8.1 本剤の取扱いは、産婦人科医(母体保護法指定医又は日本産科婦人科学会認定医)が行うこと。
8.2 本剤の装着前に、副作用の可能性についてよく説明すること。また、他の避妊法と同様に、本剤による避妊効果は必ずしも100%ではないことを説明すること。また、妊娠や異所性妊娠が疑われる場合の対応についても説明しておくこと。[
9.5.2、
17.1.1、
17.1.2参照]
8.3 本剤の装着後、出血パターンが不規則になる。装着後数ヵ月間は月経中間期出血が発現することが多いが、通常は装着継続中に消失する。長期間持続する場合は、子宮内膜の疾患によるものでないことを確認するために適切な検査を考慮すること。[
2.4参照]
8.4 装着前に骨盤内諸臓器、乳房の検査、腟内容の検査を含む診察を行うこと。妊娠していないこと、性感染症に罹患していないことを確認すること。[
2.2-
2.10、
2.15、
9.5.1参照]
8.5 本剤は、滅菌処理したディスポーザブル製品であるので、いったん装着した後、除去又は脱出した場合は再度使用しないこと。
8.6 装着後3ヵ月以内、1年後(又は必要に応じそれ以前)に受診させ、1年以上装着する場合は、以後少なくとも1年に1度は受診するよう指導し、本剤の位置の確認及び必要に応じた諸検査を実施すること。
8.7 次のような場合には受診するよう指導すること。
・多量の性器出血があったとき、又は装着後数ヵ月以降に月経中間期出血が継続してみられたとき、あるいは出血量の増加など出血のパターンが変化したとき
・前回の月経から6週間以内に月経が起こらない場合や、悪心、嘔吐、食欲不振等の妊娠を疑う兆候がみられたとき[
9.5.2参照]
・月経遅延時の下腹部痛又は無月経の女性で出血が始まるなど異所性妊娠を疑う兆候がみられたとき[
11.1.2参照]
・性交痛又は性交後出血があったとき
・異常な帯下、外陰部そう痒等があったとき
・発熱を伴う下腹部痛があったとき
・持続性又は急性の腹部膨満感や下腹部痛(圧痛)があったとき
・性交時にパートナーが除去糸に触れ、陰茎痛を訴えたとき
・その他、異常を自覚した場合
8.8 子宮穿孔の可能性が考えられたときには、本剤を除去すること。[
11.1.3参照]
8.9 本剤の効果は主に子宮内膜への局所作用に基づくものであり、通常排卵周期があるが、卵胞閉鎖が遅れ、卵胞形成が継続することがある。超音波検査時に卵巣のう胞が観察された場合は、経過観察を行うこと。ほとんどは無症状であるが、骨盤痛又は性交痛を伴う場合もある。また、通常2〜3ヵ月の観察期間中に消失するが、まれに、大きくなりすぎた卵巣のう胞の切除や卵巣のう胞破裂に伴う出血の処置等を必要とする場合がある。
使用者に経過観察のため来院の必要性を説明し、持続性又は急性の腹部膨満感や下腹部痛(圧痛)が起こった場合は、速やかに受診するよう指導すること。[
11.1.4参照]
8.10 装着・除去に関しては次のような点に注意すること。
8.10.1 装着の時期
(1)妊娠初期における装着を防止するため月経開始後7日以内に装着すること。妊娠初期の流産又は妊娠初期の人工妊娠中絶の場合は直後に装着してもよい。本剤使用者が新しいものを装着しなおす場合は、月経周期のいつでも装着が可能である。
(2)分娩後の装着は穿孔や脱出の可能性が高くなるので、子宮の回復(6週間以上)を待つこと。また、授乳中の女性の子宮は穿孔のリスクが高くなるので注意すること。[
9.6.1、
9.6.2、
11.1.3参照]
(3)骨盤内手術(帝王切開術、子宮筋腫核出術等)後の女性では、術部の回復を確認してから装着すること。
8.10.2 装着時の注意
(1)本剤はエチレンオキサイドガス滅菌済みである。無菌的に包装を開封して装着すること。本剤のヒートシール包装が開封前に破損していないことを確認すること。
(2)装着前に子宮頸管及び子宮腔の屈曲方向と長さを測定すること。子宮腔長が比較的短い女性では挿入が困難な場合がある。
(3)脱出を防ぎ、効果を確実に発揮させるために、本剤を正しい位置に装着すること。
(4)本剤装着時に痛みと出血を伴うことがある。迷走神経反射として、失神、徐脈、またてんかんの患者は発作を起こす可能性があるので注意すること。
8.10.3 装着後の管理
(1)自然脱出
自然脱出の可能性があることを説明し、脱出に気付いたら速やかに受診するよう指導すること。子宮腔長が比較的短い女性では脱出のリスクが高くなる。部分脱出の場合でも、効果が低下するおそれがある。部分脱出あるいは完全脱出の兆候として出血及び疼痛があらわれることがあるが、使用者が気付かないうちに脱出することもありうる。正しい位置にない場合は、除去して、新たな本剤を装着すること。なお、使用者自身が除去糸を確認することで脱出の有無を確かめることができる。
(2)位置の確認
定期検診時に本剤の位置を確認すること。また、除去糸が見つからない場合は穿孔若しくは脱出の可能性も考えられるので、本剤の位置を確認すること。本剤の位置は超音波検査によって確認できるが、妊娠していないことが確認されれば単純レントゲン撮影も可能である。
(3)装着後数日間は、出血、下腹部痛、腰痛、帯下等の症状があらわれることがある。これらの症状が継続する場合やひどい場合は受診するよう指導すること。
8.10.4 除去に関する注意
(1)除去の時期
月経期間以外に除去し、その後新たな本剤又はIUDを装着しない場合、除去前1週間以内に性交渉があれば妊娠する可能性がある。除去後妊娠を望まない場合は月経期間中に除去すること。
(2)除去時の注意
・本剤除去時に痛みと出血を伴うことがある。迷走神経反射として、失神、徐脈、またてんかんの患者は発作を起こす可能性があるので注意すること。なお、除去後約1週間以内に消退出血が起こることがある。
・本剤が破損する可能性があるので、除去時に本剤を強く引っ張らないこと。円筒部がずれて水平アーム部を包み込んだ例や円筒部が子宮内に残された例が報告されているので、除去後に本剤の外形の異常又は欠損がないかを確認すること。
8.11 器質的疾患を伴う月経困難症患者に対する本剤の使用にあたっては、器質的疾患の増悪の有無を確認するため、不正性器出血の発現に注意し、定期的に内診及び超音波検査等による診察を行うこと。本剤装着中に腫瘤が増大するなど器質的疾患の増悪が認められる場合や、臨床症状の改善がみられない場合は、他の治療法も勘案したうえで装着継続の判断を行うこと。特に、子宮内膜症性卵巣のう胞(卵巣チョコレートのう胞)は、頻度は低いものの自然経過において悪性化を示唆する報告があるので、画像診断や腫瘍マーカー等の検査も行うこと。