg群で頭痛16.1%(5/31例)、10mg/kg群で疲労感12.5%(4/32例)であった。
17.1.8 海外第III相試験(維持投与)(ACCENTII試験)
本剤5mg/kgを初回、2週後、6週後に投与し、10週、14週で改善(半数以上の瘻孔が閉鎖)が認められた外瘻を有するクローン病患者に、その後8週間隔で46週までプラセボ又は本剤5mg/kgを投与した。その結果、14週以降の効果消失までの期間(中央値)はプラセボ維持群14週間に対して、5mg/kg維持群は40週間を超え、5mg/kg維持群ではプラセボ維持群と比較して有意に長く効果を維持できることが示された(p<0.001)
6)。
副作用発現頻度は、本剤5mg/kg維持群で47.1%(65/138例)及びプラセボ維持群で60.4%(87/144例)であった。主な副作用は、5mg/kg群で頭痛8.0%(11/138例)、疲労7.2%(10/138例)、悪心6.5%(9/138例)であった。
<関節リウマチ>
17.1.9 国内第II/III相試験
メトトレキサートに効果不十分な関節リウマチ患者を対象とし、メトトレキサート併用下(6mg/週以上)で、プラセボ及び本剤3mg/kgを初回、2週後、6週後に反復投与した(二重盲検比較試験)。その結果、14週後のACR基準20%以上改善率は、プラセボ群23.4%(11/47例)に対して、本剤投与群61.2%(30/49例)であり、有意差が認められた(p<0.001)。
また、この二重盲検比較試験に参加した患者に対して、二重盲検比較試験の用量に関わらず引き続き3mg/kgを8週間隔で4回投与し、初回投与後54週まで評価した(長期投与試験)。その結果、最終投与8週後のACR基準20%以上改善率は53.3%(24/45例)であり、有効性の維持が認められた。
副作用発現頻度(随伴症状)は、本剤3mg/kg投与群で49.0%(24/49例)及びプラセボ群で51.1%(24/47例)であった。主な副作用(随伴症状)は、3mg/kg群で発熱12.2%(6/49例)であった。
17.1.10 国内第III相試験(増量試験)
メトトレキサート併用下(6mg/週以上)で本剤3mg/kgを初回、2週後、6週後に投与し、引き続き3mg/kg、6mg/kgあるいは10mg/kgを8週間隔で反復投与した。成績は以下のとおりであった。
(1)増量による効果
54週後のACR-N改善(平均値±SD)は3mg/kg群(99例)51.3±32.1、6mg/kg群(104例)53.8±34.4、10mg/kg群(104例)58.3±31.3であり、10mg/kg群では3mg/kg群に対して有意差が認められた(p=0.024)。10週後にACR基準20%以上改善を満たさなかった患者の54週後のACR基準20%以上改善率は3mg/kg投与37.5%(9/24例)、6mg/kg投与61.5%(16/26例)、10mg/kg投与61.5%(16/26例)であった。
(2)関節破壊の進展防止
関節破壊進展を手及び足のX線スコア(Sharp Score)で評価した結果、本剤投与後の1年間のスコア変化は3mg/kg群0.00、6mg/kg群0.48、10mg/kg群0.00(いずれも中央値)であった。
副作用発現頻度は、86.1%(179/208例)であった。主な副作用は、DNA抗体陽性53.8%(112/208例)であった。
17.1.11 海外第III相試験(ATTRACT試験)
メトトレキサート製剤に効果不十分な関節リウマチ患者を対象とし、メトトレキサート併用下(12.5mg/週以上)で、プラセボ及び本剤3mg/kgを初回、2週後、6週後に投与し、引き続き8週間隔で54週間反復投与した。成績は下記のとおりであった
7)。
(1)症状の軽減
54週後のACR基準20%以上改善率は、プラセボ投与群(MTX単独群)17.0%(15/88例)に対し、本剤投与群では41.9%(36/86例)であり、有意差が認められた(p<0.001)。
(2)関節破壊の進展防止
投与前から54週までの関節破壊進展を手及び足のX線スコア(Sharp Score)で評価した結果、プラセボ群が4.00(中央値)悪化したのに対して、本剤投与群は0.50(中央値)であり、有意に関節破壊の進行が抑制された(p<0.001)。
(3)身体機能障害の改善
投与前から54週までの日常生活動作(ADL)の改善をHAQスコア(活動制限と介護の必要性等を評価する指標)で評価した結果、プラセボ群0.1(中央値)に対して本剤投与群0.3(中央値)で有意差が認められた(p<0.001)。また、健康関連QOL(SF-36)の身体的健康サマリースコアの変化は、プラセボ群0.6(中央値)に対して本剤投与群1.2(中央値)であり、有意差が認められた(p=0.002)。
副作用発現頻度は、本剤投与群で62.5%(55/88例)及びプラセボ群で44.2%(38/86例)であった。主な副作用は、本剤投与群で頭痛14.8%(13/88例)であった。
<ベーチェット病による難治性網膜ぶどう膜炎>
17.1.12 国内第III相試験
ベーチェット病による難治性網膜ぶどう膜炎患者を対象とし、本剤5mg/kgを初回、2週後、6週後に反復投与した。その結果、14週間あたりの眼発作回数(平均値±SD)は、投与前10.17±10.60回から投与後0.66±0.98回となり、有意に減少した(p<0.001)。また、14週間あたりの眼発作回数は、投与前後において12例中11例で減少し、そのうち7例で消失した。
副作用発現頻度は、100%(12/12例)であった。主な副作用は、DNA抗体陽性58.3%(7/12例)、皮膚炎41.7%(5/12例)であった。
<乾癬>
17.1.13 国内第III相試験
尋常性乾癬患者と乾癬性関節炎患者(局面型皮疹が体表面積の10%以上、かつPASI(Psoriasis Area and Severity Index)スコアが12以上)を対象とし、プラセボ及び本剤5mg/kgを初回、2週後、6週後に投与した(検証的試験)。その結果、10週後のPASIスコア75%改善率は、プラセボ群0.0%(0/19例)に対して、本剤投与群68.6%(24/35例)であり、有意差が認められた(p<0.001)。
尋常性乾癬患者(局面型皮疹が体表面積の10%以上、かつPASIスコアが12以上)、乾癬性関節炎患者(腫脹関節数及び疼痛関節数が5以上、かつCRPが1.5mg/dL以上又は朝のこわばりが45分以上)、膿疱性乾癬患者及び乾癬性紅皮症患者を対象とし、本剤5mg/kgを初回、2週後、6週後に投与し、引き続き8週間隔で46週後まで投与した(長期投与試験)。その結果、最終評価において、尋常性乾癬患者のPASIスコア75%改善率は54.1%(20/37例)、乾癬性関節炎患者のACR基準20%改善率は83.3%(10/12例)、膿疱性乾癬患者と乾癬性紅皮症患者の全般改善度が「消失又は改善」の割合はそれぞれ57.1%(4/7例)、87.5%(7/8例)であった。
副作用発現頻度は、本剤投与群で85.7%(30/35例)及びプラセボ群で36.8%(7/19例)であった。主な副作用は、本剤投与群でDNA抗体陽性68.6%(24/35例)であった。
17.1.14 国内第III相試験(増量投与)
本剤5mg/kg 8週間隔投与では効果が維持できない乾癬患者51例(尋常性乾癬患者31例、乾癬性関節炎患者8例、膿疱性乾癬患者7例、乾癬性紅皮症患者5例)を対象とし、本剤10mg/kg 8週間隔で32週まで投与した。PASIスコアは本剤5mg/kg投与前のスコアを基準値とした。増量24週時点におけるPASIスコア75%改善率は尋常性乾癬患者では40.7%(11/27例)、乾癬性関節炎患者では42.9%(3/7例)、膿疱性乾癬患者では33.3%(2/6例)、乾癬性紅皮症患者では40.0%(2/5例)であった。
副作用発現頻度は、74.5%(38/51例)であった。主な副作用は、二本鎖DNA抗体陽性49.0%(25/51例)であった。
17.1.15 海外第III相試験(IMPACT2試験)
乾癬性関節炎患者(腫脹関節数及び疼痛関節数が5以上、かつCRPが1.5mg/dL以上又は朝のこわばりが45分以上)を対象とし、プラセボ及び本剤5mg/kgを初回、2週後、6週後に投与し、引き続き8週間隔で46週後まで投与した。その結果、14週後のACR基準20%改善率はプラセボ群11.0%(11/100例)に対して、本剤投与群58.0%(58/100例)であり、有意差が認められた(p<0.001)。関節破壊進展を手及び足のX線スコア(Modified Sharp Score)で評価した結果、24週後のスコア変化(平均値±標準偏差)はプラセボ群0.82±2.62に対して、本剤投与群−0.70±2.53であり、有意差が認められた(p<0.001)
8)9)。
副作用発現頻度は、本剤投与群で48.2%(92/191例)及びプラセボ群で26.5%(26/98例)であった(22週まではプラセボ、24週以降は本剤を投与した症例を含む)。主な副作用は、本剤投与群で上気道感染11.0%(21/191例)であった。
<強直性脊椎炎>
17.1.16 国内第III相試験
既存治療で効果不十分な強直性脊椎炎患者を対象とし、本剤5mg/kgを初回、2週後、6週後に投与し、引き続き6週間隔で投与した(非盲検下)。その結果、24週後、48週後のASAS(Assessment in Ankylosing Spondylitis)基準20%以上改善率はそれぞれ97.0%(32/33例)、96.9%(31/32例)であった。
副作用発現頻度は、87.9%(29/33例)であった。主な副作用は、DNA抗体陽性48.5%(16/33例)であった。
17.1.17 海外第III相試験(ASSERT試験)
既存治療で効果不十分な強直性脊椎炎患者を対象とし、プラセボ及び本剤5mg/kgを初回、2週後、6週後に投与し、引き続き6週間隔で投与した。その結果、24週後のASAS基準20%以上改善率はプラセボ群19.2%(15/78例)に対し、本剤投与群では61.2%(123/201例)であり、有意差が認められた(p<0.001)
10)。
副作用発現頻度は、本剤投与群で64.9%(131/202例)及びプラセボ群で48.0%(36/75例)であった。主な副作用は、本剤投与群で頭痛7.9%(16/202例)であった。
<潰瘍性大腸炎>
17.1.18 国内第III相試験
既存治療(ステロイド、アザチオプリン等)で効果不十分な潰瘍性大腸炎患者208例を対象とし、プラセボ及び本剤5mg/kgを初回、2週後、6週後に投与し、引き続き8週間隔で22週後まで投与し、30週後まで有効性を評価した。その結果、主要有効性評価項目である8週後のMayoスコア改善率は、プラセボ群35.6%(37/104例)に対し、本剤投与群54.8%(57/104例)であり、本剤は有意に高い改善率を示した(p=0.005)。
副作用発現頻度は、本剤投与群で73.1%(76/104例)及びプラセボ群で59.6%(62/104例)であった。主な副作用は、本剤投与群でDNA抗体陽性51.9%(54/104例)であった。
17.1.19 国内小児試験
既存治療(ステロイド、アザチオプリン等)で効果不十分な小児の潰瘍性大腸炎患者21例を対象とし、本剤5mg/kgを初回、2週後、6週後に投与し、引き続き8週間隔で22週後まで投与し、30週後まで有効性を評価した。その結果、CAIスコア寛解率は、投与2週で60.0%(12/20名)となり、投与6、8週共に80.0%(16/20名)と増加し、投与10〜30週までの間では64.3〜87.5%で推移した。PUCAIスコア寛解率は、投与2週で35.0%(7/20名)となり、投与6、8週共に40.0%(8/20名)と増加し、その後、投与10〜30週までの間では28.6〜42.9%で推移した。また、Mayoスコアの改善率及び寛解率は、投与30週でそれぞれ42.9%(3/7例)、14.3%(1/7例)であった。
副作用発現頻度は、71.4%(15/21例)であった。主な副作用は、二本鎖DNA抗体陽性57.1%(12/21例)であった。
17.1.20 海外第III相試験(ACT1試験)
既存治療(ステロイド、アザチオプリン等)で効果不十分な潰瘍性大腸炎患者242例に対し、プラセボ及び本剤5mg/kgを初回、2週後、6週後に投与し、引き続き8週間隔で46週まで投与し、54週後まで有効性を評価した。その結果、主要有効性評価項目である8週後のMayoスコア改善率は、プラセボ群37.2%(45/121例)に対し、本剤投与群69.4%(84/121例)であり、本剤は有意に高い改善率を示した(p<0.001)
11)。
副作用発現頻度は、本剤投与群で48.8%(59/121例)及びプラセボ群で42.1%(51/121例)であった。主な副作用は、本剤投与群で頭痛9.9%(12/121例)であった。
<腸管型ベーチェット病、神経型ベーチェット病、血管型ベーチェット病>
17.1.21 国内第III相試験
既存治療で効果不十分な腸管型、神経型及び血管型ベーチェット病患者を対象とし、本剤5mg/kgを初回、2週後、6週後に投与し、引き続き8週間隔で46週まで投与した。その結果、腸管型ベーチェット病患者での投与30週後の著効例の割合(内視鏡検査で潰瘍の治癒又は瘢痕化を確認でき、臨床症状が消失し、完全寛解となった患者の割合)は54.5%(6/11例)であった。神経型ベーチェット病患者での投与30週後の著効例の割合(急性型:頭部MRI画像検査で高信号域の消失及び髄液中の細胞数及びIL-6濃度が投与前よりも低下し、神経症状が消失した患者の割合、慢性進行型:頭部MRI画像検査で脳幹部の更なる萎縮がなく、髄液中のIL-6濃度が投与前よりも低下し、神経症状の悪化がない患者の割合)は33.3%(1/3例)であった。血管型ベーチェット病患者での投与30週後の著効例の割合(PET/CTなどの画像検査結果及び臨床症状が投与前と悪化せず、CRP及びESRが投与前と比較して低下した患者の割合)は100.0%(4/4例)であった。
副作用発現頻度は、66.7%(12/18例)であった。主な副作用は、二本鎖DNA抗体陽性44.4%(8/18例)であった。
17.1.22 国内第III相試験(増量投与)
本剤5mg/kg 8週間隔で効果が維持できない腸管型ベーチェット病患者3例において、本剤10mg/kg 8週間隔で投与したとき、臨床症状や炎症マーカー等の改善傾向が認められた。
なお、3例に副作用は認められなかった。
<川崎病の急性期>
17.1.23 国内第III相試験
初回の免疫グロブリン療法で効果不十分な川崎病患者31例に対し、ポリエチレングリコール処理人免疫グロブリン(VGIH)2g/kg及び本剤5mg/kgを単回投与し、有効性を評価した。主要有効性評価項目である治験薬投与開始48時間以内の解熱率の点推定値(95%信頼区間)は、本剤群76.7%(56.6〜96.7%)、VGIH群37.0%(11.9〜62.1%)であった。また、冠動脈病変発現率はVGIH群20.0%(3/15例)に対し、本剤投与群6.3%(1/16例)であった。
副作用発現頻度は、本剤投与群で68.8%(11/16例)及びVGIH投与群で66.7%(10/15例)であった。主な副作用は、本剤投与群で二本鎖DNA抗体陽性68.8%(11/16例)であった。
18.1 作用機序
インフリキシマブはクローン病や関節リウマチの病態形成に密接に関与しているTNFαの作用を阻害する。その機序は可溶性TNFαの生物活性を中和するとともに、膜結合型TNFα発現細胞をCDC(補体依存性細胞傷害)あるいはADCC(抗体依存性細胞媒介型細胞傷害)により傷害すること、ならびに受容体に結合したTNFαを解離させることによりTNFαの作用を阻害すると考えられている。
18.2 可溶性TNFα結合作用
可溶性TNFαへの結合定数は1.04×10
10 M
−1であった
12)(in vitro)。
18.3 IL-6産生抑制作用
TNFα刺激による線維芽細胞からのIL-6産生を抑制した
13)(in vitro)。
18.4 膜結合型TNFα発現細胞に対する傷害作用
ヒトIgG
1のFc領域を有することから、CDC及びADCCにより膜結合型TNFαを発現するTNFα産生細胞を傷害した
12)(in vitro)。
18.5 受容体結合TNFα解離作用
TNFα受容体に結合したTNFαとも結合し、TNFαを受容体から解離させ、接着分子(ICAM-1、VCAM-1)の発現を抑制した(in vitro)。
18.6 TNFα生物活性に対する中和作用
ヒトTNFαトランスジェニックマウスの死亡率軽減作用が認められた
13)。
医薬品リスク管理計画を策定の上、適切に実施すること。