医療用医薬品 : ニセルゴリン

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医薬品情報


総称名 ニセルゴリン
一般名 ニセルゴリン
欧文一般名 Nicergoline
薬効分類名 脳循環・代謝改善剤
薬効分類番号 2190
ATCコード C04AE02
KEGG DRUG
D01290 ニセルゴリン
JAPIC 添付文書(PDF)
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添付文書情報2025年3月 改訂(第2版)


商品情報 3.組成・性状

販売名 欧文商標名 製造会社 YJコード 薬価 規制区分
ニセルゴリン錠5mg「トーワ」 (後発品) NICERGOLINE TABLETS 5mg"TOWA" 東和薬品 2190021F1364 10.1円/錠 処方箋医薬品注)

2. 禁忌

次の患者には投与しないこと
頭蓋内出血後、止血が完成していないと考えられる患者[出血を助長するおそれがある。]

4. 効能または効果

脳梗塞後遺症に伴う慢性脳循環障害による意欲低下の改善

6. 用法及び用量

ニセルゴリンとして、通常成人1日量15mgを3回に分けて経口投与する。なお、年齢、症状により適宜増減する。

7. 用法及び用量に関連する注意

本剤の投与期間は、臨床効果及び副作用の程度を考慮しながら慎重に決定するが、投与12週で効果が認められない場合には投与を中止すること。

9. 特定の背景を有する患者に関する注意

9.5 妊婦
妊婦又は妊娠している可能性のある女性には、治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与すること。動物実験(ラット)で胎児及び出生児の発育抑制が報告されている。
9.6 授乳婦
治療上の有益性及び母乳栄養の有益性を考慮し、授乳の継続又は中止を検討すること。動物実験(ラット)で乳汁中へ移行することが報告されている。
9.7 小児等
小児等を対象とした臨床試験は実施していない。
9.8 高齢者
減量するなど注意すること。一般に生理機能が低下している。

11. 副作用

11.2 その他の副作用
次の副作用があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止するなど適切な処置を行うこと。
 0.1〜1%未満頻度不明
消化器食欲不振、下痢、便秘、悪心、腹痛、口渇 
肝臓 肝機能障害
循環器めまい、立ちくらみ動悸、ほてり
精神神経系眠気、倦怠感、頭痛、耳鳴不眠
過敏症発疹、そう痒蕁麻疹

14. 適用上の注意

14.1 薬剤交付時の注意
PTP包装の薬剤はPTPシートから取り出して服用するよう指導すること。PTPシートの誤飲により、硬い鋭角部が食道粘膜へ刺入し、更には穿孔をおこして縦隔洞炎等の重篤な合併症を併発することがある。

16. 薬物動態

16.1 血中濃度
16.1.1 健康成人にニセルゴリン15mgを経口投与した場合、吸収は速やかで、血漿中濃度は投与2〜4時間後に最高に達した。1)
16.1.2 生物学的同等性試験
ニセルゴリン錠5mg「トーワ」とサアミオン錠5mgを、クロスオーバー法によりそれぞれ8錠(ニセルゴリンとして40mg)健康成人男子に絶食単回経口投与して活性主要代謝物である10-methoxy-1,6-dimethylergoline-8β-methanolの血漿中濃度を測定し、得られた薬物動態パラメータ(AUC、Cmax)について統計解析を行った結果、両剤の生物学的同等性が確認された。2)
(注)本剤の承認された用法及び用量は、「ニセルゴリンとして、通常成人1日量15mgを3回に分けて経口投与する。なお、年齢、症状により適宜増減する。」である。
 製剤投与量(ニセルゴリンとして)判定パラメータ参考パラメータ
AUC0-24(ng・hr/mL)Cmax(ng/mL)Tmax(hr)T1/2(hr)
ニセルゴリン錠5mg「トーワ」8錠(40mg)133.0±123.128.48±23.771.25±0.982.57±0.69
サアミオン錠5mg8錠(40mg)137.9±135.428.25±24.871.47±0.942.88±0.83
血漿中濃度並びにAUC、Cmax等のパラメータは、被験者の選択、体液の採取回数・時間等の試験条件によって異なる可能性がある。
16.3 分布
16.3.1 組織移行性
3H-ニセルゴリン(5mg/kg)をSD系雄ラットに経口投与した時、全身の放射能は投与後30〜60分の時点で最高値を示し、肝臓、唾液腺、腎臓、肺及び心筋で高く、血液及び筋肉では中程度、脳では低かった。3)
16.3.2 蛋白結合率
ヒト血漿蛋白への3H-ニセルゴリンの結合率は10〜100ng/mLの濃度範囲で93〜95%であった(in vitro、限外濾過法)。3)
16.5 排泄
健康成人にニセルゴリン錠5mg 8錠を経口投与したとき、大部分が代謝物として排泄され、24時間までの尿中排泄率は51%であった。4)
注)本剤の承認用法及び用量は、通常成人1日量15mgを3回に分けて経口投与である。

17. 臨床成績

17.1 有効性及び安全性に関する試験
17.1.1 国内再評価試験
プラセボを対照薬とする二重盲検比較試験において、ニセルゴリンの脳梗塞後遺症に伴う意欲低下及び精神症候全般改善度に有意差が認められた。5)
評価項目薬剤群改善以上検定
精神症候全般改善度ニセルゴリン34.5%有意差あり
プラセボ13.5%
意欲低下全般改善度ニセルゴリン29.9%有意差あり
プラセボ9.4%

18. 薬効薬理

18.1 作用機序
脳血管を選択的に拡張し脳血流を増加させると共に、血小板凝集抑制作用、赤血球変形能改善作用及びPAF産生能抑制作用等により血液流動性を改善し脳循環を改善する。また、脳内アセチルコリン系及びドーパミン系の神経伝達機能を促進し、脳虚血時のグルコース、ATP及びピルビン酸等の各種脳エネルギー関連物質の代謝改善作用により脳代謝を改善する。6)7)8)9)10)11)12)13)
18.2 脳循環改善作用
18.2.1 脳血管障害患者において、内頸及び椎骨動脈の血流量増加が、また、虚血病巣部での脳血流増加が認められている。13)14)15)
18.2.2 ネコの内顎動脈血流量を用量依存的に増加させる。16)
18.3 血液流動性改善作用
健康成人及び脳血管障害患者において、ADP、コラーゲン等による血小板凝集抑制作用及び赤血球変形能亢進作用が認められている。6)17)
18.4 神経伝達系に対する作用
18.4.1 ラットにおいて、加齢により低下した脳内コリンアセチルトランスフェラーゼ(CAT)活性及びムスカリン性アセチルコリン受容体の結合能を大脳皮質及び海馬において回復させる。18)
18.4.2 ラットにおいて、加齢により低下した海馬のアセチルコリン遊離を回復させる。19)
18.4.3 アセチルコリンエステラーゼ(AChE)に選択的なコリンエステラーゼ阻害活性を有し、マウスにおいて、脳内AChE活性阻害と海馬アセチルコリン量の増加作用を示す。7)
18.4.4 ラットにおいて、連続経口投与によりドーパミンの代謝回転の促進作用が認められている。8)
18.5 脳エネルギー代謝改善作用
18.5.1 マウスの脳虚血モデル及び低酸素モデルにおいて、脳エネルギー代謝障害に対し改善作用を示す。9)20)
18.5.2 老齢ラットの脳梗塞モデルにおいて、グルコースの取込み及び消費に対し改善作用を示す。21)
18.6 脳神経機能改善作用
18.6.1 マウスの脳虚血モデル及び低酸素モデルにおいて、脳障害に対し保護作用を示す。9)20)
18.6.2 ラット海馬CA1領域神経細胞において、低閾値(T-type)カルシウムチャンネル遮断作用を示す。22)
18.6.3 スナネズミの一過性脳虚血モデルにおいて、海馬CA1領域神経細胞の遅発性壊死を抑制する。23)
18.6.4 老齢ラットの脳梗塞モデル及びマウスのスコポラミンによる健忘症モデルにおいて、学習・記憶障害に対し改善作用を示す。21)24)
18.7 脳波改善作用
脳血管障害患者において、脳波異常の改善が認められている。17)

19. 有効成分に関する理化学的知見

19.1. ニセルゴリン

一般的名称 ニセルゴリン
一般的名称(欧名) Nicergoline
化学名 [(8R,10S)-10-Methoxy-1,6-dimethylergolin-8-yl]methyl 5-bromopyridine-3-carboxylate
分子式 C24H26BrN3O3
分子量 484.39
融点 約136℃(分解)
物理化学的性状 白色〜淡黄色の結晶又は結晶性の粉末である。アセトニトリル、エタノール(99.5)又は無水酢酸にやや溶けやすく、水にほとんど溶けない。光によって徐々に淡褐色となる。
KEGG DRUG D01290

22. 包装

100錠[10錠×10:PTP]
1000錠[10錠×100:PTP]
1000錠[バラ、乾燥剤入り]

23. 主要文献

  1. 第十八改正日本薬局方解説書, C-3891-3895, (2021)
  2. 社内資料:生物学的同等性試験
  3. 藤原充雄,他, 応用薬理, 32 (1), 31-48, (1986)
  4. 河合喜孝,他, 基礎と臨床, 20 (2), 1054-1064, (1986)
  5. 脳循環代謝改善薬ニセルゴリンの再評価について(1998年6月16日、厚生労働省医薬安全局)
  6. 葛谷文男,他, 薬理と治療, 11 (9), 3627-3635, (1983)
  7. Matsuoka Y,et al., Basic,Clinical,and Therapeutic Aspects of Alzheimer's and Parkinson's Diseases., Vol.2, 415-419, (1990)
  8. Moretti A,et al., Proof of Therapeutical Effectiveness of Nootropic and Vasoactive Drugs., 103-110, (1985)
  9. 新冨敬一,他, 日薬理誌, 87 (4), 427-434, (1986) »PubMed
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  11. Nagakawa Y,et al., Arzneimittelforschung., 40 (8), 862-864, (1990) »PubMed
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  14. 宮崎 学, 薬理と治療, 13 (11), 6817-6821, (1985)
  15. 谷本道則,他, 薬理と治療, 13 (4), 2075-2084, (1985)
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  21. Le Poncin-Lafitte M,et al., Gerontology., 30 (2), 109-119, (1984) »PubMed
  22. Takahashi K,et al., Br J Pharmacol., 100 (4), 705-710, (1990) »PubMed
  23. 岩崎 仁,他, 薬理と治療, 18 (5), 1995-2004, (1990)
  24. 工藤幸司,他, 薬理と治療, 13 (11), 6489-6493, (1985)

24. 文献請求先及び問い合わせ先

文献請求先
東和薬品株式会社 学術部DIセンター
〒570-0081 大阪府守口市日吉町2丁目5番15号
電話:0120-108-932
FAX:06-7177-7379
製品情報問い合わせ先
東和薬品株式会社 学術部DIセンター
〒570-0081 大阪府守口市日吉町2丁目5番15号
電話:0120-108-932
FAX:06-7177-7379

26. 製造販売業者等

26.1 製造販売元
東和薬品株式会社
大阪府門真市新橋町2番11号

[ KEGG | KEGG DRUG | KEGG MEDICUS ] 2025/07/23 版