○急性循環不全(出血性ショック、外傷性ショック)及びショック様状態における救急
<急性循環不全(出血性ショック、外傷性ショック)及びショック様状態における救急>
通常、ヒドロコルチゾンとして1回250〜1000mgを緩徐に静注又は点滴静注する。なお、症状が改善しない場合には、適宜追加投与する。
<気管支喘息>
通常、成人には、ヒドロコルチゾンとして初回投与量100〜500mgを緩徐に静脈内注射又は点滴静脈内注射する。症状が改善しない場合には、1回50〜200mgを4〜6時間毎に緩徐に追加投与する。なお、年齢、症状により適宜増減する。
通常、2歳以上の小児には、ヒドロコルチゾンとして初回投与量5〜7mg/kgを緩徐に静脈内注射又は点滴静脈内注射する。症状が改善しない場合には、1回5〜7mg/kgを6時間毎に緩徐に追加投与する。なお、年齢、症状により適宜増減する。
通常、2歳未満の小児には、ヒドロコルチゾンとして初回投与量5mg/kgを緩徐に静脈内注射又は点滴静脈内注射する。症状が改善しない場合には、1回5mg/kgを6〜8時間毎に緩徐に追加投与する。なお、年齢、症状により適宜増減する。
8.1 本剤の投与により、誘発感染症、循環器障害、続発性副腎皮質機能不全、消化性潰瘍、糖尿病、精神障害等の重篤な副作用があらわれることがあるので、本剤の投与にあたっては、次の注意が必要である。
8.1.1 本剤を感染性ショックに使用した場合の有効性は、確認されていない。
8.1.2 ショック状態の患者には、ショックが改善すれば、直ちに投与を中止すること。
8.1.3 他の副腎皮質ホルモン剤で高用量を急速静注することにより、心停止、循環性虚脱、不整脈等があらわれたとの報告があるので、本剤の高用量を使用する場合には緩徐に投与すること。[
11.1.18参照]
8.1.4 投与中は副作用の出現に対し、常に十分な配慮と観察を行い、また、患者をストレスから避けるようにし、事故、手術等の場合には増量するなど適切な処置を行うこと。
8.1.5 副腎皮質ホルモン剤の連用後、投与を急に中止すると、ときに発熱、頭痛、食欲不振、脱力感、筋肉痛、関節痛、ショック等の離脱症状があらわれることがあるので、投与を中止する場合には、徐々に減量するなど慎重に行うこと。離脱症状があらわれた場合には、直ちに再投与又は増量すること。
8.2 特に、本剤投与中に水痘又は麻疹に感染すると、致命的な経過をたどることがあるので、次の注意が必要である。[
11.1.2参照]
8.2.1 本剤投与前に水痘又は麻疹の既往や予防接種の有無を確認すること。
8.2.2 水痘又は麻疹の既往のない患者においては、水痘又は麻疹への感染を極力防ぐよう常に十分な配慮と観察を行うこと。感染が疑われる場合や感染した場合には、直ちに受診するよう指導し、適切な処置を行うこと。
8.2.3 水痘又は麻疹の既往や予防接種を受けたことがある患者であっても、本剤投与中は、水痘又は麻疹を発症する可能性があるので留意すること。
8.3 高用量を数日間以上投与する場合には、高ナトリウム血症を発現することがあるため、メチルプレドニゾロンコハク酸エステルナトリウムなどの他のステロイド剤に置き換えることが望ましい。
8.5 リンパ系腫瘍を有する患者にヒドロコルチゾン製剤(注射剤)を投与した際に腫瘍崩壊症候群があらわれたとの報告がある。本剤投与後に急激な電解質異常や急性腎障害等が認められた場合は、腫瘍崩壊症候群の可能性を考慮し、適切な処置を行うこと。
9.1 合併症・既往歴等のある患者
9.1.1 以下の患者には治療上やむを得ないと判断される場合を除き、投与しないこと。
(1)有効な抗菌剤の存在しない感染症、全身の真菌症の患者
免疫機能を抑制し、宿主防御能を低下させるので、感染症を悪化させるおそれがある。[
11.1.2参照]
(2)急性心筋梗塞を起こした患者
9.1.2 消化性潰瘍、憩室炎の患者
消化管保護作用を減弱させ、また、組織の修復を阻害するので、症状を悪化させるおそれがある。[
11.1.5参照]
9.1.3 糖尿病の患者
糖新生を促進させ、また、細胞のインスリンに対する感受性を低下させるので、症状を悪化させるおそれがある。[
11.1.10参照]
9.1.4 感染症の患者(有効な抗菌剤の存在しない感染症、全身の真菌症の患者を除く)
感染症に対する適切な処置を行うこと。免疫機能を抑制し、宿主防御能を低下させ、症状を悪化させるおそれがある。また、炎症反応を抑制し、徴候を隠蔽するおそれがある。[
11.1.2参照]
9.1.5 結核性疾患の患者
免疫機能を抑制し、宿主防御能を低下させ、症状を悪化又は顕性化させるおそれがあるので、適宜抗結核療法を併用すること。[
11.1.2参照]
9.1.6 単純疱疹性角膜炎の患者
9.1.7 骨粗鬆症の患者
骨基質の合成を阻害し、骨形成を抑制するので、症状を悪化させるおそれがある。[
11.1.4参照]
9.1.8 精神病の患者
中枢神経刺激作用により、症状を悪化させるおそれがある。[
11.1.9参照]
9.1.9 後嚢白内障の患者
9.1.10 緑内障の患者
9.1.11 高血圧症、うっ血性心不全の患者
ナトリウム貯留作用により、症状を悪化させるおそれがある。[
11.1.14参照]
9.1.12 電解質異常のある患者
電解質代謝に影響を与えるので、症状を悪化させるおそれがある。
9.1.13 甲状腺機能低下のある患者
9.1.14 脂肪肝、脂肪塞栓症の患者
脂質代謝に影響を与えるので、症状を悪化させるおそれがある。
9.1.15 血栓症の患者
血液凝固促進作用により、症状を悪化させるおそれがある。[
11.1.7参照]
9.1.16 重症筋無力症の患者
9.1.17 気管支喘息の患者
喘息発作を悪化させることがある。薬物、食物、添加物等に過敏な喘息患者(アスピリン喘息の既往を有する患者等)には特に注意が必要である。[
11.1.12参照]
9.1.18 最近行った内臓の手術創のある患者
組織の修復を阻害するので、創傷治癒が障害されるおそれがある。
9.1.19 潰瘍性大腸炎(切迫穿孔、膿瘍、他の化膿性感染症の疑いがある場合)の患者
炎症反応を抑制するので、これらの疑いがある場合、その徴候を隠蔽するおそれがある。
9.1.20 B型肝炎ウイルスキャリアの患者
本剤の投与期間中及び投与終了後は継続して肝機能検査値や肝炎ウイルスマーカーのモニタリングを行うなど、B型肝炎ウイルス増殖の徴候や症状の発現に注意すること。異常が認められた場合には、本剤の減量を考慮し、抗ウイルス剤を投与するなど適切な処置を行うこと。副腎皮質ホルモン剤を投与されたB型肝炎ウイルスキャリアの患者において、B型肝炎ウイルスの増殖による肝炎があらわれることがある。また、投与開始前にHBs抗原陰性の患者において、B型肝炎ウイルスによる肝炎を発症した症例が報告されている。[
11.1.2参照]
9.2 腎機能障害患者
9.2.1 腎不全の患者
ナトリウム貯留作用により、症状を悪化させるおそれがある。
9.3 肝機能障害患者
9.5 妊婦
妊婦又は妊娠している可能性のある女性には、治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与すること。動物実験(マウス、腹腔内投与)で催奇形作用(口蓋裂)が報告されており、また、新生児に副腎不全を起こすことがある。
9.6 授乳婦
治療上の有益性及び母乳栄養の有益性を考慮し、授乳の継続又は中止を検討すること。糖質コルチコイドは母乳中へ移行することがある。
9.7 小児等
9.7.1 観察を十分に行うこと。発育抑制があらわれることがある。
9.7.2 長期投与した場合、頭蓋内圧亢進症状があらわれることがある。
9.7.3 新生児及び乳児において一過性の肥大型心筋症が起こることが報告されている
1)ため、本剤投与前及び本剤投与中は適宜心機能検査(心エコー等)によるモニタリングを行うなど、児の状態を十分に観察すること。
9.8 高齢者
慎重に投与すること。長期投与した場合、感染症の誘発、糖尿病、骨粗鬆症、高血圧症、後嚢白内障、緑内障等の副作用があらわれやすい。
11.1 重大な副作用
次の副作用があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止するなど適切な処置を行うこと。
11.1.1 ショック(頻度不明)
呼吸困難、全身潮紅、血管浮腫、蕁麻疹等のアナフィラキシーを伴うことがある。
11.1.2 感染症(頻度不明)
ウイルス、細菌、真菌、原虫、寄生虫等による感染症の誘発又は徴候の隠蔽、感染症の悪化等があらわれることがある。これらの感染症の発現頻度は、副腎皮質ホルモン剤を増量すると高くなるとの報告があるので、抗菌剤等による適切な処置を行うこと。[
8.2、
9.1.1、
9.1.4-
9.1.6、
9.1.20参照]
11.1.3 続発性副腎皮質機能不全(頻度不明)
観察を十分に行い、異常が認められた場合には直ちに再投与又は増量するなど適切な処置を行うこと。
11.1.4 骨粗鬆症(頻度不明)、骨頭無菌性壊死(頻度不明)
骨粗鬆症があらわれ、脊椎圧迫骨折、病的骨折を起こすことがある。また、大腿骨及び上腕骨等の骨頭無菌性壊死があらわれることがあるので、疼痛等の症状の観察を十分に行い、異常が認められた場合にはMRI等の検査を実施し、投与を中止するなど適切な処置を行うこと。[
9.1.7参照]
11.1.5 胃腸穿孔(頻度不明)、消化管出血(頻度不明)、消化性潰瘍(頻度不明)
便潜血のチェック等の観察を十分に行うこと。[
9.1.2参照]
11.1.6 ミオパチー(頻度不明)
連用によりミオパチーがあらわれることがある。また、非脱分極性筋弛緩剤との併用又は重症筋無力症等の神経筋接合部位障害のある患者において短期間でミオパチーがあらわれ、四肢麻痺に至ったことが報告されているので、筋力低下、CKの上昇等の観察を十分に行うこと。
11.1.8 頭蓋内圧亢進(頻度不明)、痙攣(頻度不明)
11.1.9 精神変調(頻度不明)
、うつ状態(頻度不明)[
9.1.8参照]
11.1.10 糖尿病(頻度不明)[
9.1.3参照]
11.1.11 緑内障(頻度不明)、後嚢白内障(頻度不明)
11.1.12 気管支喘息(頻度不明)
喘息発作の誘発又は悪化があらわれることがある。[
9.1.17参照]
11.1.13 心破裂(頻度不明)
急性心筋梗塞を起こした患者で、心破裂があらわれたとの報告がある。[
9.1.1参照]
11.1.14 うっ血性心不全(頻度不明)
観察を十分に行い、異常が認められた場合には心電図等の検査を実施し、投与を中止するなど適切な処置を行うこと。[
9.1.11参照]
11.1.15 食道炎(頻度不明)
11.1.16 カポジ肉腫(頻度不明)
11.1.17 腱断裂(頻度不明)
11.1.18 心停止(頻度不明)
、循環性虚脱(頻度不明)
、不整脈(頻度不明)[
8.1.3参照]
11.2 その他の副作用
次の副作用があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止するなど適切な処置を行うこと。
| 頻度不明 |
内分泌 | 月経異常、クッシング様症状 |
消化器 | 膵炎、下痢、悪心・嘔吐、胃痛、胸やけ、腹部膨満感、口渇、食欲不振、食欲亢進 |
循環器 | 徐脈、血圧降下、血圧上昇 |
精神神経系 | 多幸症、不眠、頭痛、めまい |
筋・骨格 | 筋力低下、筋肉痛、関節痛 |
脂質・蛋白質代謝 | 満月様顔貌、野牛肩、窒素負平衡 |
体液・電解質 | 浮腫、低カリウム性アルカローシス、カリウム低下、ナトリウム貯留 |
肝臓 | AST上昇、ALT上昇、Al-P上昇、脂肪肝 |
眼 | 中心性漿液性網脈絡膜症等による網膜障害、眼球突出 |
血液 | 白血球増多 |
皮膚 | 創傷治癒障害、紫斑、皮下溢血、ざ瘡、多毛、脱毛、色素沈着、色素脱失、線条、発汗異常、皮膚菲薄化・脆弱化、脂肪織炎 |
過敏症 | 発疹、紅斑、そう痒 |
その他 | 発熱、疲労感、ステロイド腎症、体重増加、精子数及びその運動性の増減、無菌膿瘍、仮性脳腫瘍 |
副腎皮質ホルモン剤の投与により、皮膚試験の反応が抑制されることがあるので、本剤投与中に皮膚試験を実施する場合は注意すること。
14.1 薬剤調製時の注意
本剤は、添付の溶解液を用いて用時溶解すること。溶解した液を輸液と混合して使用する場合には、5%ブドウ糖注射液、生理食塩液等を使用すること。なおその際、本剤はpHの変動等により白沈又は黄沈を生じることがあるので、輸液等と混合する場合には注意すること。また、本剤を数種薬剤と混合して使用する場合には、特に注意する必要がある。
14.2 薬剤調製後の注意
溶解後はなるべく速やかに使用すること。なお、保存する場合でも24時間以内に使用すること。
14.3 薬剤投与時の注意
14.3.1 投与経路
本剤は用法及び用量にしたがって、静注又は点滴静注のみに使用すること。本剤は動脈注射、筋肉内注射、脊髄腔内注射、硬膜外注射、眼科用等に対して使用しないこと(筋肉内投与により、局所の組織の萎縮による陥没があらわれることがある)。
14.3.2 静脈内投与時
静脈内投与により、血管痛、静脈炎があらわれることがあるので、これを予防するため、注射液の調製、注射部位、注射方法等について十分注意し、その注射速度はできるだけ遅くすること(例えば、投与量が500mgを超えるときには、少なくとも10分間以上かけて投与することが望ましい)。
15.1 臨床使用に基づく情報
15.1.1 β2-刺激剤との併用により、低カリウム血症があらわれることがある。
15.1.2 外国において、死菌ワクチン又は不活化ワクチンの効果を減弱させるとの報告がある。
18.1 作用機序
細胞内の受容体を介してDNAに働き、遺伝子の転写を調節することにより、作用を発揮する。
18.2 薬効を裏付ける試験成績
18.2.1 副腎機能不全の補償作用
18.2.2 抗ショック作用
コルチコステロイドはカテコラミンの作用を増強し、ライソゾームの安定化、血小板凝集阻止に加え毛細血管内膜及び肺胞上皮細胞を保護する
7)8)9)10)11)。
18.2.3 抗炎症作用
コルチコステロイドは、炎症の初期過程(浮腫、フィブリン沈着、毛細管拡張等)及び晩期過程(毛細血管と線維芽細胞の分裂等)を抑制する。抗炎症作用がサイトカインの接着分子の抑制を介して、nuclear factor κB(NF-κB)作用を抑制する
7)8)9)10)11)。
18.2.4 抗アレルギー作用、抗体産生の抑制
コルチコステロイドは、毛細血管透過亢進、血管拡張、非血管性平滑筋収縮などの因子と同様に種々の化学走化物質の産生を抑制することにより白血球等の作用を阻止する
7)8)9)10)11)。