医療用医薬品 : レボフロキサシン

List   Top

医薬品情報


総称名 レボフロキサシン
一般名 レボフロキサシン水和物
欧文一般名 Levofloxacin Hydrate
薬効分類名 広範囲抗菌点眼剤
薬効分類番号 1319
ATCコード S01AE05
KEGG DRUG
D00588 レボフロキサシン水和物
KEGG DGROUP
DG01549 ニューキノロン系抗生物質
JAPIC 添付文書(PDF)
この情報は KEGG データベースにより提供されています。
日米の医薬品添付文書はこちらから検索することができます。

添付文書情報2024年5月 改訂(第2版)


商品情報 3.組成・性状

販売名 欧文商標名 製造会社 YJコード 薬価 規制区分
レボフロキサシン点眼液1.5%「杏林」 (後発品) キョーリンリメディオ 1319742Q2108 23.5円/mL 処方箋医薬品注)

2. 禁忌

次の患者には投与しないこと
2.1 本剤の成分、オフロキサシン及びキノロン系抗菌剤に対し過敏症の既往歴のある患者

4. 効能または効果

<適応菌種>
<適応症>
眼瞼炎、涙嚢炎、麦粒腫、結膜炎、瞼板腺炎、角膜炎(角膜潰瘍を含む)、眼科周術期の無菌化療法

5. 効能または効果に関連する注意

本剤におけるメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)に対する有効性は証明されていないので、MRSAによる感染症が明らかであり、臨床症状の改善が認められない場合、速やかに抗MRSA作用の強い薬剤を投与すること。

6. 用法及び用量

通常、1回1滴、1日3回点眼する。なお、症状により適宜増減する。

8. 重要な基本的注意

8.1 本剤の使用にあたっては、耐性菌の発現等を防ぐため、原則として感受性を確認し、疾病の治療上必要な最小限の期間の投与にとどめること。

9. 特定の背景を有する患者に関する注意

9.5 妊婦
妊婦又は妊娠している可能性のある女性には治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与すること。
9.6 授乳婦
治療上の有益性及び母乳栄養の有益性を考慮し、授乳の継続又は中止を検討すること。
9.7 小児等
低出生体重児、新生児、乳児、幼児又は8歳未満の小児に投与した臨床試験は実施していない。

11. 副作用

11.1 重大な副作用
次の副作用があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止するなど適切な処置を行うこと。
11.1.1 ショック、アナフィラキシー(いずれも頻度不明)
紅斑、発疹、呼吸困難、血圧低下、眼瞼浮腫等の症状が認められた場合には投与を中止し、適切な処置を行うこと。
11.2 その他の副作用
次の副作用があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止するなど適切な処置を行うこと。
 1〜5%未満1%未満頻度不明
眼刺激眼のそう痒感びまん性表層角膜炎等の角膜障害、結膜炎、眼痛、角膜沈着物、眼瞼炎
皮膚 蕁麻疹発疹、そう痒
その他 味覚異常(苦味等) 

14. 適用上の注意

14.1 薬剤交付時の注意
患者に対し以下の点に注意するよう指導すること。
・薬液汚染防止のため、点眼のとき、容器の先端が直接目に触れないように注意すること。
・患眼を開瞼して結膜のう内に点眼し、1〜5分間閉瞼して涙のう部を圧迫させた後、開瞼すること。
・他の点眼剤を併用する場合には、少なくとも5分以上間隔をあけてから点眼すること。
・遮光して保存すること。

16. 薬物動態

16.1 血中濃度
健康成人(8例)の両眼に1.5%レボフロキサシン点眼液を1日目に単回点眼し、2日目より反復(1回1滴、1日8回、7日間)点眼したとき、8日目(最終日)の最高血漿中濃度は24.1ng/mL、その到達時間は最終点眼後26分であった1)
16.3 分布
白色ウサギの片眼に1.5%レボフロキサシン点眼液を50μL単回点眼したとき、角膜中濃度は投与後15分にCmax(32.5μg/g)を示した後、半減期86分で消失した。眼球結膜及び眼瞼結膜中濃度は投与後15分にCmax(共に14.7μg/g)を示した。房水中濃度は投与後30分にCmax(3.1μg/mL)を示した後、半減期71分で消失した2)

17. 臨床成績

17.1 有効性及び安全性に関する試験
<結膜炎、角膜炎>
17.1.1 国内第III相試験
細菌性結膜炎及び細菌性角膜炎患者238例(有効性解析対象176例)を対象に、1.5%レボフロキサシン点眼液を1回1滴、1日3回(細菌性角膜炎患者は症状に応じて1日3〜8回の間で適宜増減)、14日間点眼した結果、有効率は100%であった。また、疾患別臨床効果は表17-1、有効菌種別臨床効果は表17-2のとおりであった。
副作用は238例中7例(2.9%)に認められ、主な副作用は眼刺激3件(1.3%)であった3)4)5)6)
※日本眼感染症学会制定の評価判定基準および抗菌点眼薬臨床評価のガイドライン(案)等に準じて評価。
表17-1 疾患別臨床効果
疾患名有効率(%)〔有効以上〕
レボフロキサシン点眼液
(1.5%製剤)
(参考:0.5%製剤
眼瞼炎93.3(14/15)
涙嚢炎87.5(28/32)
麦粒腫92.5(37/40)
結膜炎100.0(170/170)91.6(196/214)
瞼板腺炎95.2(20/21)
角膜炎
(角膜潰瘍を含む)
100.0(6/6)94.3(33/35)
表17-2 有効菌種別臨床効果
菌種有効率(%)〔有効以上〕
レボフロキサシン点眼液
(1.5%製剤)
(参考:0.5%製剤
ブドウ球菌属100.0(98/98)91.8(157/171)
レンサ球菌属100.0(10/10)95.8(23/24)
肺炎球菌100.0(25/25)94.7(18/19)
腸球菌属100.0(4/4)87.5(7/8)
ミクロコッカス属100.0(2/2)
モラクセラ属85.7(12/14)
コリネバクテリウム属100.0(79/79)86.2(25/29)
クレブシエラ属100.0(2/2)85.7(6/7)
エンテロバクター属100.0(2/2)100.0(4/4)
セラチア属100.0(2/2)100.0(3/3)
プロテウス属100.0(2/2)75.0(3/4)
モルガネラ・モルガニー100.0(4/4)
インフルエンザ菌100.0(17/17)100.0(10/10)
シュードモナス属100.0(7/7)
緑膿菌100.0(5/5)
ステノトロホモナス(ザントモナス)・マルトフィリア80.0(4/5)
アシネトバクター属100.0(1/1)94.1(16/17)
アクネ菌100.0(13/13)93.0(40/43)
<眼科周術期の無菌化療法>
17.1.2 国内一般臨床試験
眼手術予定患者を対象に、0.5%レボフロキサシン点眼液を1回1滴、1日5回注)、手術前2日間点眼した結果、無菌化率は70.0%(35/50例)であった。
副作用は認められなかった7)
注)本剤が承認されている濃度は1.5%、用法・用量は1回1滴、1日3回点眼、症状により適宜増減である。

18. 薬効薬理

18.1 作用機序
主な作用機序はDNAジャイレース(トポイソメラーゼII)活性及びトポイソメラーゼIV活性の阻害による細菌のDNA合成阻害である。DNAジャイレース(トポイソメラーゼII)活性とトポイソメラーゼIV活性のどちらを強く阻害するかは細菌によって異なる8)9)10)11)12)13)
18.2 抗菌作用
レボフロキサシン水和物の抗菌スペクトラムは広範囲に及び、レボフロキサシン点眼液はブドウ球菌属、肺炎球菌を含むレンサ球菌属、ミクロコッカス属、腸球菌属、コリネバクテリウム属等のグラム陽性菌及び緑膿菌を含むシュードモナス属、インフルエンザ菌、モラクセラ属、セラチア属、クレブシエラ属、プロテウス属、アシネトバクター属、エンテロバクター属等のグラム陰性菌並びに嫌気性菌であるアクネ菌等の眼感染症の起炎菌に対し、強い抗菌力を示す3)14)in vitro)。
レボフロキサシン水和物は、ラセミ体であるオフロキサシンの一方の光学活性体(左旋体)であり、オフロキサシンの約2倍の抗菌活性を有する15)
18.3 耐性菌に及ぼす用量の影響
In vitro眼組織中濃度シミュレーションモデルにおいて、1.5%レボフロキサシン点眼液1日3回点眼は0.5%レボフロキサシン点眼液1日3回点眼と比較して、メチシリン感受性黄色ブドウ球菌(HSA201-00027株、レボフロキサシンに対するMIC=0.5μg/mL)及び緑膿菌(HSA201-00094株、レボフロキサシンに対するMIC=1μg/mL)の耐性菌出現を抑制した。また、1.5%レボフロキサシン点眼液1日3回点眼及び0.5%レボフロキサシン点眼液1日3回点眼はいずれも、メチシリン感受性コアグラーゼ陰性ブドウ球菌(HSA201-00039株、レボフロキサシンに対するMIC=0.25μg/mL)の耐性菌出現を抑制した16)17)
18.4 生物学的同等性試験
18.4.1 ウサギにおける眼組織内薬物動態
レボフロキサシン点眼液1.5%「杏林」及びクラビット点眼液1.5%各30μL(レボフロキサシン水和物として0.45mg)をウサギに単回点眼し、最高眼房水中濃度を示す60分後及び最高角膜中濃度を示す15分後のレボフロキサシン濃度について90%信頼区間法にて統計解析を行った結果、log(0.80)〜log(1.25)の範囲内であり、両剤の生物学的同等性が確認された18)
表18-1 眼房水中及び角膜中濃度
 眼房水中濃度(ng/mL)(n=90)角膜中濃度(ng/g)(n=94)
レボフロキサシン点眼液1.5%「杏林」3804±210725940±15592
クラビット点眼液1.5%3761±232626184±14731
18.4.2 実験的緑膿菌角膜感染症に対する治療効果
緑膿菌を接種したウサギに対して、レボフロキサシン点眼液1.5%「杏林」、クラビット点眼液1.5%及び生理食塩液(対照群)を菌接種日は菌接種後6時間及び10時間後に、菌接種翌日及び翌々日は4時間ごとに1日3回点眼し、緑膿菌接種後7日目までの角膜混濁の度合い(スコア)の観察、並びに7日目の角膜より緑膿菌を分離培養した(各群10例)。対照群では、緑膿菌接種後からスコアが徐々に増加し、1日目以降観察終了時まで全例で角膜混濁が確認された。一方、レボフロキサシン点眼液1.5%「杏林」群及びクラビット点眼液1.5%群では、2日目以降スコアが低下し、点眼を中止した3日目以降もスコアの増加はみられず、1日目以降観察終了まで対照群と比較して有意な低値を示した。レボフロキサシン点眼液1.5%「杏林」群とクラビット点眼液1.5%群のスコアには、観察期間を通じて有意差が認められなかった。また対照群では全眼で緑膿菌の陽性を示したのに対して、レボフロキサシン点眼液1.5%「杏林」群及びクラビット点眼液1.5%群では全眼陰性を示した。
レボフロキサシン点眼液1.5%「杏林」及びクラビット点眼液1.5%はいずれも緑膿菌による角膜混濁の増加を著明に抑制し、その治療効果に有意な差が認められなかったことからレボフロキサシン点眼液1.5%「杏林」はクラビット点眼液1.5%と生物学的に同等と判断された18)
図18-1 緑膿菌による角膜混濁の度合い(スコア)の推移

19. 有効成分に関する理化学的知見

19.1. レボフロキサシン水和物

一般的名称 レボフロキサシン水和物
一般的名称(欧名) Levofloxacin Hydrate
化学名 (3S)-9-Fluoro-3-methyl-10-(4-methylpiperazin-1-yl)-7-oxo-2,3-dihydro-7H-pyrido[1,2,3-de][1,4]benzoxazine-6-carboxylic acid hemihydrate
分子式 C18H20FN3O4・1/2H2O
分子量 370.38
融点 約226℃(分解)
物理化学的性状 淡黄白色〜黄白色の結晶又は結晶性の粉末である。
酢酸(100)に溶けやすく、水又はメタノールにやや溶けにくく、エタノール(99.5)に溶けにくい。
0.1mol/L塩酸試液に溶ける。
光によって徐々に暗淡黄白色になる。
KEGG DRUG D00588

20. 取扱い上の注意

外箱開封後は、遮光して保存すること。

22. 包装

プラスチック点眼容器 5mL×10本

23. 主要文献

  1. 日本人健康成人を対象とした第I相試験(クラビット点眼液1.5%:2010年12月21日承認、審査報告書)
  2. ウサギを用いた眼組織分布試験(クラビット点眼液1.5%:2010年12月21日承認、審査報告書)
  3. 大橋裕一他, あたらしい眼科, 29, 669-678, (2012)
  4. 第II相試験(用量設定のための二重盲検比較試験)(クラビット点眼液:2000年1月18日承認、申請資料概要ト.1.(2))
  5. 第III相比較試験(外眼部細菌感染症に対する二重盲検比較試験)(クラビット点眼液:2000年1月18日承認、申請資料概要ト.1.(3))
  6. 一般臨床試験(クラビット点眼液:2000年1月18日承認、申請資料概要ト.1.(4))
  7. 臼井正彦, あたらしい眼科, 14, 953-956, (1997)
  8. Kato,J.et al., Cell, 63, 393-404, (1990) »PubMed
  9. Hoshino,K.et al., Antimicrob.Agents Chemother., 38, 2623-2627, (1994) »PubMed
  10. Akasaka,T.et al., Antimicrob.Agents Chemother., 45, 2263-2268, (2001) »PubMed
  11. Tanaka,M.et al., Antimicrob.Agents Chemother., 41, 2362-2366, (1997) »PubMed
  12. Onodera,Y.et al., J.Antimicrob.Chemother., 44, 533-536, (1999) »PubMed
  13. Onodera,Y.et al., Antimicrob.Agents Chemother., 46, 1800-1804, (2002) »PubMed
  14. 外眼部感染症からの新鮮臨床分離株に対する抗菌力(クラビット点眼液:2000年1月18日承認、申請資料概要ホ.1.(2))
  15. 効能・効果およびその設定根拠(クラビット点眼液:2000年1月18日承認、申請資料概要ト)
  16. 耐性化抑制に関する検討(クラビット点眼液1.5%:2010年12月21日承認、審査報告書)
  17. 長野敬他, あたらしい眼科, 30, 1754-1760, (2013)
  18. キョーリンリメディオ株式会社社内資料:レボフロキサシン点眼液1.5%「杏林」の生物学的同等性試験に関する資料

24. 文献請求先及び問い合わせ先

文献請求先
キョーリンリメディオ株式会社 学術部
〒920-0017 金沢市諸江町下丁287番地1
電話:0120-960189
FAX:0120-189099
製品情報問い合わせ先
キョーリンリメディオ株式会社 学術部
〒920-0017 金沢市諸江町下丁287番地1
電話:0120-960189
FAX:0120-189099

26. 製造販売業者等

26.1 製造販売元
キョーリンリメディオ株式会社
富山県南砺市井波885番地
26.2 販売元
杏林製薬株式会社
東京都千代田区大手町一丁目3番7号

[ KEGG | KEGG DRUG | KEGG MEDICUS ] 2025/05/21 版