ビホナゾールは、真菌細胞に対して二元的な作用機序を有する。低濃度域では細胞膜の必須構成脂質成分であるエルゴステロールの合成を阻害し、高濃度域ではそれに加えて細胞膜のリン脂質と特異的に結合することにより膜の物性を変化させる。いずれの効果も最終的に細胞膜の構造・機能を障害し、その結果、抗真菌作用が発現される
3)4)。
18.2.1 ビホナゾールは、皮膚糸状菌(
Trichophyton属、
Microsporum属、
Epidermophyton属)、酵母類(
Candida属)及び癜風菌(
Malassezia furfur)に優れた抗真菌作用を有する
5)6)。
18.2.2 ビホナゾールは、Kimmig培地上で各種ヒト病原真菌の90%以上の菌株において4μg/mL以下の最小発育阻止濃度(MIC)を示す
7)。
18.2.3 ビホナゾールは、発育期にある皮膚糸状菌に対して極めて低い濃度(ナノグラム単位)より菌糸の発育を抑制し、5μg/mL以上の濃度で殺真菌作用を示す。また、
Candida albicansに対しては、0.125μg/mL以上の濃度で寄生形態である仮性菌糸の形成を抑制する
7)8)。
18.2.4 Trichophyton mentagrophytesによるモルモット実験的白癬モデルにビホナゾール1%クリームを感染後3日目に1回局所適用した場合、無処置対照群では症状の増悪が認められるが、処置群では数日以内に治癒する
7)。
モルモットの背部皮膚面に1%クリーム0.5gを塗布し、12、24、48、72時間後に
Trichophyton mentagrophytesの分生子浮遊液を接種した実験では、48〜72時間にわたり感染防御効果が認められている
7)。
モルモット実験的白癬モデルを用い、治療試験においては最大病変度スコアと総病変度スコアを指標として、感染防御試験においては最大病変度スコア、総病変度スコア、および初回病変発現日を指標として、ビホナゾールクリーム1%「サワイ」とマイコスポールクリーム1%の抗真菌作用を比較検討した。その結果、両剤ともコントロール群(無処置感染対照群)および基剤投与群に比して有意に最大病変度スコアおよび総病変度スコアを低下させ、感染防御試験における初回病変発現日を延長した。また、両剤間に有意な差は認められず、両剤は生物学的に同等であると判断された
9)。