医療用医薬品 : ニコランジル

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医薬品情報


総称名 ニコランジル
一般名 ニコランジル
欧文一般名 Nicorandil
製剤名 ニコランジル錠
薬効分類名 狭心症治療剤
薬効分類番号 2171
ATCコード C01DX16
KEGG DRUG
D01810 ニコランジル
JAPIC 添付文書(PDF)
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添付文書情報2023年5月 改訂(第1版)


商品情報 3.組成・性状

販売名 欧文商標名 製造会社 YJコード 薬価 規制区分
ニコランジル錠5mg「サワイ」 (後発品) NICORANDIL TABLETS「SAWAI」 メディサ新薬 2171017F2156 6.1円/錠 処方箋医薬品注)

2. 禁忌

次の患者には投与しないこと
ホスホジエステラーゼ5阻害作用を有する薬剤(シルデナフィルクエン酸塩、バルデナフィル塩酸塩水和物、タダラフィル)又はグアニル酸シクラーゼ刺激作用を有する薬剤(リオシグアト)を投与中の患者[10.1参照]

4. 効能または効果

狭心症

6. 用法及び用量

ニコランジルとして、通常、成人1日量15mgを3回に分割経口投与する。なお、症状により適宜増減する。

8. 重要な基本的注意

8.1 本剤の投与開始時には、硝酸・亜硝酸エステル系薬剤と同様に血管拡張作用による拍動性の頭痛を起こすことがあるので、このような場合には減量又は投与を中止するなど適切な処置を行うこと。

9. 特定の背景を有する患者に関する注意

9.1 合併症・既往歴等のある患者
9.1.1 緑内障の患者
眼圧を上昇させるおそれがある。
9.3 肝機能障害患者
9.3.1 重篤な肝障害のある患者
本剤投与中に肝機能検査値異常があらわれることがある。
9.5 妊婦
妊婦又は妊娠している可能性のある女性には投与しないことが望ましい。
9.6 授乳婦
治療上の有益性及び母乳栄養の有益性を考慮し、授乳の継続又は中止を検討すること。動物実験(ラット)でニコランジル及び/又はその代謝物の乳汁移行が認められている。
9.7 小児等
小児等を対象とした臨床試験は実施していない。
9.8 高齢者
本剤投与の際には少量から投与するなど慎重に投与すること。一般に生理機能が低下し、副作用が発現しやすいことが推定される。

10. 相互作用

10.1 併用禁忌
ホスホジエステラーゼ5阻害作用を有する薬剤
シルデナフィルクエン酸塩
(バイアグラ、レバチオ)
バルデナフィル塩酸塩水和物
(レビトラ)
タダラフィル
(シアリス、アドシルカ、ザルティア)
[2.参照]
併用により、降圧作用が増強することがある。
本剤投与前にこれらの薬剤を服用していないことを十分確認すること。また、本剤投与中及び投与後においてこれらの薬剤を服用しないよう十分注意すること。
本剤はcGMPの産生を促進し、一方、ホスホジエステラーゼ5阻害作用を有する薬剤はcGMPの分解を抑制することから、両剤の併用によりcGMPの増大を介する本剤の降圧作用が増強する。
グアニル酸シクラーゼ刺激作用を有する薬剤
リオシグアト
(アデムパス)
[2.参照]
併用により、降圧作用が増強することがある。
本剤投与前にこれらの薬剤を服用していないことを十分確認すること。また、本剤投与中及び投与後においてこれらの薬剤を服用しないよう十分注意すること。
本剤とグアニル酸シクラーゼ刺激作用を有する薬剤は、ともにcGMPの産生を促進することから、両剤の併用によりcGMPの増大を介する本剤の降圧作用が増強する。

11. 副作用

11.1 重大な副作用
次の副作用があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止するなど適切な処置を行うこと。
11.1.1 肝機能障害、黄疸(いずれも頻度不明)
AST、ALT、γ-GTPの上昇等を伴う肝機能障害、黄疸があらわれることがある。
11.1.2 血小板減少(頻度不明)
11.1.3 口内潰瘍、舌潰瘍、肛門潰瘍、消化管潰瘍(いずれも頻度不明)
11.2 その他の副作用
次の副作用があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止するなど適切な処置を行うこと。
 3%以上0.1〜3%未満0.1%未満頻度不明
循環器 動悸、顔面紅潮全身倦怠感、気分不良、胸痛、下肢のむくみ、のぼせ感等 
精神神経系頭痛めまい耳鳴、不眠、眠気、舌のしびれ、肩こり等第3脳神経麻痺、第6脳神経麻痺
過敏症 発疹等  
消化器 悪心、嘔吐、食欲不振下痢、便秘、胃もたれ、胃部不快感、胃痛、腹痛、腹部膨満感、口角炎、口渇等口内炎
肝臓  ビリルビンの上昇、ASTの上昇、ALTの上昇、Al-Pの上昇等 
血液   血小板減少
  複視角膜潰瘍、眼筋麻痺
生殖器   性器潰瘍
皮膚   皮膚潰瘍
その他  頸部痛血中カリウム増加

14. 適用上の注意

14.1 薬剤交付時の注意
14.1.1 PTP包装の薬剤はPTPシートから取り出して服用するよう指導すること。PTPシートの誤飲により、硬い鋭角部が食道粘膜へ刺入し、更には穿孔をおこして縦隔洞炎等の重篤な合併症を併発することがある。
14.1.2 湿気を避けて涼しいところに保管するよう指導すること。[20.参照]

16. 薬物動態

16.1 血中濃度
16.1.1 生物学的同等性試験
ニコランジル錠5mg「サワイ」とシグマート錠5mgを健康成人男子にそれぞれ1錠(ニコランジルとして5mg)空腹時単回経口投与(クロスオーバー法)し、血漿中ニコランジル濃度を測定した。得られた薬物動態パラメータ(AUC、Cmax)について統計解析を行った結果、両剤の生物学的同等性が確認された1)
各製剤1錠投与時の薬物動態パラメータ
 Cmax(ng/mL)Tmax(hr)T1/2(hr)AUC0-6hr(ng・hr/mL)
ニコランジル錠5mg「サワイ」64.2±19.10.5±0.11.1±0.495.8±34.1
シグマート錠5mg69.9±15.40.5±0.10.9±0.497.4±33.9
血漿中濃度ならびにAUC、Cmax等のパラメータは、被験者の選択、体液の採取回数・時間等の試験条件によって異なる可能性がある。
16.3 分布
16.3.1 血清蛋白結合率
ヒト血清を用いたin vitro試験によると、血清蛋白結合率は34.2〜41.5%(ニコランジル濃度1〜100μg/mL)であった2)
16.4 代謝
ニコランジルのほとんどは脱ニトロ化されてN-(2-ヒドロキシエチル)ニコチンアミドへ代謝された3)

17. 臨床成績

17.1 有効性及び安全性に関する試験
17.1.1 国内臨床試験
各種狭心症患者を対象とした二種の二重盲検比較試験において、ニコランジルの有用性が認められた4)5)

18. 薬効薬理

18.1 作用機序
冠血管拡張作用では、亜硝酸薬と同様に冠血管平滑筋のグアニル酸サイクラーゼ活性化によるcyclic-GMP産生量の増大が考えられている(in vitro)。これに加えて、冠血流増加作用及び冠血管攣縮抑制作用では膜部位の過分極などが検討されている6)
18.2 薬理作用
18.2.1 冠血管拡張作用
イヌ・ランゲンドルフ標本において正常灌流圧時には比較的細い冠動脈を拡張するが、低灌流圧による虚血時にはむしろ太い冠動脈血管を拡張した。また、無麻酔犬に静注すると血流量に依存しないで、太い冠動脈を用量依存的に拡張させた7)8)
18.2.2 冠血流量に対する作用
(1)ニコランジルを、麻酔開胸犬に静注あるいは十二指腸内投与すると冠血流量の増加とその持続が用量依存的に認められた。同様の成績は覚醒犬、イヌ心肺標本、イヌ・ランゲンドルフ標本においても得られた8)9)10)11)12)
(2)左冠動脈狭窄及び左室収縮異常がない狭心症患者6例にニコランジルを5mg単回投与し、心拍数120/分まで増加の右心房ペーシング実施及び非実施下において冠静脈洞血流量を測定(持続熱希釈法)したところ、冠血流量はいずれの心拍数下でも有意な増加を示した13)
18.2.3 冠血管攣縮緩解作用
ニコランジルは、イヌ冠動脈の部分狭窄による周期的な冠血流量の減少及び心電図のST上昇を抑制し、更にミニブタの冠動脈内にメサコリンあるいはノルアドレナリンを投与して生じる冠血管の攣縮を抑制した14)15)
18.2.4 心・血行動態に対する作用
(1)ニコランジルを麻酔開胸犬に静注すると、用量依存的に血圧を低下させるが、その程度は軽微であり、冠血管抵抗を有意に低下させる用量において、心拍数、心筋収縮力、心筋酸素消費量、房室伝導時間に影響を及ぼさなかった9)10)16)
(2)左冠動脈狭窄及び左室収縮異常がない狭心症患者6例にニコランジルを5mg単回投与したところ、大動脈圧、Pressure Rate Productは有意な変化を示さなかった13)

19. 有効成分に関する理化学的知見

19.1. ニコランジル

一般的名称 ニコランジル
一般的名称(欧名) Nicorandil
化学名 N-[2-(Nitrooxy)ethyl]pyridine-3-carboxamide
分子式 C8H9N3O4
分子量 211.17
融点 約92℃(分解)
物理化学的性状 白色の結晶である。メタノール、エタノール(99.5)、酢酸(100)に溶けやすく、無水酢酸にやや溶けやすく、水にやや溶けにくい。
KEGG DRUG D01810

20. 取扱い上の注意

アルミピロー包装開封後は、湿気を避けて保存すること。[14.1.2参照]

22. 包装

PTP[乾燥剤入り]
100錠(10錠×10)、1,000錠(10錠×100)

23. 主要文献

  1. 社内資料:生物学的同等性試験
  2. 血清蛋白結合率(シグマート注:2007年10月19日承認、申請資料概要へ.2.(2).4))
  3. 第十八改正日本薬局方解説書, C-3872-3876, (2021), (廣川書店)
  4. 山田和生他, 臨牀と研究, 59 (6), 2079-2089, (1982)
  5. 村尾覚他, 臨床薬理, 13 (2), 311-326, (1982) »DOI
  6. 作用機序(シグマート注:2007年10月19日承認、申請資料概要ホ.1.(2).1),ホ.1.(2).2))
  7. Yamada,A.et al., Arzneim.-Forsch.(Drug Res.), 37 (11), 1252-1255, (1987) »PubMed
  8. Nakagawa,Y.et al., Jpn.Heart J., 20 (6), 881-895, (1979) »PubMed
  9. Uchida,Y.et al., Jpn.Heart J., 19 (1), 112-124, (1978) »PubMed
  10. 佐藤慶祐他, 心臓, 12 (4), 371-380, (1980) »DOI
  11. Mizukami,M.et al., Arzneim.-Forsch.(Drug Res.), 31 (8), 1244-1247, (1981) »PubMed
  12. 坂梨又郎他, 応用薬理, 15 (3), 385-389, (1978)
  13. 関口弘道他, Ther.Res., 13 (5), 1823-1830, (1992)
  14. Uchida,Y.et al., Jpn.Heart J., 19 (6), 904-912, (1978) »PubMed
  15. Sakai,K.et al., J.Pharmacol.Exp.Ther., 227 (1), 220-228, (1983) »PubMed
  16. Sakai,K.et al., J.Cardiovasc.Pharmacol., 3 (1), 139-150, (1981) »PubMed

24. 文献請求先及び問い合わせ先

文献請求先
第一三共エスファ株式会社 お客様相談室
〒103-8426 東京都中央区日本橋本町3-5-1
電話:0120-100-601
製品情報問い合わせ先
第一三共エスファ株式会社 お客様相談室
〒103-8426 東京都中央区日本橋本町3-5-1
電話:0120-100-601

26. 製造販売業者等

26.1 製造販売元
メディサ新薬株式会社
大阪市淀川区宮原5丁目2-27
26.2 販売元
第一三共エスファ株式会社
東京都中央区日本橋本町3-5-1
26.3 販売提携
第一三共株式会社
東京都中央区日本橋本町3-5-1

[ KEGG | KEGG DRUG | KEGG MEDICUS ] 2025/07/23 版