○下記疾患におけるビタミンD代謝異常に伴う諸症状(低カルシウム血症、テタニー、骨痛、骨病変等)の改善
<効能共通>
本剤は患者の血清カルシウム濃度の十分な管理のもとに、投与量を調整する。
<慢性腎不全、骨粗鬆症>
通常、成人1日1回アルファカルシドールとして0.5〜1.0μgを経口投与する。
ただし、年齢、症状により適宜増減する。
<副甲状腺機能低下症、その他のビタミンD代謝異常に伴う疾患>
通常、成人1日1回アルファカルシドールとして1.0〜4.0μgを経口投与する。
ただし、疾患、年齢、症状、病型により適宜増減する。
(小児用量)
通常、小児に対しては骨粗鬆症の場合には1日1回アルファカルシドールとして0.01〜0.03μg/kgを、その他の疾患の場合には1日1回アルファカルシドールとして0.05〜0.1μg/kgを、また未熟児には1日1回0.008〜0.1μg/kgを経口投与する。
ただし、疾患、症状により適宜増減する。
8.1 血清カルシウム上昇を伴った急性腎障害があらわれることがあるので、血清カルシウム値及び腎機能を定期的に観察すること。[
8.2、
8.3、
10.2、
11.1.1参照]
8.2 過量投与を防ぐため、本剤投与中、血清カルシウム値の定期的測定を行い、血清カルシウム値が正常値を超えないよう投与量を調整すること。[
8.1、
8.3、
9.7、
10.2、
11.1.1参照]
8.3 高カルシウム血症を起こした場合には、直ちに休薬する。休薬により血清カルシウム値が正常域に達したら、減量して投薬を再開する。[
8.1、
8.2、
10.2、
11.1.1参照]
9.1 合併症・既往歴等のある患者
9.5 妊婦
妊婦又は妊娠している可能性のある女性には、治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与すること。動物実験(ラット)で大量投与の場合、胎児化骨遅延等がみられている。
9.6 授乳婦
治療上の有益性及び母乳栄養の有益性を考慮し、授乳の継続又は中止を検討すること。動物実験(ラット)で授乳による新生児への移行率は、母動物投与量の1/20に相当する。
9.7 小児等
小児、未熟児に投与する場合には、血清カルシウム値、尿中カルシウム・クレアチニン比値等の観察を十分に行いながら少量から投与を開始し、漸増投与するなど、過量投与にならぬよう慎重に投与すること。幼若ラット経口投与における急性毒性は成熟ラットに比べ強くあらわれている。[
8.2参照]
9.8 高齢者
用量に注意すること。一般に生理機能が低下している。
11.1 重大な副作用
次の副作用があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止するなど適切な処置を行うこと。
11.1.1 急性腎障害(頻度不明)
血清カルシウム上昇を伴った急性腎障害があらわれることがある。[
8.1-
8.3参照]
11.1.2 肝機能障害、黄疸(いずれも頻度不明)
AST、ALT、Al-Pの上昇等を伴う肝機能障害、黄疸があらわれることがある。
注)副作用の発現頻度は使用成績調査を含む
11.2 その他の副作用
次の副作用があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止するなど適切な処置を行うこと。
| 0.1〜5%未満 | 0.1%未満 |
消化器 | 食欲不振、悪心・嘔気、下痢、便秘、胃痛 | 嘔吐、腹部膨満感、胃部不快感、消化不良、口内異和感、口渇等 |
精神神経系 | | 頭痛・頭重、不眠・いらいら感、脱力・倦怠感、めまい、しびれ感、眠気、記憶力・記銘力の減退、耳鳴り、老人性難聴、背部痛、肩こり、下肢のつっぱり感、胸痛等 |
循環器 | | 軽度の血圧上昇、動悸 |
肝臓 | AST、ALTの上昇 | LDH、γ-GTPの上昇 |
腎臓 | BUN、クレアチニンの上昇(腎機能の低下) | 腎結石 |
皮膚 | そう痒感 | 発疹、熱感 |
眼 | 結膜充血 | |
骨 | | 関節周囲の石灰化(化骨形成) |
その他 | | 嗄声、浮腫 |
14.1 薬剤投与時の注意
投与量は、添付のスポイトを使用し、目盛(目盛0.5、1.0はそれぞれ約0.25μg、0.5μgに相当)により正確に量るか、滴数(通常本剤1滴はアルファカルシドール約0.01μgに相当)を正確に量ること。
16.1 血中濃度
16.1.1 単回投与
健康成人にアルファカルシドールとして5μg
注)単回経口投与した場合、血漿中1α,25-(OH)
2D濃度は速やかに上昇し9時間後に最高値(141.9pg/mL)となり以後漸減した。その半減期は17.6時間であった
1)。
16.1.2 反復投与
慢性腎不全患者に30日間連続経口投与(1μg/日)した時の血漿中1α,25-(OH)
2D濃度は26.1pg/mLで投与中止により14日後21.3pg/mL、18日後3.1pg/mLに減少した
2)。
注)本剤の承認された最大用量は、1回4.0μgである。
18.1 作用機序
18.1.1 作用の発現(アルファカルシドールの25位水酸化)
経口投与後、血中に吸収され、肝の25-hydroxylaseによって側鎖の25位が水酸化され、速やかに1α,25-(OH)
2D
3に代謝される
6)。この肝での25位水酸化反応は四塩化炭素又はガラクトサミン投与の肝障害時にも保持されている(ラット)
7)。1α,25-(OH)
2D
3は骨、小腸に作用し、骨形成促進作用、骨代謝改善作用、小腸からのCa吸収促進作用等を発現する。
18.2 作用・効果
18.2.1 骨石灰化促進作用
ビタミンD欠乏あるいは低リン・高Ca食飼育ラットに対し、抗クル病作用、骨石灰化前線形成の促進作用を示す
8)。
18.2.2 骨吸収作用・再構成作用
アルファカルシドールの活性型代謝産物1α,25-(OH)
2D
3は骨吸収作用及び骨再構成作用(軟骨細胞の骨細胞への増殖・分化)を有する(
in vitro)
9)。
18.2.3 骨形成促進作用
骨形態計測においてアルファロール投与により、骨芽細胞を有する類骨面比率が増加し、骨芽細胞に直接作用して骨形成を促進することが示唆されている(ヒト骨粗鬆症)
10)。
18.2.4 腸管におけるCa吸収作用
連日投与により、血清1α,25-(OH)
2D値の上昇とともに低下している小腸でのCa吸収率を改善する(ヒト骨粗鬆症)
11)。
18.2.5 血清Ca上昇作用
低Ca血症に対し、小腸からのCa吸収促進作用(ヒト慢性腎不全、副甲状腺機能低下症)と骨塩溶出作用(腎あるいは副甲状腺摘出ラット)により血清Caを上昇させる
8)12)13)14)。投与中止後の血清Ca値は速やかな低下を示し、血清Caの推移による半減期は3.4日と報告されている(ヒト)
15)。
18.2.6 腎不全時の骨代謝改善作用
腎性骨ジストロフィーの骨吸収窩面、肥厚した類骨層を改善する(ヒト慢性腎不全
12)、柴田腎炎ラット
16)17))。また、肥大した副甲状腺重量及び血中副甲状腺ホルモンを低下させ、続発性の副甲状腺機能亢進を抑制する
12)16)17)。
18.2.7 1α,25-(OH)2Dとの作用比較
経口投与されたアルファカルシドールの働きは、1α,25-(OH)
2D
3のそれと同等、ないしそれ以上であることが示唆されている(ヒト、柴田腎炎ラット)
16)17)18)。