医療用医薬品 : ムコブロチン

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医薬品情報


総称名 ムコブロチン
一般名 ジヒドロコデインリン酸塩
dl-メチルエフェドリン塩酸塩
クロルフェニラミンマレイン酸塩
欧文一般名 Dihydrocodeine Phosphate
dl-Methylephedrine Hydrochloride
Chlorpheniramine Maleate
薬効分類名 鎮咳剤
薬効分類番号 2229
ATCコード R06AB54
KEGG DRUG
D04313 ジヒドロコデインリン酸塩・dl-メチルエフェドリン塩酸塩・クロルフェニラミンマレイン酸塩
JAPIC 添付文書(PDF)
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添付文書情報2023年9月 改訂(第1版)


商品情報 3.組成・性状

販売名 欧文商標名 製造会社 YJコード 薬価 規制区分
ムコブロチン配合シロップ (後発品) MUCOBROTIN COMBINATION SYRUP 東和薬品 2229102Q1162 6.9円/mL

2. 禁忌

次の患者には投与しないこと
2.1 重篤な呼吸抑制のある患者[呼吸抑制を増強するおそれがある。]
2.2 12歳未満の小児[9.7.1参照]
2.3 アヘンアルカロイドに対し過敏症の既往歴のある患者
2.4 閉塞隅角緑内障の患者[抗コリン作用により眼圧が上昇し、症状を悪化させることがある。]
2.5 前立腺肥大等下部尿路に閉塞性疾患のある患者[症状を悪化させるおそれがある。]
2.6 カテコールアミン製剤(アドレナリン、イソプロテレノール等)を投与中の患者[10.1参照]

4. 効能または効果

下記疾患に伴う咳嗽
急性気管支炎、慢性気管支炎、感冒・上気道炎、肺炎、肺結核

6. 用法及び用量

通常、成人1日10mlを3回に分割経口投与する。
なお、症状により適宜増減する。
小児には以下のように投与する。
12歳以上15歳未満:成人量の2/3

8. 重要な基本的注意

8.1 用法・用量通り正しく使用しても効果が認められない場合は、本剤が適当でないと考えられるので、投与を中止すること。また、経過の観察を十分に行うこと。
8.2 過度の使用を続けた場合、不整脈、場合によっては心停止を起こすおそれがあるので、使用が過度にならないように注意すること。
8.3 眠気、めまいが起こることがあるので、本剤投与中の患者には自動車の運転等危険を伴う機械の操作に従事させないよう注意すること。

9. 特定の背景を有する患者に関する注意

9.1 合併症・既往歴等のある患者
9.1.1 18歳未満の肥満、閉塞性睡眠時無呼吸症候群又は重篤な肺疾患を有する患者
投与しないこと。重篤な呼吸抑制のリスクが増加するおそれがある。
9.1.2 気管支喘息発作中の患者
気道分泌を妨げるおそれがある。
9.1.3 心機能障害のある患者
呼吸抑制を増強するおそれがある。
9.1.4 呼吸機能障害のある患者
呼吸抑制を増強するおそれがある。
9.1.5 脳に器質的障害のある患者
脳血管を拡張し脳脊髄液圧を上昇させるおそれがある。
9.1.6 ショック状態にある患者
症状を悪化させるおそれがある。
9.1.7 代謝性アシドーシスのある患者
症状を悪化させるおそれがある。
9.1.8 甲状腺機能異常のある患者
症状を悪化させるおそれがある。
9.1.9 副腎皮質機能低下症(アジソン病等)の患者
症状を悪化させるおそれがある。
9.1.10 薬物依存の既往歴のある患者
薬物依存を生じるおそれがある。
9.1.11 衰弱者
代謝・排泄機能が低下しているため、副作用が発現するおそれがある。
9.1.12 高血圧症の患者
症状を悪化させるおそれがある。
9.1.13 糖尿病の患者
血糖のコントロールに悪影響を及ぼすおそれがある。
9.1.14 開放隅角緑内障の患者
抗コリン作用により眼圧が上昇し、症状を悪化させることがある。
9.2 腎機能障害患者
副作用が発現するおそれがある。
9.3 肝機能障害患者
副作用が発現するおそれがある。
9.5 妊婦
妊婦又は妊娠している可能性のある女性には、治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与すること。ジヒドロコデインリン酸塩の類似化合物(モルヒネ)の動物実験で催奇形性が報告されている。分娩時の投与により新生児に呼吸抑制があらわれることがある。
9.6 授乳婦
本剤投与中は授乳を避けさせること。ジヒドロコデインリン酸塩の類似化合物(コデイン)で、母乳への移行により、乳児でモルヒネ中毒(傾眠、哺乳困難、呼吸困難等)が生じたとの報告がある。なお、CYP2D6の活性が過剰であることが判明している患者(Ultra-rapid Metabolizer)では、母乳中のジヒドロモルヒネ濃度が高くなるおそれがある1)2)。[15.1参照]
9.7 小児等
9.7.1 12歳未満の小児
投与しないこと。呼吸抑制の感受性が高い。海外において、12歳未満の小児で死亡を含む重篤な呼吸抑制のリスクが高いとの報告がある。[2.2参照]
9.7.2 肥満、閉塞性睡眠時無呼吸症候群又は重篤な肺疾患を有する小児
投与しないこと。重篤な呼吸抑制のリスクが増加するおそれがある。
9.8 高齢者
用量に注意すること。一般に生理機能が低下しているため、副作用が発現するおそれがある。

10. 相互作用

相互作用序文
本剤に含まれるジヒドロコデインリン酸塩は、主として肝代謝酵素UGT2B7、UGT2B4及び一部CYP3A4、CYP2D6で代謝される。
薬物代謝酵素用語
UGT2B7
薬物代謝酵素用語
UGT2B4
薬物代謝酵素用語
CYP3A4
薬物代謝酵素用語
CYP2D6
10.1 併用禁忌
カテコールアミン製剤
アドレナリン
(ボスミン)
イソプロテレノール
(プロタノール等)

2.6参照]
不整脈、場合によっては心停止を起こすおそれがある。メチルエフェドリン塩酸塩及びカテコールアミン製剤はともに交感神経刺激作用を持つ。
10.2 併用注意
中枢神経抑制剤
フェノチアジン誘導体
バルビツール酸誘導体

モノアミン酸化酵素阻害剤
三環系抗うつ剤
アルコール
中枢抑制作用が増強されることがある。ジヒドロコデインリン酸塩、クロルフェニラミンマレイン酸塩はともに中枢神経抑制作用を持つ。
抗コリン剤
アトロピン硫酸塩水和物
便秘又は尿貯留が起こるおそれがある。ジヒドロコデインリン酸塩は抗コリン作用を増強する。
モノアミン酸化酵素阻害剤
甲状腺製剤
レボチロキシン
リオチロニン
メチルエフェドリン塩酸塩の作用が増強されることがある。
減量するなど注意すること。
メチルエフェドリン塩酸塩は交感神経刺激作用を持つ。
ナルメフェン塩酸塩水和物本剤の効果が減弱するおそれがある。μオピオイド受容体拮抗作用により、本剤の作用が競合的に阻害される。

11. 副作用

11.1 重大な副作用
次の副作用があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止するなど適切な処置を行うこと。
11.1.1 無顆粒球症、再生不良性貧血(いずれも頻度不明)
11.1.2 呼吸抑制(頻度不明)
息切れ、呼吸緩慢、不規則な呼吸、呼吸異常等があらわれた場合には、投与を中止するなど適切な処置を行うこと。
なお、ジヒドロコデインリン酸塩による呼吸抑制には、麻薬拮抗剤(ナロキソン、レバロルファン等)が拮抗する。
11.2 その他の副作用
次の副作用があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止するなど適切な処置を行うこと。
 頻度不明
過敏症顔面紅潮、発疹、そう痒感
血液血小板減少症
依存性注)薬物依存
呼吸循環器系心悸亢進、血圧変動
精神神経系めまい、発汗、頭痛、神経過敏、熱感、眠気、疲労
消化器悪心・嘔吐、便秘、食欲不振、口渇
泌尿器多尿、排尿困難

15. その他の注意

15.1 臨床使用に基づく情報
遺伝的にCYP2D6の活性が過剰であることが判明している患者(Ultra-rapid Metabolizer)では、本剤に含まれるジヒドロコデインリン酸塩の活性代謝産物であるジヒドロモルヒネの血中濃度が上昇し、副作用が発現しやすくなるおそれがある3)4)5)。[9.6参照]

16. 薬物動態

16.1 血中濃度
16.1.1 生物学的同等性試験
ムコブロチン配合シロップとフスコデ配合シロップを、クロスオーバー法によりそれぞれ10mL(ジヒドロコデインリン酸塩として30mg、dl-メチルエフェドリン塩酸塩として60mg及びクロルフェニラミンマレイン酸塩として12mg)健康成人男子に絶食単回経口投与してジヒドロコデインリン酸塩、dl-メチルエフェドリン塩酸塩及びクロルフェニラミンマレイン酸塩の血漿中未変化体濃度を測定し、得られた薬物動態パラメータ(AUC、Cmax)について統計解析を行った結果、両剤の生物学的同等性が確認された。6)
(1)ジヒドロコデインリン酸塩
 製剤投与量
(ジヒドロコデインリン酸塩として)
判定パラメータ参考パラメータ
AUC0-48(ng・hr/mL)Cmax(ng/mL)Tmax(hr)
ムコブロチン配合シロップ10mL
(30mg)
951.5±43.6208.7±8.90.63±0.06
フスコデ配合シロップ10mL
(30mg)
950.8±38.7196.5±11.30.69±0.07
血漿中濃度並びにAUC、Cmax等のパラメータは、被験者の選択、体液の採取回数・時間等の試験条件によって異なる可能性がある。
(2)dl-メチルエフェドリン塩酸塩
 製剤投与量
dl-メチルエフェドリン塩酸塩として)
判定パラメータ参考パラメータ
AUC0-48(ng・hr/mL)Cmax(ng/mL)Tmax(hr)
ムコブロチン配合シロップ10mL
(60mg)
3266±160349.2±13.90.75±0.06
フスコデ配合シロップ10mL
(60mg)
3300±180355.8±17.60.97±0.11
血漿中濃度並びにAUC、Cmax等のパラメータは、被験者の選択、体液の採取回数・時間等の試験条件によって異なる可能性がある。
(3)クロルフェニラミンマレイン酸塩
 製剤投与量
(クロルフェニラミンマレイン酸塩として)
判定パラメータ参考パラメータ
AUC0-48(ng・hr/mL)Cmax(ng/mL)Tmax(hr)
ムコブロチン配合シロップ10mL
(12mg)
485.7±25.227.1±1.82.44±0.34
フスコデ配合シロップ10mL
(12mg)
508.8±34.426.9±1.62.17±0.31
血漿中濃度並びにAUC、Cmax等のパラメータは、被験者の選択、体液の採取回数・時間等の試験条件によって異なる可能性がある。

18. 薬効薬理

18.1 作用機序
<ジヒドロコデインリン酸塩>
麻薬性中枢性鎮咳薬に分類される鎮咳薬である。コデインと同じくモルヒネ系鎮痛薬に属するので、薬理作用は質的にはモルヒネに準ずる。7)
dl-メチルエフェドリン塩酸塩>
交感神経興奮様薬物である。α及びβ受容体を刺激するが、作用の一部は交感神経終末からのノルアドレナリン遊離を介する間接的なものである。臨床的にはβ2受容体刺激による気管支拡張作用が利用される。8)
<クロルフェニラミンマレイン酸塩>
ヒスタミンH1受容体遮断薬である。H1受容体を介するヒスタミンによるアレルギー性反応(毛細血管の拡張と透過性亢進、気管支平滑筋の収縮など)を抑制する。9)

19. 有効成分に関する理化学的知見

19.1. ジヒドロコデインリン酸塩

一般的名称 ジヒドロコデインリン酸塩
一般的名称(欧名) Dihydrocodeine Phosphate
化学名 (5R,6S)-4,5-Epoxy-3-methoxy-17-methyl-morphinan-6-ol monophosphate
分子式 C18H23NO3・H3PO4
分子量 399.38
物理化学的性状 白色〜帯黄白色の結晶性の粉末である。水又は酢酸(100)に溶けやすく、エタノール(95)に溶けにくく、ジエチルエーテルにほとんど溶けない。1.0gを水10mLに溶かした液のpHは3.0〜5.0である。光によって変化する。
理化学知見その他 19.1 ジヒドロコデインリン酸塩
KEGG DRUG D01481

19.2. dl-メチルエフェドリン塩酸塩

一般的名称 dl-メチルエフェドリン塩酸塩
一般的名称(欧名) dl-Methylephedrine Hydrochloride
化学名 (1RS,2SR)-2-Dimethylamino-1-phenyl-propan-1-ol monohydrochloride
分子式 C11H17NO・HCl
分子量 215.72
融点 207〜211℃
物理化学的性状 無色の結晶又は白色の結晶性の粉末である。水に溶けやすく、エタノール(99.5)にやや溶けにくく、酢酸(100)に溶けにくく、無水酢酸にほとんど溶けない。水溶液(1→20)は旋光性を示さない。
理化学知見その他 19.2 dl-メチルエフェドリン塩酸塩

19.3. クロルフェニラミンマレイン酸塩

一般的名称 クロルフェニラミンマレイン酸塩
一般的名称(欧名) Chlorpheniramine Maleate
化学名 (3RS)-3-(4-Chlorophenyl)-N,N-dimethyl-3-pyridin-2-ylpropylamine monomaleate
分子式 C16H19ClN2・C4H4O4
分子量 390.86
融点 130〜135℃
物理化学的性状 白色の微細な結晶である。酢酸(100)に極めて溶けやすく、水又はメタノールに溶けやすく、エタノール(99.5)にやや溶けやすい。希塩酸に溶ける。水溶液(1→20)は旋光性を示さない。
理化学知見その他 19.3 クロルフェニラミンマレイン酸塩
KEGG DRUG D00665

22. 包装

500mL[瓶]

23. 主要文献

  1. Koren G,et al., Lancet., 368, 704, (2006) »PubMed
  2. Madadi P,et al., Clin Pharmacol Ther., 85 (1), 31-35, (2009) »PubMed
  3. Ciszkowski C,et al., N Engl J Med., 361 (8), 827-828, (2009) »PubMed
  4. Kelly LE,et al., Pediatrics., 129 (5), e1343-1347, (2012)
  5. Voronov P,et al., Pediatric Anesthesia., 17 (7), 684-687, (2007) »PubMed
  6. 社内資料:生物学的同等性試験
  7. 第十八改正日本薬局方解説書, C-2297-2300, (2021)
  8. 第十八改正日本薬局方解説書, C-5661-5665, (2021)
  9. 第十八改正日本薬局方解説書, C-1832-1838, (2021)

24. 文献請求先及び問い合わせ先

文献請求先
東和薬品株式会社 学術部DIセンター
〒570-0081 大阪府守口市日吉町2丁目5番15号
電話:0120-108-932
FAX:06-7177-7379
製品情報問い合わせ先
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26. 製造販売業者等

26.1 製造販売元
東和薬品株式会社
大阪府門真市新橋町2番11号

[ KEGG | KEGG DRUG | KEGG MEDICUS ] 2025/07/23 版