2.1 強度の子宮出血、子癇、前期破水例のうち子宮内感染を合併する症例、常位胎盤早期剥離、子宮内胎児死亡、その他妊娠の継続が危険と判断される患者[妊娠継続が危険と判断される。]
2.2 重篤な甲状腺機能亢進症の患者[症状が増悪するおそれがある。]
2.3 重篤な高血圧症の患者[過度の昇圧が起こるおそれがある。]
2.4 重篤な心疾患の患者[心拍数増加等により症状が増悪するおそれがある。]
2.5 重篤な糖尿病の患者[過度の血糖上昇が起こるおそれがある。また、糖尿病性ケトアシドーシスがあらわれることもある。][
8.4、
11.1.10参照]
2.6 重篤な肺高血圧症の患者[肺水腫が起こるおそれがある。][
11.1.1参照]
2.8 本剤の成分に対し重篤な過敏症の既往歴のある患者
5.1 本剤の投与対象は、入院治療など緊急を要する切迫流・早産患者である。子宮収縮、頸管の開大・展退、出血等の程度を総合的に判断して使用を決定すること。緊急状態を離脱した後は安全性を勘案しつつ使用し、不必要な投与は避けること。
5.2 頸管の開大が5cm以上の症例に関する安全性及び有効性は確立していない。
5.3 本剤は、妊娠35週以下又は推定胎児体重2500g未満の切迫流・早産に使用することが望ましい。
通常、1アンプル(5mL)を5%ブドウ糖注射液または10%マルトース注射液500mLに希釈し、リトドリン塩酸塩として毎分50μgから点滴静注を開始し、子宮収縮抑制状況および母体心拍数などを観察しながら適宜増減する。
子宮収縮の抑制後は症状を観察しながら漸次減量し、毎分50μg以下の速度を維持して収縮の再発が見られないことが確認された場合には投与を中止すること。
通常、有効用量は毎分50〜150μgである。
なお、注入薬量は毎分200μgを越えないようにすること。
8.1 肺水腫は心疾患、妊娠高血圧症候群の合併、多胎妊娠、副腎皮質ホルモン剤併用時等に発生しやすいとの報告があるので、これらの患者には、水分の過負荷を避け、十分な観察を行うこと。水分の過負荷を避けるには、薬剤濃度を上げて注入液量を減らすことが効果的である。シリンジポンプを使用することにより、薬剤濃度を3mg/mL(全50mL中リトドリン塩酸塩150mg)まで上げることができる。この場合、注入速度1mL/hrで毎分50μgの初期注入薬量が得られ、水分の負荷は通常用法(液量500mL中リトドリン塩酸塩50mg)の1/30となる。[
9.1.3、
9.1.5、
9.1.7、
9.5.2、
10.2、
11.1.1、
14.1.2参照]
8.2 本剤投与直後に帝王切開術を行うと、循環動態の大きな変動により心不全があらわれることがある。休薬期間をおくことが望ましいが、やむを得ず投与直後に帝王切開術を行う場合には、観察を十分に行い、異常が認められた場合には、適切な処置を行うこと。[
11.1.1参照]
8.3 本剤継続投与によって、白血球減少又は無顆粒球症があらわれることがあるので、定期的に血液検査を行うとともに観察を十分に行い、発熱、咽頭痛等の異常があらわれた場合には直ちに投与を中止し、適切な処置を行うこと。なお、白血球減少及び無顆粒球症はほとんどが2-3週間以上の継続投与例において発現しているので、特に注意すること。[
11.1.2参照]
8.4 本剤投与中、血糖値の急激な上昇や糖尿病の悪化から、糖尿病性ケトアシドーシスがあらわれることがある。投与前から口渇、多飲、多尿、頻尿等の糖尿病症状の有無や血糖値、尿糖、尿ケトン体等の観察を十分に行うこと。[
2.5、
9.1.4、
11.1.10参照]
8.5 子宮収縮の状態及び母体心拍数・血圧、胎児心拍数を含む心血管系への作用の監視を行いながら投与し、投与中に過度の心拍数増加(頻脈)、血圧低下があらわれた場合には、注入速度を遅らせ、減量するなど適切な処置を行うこと。
8.6 本剤を投与した母体から出生した早産児において、低血糖のリスクが高いことが報告されている
1)ので、症状の有無にかかわらず新生児の血糖値のモニタリングを適切に行い、異常が認められた場合には、適切な処置を行うこと。[
11.1.15参照]
8.7 本剤と硫酸マグネシウム水和物(注射剤)を併用した母体から出生した早産児において、高カリウム血症のリスクが高いことが報告されている
1)ので、これらを併用した場合には、症状の有無にかかわらず新生児の心電図又は血清カリウム値のモニタリングを適切に行い、異常が認められた場合には、適切な処置を行うこと。[
10.2、
11.1.16参照]
8.8 注入薬量毎分200μgを越えて投与する場合、副作用発現の可能性が増大するので注意すること。
9.1 合併症・既往歴等のある患者
9.1.1 甲状腺機能亢進症の患者(重篤な甲状腺機能亢進症の患者を除く)
9.1.2 高血圧症の患者(重篤な高血圧症の患者を除く)
9.1.3 心疾患の患者(重篤な心疾患の患者を除く)
(1)心拍数増加等により症状が増悪するおそれがある。
(2)水分の過負荷を避け、十分な観察を行うこと。肺水腫が発生しやすいとの報告がある。[
8.1、
11.1.1参照]
9.1.4 糖尿病の患者(重篤な糖尿病の患者を除く)、糖尿病の家族歴、高血糖あるいは肥満等の糖尿病の危険因子を有する患者
過度の血糖上昇があらわれることがある。また、糖尿病性ケトアシドーシスがあらわれることもある。[
8.4、
11.1.10参照]
9.1.5 肺高血圧症の患者(重篤な肺高血圧症の患者を除く)
9.1.6 筋緊張性(強直性)ジストロフィー等の筋疾患又はその既往歴のある患者
9.1.7 妊娠高血圧症候群の患者
水分の過負荷を避け、十分な観察を行うこと。肺水腫が発生しやすいとの報告がある。[
8.1、
11.1.1参照]
9.1.8 本剤の成分に対し過敏症の既往歴のある患者(重篤な過敏症の既往歴のある患者を除く)
9.5 妊婦
9.5.1 妊娠16週未満の妊婦
投与しないこと。本剤の臨床適用は切迫流・早産であるが、妊娠16週未満の症例に関する安全性及び有効性は確立していない。臨床試験において妊娠16週未満の症例数は少ない。[
2.7参照]
9.5.2 多胎妊娠の患者
(1)水分の過負荷を避け、十分な観察を行うこと。肺水腫が発生しやすいとの報告がある。[
8.1、
11.1.1参照]
(2)本剤使用時あるいは、中止直後に麻酔を行う際には特に注意すること。麻酔薬を投与した直後に重篤な不整脈から心停止に至った症例が報告されている。[
11.1.4参照]
9.6 授乳婦
出産直前に本剤を投与した場合には、母乳栄養の有益性を考慮し、出産直後の授乳を検討すること。動物実験(ラット)で乳汁中への移行が報告されている。
11.1 重大な副作用
次の副作用があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止するなど適切な処置を行うこと。
11.1.1 肺水腫、心不全(頻度不明)
11.1.2 汎血球減少、無顆粒球症、白血球減少、血小板減少(頻度不明)[
8.3参照]
11.1.3 ショック(頻度不明)
ショック(蒼白、チアノーゼ、血圧低下等)があらわれることがある。
11.1.4 不整脈(頻度不明)
心室頻拍等の重篤な不整脈があらわれることがある。[
9.5.2参照]
11.1.5 肝機能障害、黄疸(頻度不明)
AST、ALTの上昇等の肝機能障害、黄疸があらわれることがある。
11.1.6 中毒性表皮壊死融解症(Toxic Epidermal Necrolysis:TEN)、皮膚粘膜眼症候群(Stevens-Johnson症候群)(頻度不明)
発熱、紅斑、そう痒感、眼充血、口内炎等の症状が認められた場合には、適切な処置を行うこと。
11.1.7 横紋筋融解症(頻度不明)
筋肉痛、脱力感、CK上昇、血中及び尿中ミオグロビン上昇を特徴とする横紋筋融解症があらわれることがある。[
9.1.6参照]
11.1.8 血清カリウム値の低下(頻度不明)[
10.2参照]
11.1.9 胸水(頻度不明)
11.1.10 高血糖、糖尿病性ケトアシドーシス(頻度不明)
血糖値の急激な上昇や糖尿病の悪化から、糖尿病性ケトアシドーシスがあらわれることがある。糖尿病性ケトアシドーシスに至ると母体と胎児の生命を脅かすことがある。[
2.5、
8.4、
9.1.4参照]
11.1.11 腸閉塞(頻度不明)
11.1.12 新生児腸閉塞(頻度不明)
11.1.13 胎児及び新生児における心不全(頻度不明)
胎児及び新生児に心不全があらわれることがあり、特に2週間以上の投与例で心不全を認めた報告がある。胎児期から心拡大等の心不全徴候に留意すること。
11.1.14 可逆的な新生児心室中隔壁の肥大(頻度不明)
11.1.15 新生児低血糖(頻度不明)[
8.6参照]
11.1.16 新生児高カリウム血症(頻度不明)[
8.7、
10.2参照]
11.2 その他の副作用
次の副作用があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止するなど適切な処置を行うこと。
| 5%以上 | 0.1〜5%未満 | 頻度不明 |
循環器注) | 動悸・頻脈 | 顔面潮紅、顔面疼痛 | 心電図異常(ST・Tの異常)、上室性頻拍、血圧の変動、息苦しさ、胸痛 |
肝臓 | | 肝機能障害(AST、ALTの上昇等) | |
血液 | | | 血小板減少、貧血 |
精神神経系 | | 振戦、頭痛、四肢末梢熱感、脱力感、発汗、眩暈 | しびれ感 |
消化器 | | 嘔気、嘔吐、便秘 | 下痢 |
過敏症 | | 発疹 | 多形滲出性紅斑、腫脹、そう痒 |
投与部位 | | 血管痛、静脈炎 | |
その他 | | 尿糖の変動、発熱、冷汗 | 唾液腺腫脹、高アミラーゼ血症(唾液腺型アミラーゼ増加)、一過性の血糖上昇、CK上昇、倦怠感、こわばり、咳嗽 |
胎児・新生児 | | | 胎児頻脈、胎児不整脈、新生児頻脈、新生児腎機能障害、新生児呼吸障害(多呼吸等) |
14.1 薬剤調製時の注意
14.1.1 本剤はワンポイントカットアンプルであるが、アンプルカット部分をエタノール綿等で清拭しカットすることが望ましい。
14.1.3 セフメノキシム塩酸塩、フロセミド、セフォチアム塩酸塩、セファロチンナトリウムとは配合変化を起こすので、混注しないこと。
14.2 薬剤投与時の注意
薬剤投与中は、患者の心臓への負担軽減を図るため半側臥位又は側臥位とすることが望ましい。
15.1 臨床使用に基づく情報
早産児にみられる脳室内・周辺出血の発生頻度が、β刺激剤を切迫早産に使用した症例において高かったという外国の報告がある。
16.1 血中濃度
健康成人に1時間点滴静注(100μg/min)したとき
注)、最高血漿中濃度は31.7ng/mL、最高血漿中濃度到達時間は0.67hr、消失半減期(二相性)は0.15及び4.66hr、AUCは52.6ng・hr/mLであった
3)。
16.5 排泄
健康成人に1時間点滴静注(100μg/min)したとき
注)、48時間までに投与量の50%が尿中に排泄され、そのほとんどは12時間以内に排泄された
3)。
注)本剤の承認されている用法及び用量は「通常、1アンプル(5mL)を5%ブドウ糖注射液または10%マルトース注射液500mLに希釈し、リトドリン塩酸塩として毎分50μgから点滴静注を開始し、子宮収縮抑制状況および母体心拍数などを観察しながら適宜増減する。子宮収縮の抑制後は症状を観察しながら漸次減量し、毎分50μg以下の速度を維持して収縮の再発が見られないことが確認された場合には投与を中止すること。通常、有効用量は毎分50〜150μgである。なお、注入薬量は毎分200μgを越えないようにすること。」である。