通常、成人にはエキセメスタンとして1日1回25mgを食後に経口投与する。
8.1 本剤はホルモン療法剤であり、がんに対する薬物療法について十分な知識・経験を持つ医師のもとで、本剤による治療が適切と判断される患者についてのみ使用すること。
8.2 本剤は末梢アロマターゼを阻害することにより治療効果を発揮するものであり、活発な卵巣機能を有する閉経前の患者ではアロマターゼを阻害する効果は不十分であると予想されること、並びに閉経前の患者では使用経験がないことを考慮して、閉経前患者に対し使用しないこと。
8.3 本剤の投与によって、骨粗鬆症、骨折が起こりやすくなるので、骨密度等の骨状態を定期的に観察することが望ましい。
8.4 本剤の使用による嗜眠、傾眠、無力(症)及びめまいが報告されており、このような症状がある場合、機械操作や自動車の運転はさせないよう十分注意すること。
11.1 重大な副作用
次の副作用があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止するなど適切な処置を行うこと。
11.1.1 肝炎(頻度不明)、肝機能障害(頻度不明)、黄疸(頻度不明)
肝炎、AST、ALT、Al-P、γ-GTP等の上昇を伴う肝機能障害、黄疸があらわれることがある。
11.2 その他の副作用
次の副作用があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止するなど適切な処置を行うこと。
| 5%以上 | 0.1〜5%未満 | 頻度不明 |
精神神経系 | 多汗、めまい | しびれ(感)、頭痛、知覚障害、ふらつき(感)、不眠(症)、抑うつ、不安、手根管症候群 | 傾眠 |
消化器 | 悪心 | 食欲不振、腹痛、嘔吐、腸管閉塞、のどの通過障害感、胃もたれ感、心窩部痛(心窩部の疼痛)、下痢 | |
肝臓 | | | 肝機能異常、Al-P上昇 |
皮膚 | | 発疹、脱毛(症)、爪の変化 | 蕁麻疹、そう痒症 |
筋骨格系 | | 関節痛、筋骨格痛 | 骨折、骨粗鬆症、弾発指、狭窄性腱鞘炎 |
循環器 | 高血圧 | 動悸、低血圧 | |
呼吸器 | | 鼻出血、かぜ症候群、肺炎 | |
泌尿器 | | 膀胱炎、尿検査異常 | |
生殖器 | | 不正(子宮)出血、帯下 | |
その他 | ほてり、疲労 | 疼痛、体重減少、倦怠(感)、体臭、浮腫、味覚異常、嗅覚障害 | 過敏症 |
14.1 薬剤交付時の注意
PTP包装の薬剤はPTPシートから取り出して服用するよう指導すること。PTPシートの誤飲により、硬い鋭角部が食道粘膜へ刺入し、更には穿孔をおこして縦隔洞炎等の重篤な合併症を併発することがある。
17.1 有効性及び安全性に関する試験
17.1.1 国内臨床試験
第I相試験において、閉経後健康女性(単回14例、反復25例)を対象として、本剤の0.5〜50mg/日までの用量における安全性及び薬力学的作用(血清中エストロゲン濃度抑制作用)を検討した結果、用量依存的な血清中エストロゲン濃度の低下が認められた。前期第II相試験において、閉経後乳癌患者(10mg、25mg各36例)を対象として、本剤の有効性及び安全性を検討の上、臨床推奨用量の設定を試みた。奏効率において有意差はないものの25mgの方が10mgより優っていたことなどから、本剤の臨床推奨用量として25mg/日を選択した。ホルモン療法耐性例に対する25mg群の奏効率は26.1%(6/23)であった
3)4)10)。
17.1.2 ブリッジング試験
後期第II相試験において、抗エストロゲン剤耐性の閉経後乳癌患者33例を対象として本剤の有効性及び安全性が検討された。なお、本試験は海外にて実施された同様の試験(No.120002及びNo.010)結果の再現性を確認することを目的として実施された
11)12)13)。
抗腫瘍効果\実施国(試験番号) | 日本(No.042) | 米国等(No.120002) | 欧州等(No.010) |
奏効率(奏効例/評価例) | 24.2%(8/33) | 28.1%(36/128) | 23.4%(32/137) |
長期NC注1)を含む有効率(奏効例+長期NC例/評価例) | 39.4%(13/33) | 46.9%(60/128) | 47.4%(65/137) |
17.1.3 海外臨床試験(第III相試験)
欧米19ヵ国が参加した多施設共同試験において、タモキシフェンに無効となった閉経後の進行乳癌に対する本剤の抗腫瘍効果及び安全性を、酢酸メゲストロール(160mg/日:国内未承認)を対照薬として検討した。抗腫瘍効果において、奏効率では群間に有意差は認められなかったものの、本剤の奏効率は15.0%(55/366)であり、酢酸メゲストロール群は12.4%(50/403)であった。長期NCを含む有効率はエキセメスタンで37.4%、酢酸メゲストロールで34.6%であった。さらに本剤の病勢進行までの期間、治療変更等までの期間及び生存期間は、酢酸メゲストロール群と比較し有意に延長した
14)。
17.1.4 海外大規模比較試験(第III相試験 術後補助療法)
海外37ヵ国が参加した多施設共同二重盲検比較試験において、術後補助療法としてタモキシフェンを2〜3年投与した閉経後乳癌患者(4,724例)を対象とし、タモキシフェン継続群(2,372例)と、本剤に切り替えた本剤投与群(2,352例)に割り付け、無病生存率及び安全性を検討した(両群とも術後補助療法としての投与期間:5年間)。その結果、追跡期間(中央値34.5ヵ月)における再発・対側乳癌・死亡発生数は本剤投与群213例、タモキシフェン継続群306例であり、無病生存率は本剤投与群90%(95%信頼区間89-92%)、タモキシフェン継続群86%(95%信頼区間85-88%)であった。また、無病生存期間のハザード比は0.69(95%信頼区間0.58-0.82、p=0.00003)であり、本剤投与群はタモキシフェン継続群と比較して乳癌再発リスクを31%低下させた。対側乳癌の発生リスクのハザード比は0.32(本剤投与群8例、タモキシフェン継続群25例、95%信頼区間0.15-0.72、p=0.0034)であり、本剤投与群は対側乳癌のリスクを68%低下させた
15)。
17.1.5 海外比較試験(術後補助療法)
海外で実施した多施設共同二重盲検比較試験において、再発リスクの低い乳癌又は腺管上皮内癌(147例)を、本剤投与群(73例)とプラセボ群(74例)に割り付け、骨密度(Bone Mineral Density)に与える影響及び有効性、安全性を検討した(投与期間:2年間、追跡期間最長:1年間)。投与2年後の本剤投与群の腰椎・大腿骨頸部における骨密度の年平均変化率はそれぞれ−2.17%、−2.72%であり、プラセボ群は−1.84%、−1.48%(p=0.568、p=0.024)であった。試験中に6例が再発し、1例は本剤投与群、5例がプラセボ群であった。また、HDL-コレステロールは本剤投与群(6-9%低下)は、プラセボ群(1-2%増加)に比較し、有意(p<0.01)に低下したが、他の脂質パラメータ及び凝固系パラメータでは両群間に差は認められなかった
16)。
17.1.6 非盲検無作為化比較試験(第II/III相試験 転移性乳癌に対する第一次ホルモン療法)
日本を含む25ヵ国が参加した多施設共同非盲検無作為化比較試験において、閉経後の転移性乳癌患者382例を対象とし、本剤投与群(190例)とタモキシフェン投与群(192例)に割り付け、無増悪生存期間を比較検討した。その結果、本剤投与群の無増悪生存期間が(中央値9.86ヵ月、95%信頼区間8.74-11.47)タモキシフェン投与群(中央値5.82ヵ月、95%信頼区間5.32-8.08)に比べて長かったが、統計的に有意な差は認められなかった(log-rank検定p=0.1214)。また、全生存期間の中央値は、タモキシフェン群が43.3ヵ月(95%信頼区間34.00-51.55)、本剤投与群が37.2ヵ月(95%信頼区間29.80-45.47)であったが、統計的に有意な差は認められなかった(log-rank検定p=0.9198)。さらに副次的評価項目である安全性プロファイルから本剤の忍容性が確認された
17)。
18.1 作用機序
18.1.1 アロマターゼ阻害作用
エキセメスタンはアンドロゲンをエストロゲンに変換する酵素であるアロマターゼを非可逆的に阻害することにより、血中エストロゲン濃度を抑制し、エストロゲン依存性の乳癌の増殖を阻害する。
(1)in vivo試験
妊馬血清ゴナドトロピン刺激ラットにおいて、エキセメスタンの単回経口投与は卵巣アロマターゼ活性を用量依存的に減少させ、そのED50値は3.7mg/kgであった。
(2)in vitro試験
エキセメスタンは、他のステロイド合成系酵素にはほとんど影響を与えることなく、アロマターゼを選択的に不活性化した。
18.2 抗腫瘍効果
DMBA誘発ラット乳癌(閉経後モデル)に対しエキセメスタンを週6日、4週間経口投与した結果、1mg/kg/日以上の用量で腫瘍の増殖を有意に阻害した。
18.3 エストロゲン抑制作用
18.3.1 妊馬血清ゴナドトロピン刺激ラットにおいて、エキセメスタンの単回経口投与により血漿中エストラジオール濃度は用量依存的に低下し、そのED50値は3.8mg/kgであった。
18.3.2 閉経後乳癌患者にエキセメスタン25mgを連日経口投与することにより、血漿又は血清中エストロゲン(エストラジオール、エストロン及びエストロンスルフェート)濃度は81〜95%低下した。