医療用医薬品 : ゼヴァリン

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医薬品情報


総称名 ゼヴァリン
一般名 イブリツモマブ チウキセタン(遺伝子組換え)
欧文一般名 Ibritumomab Tiuxetan(genetical recombination)
製剤名 イットリウム(<sup>90</sup>Y)イブリツモマブ チウキセタン(遺伝子組換え)注射液調製用
薬効分類名 抗悪性腫瘍剤・放射標識抗CD20モノクローナル抗体
薬効分類番号 4291
KEGG DRUG D04489 イブリツモマブチウキセタン
商品一覧 米国の商品 相互作用情報
JAPIC 添付文書(PDF)

添付文書情報 2022年3月 改訂 (第13版)


警告 禁忌 効能・効果及び用法・用量 使用上の注意 薬物動態 臨床成績 薬効薬理 理化学的知見 承認条件 包装 主要文献

商品情報 組成・性状

販売名 欧文商標名 製造会社 YJコード 薬価 規制区分
ゼヴァリンイットリウム(90Y)静注用セット ZEVALIN yttrium injection ムンディファーマ 4291414G1020 2652994円/セット 生物由来製品 , 劇薬 , 処方箋医薬品

警告

本品の使用においては,緊急時に十分に対応できる医療施設において,造血器悪性腫瘍の治療及び放射線治療に対して,十分な知識・経験を持つ医師のもとで,本品の使用が適切と判断される症例のみに行うこと.また,治療開始に先立ち,患者又はその家族に有効性及び危険性を十分に説明し,同意を得てから投与を開始すること.

イットリウム(90Y)イブリツモマブ チウキセタン(遺伝子組換え)注射液の投与に先立ち,ゼヴァリン インジウム(111In)静注用セットを用いてイブリツモマブ チウキセタン(遺伝子組換え)の集積部位の確認を行い,異常な生体内分布が認められた患者には本品を用いた治療は行わないこと.[「用法・用量に関連する使用上の注意」の項参照]

本品の使用にあたっては,添付文書を熟読すること.なお,リツキシマブ(遺伝子組換え)及びゼヴァリン インジウム(111In)静注用セットの添付文書についても熟読すること.

禁忌

次の患者には投与しないこと

本品の成分,マウスタンパク質由来製品又はリツキシマブ(遺伝子組換え)に対する重篤な過敏症の既往歴のある患者

妊婦又は妊娠している可能性のある女性[「妊婦,産婦,授乳婦等への投与」の項参照]

効能・効果及び用法・用量

効能効果

CD20陽性の再発又は難治性の下記疾患

効能効果に関連する使用上の注意

リツキシマブ(遺伝子組換え)又はリツキシマブ(遺伝子組換え)と化学療法剤による併用療法の治療歴がない患者群におけるイットリウム(90Y)イブリツモマブ チウキセタン(遺伝子組換え)注射液の有効性及び安全性は確立していない.[「臨床成績」の項参照]

イブリツモマブ チウキセタン(遺伝子組換え)の集積部位の確認の結果,異常な生体内分布が認められた症例に対して本品を使用しないこと.

用法用量

本セットの注射液調製用無菌バイアルに適量の注射液調製用酢酸ナトリウム溶液と塩化イットリウム(90Y)溶液1500MBqを入れ,これにイブリツモマブ チウキセタン溶液1.3mLを加えて混和し,適量の注射液調製用緩衝液を加えてイットリウム(90Y)イブリツモマブ チウキセタン(遺伝子組換え)注射液とする.(「適用上の注意」の項参照)
通常,成人には,リツキシマブ(遺伝子組換え)を点滴静注後,速やかに,イットリウム(90Y)イブリツモマブ チウキセタン(遺伝子組換え)として14.8MBq/kg(最大1184MBq)を10分間かけて静脈内投与する.また,患者の状態に応じて11.1MBq/kgに減量する.
なお,イットリウム(90Y)イブリツモマブ チウキセタン(遺伝子組換え)注射液の投与に先立ち,イブリツモマブ チウキセタン(遺伝子組換え)の集積部位の確認を行い,異常な生体内分布の有無を確認すること.

用法用量に関連する使用上の注意

本品を用いた治療は,通常,以下のスケジュールで実施する.

1日目

リツキシマブ(遺伝子組換え)250mg/m2を点滴静注し,点滴終了後4時間以内に,インジウム(111In)イブリツモマブ チウキセタン(遺伝子組換え)注射液として130MBqを静脈内に10分間かけて1回投与する.

3〜4日目

インジウム(111In)イブリツモマブ チウキセタン(遺伝子組換え)注射液投与の48〜72時間後にガンマカメラによる撮像を行い,イットリウム(90Y)イブリツモマブ チウキセタン(遺伝子組換え)注射液投与の適切性を確認する.適切性の評価が不確定な場合は,1日以上の間隔をあけて追加撮像を実施し,再度適切性の検討を実施する.

7〜9日目

リツキシマブ(遺伝子組換え)250mg/m2を点滴静注し,点滴終了後4時間以内にイットリウム(90Y)イブリツモマブ チウキセタン(遺伝子組換え)注射液を静脈内に10分間かけて1回投与する.

インジウム(111In)イブリツモマブ チウキセタン(遺伝子組換え)注射液投与48〜72時間後の撮像にて,以下のいずれかの所見が認められた場合は,異常な生体内分布とみなす.異常な生体内分布が明らかになった場合にはイットリウム(90Y)イブリツモマブ チウキセタン(遺伝子組換え)注射液を投与しないこと.

顕著な骨髄へのびまん性の取り込みが認められる(長管骨及び肋骨の明瞭な描出を特徴とする骨シンチグラムにおけるスーパースキャンに類似した画像).

網内系への取り込みを示す肝臓及び脾臓及び骨髄への強い局在化が認められる.

以下のような,腫瘍の浸潤がみられない正常臓器への取り込みの増強が認められる.

肝臓よりも強い正常肺へのびまん性の取り込み

後面像で,肝臓よりも強い腎臓への取り込み

肝臓よりも強い正常腸管への取り込み(経時的変化がみられないもの)

投与前血小板数が100,000/mm3以上150,000/mm3未満の患者には,イットリウム(90Y)イブリツモマブ チウキセタン(遺伝子組換え)注射液の投与量は11.1MBq/kgに減量すること.

投与前血小板数が100,000/mm3未満の患者におけるイットリウム(90Y)イブリツモマブ チウキセタン(遺伝子組換え)注射液の有効性及び安全性は確立していない.[使用経験がない.]

標識率が95%未満のイットリウム(90Y)イブリツモマブ チウキセタン(遺伝子組換え)注射液は使用しないこと.[有効性及び安全性は確立していない.]

イットリウム(90Y)イブリツモマブ チウキセタン(遺伝子組換え)注射液の投与に際しては,以下の事項に留意すること.

イットリウム(90Y)イブリツモマブ チウキセタン(遺伝子組換え)注射液の投与量は,適切に校正された放射線測定器にて,投与の直前に確認すること.

イットリウム(90Y)イブリツモマブ チウキセタン(遺伝子組換え)注射液の投与は0.22ミクロン径の静注フィルター(蛋白低吸着性)を介して10分間かけて静注すること.急速静注はしないこと.その後,10mL以上の生理食塩液を同じ注射筒及び静注ラインを通じて静注すること.

イットリウム(90Y)イブリツモマブ チウキセタン(遺伝子組換え)注射液の再投与の有効性及び安全性は確認されていない.(「重要な基本的注意」の項参照)

使用上の注意

慎重投与

骨髄のリンパ腫浸潤率が25%以上の患者[血液毒性が強くあらわれるおそれがある.]

骨髄機能低下のある患者[血液毒性が強くあらわれるおそれがある.なお,好中球数1,200/mm3未満又は血小板数100,000/mm3未満の患者における投与経験はない.「臨床成績」の項参照]

感染症(敗血症,肺炎,ウイルス感染等)を合併している患者[免疫抑制作用により病態を悪化させるおそれがある.]

骨髄移植や末梢血幹細胞移植などの造血幹細胞移植治療を受けた患者,骨髄の25%以上に外部放射線照射を受けた患者[骨髄機能をより強く抑制するおそれがある.]

抗凝固剤又は抗血栓剤を投与している患者,出血又は出血傾向のある患者[出血又は出血の増悪があらわれるおそれがある.]

マウスタンパク質由来製品の投与歴のある患者[ヒト抗マウス抗体による過敏反応がおこるおそれがある.]

薬物過敏症の既往歴のある患者

アレルギー素因のある患者

重要な基本的注意

インジウム(111In)イブリツモマブ チウキセタン(遺伝子組換え)注射液による集積部位の確認において,イットリウム(90Y)イブリツモマブ チウキセタン(遺伝子組換え)注射液の投与が適切と判断された場合であっても,重篤な副作用が発現するおそれがあるので,観察を十分に行い,異常が認められた場合は適切な処置を行うこと.

本品投与後に,汎血球減少症,白血球減少症,血小板減少症,好中球減少症,貧血があらわれることがあるので,頻回に血液検査を行うなど患者の状態を十分に観察すること.(「重大な副作用」の項参照)

妊娠する可能性のある女性患者及びパートナーが妊娠する可能性のある男性患者に投与する場合には,投与後12ヵ月間は避妊させること.[本品投与後,精巣で有意に高い放射線量が検出されている.]

イットリウム(90Y)イブリツモマブ チウキセタン(遺伝子組換え)注射液の再投与の有効性及び安全性は確認されていないので,患者の前治療の内容を十分に確認し,投与経験を有する患者に対して再投与しないこと.

相互作用

併用注意

生ワクチン又は弱毒生ワクチン接種した生ワクチンの原病に基づく症状が発現した場合には適切な処置を行う.Bリンパ球傷害作用により発病するおそれがある.
不活化ワクチンワクチンの効果を減弱させるおそれがある.Bリンパ球傷害作用によりワクチンに対する免疫が得られないおそれがある.
免疫抑制剤発熱などの感染症(細菌及びウイルスなど)に基づく症状が発現した場合は適切な処置を行う.過度の免疫抑制作用による感染症誘発のおそれがある.

副作用

副作用発現状況の概要

インジウム(111In)イブリツモマブ チウキセタン(遺伝子組換え)注射液及びイットリウム(90Y)イブリツモマブ チウキセタン(遺伝子組換え)注射液を投与した国内臨床試験において,副作用は安全性評価症例55例中53例に認められた.主な副作用は,倦怠感13例(23.6%),頭痛11例(20.0%),便秘,口内炎,発熱 それぞれ10例(18.2%),悪心9例(16.4%),下痢,食欲不振 それぞれ7例(12.7%),胃不快感,皮下出血,鼻咽頭炎 それぞれ6例(10.9%)などであった.主な臨床検査値異常はリンパ球数減少,好中球数減少,血小板数減少,白血球数減少 それぞれ47例(85.5%),ヘモグロビン減少38例(69.1%),ヘマトクリット減少37例(67.3%),赤血球数減少35例(63.6%),血中乳酸脱水素酵素(LDH)増加15例(27.3%),血中ビリルビン増加12例(21.8%),アラニン・アミノトランスフェラーゼ(ALT)増加8例(14.5%),アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)増加,尿中血陽性 それぞれ7例(12.7%)等であった.(承認時)

重大な副作用及び副作用用語

重大な副作用

骨髄抑制(頻度不明)

汎血球減少症,白血球減少症,血小板減少症,好中球減少症(発熱性好中球減少症を含む),リンパ球減少症,赤血球減少症,貧血があらわれる又は増悪することがあるので,治療後は頻回に血液検査を行うなど患者の状態を十分に観察すること.異常が認められた場合にはG-CSF製剤投与や輸血など適切な処置を行うこと.なお,国内試験結果より,血球減少は遅延性であり,約2ヵ月後に最低値となり,1〜3週間で軽快する.(「臨床成績」の項参照)

重篤な皮膚障害(頻度不明)

紅皮症(はく脱性皮膚炎),皮膚粘膜眼症候群(Stevens-Johnson症候群),天疱瘡様症状,中毒性表皮壊死融解症(Toxic Epidermal Necrolysis:TEN)などの重篤な皮膚粘膜反応が発現することがあるので,紅斑,水疱,そう痒,粘膜疹などがあらわれた場合には投与を中止し,適切な処置を行うこと.

感染症(頻度不明)

敗血症,肺炎等の重篤な感染症があらわれることがあるので,観察を十分に行い,異常が認められた場合には適切な処置を行うこと.

その他の副作用

 5%以上5%未満頻度不明
精神神経系頭痛,浮動性めまい,不眠症 不安
消化器便秘,口内炎,悪心,下痢,胃不快感,嘔吐,上腹部痛,消化不良,食欲不振腹痛,肛門周囲痛 
循環器 高血圧頻脈
呼吸器咳嗽,上気道の炎症,呼吸困難,咽喉頭疼痛,咽頭不快感,鼻咽頭炎アレルギー性鼻炎,咽頭炎鼻炎,肺炎,咽喉刺激感
血液ヘモグロビン減少,ヘマトクリット減少,皮下出血,点状出血紫斑出血
泌尿器膀胱炎 尿路感染
皮膚 帯状疱疹,毛包炎多汗
肝臓血中ビリルビン増加,ALT(GPT)上昇,AST(GOT)上昇  
腎臓血尿  
過敏症 発疹,蕁麻疹,潮紅そう痒症
その他発熱,疲労,倦怠感,鼻出血,低アルブミン血症,LDH上昇熱感,単純ヘルペス,高カルシウム血症,ほてり,血中アルブミン減少悪寒,インフルエンザ症候群,疼痛,背部痛,頸部痛,腫瘍痛,関節痛,筋痛,口腔内モニリア症,末梢性浮腫

高齢者への投与

一般に高齢者では生理機能が低下しているので,患者の状態を十分に観察しながら慎重に投与すること.

妊婦,産婦,授乳婦等への投与

妊娠中の投与に関する安全性は確立していないので,妊婦又は妊娠している可能性のある女性には投与しないこと.[イブリツモマブ チウキセタン(遺伝子組換え)を用いた動物での生殖・催奇形性試験は実施されていないが,ヒトIgGは胎盤関門を通過することが知られている.]

授乳中の投与に関する安全性は確立していないので,授乳婦に投与する場合には授乳を中止させること.[ヒトIgGは母乳中に移行することが知られている.]

小児等への投与

低出生体重児,新生児,乳児,幼児又は小児に対する安全性は確立していない.[使用経験がない.]

適用上の注意

調製時

イットリウム(90Y)イブリツモマブ チウキセタン(遺伝子組換え)注射液の調製

準備

本品は,標識作業を開始する前に常温にもどし,全てのバイアルのゴム栓をアルコール又は適切な消毒液を含む脱脂綿等で拭く.減衰表(「有効成分に関する理化学的知見」の項参照)及び表示された検定日時における放射能から,塩化イットリウム(90Y)溶液の放射能濃度(MBq/mL)を算出し,1,500MBqとなる溶液量を求める.

ステップ1

適切な容量の注射筒を用い,ステップ2で使用する塩化イットリウム(90Y)溶液量の1.2倍量の注射液調製用酢酸ナトリウム溶液を分取し,注射液調製用無菌バイアルのバイアル壁に静かにつたわせ分注する.

ステップ2

遮蔽された1mL用注射筒を用い,1,500MBqの塩化イットリウム(90Y)溶液を遮蔽された注射液調製用無菌バイアルに分注し,泡立てたり攪拌しないよう静かに混和する.

ステップ3

2.5mL用注射筒を用い,イブリツモマブ チウキセタン溶液1.3mLを分取し,注射液調製用無菌バイアルに分注し,泡立てたり攪拌しないよう静かに混和した後,5分間放置する.

ステップ4

ステップ1〜3で加えた注射液調製用酢酸ナトリウム溶液,塩化イットリウム(90Y)溶液及びイブリツモマブ チウキセタン溶液の液量の合計を10mLから引いた値を注射液調製用緩衝液の液量とする.10mL用注射筒を用い,計算された液量の注射液調製用緩衝液を分取し,注射液調製用無菌バイアルに注入し,泡立てたりしないよう静かに転倒混和する.患者に投与するまで2〜8℃にて保存する.

標識率の算出(図1 標識率の算出方法 参照)

本品の標識調製後,以下の手順にて標識率を算出し,標識率が95%未満である場合には投与しないこと.

ステップ1

本品用の薄層板(Biodex Medical Systems社製:Tec-Control)を準備する.展開溶媒(0.9% NaCl溶液)適量を展開用バイアルに分注する.

ステップ2

室温下,1mL用注射筒を用いてイットリウム(90Y)イブリツモマブ チウキセタン(遺伝子組換え)注射液を少量分取し,1〜100倍に適宜希釈する.希釈したイットリウム(90Y)イブリツモマブ チウキセタン(遺伝子組換え)注射液約3μLを3枚の薄層板の原点(薄層板の下端から1cm)にスポットする.

ステップ3

スポットが溶媒に接触しないよう注意しながら,展開用バイアルに薄層板を入れ,溶媒先端位置(薄層板の下端から5cm)まで溶媒を展開する.展開中は薄層板が展開用バイアルの内壁に接触しないよう注意する.

ステップ4

展開後,薄層板を切断位置(薄層板の下端から3cm)で切断する.分離された薄層板No.1(下側)と薄層板No.2(上側)を各々測定用チューブに入れ,ガンマカウンターなど適切な放射線測定機器(測定エネルギー範囲:例えば140〜1,000keV)により1分間のカウント数を計測する.

ステップ5

得られたカウント数から以下の式を用いて標識率を算出し,3枚の平均値として95%以上の値が得られた場合に適合とする.標識率が95%未満の場合には再度測定を行う.再測定の結果,標識率が95%未満の場合には投与に用いない.

標識率(%)=薄層板No.1のカウント数/(薄層板No.1のカウント数+薄層板No.2のカウント数)×100

図1 標識率の算出方法

投与時

イットリウム(90Y)イブリツモマブ チウキセタン(遺伝子組換え)注射液は,標識調製後直ちに使用しない場合には2〜8℃にて保存し,8時間以内に使用すること.

他剤との混注はしないこと.

血管外に漏出させないよう注意すること.血管外漏出の症状が見られた場合には,直ちに投与を中止すること.

その他の注意

本品を投与された再発又は難治性非ホジキンリンパ腫患者に,急性骨髄性白血病,骨髄異形成症候群が認められたとの報告がある.
また,化学療法に奏効後の濾胞性非ホジキンリンパ腫患者を対象に観察期間7年間として実施された海外の無作為化比較臨床試験において,悪性腫瘍(急性骨髄性白血病,骨髄異形成症候群及び固形癌)が,本品を地固め療法として投与された患者では14.7%(30/204例),比較対照とされた無治療の患者では6.8%(14/205例)に認められたとの報告がある.

イブリツモマブ チウキセタン(遺伝子組換え)投与後にヒト抗マウス抗体が認められることがあるので,インジウム(111In)イブリツモマブ チウキセタン(遺伝子組換え)注射液及びイットリウム(90Y)イブリツモマブ チウキセタン(遺伝子組換え)注射液投与後にマウス抗体又はキメラ抗体を使用する場合には,過敏反応に注意すること.

本品は,医療法その他の放射線防護に関する法令,関連する告示及び通知(患者退出等を含む)等を遵守し,適正に使用すること.

薬物動態

血中動態

非ホジキンリンパ腫患者に,インジウム(111In)イブリツモマブ チウキセタン(遺伝子組換え)注射液129.5MBq〜185MBqを投与した場合の111Inの放射能の薬物動態パラメーター,並びに111Inの放射能の血中濃度推移から推定したイットリウム(90Y)イブリツモマブ チウキセタン(遺伝子組換え)注射液を投与したときの90Yの放射能の薬物動態パラメーターを以下に示す.

放射性核種投与量パラメーターN平均±SD中央値
111In129.5−185MBq実効AUC[h]939.3±5.240.0
実効t1/2[h]38.6±4.438.4
90Y11.1MBq/kg実効AUC[h]438.0±4.239.4
実効t1/2[h]34.7±2.134.8
90Y14.8MBq/kg実効AUC[h]538.2±6.036.3
実効t1/2[h]39.3±4.337.9
90Y全患者実効AUC[h]938.1±5.038.8
実効t1/2[h]37.2±4.137.1
実効AUC及び実効t1/2:生物学的半減期と物理学的半減期の両方で消失する血中放射能濃度のAUC及びt1/2

吸収線量

MIRD法により計算した吸収線量は次のとおりである.

臓器・組織mGy/MBq
イットリウム(90Y)イブリツモマブ チウキセタン(遺伝子組換え)インジウム(111In)イブリツモマブ チウキセタン(遺伝子組換え)
N中央値範囲N中央値範囲
副腎90.50.3−0.790.230.2−0.3
90.50.3−0.790.100.1−0.2
胸部90.50.3−0.790.110.1−0.2
胆のう壁90.50.3−0.790.270.2−0.4
下部大腸92.01.4−3.690.340.2−0.4
小腸91.71.1−3.290.290.2−0.4
90.50.3−0.790.190.1−0.3
上部小腸92.01.2−3.690.340.2−0.5
心臓壁91.81.0−3.690.310.2−0.6
腎臓92.31.4−4.390.340.2−0.5
肝臓93.32.7−6.490.500.4−0.9
92.81.8−4.690.300.2−0.5
筋肉90.50.3−0.790.140.1−0.2
卵巣50.60.5−0.750.260.2−0.3
膵臓90.50.3−0.790.230.2−0.3
赤色骨髄91.91.7−3.290.240.2−0.4
骨表面91.41.2−2.190.270.2−0.4
皮膚90.50.3−0.790.080.1−0.1
脾臓92.31.0−5.390.350.1−0.6
精巣43.62.8−5.140.300.2−0.4
胸腺90.50.3−0.790.160.1−0.2
甲状腺90.50.3−0.790.120.1−0.2
膀胱壁90.70.5−0.990.190.1−0.2
子宮50.60.5−0.750.220.2−0.3
全身90.80.5−1.190.160.1−0.2

臨床成績

1)2)

CD20陽性の再発又は難治性の低悪性度B細胞性非ホジキンリンパ腫及びマントル細胞リンパ腫患者を対象とした国内第I相及び第II相臨床試験における有効性及び安全性(血液毒性)は以下のとおりであった.対象は,投与前血小板数100,000/mm3以上及び好中球数1,200/mm3以上の患者とされた.以下の情報は,リツキシマブ(遺伝子組換え),インジウム(111In)イブリツモマブ チウキセタン(遺伝子組換え)注射液及びイットリウム(90Y)イブリツモマブ チウキセタン(遺伝子組換え)注射液投与後のものである.

有効性

有効性評価対象例(50例)のうち,43例はリツキシマブ(遺伝子組換え)又はリツキシマブ(遺伝子組換え)と化学療法剤の併用療法による治療歴を有していた.奏効率(部分寛解以上)は80.0%(40例/50例),完全寛解率(不確定完全寛解以上)は64.0%(32例/50例)であった.有効性評価対象例のうち3例がマントル細胞リンパ腫であり,奏効例は1例(部分寛解)であった.

適格症例完全寛解部分寛解奏効率
(90%信頼区間)
完全寛解率
(90%信頼区間)
50例32例8例80.0%
(68.4−88.7%)
64.0%
(51.4−75.3%)
奏効率:部分寛解以上

安全性(血液毒性)

 白血球数
(×103/mm3
好中球数
(×103/mm3
血小板数
(×103/mm3
ヘモグロビン量
(g/dL)
患者数50505050
最低値中央値
[範囲]
1.35
[0.30−4.50]
0.60
[0.01−3.75]
37
[7−185]
10.3
[5.6−14.0]
投与前値から最低値までの期間49.0日
[36−132日]
54.0日
[23−174日]
42.0日
[32−60日]
62.0日
[1−115日]
最低値から回復までの期間中央値
[範囲]
23.5日
[4−122日]
8.0日
[2−49日]
13.5日
[2−42日]
18.0日
[2−112日]
グレード3以上の血液毒性
発現率例(%)38(76.0%)37(74.0%)32(64.0%)12(24.0%)
持続期間中央値
[範囲]
17.5日
[4−105日]
15.0日
[4−50日]
28.0日
[12−62日]
8.5日
[4−42日]
グレード4の血液毒性
発現率例(%)15(30.0%)20(40.0%)2(4.0%)2(4.0%)
持続期間中央値
[範囲]
10.0日
[3−32日]
13.5日
[4−50日]
4.5日
[4−5日]
16.0日
[8−24日]

<最低値から回復までの期間>

白血球数及びヘモグロビン量はグレード2以上の最低値から,グレード1以下(≧3×103/mm3,≧10.0g/dL)まで,好中球数及び血小板数はグレード3以上の最低値から,グレード2以下(≧1×103/mm3,≧50×103/mm3)まで回復した期間(日数)

<持続期間>

グレード3以上(又はグレード4)を示した最初の測定日の直前の測定日から,最低値を示した後グレード2以下(又はグレード3以下)に回復した最初の測定日までの期間(日数),ただし,観察期間内に回復が見られなかった症例は最後の測定日までの期間(日数)

グレード分類はNCI-CTC(National Cancer Institute-Common Toxicity Criteria,Version2.0)による

ヒト抗マウス抗体の生成

日本人における成績

国内第I相及び第II相試験において55例中,ヒト抗マウス抗体は2例で投与後に検出された.

外国人における成績(参考)

米国臨床試験において211例中,ヒト抗マウス抗体は3例で投与後に検出された.

薬効薬理

CD20抗原

ヒトCD20抗原は,Pro-B細胞,形質細胞を除くほとんど全ての正常及び腫瘍化したB細胞に発現している分化抗原(リンタンパク質)であり,B細胞以外の細胞には発現していない3)4)

抗腫瘍効果

Ramos腫瘍細胞を移植したマウス腫瘍モデルにおいてイットリウム(90Y)イブリツモマブ チウキセタン(遺伝子組換え)を投与した場合,殺腫瘍効果が認められた(in vivo).

作用機序

イブリツモマブはB細胞上のCD20抗原に対して強い抗原特異的結合能を示す5).キレート剤であるチウキセタン(90Yと強力に結合)は,露出したリジンアミノ基及び抗体内のアルギニンと共有結合する.イットリウム(90Y)イブリツモマブ チウキセタン(遺伝子組換え)は,リツキシマブ(遺伝子組換え)と同様にCD20抗原に結合し,アポトーシスの誘発及び90Yからのベータ線放出により,細胞傷害を誘発する6)

有効成分に関する理化学的知見

一般名イブリツモマブ チウキセタン(遺伝子組換え)
一般名(欧名)Ibritumomab Tiuxetan(genetical recombination)
分子量148kDa(daltons)
放射性核種の特性90Yとして
物理化学的半減期:64.1時間
ベータ線エネルギー:2.281MeV(99.98%)
減衰表経過時間
(時間)残存放射能
(%)−90265−89262−88259−87256−86253−85251−84248−83245−82243−81240−80238−79235−78232−77230−76227−75225−74223−73220−72218−71215−70213−69211−68209−67206−66204−65202−64200−63198−62196−61193−60191−59189−58187−57185−56183−55181−54179−53177−52175−51174−50172−49170−48168−47166−46164−45163−44161−43159−42157−41156−40154−39152−38151−37149−36148−35146−34144−33143−32141−31140−30138−29137−28135−27134−26132−25131−24130−23128−22127−21125−20124−19123−18121−17120−16119−15118−14116−13115−12114−11113−10111−9110−8109−7108−6107−5106−4104−3103−2102−11010100
本質マウス抗ヒトCD20モノクローナル抗体であるIgG1の重鎖(γ1鎖)及び軽鎖(κ鎖)をコードするcDNAの発現によりチャイニーズハムスター卵巣細胞で産生される213個のアミノ酸残基(C1018H1564N276O333S7;分子量:23,221.42)からなる軽鎖2分子と445個のアミノ酸残基(C2183H3334N564O671S21;分子量:48,888.57)からなる重鎖2分子からなる糖たん白質をN-{(2S)-2-[ビス(カルボキシメチル)アミノ]-3-(4-イソチオシアナトフェニル)プロピル}-N-{2-[ビス(カルボキシメチル)アミノ]プロピル}グリシン(C23H30N4O10S;分子量:554.57)に結合させた修飾糖タンパク質(遺伝子組換え)である.
KEGG DRUGD04489

承認条件

国内での治験症例が極めて限られていることから,製造販売後,一定数の症例に係るデータが集積されるまでの間は,全症例を対象に使用成績調査を実施することにより,イットリウム(90Y)イブリツモマブ チウキセタン(遺伝子組換え)使用患者の背景情報を把握するとともに,イットリウム(90Y)イブリツモマブ チウキセタン(遺伝子組換え)の安全性及び有効性に関するデータを早期に収集し,イットリウム(90Y)イブリツモマブ チウキセタン(遺伝子組換え)の適正使用に必要な措置を講じること.

包装

ゼヴァリン イットリウム(90Y)静注用セット

1セット

主要文献


1. Watanabe,T.et al.,  Cancer Sci.,  96,  903,  (2005) »PubMed »DOI
2. Tobinai,K.et al.,  Cancer Sci.,  100,  158,  (2009) »PubMed »DOI
3. Anderson,K.C.et al.,  Blood,  63,  1424,  (1984) »PubMed
4. Tedder,T.F.et al.,  J.Immunol.,  135,  973,  (1985) »PubMed
5. Chinn,P.C.et al.,  Int.J.Oncol.,  15,  1017,  (1999) »PubMed »DOI
6. Chakrabarti,M.C.et al.,  J.Nucl.Med.,  37,  1384,  (1996) »PubMed

作業情報


改訂履歴

2016年3月 改訂 (第12版)
2022年3月 改訂 (第13版)

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[ KEGG | KEGG DRUG | KEGG MEDICUS ] 2024/04/17 版