医療用医薬品 : プロカテロール塩酸塩

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医薬品情報


総称名 プロカテロール塩酸塩
一般名 プロカテロール塩酸塩水和物
欧文一般名 Procaterol Hydrochloride Hydrate
製剤名 プロカテロール塩酸塩水和物シロップ
薬効分類名 気管支拡張剤
薬効分類番号 2259
ATCコード R03AC16 R03CC08
KEGG DRUG
D05366 プロカテロール塩酸塩水和物
JAPIC 添付文書(PDF)
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添付文書情報2023年11月 改訂(第1版)


商品情報 3.組成・性状

販売名 欧文商標名 製造会社 YJコード 薬価 規制区分
プロカテロール塩酸塩シロップ5μg/mL「日医工」 (後発品) Procaterol Hydrochloride Syrup 日医工 2259004Q1197 4円/mL

2. 禁忌

次の患者には投与しないこと
本剤の成分に対し過敏症の既往歴のある患者

4. 効能または効果

下記疾患の気道閉塞性障害に基づく呼吸困難など諸症状の緩解
気管支喘息慢性気管支炎肺気腫、急性気管支炎、喘息様気管支炎

5. 効能または効果に関連する注意

<気管支喘息>
気管支喘息治療における長期管理の基本は、吸入ステロイド剤等の抗炎症剤の使用であり、吸入ステロイド剤等により症状の改善が得られない場合、あるいは患者の重症度から吸入ステロイド剤等との併用による治療が適切と判断された場合にのみ、本剤と吸入ステロイド剤等を併用して使用すること。

6. 用法及び用量

通常、成人にはプロカテロール塩酸塩水和物として1回50μg(シロップとして10mL)を1日1回就寝前ないしは1日2回、朝及び就寝前に経口投与する。
6才以上の小児にはプロカテロール塩酸塩水和物として1回25μg(シロップとして5mL)を1日1回就寝前ないしは1日2回、朝及び就寝前に経口投与する。
6才未満の乳幼児にはプロカテロール塩酸塩水和物として1回1.25μg/kg(シロップとして0.25mL/kg)を1日2回、朝及び就寝前ないしは1日3回、朝、昼及び就寝前に経口投与する。
なお、年齢、症状により適宜増減する。

7. 用法及び用量に関連する注意

6歳未満の乳幼児における体重当たりの1回投与量は以下のとおりである。
体重1回投与量
4kg1.0mL
6kg1.5mL
8kg2.0mL
10kg2.5mL
12kg3.0mL
14kg3.5mL
16kg4.0mL
18kg4.5mL
20kg5.0mL

8. 重要な基本的注意

<効能共通>
8.1 用法及び用量どおり正しく使用しても効果が認められない場合には、本剤が適当でないと考えられるので投与を中止すること。
8.2 過度に使用を続けた場合、不整脈、場合によっては心停止を起こすおそれがあるので、使用が過度にならないように注意すること。[13.1参照]
<気管支喘息、慢性気管支炎、肺気腫>
8.3 本剤の投与期間中に発現する急性の発作に対しては、短時間作動型吸入β2刺激剤等の他の適切な薬剤を使用するよう患者、保護者又はそれに代わり得る適切な者に注意を与えること。
また、その薬剤の使用量が増加したり、あるいは効果が十分でなくなってきた場合には、疾患の管理が十分でないことが考えられるので、可及的速やかに医療機関を受診し治療を受けるよう患者、保護者又はそれに代わり得る適切な者に注意を与えること。
<気管支喘息>
8.4 本剤は吸入ステロイド剤等の抗炎症剤の代替薬ではないため、患者が本剤の使用により症状改善を感じた場合であっても、医師の指示なく吸入ステロイド剤等を減量又は中止し、本剤を単独で用いることのないよう、患者、保護者又はそれに代わり得る適切な者に注意を与えること。
8.5 本剤の投与期間中に発現する急性の発作に対して、短時間作動型吸入β2刺激剤等の薬剤の使用量が増加したり、あるいは効果が十分でなくなってきた場合には、患者の生命が脅かされる可能性があるので、患者の症状に応じて吸入ステロイド剤等の増量等の抗炎症療法の強化を行うこと。

9. 特定の背景を有する患者に関する注意

9.1 合併症・既往歴等のある患者
9.1.1 甲状腺機能亢進症の患者
甲状腺機能亢進症が増悪することがある。
9.1.2 高血圧の患者
血圧が上昇することがある。
9.1.3 心疾患の患者
動悸、不整脈、症状の増悪等があらわれることがある。
9.1.4 糖尿病の患者
糖尿病が増悪することがある。
9.1.5 低酸素血症の患者
血清カリウム値をモニターすることが望ましい。低酸素血症は血清カリウム値の低下が心リズムに及ぼす作用を増強することがある。[11.1.2参照]
9.5 妊婦
妊婦又は妊娠している可能性のある女性には、治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与すること。動物実験(ラット)で胎児への移行が報告されている。
9.6 授乳婦
治療上の有益性及び母乳栄養の有益性を考慮し、授乳の継続又は中止を検討すること。動物実験(ラット)で乳汁中への移行が報告されている。
9.7 小児等
低出生体重児又は新生児を対象とした有効性及び安全性を指標とした臨床試験は実施していない。
9.8 高齢者
減量するなど注意すること。一般に生理機能が低下している。

10. 相互作用

10.2 併用注意
カテコールアミン製剤
アドレナリン
イソプレナリン等
不整脈、場合によっては心停止を起こすおそれがある。アドレナリン、イソプレナリン等のカテコールアミン製剤の併用によりアドレナリン作動性神経刺激の増大が起こる。そのため不整脈を起こすことが考えられる。
キサンチン誘導体
テオフィリン
アミノフィリン水和物
ジプロフィリン等
11.1.2参照]
低カリウム血症、心・血管症状(頻脈、不整脈等)等のβ刺激剤の副作用症状を増強させることがある。副作用の発現に注意し、異常が認められた場合には減量又は投与を中止するなど適切な処置を行うこと。キサンチン誘導体はアドレナリン作動性神経刺激を増大させるため、血清カリウム値の低下、心・血管症状等を増強することが考えられる。低カリウム血症の増強についての機序は不明である。
ステロイド剤
ベタメタゾン
プレドニゾロン
ヒドロコルチゾンコハク酸エステルナトリウム等
利尿剤
フロセミド等
11.1.2参照]
血清カリウム値が低下し、低カリウム血症による不整脈を起こすおそれがある。副作用の発現に注意し、異常が認められた場合には減量又は投与を中止するなど適切な処置を行うこと。ステロイド剤及び利尿剤は尿細管でのカリウム排泄促進作用があるため、血清カリウム値の低下を増強することが考えられる。

11. 副作用

11.1 重大な副作用
次の副作用があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止するなど適切な処置を行うこと。
11.1.1 ショック、アナフィラキシー(頻度不明)
11.1.2 重篤な血清カリウム値の低下(頻度不明)
キサンチン誘導体、ステロイド剤及び利尿剤の併用により増強することがあるので、重症喘息患者では特に注意すること。[9.1.510.2参照]
11.2 その他の副作用
次の副作用があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止するなど適切な処置を行うこと。
 0.1〜5%未満0.1%未満頻度不明
循環器動悸、頻脈ほてり等上室性期外収縮・上室性頻拍・心室性期外収縮・心房細動等
精神神経系振戦、頭痛、めまい不眠、手足のしびれ感等手指の痙縮、筋痙直、筋痙攣、神経過敏
消化器嘔気、胃部不快感等嘔吐、口渇 
過敏症発疹等 そう痒感
肝臓  AST、ALT、LDHの上昇等の肝機能障害
その他 脱力感、鼻閉、耳鳴全身倦怠感、血清カリウム値の低下、血糖上昇

12. 臨床検査結果に及ぼす影響

本剤はアレルゲンによる皮膚反応に抑制的に作用するので、皮膚テストを実施する場合には、12時間前より本剤の投与を中止することが望ましい。

13. 過量投与

13.1 症状
過量投与により、頻脈、頻脈性不整脈、血圧低下、神経過敏、振戦、低カリウム血症、高血糖、乳酸アシドーシス等があらわれることがある。[8.2参照]
13.2 処置
重篤な頻脈性不整脈発現時にはβ遮断剤(プロプラノロール塩酸塩等)が有効な場合があるが、気道抵抗を上昇させるおそれがあるので、喘息患者等への投与には十分注意すること。

14. 適用上の注意

14.1 薬剤交付時の注意
誤飲を避けるため、小児の手の届かないところに保管すること。

15. その他の注意

15.2 非臨床試験に基づく情報
15.2.1 ラットを用いた14週間反復投与毒性試験で30mg/kg、26週間反復投与毒性試験で10mg/kg以上の用量で心筋障害が認められた1)2)。この心筋障害はイヌにおいても認められたが、他のβ刺激薬でもラット及びイヌにおいて認められた。
15.2.2 ラットを用いた104週間混餌投与試験において、薬物投与により、卵巣間膜腫が出現した。この腫瘍はラットに特異的なものであると考えられており、また、各種β刺激薬を長期間反復投与することにより発現することが報告されている3)

16. 薬物動態

16.1 血中濃度
健康成人男性44例にプロカテロール塩酸塩シロップ5μg/mLをプロカテロール塩酸塩水和物として100μg注)の用量で絶食下経口投与した時の薬物動態パラメータを以下に示す4)
薬物動態パラメータ
tmax(hr)Cmax(pg/mL)t1/2(hr)AUC13hr(pg・hr/mL)
1.3±0.7263±1044.1±1.81,151±288
注)本剤の承認された成人の用量は1回50μgである。
16.4 代謝
ヒトにおける主要な代謝経路はグルクロン酸抱合体への抱合反応と考えられた5)
16.5 排泄
プロカテロール塩酸塩錠50μg(プロカテロール塩酸塩水和物として50μg)を経口投与した時の投与後24時間までの累積尿中プロカテロール排泄率は15.7%であった。また、グルクロン酸抱合体の排泄率は23.6%であった。尿中にはその他の代謝物としてデスイソプロピルプロカテロールが0.48%排泄された5)

17. 臨床成績

17.1 有効性及び安全性に関する試験
17.1.1 国内臨床試験
小児気管支喘息を対象とした頓用試験(25μg、1.0μg/kg注))における有効率は82.9%(34/41例)、小児気管支喘息、喘息様気管支炎を対象とした連用試験(1.0〜1.5μg/kg注)、1日2〜3回)における有効率は50.7%(116/229例)であった6)7)8)
注)本剤の承認された6才以上の小児及び6才未満の乳幼児の用法及び用量は、それぞれ1回25μgを1日1回又は2回、並びに1回1.25μg/kgを1日2回又は3回である。

18. 薬効薬理

18.1 作用機序
プロカテロール塩酸塩水和物は気管支平滑筋のβ2受容体を選択的に刺激し、気管支拡張作用を発現する9)
18.2 気管支拡張作用
イヌ、ネコ及びモルモットでのヒスタミン等による気道抵抗増大に対する抑制効果でみると、プロカテロール塩酸塩水和物の気管支拡張作用はイソプレナリンと同等かそれ以上の強さで、サルブタモール硫酸塩及びオルシプレナリン硫酸塩より強いことが確認された10)11)12)13)
18.3 気管支拡張作用持続時間
イヌ、ネコ及びモルモットで検討したプロカテロール塩酸塩水和物の気管支拡張作用持続時間は、イソプレナリン、トリメトキノール、オルシプレナリン硫酸塩及びサルブタモール硫酸塩より長いことが確認された10)11)12)13)
18.4 β2受容体への選択性
心循環器系のβ受容体と気道系のβ受容体への臓器選択性をイヌ、ネコ及びモルモットで検討したところ、プロカテロール塩酸塩水和物はイソプレナリン、トリメトキノール、オルシプレナリン硫酸塩及びサルブタモール硫酸塩よりも優れた臓器選択性を示した10)11)12)13)
18.5 抗アレルギー作用
モルモットあるいはラットでのPCA反応及び肺からのヒスタミン遊離、成人気管支喘息患者での皮膚反応を指標としたプロカテロール塩酸塩水和物の抗アレルギー作用はイソプレナリン、オルシプレナリン硫酸塩及びサルブタモール硫酸塩より強いことが確認された。また、プロカテロール塩酸塩水和物はアレルゲン吸入による気管支反応に対しては即時型のみならず、遅発型にも抑制作用を有することが確認された14)15)16)17)
18.6 気道分泌系に対する作用
プロカテロール塩酸塩水和物はハトの気道繊毛運動を亢進した18)
18.7 運動誘発喘息発作抑制作用
プロカテロール塩酸塩水和物はトレッドミル負荷により誘発された気管支喘息患児の喘息発作を抑制した19)
18.8 気道過敏性亢進に対する作用
プロカテロール塩酸塩水和物はウイルス接種によるイヌの気道過敏性亢進を抑制した20)
18.9 血管透過性亢進に対する作用
各種起炎物質によるラット背部皮下の空気嚢内の血管透過性亢進及び浮腫の形成に対するプロカテロール塩酸塩水和物の抑制作用は、イソプレナリンとほぼ同等であることが確認された。また、ヒスタミン吸入によるモルモット肺水腫の形成に対し、プロカテロール塩酸塩水和物は抑制作用を有し、その作用はサルブタモール硫酸塩より強いことが確認された21)22)
18.10 咳に対する作用
プロカテロール塩酸塩水和物はサブスタンスP吸入による急性気管支炎患者の咳の誘発を抑制した23)

19. 有効成分に関する理化学的知見

19.1. プロカテロール塩酸塩水和物

一般的名称 プロカテロール塩酸塩水和物
一般的名称(欧名) Procaterol Hydrochloride Hydrate
化学名 8-Hydroxy-5-{(1RS,2SR)-1-hydroxy-2-[(1-methylethyl)amino]butyl}quinolin-2(1H)-one monohydrochloride hemihydrate
分子式 C16H22N2O3・HCl・1/2H2O
分子量 335.83
融点 約195℃(分解)
物理化学的性状 白色〜微黄白色の結晶又は結晶性の粉末である。
水、ギ酸又はメタノールにやや溶けやすく、エタノール(95)に溶けにくく、ジエチルエーテルにほとんど溶けない。
光によって徐々に着色する。
水溶液(1→20)は旋光性を示さない。
KEGG DRUG D05366

20. 取扱い上の注意

小分け後は遮光して保存すること。

22. 包装

500mL[ガラス瓶]

23. 主要文献

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24. 文献請求先及び問い合わせ先

文献請求先
日医工株式会社 お客様サポートセンター
〒930-8583 富山市総曲輪1丁目6番21
電話:0120-517-215
FAX:076-442-8948
製品情報問い合わせ先
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26. 製造販売業者等

26.1 製造販売元
日医工株式会社
富山市総曲輪1丁目6番21

[ KEGG | KEGG DRUG | KEGG MEDICUS ] 2025/05/21 版