2.1 有効な抗菌剤の存在しない感染症、深在性真菌症の患者[症状を増悪するおそれがある。]
2.2 本剤の成分に対して過敏症の既往歴のある患者
本剤の投与開始前には、患者の喘息症状を比較的安定な状態にしておくこと。特に、喘息発作重積状態又は喘息の急激な悪化状態のときには原則として本剤は使用しないこと。
成人
通常、成人にはシクレソニドとして100〜400μgを1日1回吸入投与する。なお、症状により適宜増減するが、1日の最大投与量は800μgとする。
また、1日に800μgを投与する場合は、朝、夜の1日2回に分けて投与する。
小児
通常、小児にはシクレソニドとして100〜200μgを1日1回吸入投与する。なお、良好に症状がコントロールされている場合は50μg1日1回まで減量できる。
7.1 喘息症状の緩解がみられた場合は、治療上必要最小限の用量を投与すること。
7.2 1日1回投与の場合には、本剤を夜に投与することが望ましい。
8.1 本剤は気管支拡張剤並びに全身性ステロイド剤のように既に起きている発作を速やかに軽減する薬剤ではないので、毎日規則正しく使用すること。
8.2 本剤の投与期間中に急性の発作が発現した場合は、発作発現時に短時間作用性吸入β2刺激薬等の他の適切な薬剤を使用するよう患者を指導すること。また、その薬剤の使用量が増加したり、効果が十分でなくなってきたと感じられたら、喘息の管理が十分でないことが考えられるので、可及的速やかに医療機関を受診し治療を求めるよう患者を指導すること。このような状態は喘息の管理が不十分になっていることを示唆し、患者の生命を脅かす可能性があるので、本剤の増量あるいは気管支拡張剤・全身性ステロイド剤を短期間併用し、症状の軽減に合わせて併用薬剤を徐々に減量すること。
8.3 気道感染に伴い喘息症状の増悪がみられた場合には、本剤の増量を含むステロイド療法の強化と感染症の治療を考慮すること。
8.4 本剤の投与を突然中止すると喘息の急激な悪化を起こすことがあるので、投与を中止する場合には患者の喘息症状を観察しながら徐々に減量すること。
8.5 全身性ステロイド剤と比較し可能性は低いが、吸入ステロイド剤の投与により全身性の作用(副腎皮質機能抑制、小児の成長遅延、骨密度の低下、白内障、緑内障を含む)が発現する可能性があるので、吸入ステロイド剤の投与量は患者毎に喘息をコントロールできる最少用量に調節すること。特に長期間、大量投与の場合には定期的に検査を行い、全身性の作用が認められた場合には患者の喘息症状を観察しながら徐々に減量するなど適切な処置を行うこと。
8.6 全身性ステロイド剤の減量は本剤の吸入開始後症状の安定をみて徐々に行うこと。減量にあたっては一般のステロイド剤の減量法に準ずる。
8.7 本剤を含む吸入ステロイド剤投与後に、潜在していた基礎疾患である好酸球性多発血管炎性肉芽腫症にみられる好酸球増多症がまれにあらわれることがある。この症状は通常、全身性ステロイド剤の減量並びに離脱に伴って発現しており、本剤との直接的な因果関係は確立されていないが、本剤の投与期間中は、好酸球数の推移や、他の好酸球性多発血管炎性肉芽腫症症状(しびれ、発熱、関節痛、肺の浸潤等の血管炎症状等)に注意すること。
8.8 全身性ステロイド剤の減量並びに離脱に伴って、鼻炎、湿疹、蕁麻疹、眩暈、動悸、倦怠感、顔のほてり、結膜炎等の症状が発現・増悪することがある。このような症状があらわれた場合には適切な処置を行うこと。
9.1 合併症・既往歴等のある患者
9.1.1 結核性疾患又は感染症(有効な抗菌剤の存在しない感染症、深在性真菌症を除く)の患者
9.1.2 気管支粘液の分泌が著しい患者
本剤の肺内での作用を確実にするため本剤の吸入に先立って、分泌がある程度減少するまで他剤を使用することが望ましい。
9.1.3 長期又は大量の全身性ステロイド療法を受けている患者
本剤投与後の全身性ステロイド剤の減量中並びに離脱後も副腎皮質機能検査を行い、外傷、手術、重症感染症等の侵襲には十分に注意を払うこと。また、必要があれば一時的に全身性ステロイド剤の増量を行うこと。これらの患者では副腎皮質機能不全となっていることが考えられる。
9.5 妊婦
妊婦又は妊娠している可能性のある女性には、治療上の有益性が危険性を上まわると判断される場合にのみ投与すること。本薬は動物実験(ラット、ウサギ)で胎盤通過性が報告されている
1)。また、本薬は動物実験(ウサギ)で副腎皮質ステロイド剤に共通した催奇形作用が報告されている
2)。
9.6 授乳婦
治療上の有益性及び母乳栄養の有益性を考慮し、授乳の継続又は中止を検討すること。本薬は動物実験(ラット)で乳汁中に移行(静脈内投与において投与量の0.044%以下)することが報告されている
1)。
9.7 小児等
9.7.1 長期間投与する場合には投与量は患者毎に喘息をコントロールできる最少用量に調節することとし、身長等の経過の観察を十分行うこと。また使用にあたっては、使用法を正しく指導すること。全身性ステロイド剤と比較し可能性は低いが、吸入ステロイド剤を特に長期間、大量に投与する場合に成長遅延をきたすおそれがある。
9.7.2 低出生体重児、新生児、乳児又は4歳以下の幼児を対象とした臨床試験は実施していない。
9.8 高齢者
患者の状態を観察しながら慎重に投与すること。高齢者での薬物動態試験で、活性代謝物である脱イソブチリル体の血中濃度が非高齢者に比べて高くなることが認められている。[
16.6.3参照]
13.1 症状
長期間の過量投与(用法及び用量の範囲を超えた量等)により、副腎皮質機能抑制等の全身性の作用がみられることがある。
13.2 処置
患者の症状を観察しながら徐々に減量するなど適切な処置を行うこと。
16.1 血中濃度
16.1.1 単回吸入投与
健康成人に本剤200又は400μgを単回吸入投与したときの血清中活性代謝物(脱イソブチリル体)の濃度推移及び動態パラメータを以下に示す
3)。
用量 | 200μg(n=11) | 400μg(n=11) |
平均 | 標準偏差 | 平均 | 標準偏差 |
AUCinf[μg・h/L] | 0.669 | 0.213 | 1.485 | 0.650 |
Cmax[μg/L] | 0.177 | 0.063 | 0.384 | 0.106 |
t1/2[h] | 2.63 | 1.07 | 2.84 | 0.80 |
tmax[h] | 0.53 | 0.59 | 0.38 | 0.25 |
16.1.2 反復吸入投与
健康成人に本剤800μgの用量を1日2回(1600μg/日)
注)、1週間反復吸入投与したとき、血清中脱イソブチリル体濃度は投与開始後4日でほぼ定常状態に達し、シクレソニド及び脱イソブチリル体共に蓄積性は認められなかった
4)。
16.2 吸収
16.2.1 経口投与時の全身性バイオアベイラビリティー
健康成人にシクレソニドをクロスオーバー法にて単回静脈内投与及び経口投与したとき、血漿中脱イソブチリル体のAUCに基づく経口バイオアベイラビリティーは1%未満であった(外国人データ)
5)。
16.3 分布
16.3.1 肺内への分布
健康成人及び気管支喘息患者において
99mTc標識した本剤を吸入投与し、シンチグラフィーにて分布を求めたところ、吸入されたシクレソニドのそれぞれ52%が肺に沈着した(外国人データ)
6)7)。
16.3.2 血清及び血漿蛋白結合率
シクレソニド(0.01〜10μg/mL)のヒト血清蛋白結合率は98.9〜99.4%であった(
in vitro試験)
8)。脱イソブチリル体(0.5〜500ng/mL)のヒト血漿蛋白結合率は98.1〜98.8%であり、ワルファリン及びサリチル酸の影響を受けなかった(
in vitro試験)
8)。
16.4 代謝
16.4.1 シクレソニドはエステラーゼによる代謝を受けて活性代謝物である脱イソブチリル体に変換される。
16.4.2 シクレソニドのヒト肺組織中の主要代謝物は脱イソブチリル体であり、脱イソブチリル体はC-21位の脂肪酸抱合体に可逆的に変換される(
in vitro試験)
9)10)。
16.4.3 シクレソニドのヒト肝細胞及び肝ミクロソーム中の主要代謝物は脱イソブチリル体であり、脱イソブチリル体はCYP3A4によって代謝を受け不活性体となる
11)12)。[
10.参照]
16.5 排泄
健康成人に
14C-シクレソニド0.64mgを静脈内投与したとき、216時間までに66%が糞中に、20%が尿中に排泄された(外国人データ)
13)。
16.6 特定の背景を有する患者
16.6.1 肝機能障害患者
肝機能障害患者(Child-Pugh分類A又はB)では、本剤1600μg
注)を単回吸入したとき、脱イソブチリル体のAUCinf及びCmaxは健康成人に比較して、中等症の肝機能障害患者でそれぞれ2.7倍及び2.0倍、重症の肝機能障害患者でそれぞれ1.8倍及び1.4倍に上昇した(外国人データ)
14)。
16.6.2 小児等
小児気管支喘息患者(5〜15歳)に本剤200μgを1日1回、1週間反復吸入投与したとき、最終投与時の血清中脱イソブチリル体の動態パラメータは下表のとおりであった
15)。
用量 | 200μg(n=8) |
平均 | 標準偏差 |
AUCτ#)[μg・h/L] | 0.670 | 0.409 |
Cmax[μg/L] | 0.168 | 0.105 |
t1/2[h] | 3.24 | 1.47 |
tmax[h] | 0.62 | 0.23 |
16.6.3 高齢者
健康高齢者(65〜77歳)では、本剤1600μg
注)を単回吸入投与したとき、脱イソブチリル体のAUCinf及びCmaxは健康非高齢者(24〜43歳)に比較して、それぞれ2.1倍及び2.4倍に上昇した(外国人データ)
16)。[
9.8参照]
16.7 薬物相互作用
健康成人にCYP3A4阻害剤であるケトコナゾール400mg1日1回経口投与(経口剤は国内未承認)と本剤400μg1日1回吸入投与を7日間反復併用したとき、脱イソブチリル体のAUCτ及びCmaxは本剤単独投与時に比較して、それぞれ3.6倍及び2.2倍に上昇した(外国人データ)
17)。[
10.2参照]
注)本剤の承認された成人の用法及び用量における1日の最大投与量は800μgである。
18.1 作用機序
活性代謝物である脱イソブチリル体のグルココルチコイド受容体に対する結合親和性は未変化体(シクレソニド)の100倍以上高く、脱イソブチリル体が薬理活性の本体と考えられる
23)。
18.2 喘息抑制作用
18.2.1 卵白アルブミン感作したラットにおいて、シクレソニドは抗原吸入によって誘発される即時型及び遅発型の肺抵抗増大反応を抑制した
24)。またメサコリンに対する気道反応性の亢進も抑制した
24)。
18.2.2 気管支喘息患者に本剤を400μg/日、2週間反復吸入投与することにより、AMPに対する気道反応性の亢進を抑制した(外国人データ)
25)。
18.3 抗炎症作用
ヒト末梢血Tリンパ球を用いた
in vitro試験において、脱イソブチリル体は喘息の気道炎症反応において重要なIL-4やIL-5などの各種炎症性サイトカイン産生を抑制した
23)。また卵白アルブミン感作したラットにおいて、シクレソニドは気道内への好酸球浸潤及びTNFα産生を抑制した
23)。
18.4 全身へのステロイドの影響
18.4.1 ラットにおいて、シクレソニドは胸腺重量や副腎重量の抑制などの全身作用を起こさない用量で、コットンペレット誘発肉芽腫形成を抑制した
23)。
18.4.2 健康成人に本剤を1回800μgの用量で1日2回(1600μg/日)
注)、7日間反復吸入投与しても血清及び尿中コルチゾール排泄量に異常変動を認めなかった
4)。また成人気管支喘息患者に、本剤400又は800μg/日を8週間投与したとき、本剤の投与終了時の血清コルチゾール及びオステオカルシン濃度に臨床的に問題となる変動はみられなかった
26)。
18.4.3 成人気管支喘息患者を対象にした長期投与試験(200〜800μg/日)において、本剤を12ヵ月間投与したとき、CRH負荷試験における血漿コルチゾールの反応性低下は認められなかった
20)。
注)本剤の承認された成人の用法及び用量における1日の最大投与量は800μgである。
20.1 高温にすると破裂の危険があるため、温度が50℃以上になる所に置かないこと。
20.2 容器は空になっても火中に投じないこと。
20.3 容器は地方自治体により定められた方法で廃棄すること。