2.1 心不全の患者及び心不全の既往歴のある患者[動物試験において循環血漿量の増加に伴う代償性の変化と考えられる心重量の増加がみられており、また、臨床的にも心不全を増悪あるいは発症したとの報告がある。][
11.1.1、
11.1.2参照]
2.2 重症ケトーシス、糖尿病性昏睡又は前昏睡、1型糖尿病の患者[輸液、インスリンによる速やかな高血糖の是正が必須となる。]
2.3 重篤な肝機能障害のある患者[
9.3.1参照]
2.4 重篤な腎機能障害のある患者[
9.2.1参照]
2.5 重症感染症、手術前後、重篤な外傷のある患者[インスリン注射による血糖管理が望まれるので本剤の投与は適さない。]
2.6 本剤の成分に対し過敏症の既往歴のある患者
2.7 妊婦又は妊娠している可能性のある女性[
9.5参照]
本剤を使用する場合は、インスリン抵抗性が推定される患者に限定すること。インスリン抵抗性の目安は肥満度(Body Mass Index=BMI kg/m2)で24以上あるいはインスリン分泌状態が空腹時血中インスリン値で5μU/mL以上とする。
<食事療法、運動療法のみの場合及び食事療法、運動療法に加えてスルホニルウレア剤又はα-グルコシダーゼ阻害剤若しくはビグアナイド系薬剤を使用する場合>
通常、成人にはピオグリタゾンとして15〜30mgを1日1回朝食前又は朝食後に経口投与する。なお、性別、年齢、症状により適宜増減するが、45mgを上限とする。
<食事療法、運動療法に加えてインスリン製剤を使用する場合>
通常、成人にはピオグリタゾンとして15mgを1日1回朝食前又は朝食後に経口投与する。なお、性別、年齢、症状により適宜増減するが、30mgを上限とする。
7.1 浮腫が比較的女性に多く報告されているので、女性に投与する場合は、浮腫の発現に留意し、1日1回15mgから投与を開始することが望ましい。[
8.1、
11.1.2参照]
7.2 1日1回30mgから45mgに増量した後に浮腫が発現した例が多くみられているので、45mgに増量する場合には、浮腫の発現に留意すること。[
8.1、
11.1.2参照]
7.3 インスリンとの併用時においては、浮腫が多く報告されていることから、1日1回15mgから投与を開始すること。本剤を増量する場合は浮腫及び心不全の症状・徴候を十分に観察しながら慎重に行うこと。ただし、1日量として30mgを超えないこと。[
8.1、
11.1.1、
11.1.2参照]
7.4 高齢者では、1日1回15mgから投与を開始することが望ましい。[
9.8参照]
8.1 循環血漿量の増加によると考えられる浮腫が短期間に発現し、また心不全が増悪あるいは発症することがあるので、服用中の浮腫、急激な体重増加、症状の変化に注意し、異常がみられた場合には直ちに本剤の服用を中止し、受診するよう患者を指導すること。[
7.1-
7.3、
9.1.1、
11.1.1、
11.1.2参照]
8.2 心電図異常や心胸比増大があらわれることがあるので、定期的に心電図検査を行うなど十分に観察し、異常が認められた場合には投与を一時中止するかあるいは減量するなど慎重に投与すること。[
11.2参照]
8.3 基礎に肝機能障害を有するなど必要な場合には定期的に肝機能検査を実施し、異常が認められた場合には投与を中止するなど適切な処置を行うこと。[
11.1.3参照]
8.4 低血糖を起こすことがあるので、患者に対し低血糖症状及びその対処方法について十分説明すること。[
9.1.2、
11.1.4参照]
8.5 本剤を投与された患者で膀胱癌の発生リスクが増加する可能性が完全には否定できないので、以下の点に注意すること。[
15.1、
15.2.1参照]
・膀胱癌治療中の患者には投与を避けること。また、特に、膀胱癌の既往を有する患者には本剤の有効性及び危険性を十分に勘案した上で、投与の可否を慎重に判断すること。
・投与開始に先立ち、患者又はその家族に膀胱癌発症のリスクを十分に説明してから投与すること。また、投与中に血尿、頻尿、排尿痛等の症状が認められた場合には、直ちに受診するよう患者に指導すること。
・投与中は、定期的に尿検査等を実施し、異常が認められた場合には、適切な処置を行うこと。また、投与終了後も継続して、十分な観察を行うこと。
8.6 投与する場合には、血糖、尿糖を定期的に検査し、薬剤の効果を確かめ、3ヵ月間投与して効果が不十分な場合には、速やかに他の治療薬への切り替えを行うこと。
8.7 急激な血糖下降に伴い、糖尿病性網膜症が悪化する例があることが知られており、本剤においても報告例があるので留意すること。
8.8 低血糖症状を起こすことがあるので、高所作業、自動車の運転等に従事している患者に投与するときには注意すること。[
11.1.4参照]
8.9 α-グルコシダーゼ阻害剤と本剤1日45mgの併用における安全性は確立していない(使用経験はほとんどない)。
8.10 α-グルコシダーゼ阻害剤、スルホニルウレア系薬剤及び本剤の3剤を併用投与する場合の安全性は確立していない。臨床試験成績より、副作用発現率が高くなる傾向が認められている。
8.11 ビグアナイド系薬剤と本剤1日45mgの併用における安全性は確立していない(使用経験はほとんどない)。
9.1 合併症・既往歴等のある患者
9.1.1 心不全発症のおそれのある心筋梗塞、狭心症、心筋症、高血圧性心疾患等の心疾患のある患者
9.1.2 低血糖を起こすおそれのある以下の患者又は状態
・脳下垂体機能不全又は副腎機能不全
・栄養不良状態、飢餓状態、不規則な食事摂取、食事摂取量の不足又は衰弱状態
・激しい筋肉運動
・過度のアルコール摂取者
9.2 腎機能障害患者
9.2.1 重篤な腎機能障害患者
9.2.2 腎機能障害患者(重篤な腎機能障害患者を除く)
9.3 肝機能障害患者
9.3.1 重篤な肝機能障害患者
投与しないこと。本剤は主に肝臓で代謝されるため、蓄積するおそれがある。[
2.3参照]
9.3.2 肝機能障害患者(重篤な肝機能障害患者を除く)
9.5 妊婦
妊婦又は妊娠している可能性のある女性には投与しないこと。ラット器官形成期投与試験では、40mg/kg以上の群で胚・胎児死亡率の高値、出生児の生存率の低値が、ウサギ器官形成期投与試験では、160mg/kg群で親動物の死亡又は流産がそれぞれ1例、胚・胎児死亡率の高値がみられている。[
2.7参照]
9.6 授乳婦
治療上の有益性及び母乳栄養の有益性を考慮し、授乳の継続又は中止を検討すること。動物実験(ラット)で乳汁中へ移行することが報告されている
1)。
9.7 小児等
9.8 高齢者
副作用発現に留意し、経過を十分に観察しながら慎重に投与すること。一般に生理機能が低下している。[
7.4参照]
11.1 重大な副作用
次の副作用があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止するなど適切な処置を行うこと。
11.1.1 心不全(頻度不明)
心不全が増悪あるいは発症することがあるので、浮腫、急激な体重増加、心不全症状・徴候(息切れ、動悸、心胸比増大、胸水等)がみられた場合には投与を中止し、ループ利尿剤等を投与するなど適切な処置を行うこと。特に心不全発症のおそれのある心疾患の患者に投与する際やインスリンと併用する際には、心不全の徴候に注意すること。[
2.1、
7.3、
8.1、
9.1.1参照]
11.1.2 浮腫(8.2%)
循環血漿量の増加によると考えられる浮腫が認められた場合には、減量あるいは中止するなど適切な処置を行うこと。これらの処置によっても症状が改善しない場合には、必要に応じてループ利尿剤(フロセミド等)の投与等を考慮すること。[
2.1、
7.1-
7.3、
8.1、
9.1.1参照]
11.1.3 肝機能障害、黄疸(頻度不明)
AST、ALT、Al-P等の著しい上昇を伴う肝機能障害、黄疸があらわれることがある。[
8.3参照]
11.1.4 低血糖(0.1〜5%未満)
他の糖尿病用薬との併用で、低血糖症状があらわれることがある。低血糖症状が認められた場合、本剤あるいは併用している糖尿病用薬を一時的に中止するかあるいは減量するなど慎重に投与すること。また、本剤の投与により低血糖症状が認められた場合には糖質を含む食品を摂取するなど適切な処置を行うこと。ただし、α-グルコシダーゼ阻害剤との併用により低血糖症状が認められた場合にはブドウ糖を投与すること。なお、低血糖症状はインスリン併用時に多くみられている。[
8.4、
8.8、
9.1.2、
10.2参照]
11.1.5 横紋筋融解症(頻度不明)
筋肉痛、脱力感、CK上昇、血中及び尿中ミオグロビン上昇を特徴とする横紋筋融解症があらわれることがある。
11.1.6 間質性肺炎(頻度不明)
発熱、咳嗽、呼吸困難、肺音の異常(捻髪音)等が認められた場合には、速やかに胸部X線、胸部CT、血清マーカー等の検査を実施し、異常が認められた場合には、投与を中止し、副腎皮質ホルモン剤の投与等の適切な処置を行うこと。
11.1.7 胃潰瘍の再燃(0.1%未満)
11.2 その他の副作用
次の副作用があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止するなど適切な処置を行うこと。
| 5%以上 | 0.1〜5%未満 | 0.1%未満 | 頻度不明 |
血液注1) | | 貧血、白血球減少、血小板減少 | | |
循環器 | | 血圧上昇、心胸比増大注2)、心電図異常注2)、動悸、胸部圧迫感、顔面潮紅 | | |
過敏症 | | 発疹、湿疹、そう痒 | | |
消化器 | | 悪心・嘔吐、胃部不快感、胸やけ、腹痛、腹部膨満感、下痢、便秘、食欲亢進、食欲不振 | | |
肝臓 | | AST、ALT、Al-P、γ-GTPの上昇 | | |
精神神経系 | | めまい、ふらつき、頭痛、眠気、倦怠感、脱力感、しびれ | | |
その他 | LDH及びCKの上昇 | BUN及びカリウムの上昇、総蛋白及びカルシウムの低下、体重及び尿蛋白の増加、息切れ | 関節痛、ふるえ、急激な血糖下降に伴う糖尿病性網膜症の悪化 | 骨折注3)、糖尿病性黄斑浮腫の発症又は増悪注4) |
14.1 薬剤交付時の注意
PTP包装の薬剤はPTPシートから取り出して服用するよう指導すること。PTPシートの誤飲により、硬い鋭角部が食道粘膜へ刺入し、更には穿孔をおこして縦隔洞炎等の重篤な合併症を併発することがある。
17.1 有効性及び安全性に関する試験
17.1.1 国内後期第II相試験、第III相試験
2型糖尿病患者を対象に、1日1回ピオグリタゾンとして15mg、30mg又は45mgを投与した二重盲検比較試験を含む各種臨床試験において、総合血糖改善度が評価された821例の改善率(「中等度改善」以上)は50.8%(417/821例)である
14)17)18)19)20)21)22)23)。
さらに、長期投与試験(28〜48週間以上投与)でも、空腹時血糖及びHbA1cの下降は持続し、作用の減弱はみられず、安定した血糖コントロールが得られている
22)23)。
副作用発現頻度は13.2%(128/969例)で、主な副作用は浮腫・むくみ(79例)であった。
<食事療法、運動療法のみの2型糖尿病>
17.1.2 国内第III相試験
1日1回ピオグリタゾンとして30mgを12週間投与した結果、HbA1c(JDS値)は1.08±1.47%(63例の平均値±標準偏差)の下降が認められている
24)。
副作用発現頻度は、16.9%(13/77例)で、主な副作用は浮腫・むくみ(9例)であった。
<食事療法、運動療法に加えてスルホニルウレア剤を使用中の2型糖尿病>
17.1.3 国内第III相試験
1日1回ピオグリタゾンとして30mgを12週間投与した結果、HbA1c(JDS値)は1.24±1.33%(56例の平均値±標準偏差)の下降が認められている
24)。
副作用発現頻度は、10.5%(8/76例)で、主な副作用は浮腫・むくみ(3例)であった。
<食事療法、運動療法に加えてα-グルコシダーゼ阻害剤を使用中の2型糖尿病>
17.1.4 国内第III相試験
1日1回ピオグリタゾンとして30mgを16週間投与した結果、HbA1c(JDS値)は0.91±0.89%(平均値±標準偏差)の下降が認められている
25)。
臨床検査値の異常を含む副作用が67.2%(43/64例)に認められ、主な副作用は浮腫(6例)であった。
<食事療法、運動療法に加えてビグアナイド系薬剤を使用中の2型糖尿病>
17.1.5 国内第III相試験
1日1回ピオグリタゾンとして15mgを12週間、その後30mgを16週間投与した結果、HbA1c(JDS値)は0.67±0.80%(83例の平均値±標準偏差)の下降が認められている
16)。
臨床検査値の異常を含む副作用が15.7%(13/83例)に認められ、主な副作用は浮腫(3例)、末梢性浮腫、上腹部痛及びBNP上昇(各2例)などであった。
<食事療法、運動療法に加えてインスリン製剤を使用中の2型糖尿病>
17.1.6 国内第III相試験
1日1回ピオグリタゾンとして30mgを16週間投与した結果、HbA1c(JDS値)は1.22±1.11%(45例の平均値±標準偏差)の下降が認められている
26)。
臨床検査値の異常を含む副作用が66.7%(40/60例)に認められ、主な副作用は低血糖症(20例)、末梢性浮腫及び血中LDH増加(各11例)などであった。