2.1 本剤の成分に対し過敏症の既往歴のある患者
2.2 重症糖尿病、ステロイド大量投与の患者で糖代謝異常が疑われる場合[高血糖があらわれるおそれがある。]
2.3 妊娠3ヶ月以内又は妊娠を希望する女性へのビタミンA5,000IU/日以上の投与[
9.5.1参照]
2.4 アミノ酸代謝異常のある患者[高アミノ酸血症等を起こすおそれがある。]
本剤は、消化をほとんど必要としない成分で構成されたきわめて低残渣性・易吸収性の経腸的高カロリー栄養剤でエレメンタルダイエット又は成分栄養と呼ばれる。一般に、手術前・後の患者に対し、未消化態蛋白を含む経管栄養剤による栄養管理が困難な時用いることができるが、とくに下記の場合に使用する。
○未消化態蛋白を含む経管栄養剤の適応困難時の術後栄養管理
○腸内の清浄化を要する疾患の栄養管理
○術直後の栄養管理
○消化管異常病態下の栄養管理(縫合不全、短腸症候群、各種消化管瘻等)
○消化管特殊疾患時の栄養管理(クローン氏病、潰瘍性大腸炎、消化不全症候群、膵疾患、蛋白漏出性腸症等)
○高カロリー輸液の適応が困難となった時の栄養管理(広範囲熱傷等)
通常、エレンタール配合内用剤80gを300mLとなるような割合で常水又は微温湯に溶かし(1kcal/mL)、鼻腔ゾンデ、胃瘻、又は腸瘻から、十二指腸あるいは空腸内に1日24時間持続的に注入する(注入速度は75〜100mL/時間)。また、要により本溶液を1回又は数回に分けて経口投与もできる。
標準量として成人1日480〜640g(1,800〜2,400kcal)を投与する。なお、年令、体重、症状により適宜増減する。
一般に、初期量は、1日量の約1/8(60〜80g)を所定濃度の約1/2(0.5kcal/mL)で投与開始し、患者の状態により、徐々に濃度及び投与量を増加し、4〜10日後に標準量に達するようにする。
8.1 本剤は脂肪含有量を必要最小限に抑えてあるため、特に小児への投与あるいは長期間単独投与の時、総投与量が少ない場合はまれに脂肪酸欠乏が生じることがあるので、このような場合には脂肪の補給を要する。
8.2 本剤は成人の必要最少量の電解質を含んでいるが、病態によっては必要量が異なるため、本剤投与により電解質の過多を生じることがある。そのような場合は、必要に応じて本剤の投与量の調節等の処置を行うこと。
8.3 ビタミン、電解質及び微量元素の不足を生じる可能性があるので、必要に応じて補給すること。長期投与中にセレン欠乏症(心機能の低下、爪白色変化、筋力低下等)があらわれたとの報告がある。
8.4 経管投与患者においては、投与濃度が濃すぎる又は投与速度が速すぎると、投与終了後にダンピング症候群様の低血糖があらわれることがあるので、投与濃度、投与速度に注意すること。[
11.1.2参照]
9.1 合併症・既往歴等のある患者
9.1.1 小腸広範囲切除により起こる短腸症候群の患者
下痢を起こさぬように特に注意すること。また、術後4日目ごろをめどに慎重に投与を開始すること。本手術後は特に腸管の吸収能力が低下している可能性がある。
9.4 生殖能を有する者
9.5 妊婦
9.5.1 妊娠3ヶ月以内又は妊娠を希望する女性
ビタミンA5,000IU/日以上は投与しないこと。投与する場合は用法・用量に留意し、本剤によるビタミンAの投与は5,000IU/日未満に留めるなど必要な注意を行うこと。外国において、妊娠前3ヶ月から妊娠初期3ヶ月までにビタミンAを10,000IU/日以上摂取した女性から出生した児に、頭蓋神経堤などを中心とする奇形発現の増加が推定されたとする疫学調査結果がある。[
2.3、
9.4参照]
9.5.2 妊婦(妊娠3ヶ月以内の女性を除く)
治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与すること。
9.6 授乳婦
治療上の有益性及び母乳栄養の有益性を考慮し、授乳の継続又は中止を検討すること。
9.7 小児等
低出生体重児を対象とした臨床試験は実施していない。
9.8 高齢者
投与量、投与速度に注意して投与すること。一般に生理機能が低下していることが多い。
11.1 重大な副作用
次のような副作用があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には、投与を中止するなど適切な処置を行うこと。
11.1.1 ショック、アナフィラキシー(いずれも頻度不明)
血圧低下、意識障害、呼吸困難、チアノーゼ、悪心、胸内苦悶、顔面潮紅、そう痒感、発汗等があらわれた場合には直ちに投与を中止し、適切な処置を行うこと。
11.1.2 低血糖(0.1%未満)
投与終了後にダンピング症候群様の低血糖(倦怠感、発汗、冷汗、顔面蒼白、痙攣、意識低下等)があらわれることがある。[
8.4参照]
注):発現頻度は、使用成績調査を含む。
11.2 その他の副作用
次のような副作用があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には、投与を中止するなど適切な処置を行うこと。
| 5%以上 | 0.1〜5%未満 | 0.1%未満 |
消化器 | 下痢 | 腹部膨満感、悪心、嘔吐、腹痛 | |
肝臓 | | 血中AST上昇、ALT上昇、Al-P上昇 | LDH上昇、γ-GTP上昇 |
腎臓 | | 血中尿素窒素の上昇 | |
糖・脂質代謝 | | 血糖値の上昇 | 中性脂肪上昇 |
自律神経系 | | | 発汗 |
皮膚 | | | 発疹 |
その他 | | 発熱 | |
14.1 薬剤調製時の注意
14.1.1 調製方法
容器に常水又は微温湯を約250mL入れ、本剤1袋を加えて速やかに攪拌する。この場合、溶解後の液量は約300mL(1kcal/mL)となる。
14.2 薬剤調製後の注意
本剤は用時調製するが、調製後12時間以内に使用すること。
14.3 薬剤投与時の注意
14.3.1 投与時
(1)本剤を用いて調製した液剤は、静注してはならない。
(2)鼻腔ゾンデによる持続注入を行う際、ゾンデ末端の留置位置、注入速度、患者の状態によってはまれに逆流を生じることがあるので、ゾンデ末端の留置位置及び注入速度に注意すること。
14.3.2 投与濃度、投与速度
本剤を用いて調製した液剤の標準濃度は1kcal/mL(80g/300mL)、標準注入速度は100mL/時間であるが、小児又は投与初期の患者に対しては下痢等の副作用が生じないように低濃度、低速度から行い、段階的に維持量へ移行していくことが望ましい。
14.3.3 その他
可塑剤としてDEHP〔di-(2-ethylhexyl)phthalate;フタル酸ジ-(2-エチルヘキシル)〕を含むポリ塩化ビニル製の栄養セット及びフィーディングチューブ等を使用した場合、DEHPが製剤中に溶出するので、DEHPを含まない栄養セット及びフィーディングチューブ等を使用することが望ましい。
18.1 作用機序
ほとんど消化を必要としない形の5大栄養素からなり、低残渣性で、消化管内において速やかに吸収され、栄養効果を発揮する。
18.2 健常ラットにおける栄養学的効果
健常ラットを用いた実験で、本剤は良質の蛋白質に相当する栄養効果をもつことが確認された
2)。
18.3 実験モデルラットにおける栄養学的効果ならびに低残渣性
小腸広範囲切除ラットによる自由摂取実験で、本剤摂取群は、カゼイン飼料摂取群と比較して体重増加、窒素出納によりすぐれた効果を示し、糞量は極めて低い結果であった
3)。
18.4 易吸収性、低残渣性ならびに栄養学的効果に関する経管栄養食又は高カロリー輸液との違い
小腸広範囲切除ラットについて市販経管栄養食投与及び高カロリー輸液投与と本剤投与とを比較した結果、市販経管栄養食に比べて易吸収性、低残渣性にすぐれた結果を示し、糞排泄量も減少した。
また、体重増加及び窒素出納は高カロリー輸液に匹敵する効果を示した
4)。
18.5 創傷治癒効果
小腸広範囲切除ラットについて高カロリー輸液投与と本剤投与との間では小腸縫合部耐圧力に差を認めなかった。また、皮膚剥離ラットの皮膚創傷治癒効果においても、高カロリー輸液投与と本剤投与とでは差を認めなかった
5)。
18.6 血糖値及び血中アミノ酸濃度の変動に及ぼす影響
6週齢Fischer系雄性ラットに本剤及び全卵粉飼料の50%溶液を胃ゾンデ法にて投与した。肝門脈血の血糖値は、本剤投与群及び全卵粉飼料投与群とも投与後15分に最大値を示した。肝門脈血のアミノ酸濃度は、本剤投与群では投与後15分に、全卵粉飼料投与群では投与後2時間に最大値を示したが、血中アミノ酸パターンは両投与群で類似していた
6)。