医療用医薬品 : ニシスタゴン

List   Top

医薬品情報


総称名 ニシスタゴン
一般名 システアミン酒石酸塩
欧文一般名 Cysteamine Bitartrate
製剤名 システアミン酒石酸塩カプセル
薬効分類名 腎性シスチン症治療剤
薬効分類番号 3929
ATCコード A16AA04
KEGG DRUG
D10468 システアミン酒石酸塩
KEGG DGROUP
DG02658 システアミン
JAPIC 添付文書(PDF)
この情報は KEGG データベースにより提供されています。
日米の医薬品添付文書はこちらから検索することができます。

添付文書情報2025年9月 改訂(再審査結果)(第4版)


商品情報 3.組成・性状

販売名 欧文商標名 製造会社 YJコード 薬価 規制区分
ニシスタゴンカプセル50mg Nicystagon Capsules ヴィアトリス製薬 3929009M1027 218.9円/カプセル 劇薬, 処方箋医薬品注)
ニシスタゴンカプセル150mg Nicystagon Capsules ヴィアトリス製薬 3929009M2023 573.5円/カプセル 劇薬, 処方箋医薬品注)

2. 禁忌

次の患者には投与しないこと
システアミン又はペニシラミンに対し過敏症の既往歴のある患者

4. 効能または効果

腎性シスチン症

5. 効能または効果に関連する注意

本剤は角膜へのシスチンの蓄積による症状の改善は期待できない。

6. 用法及び用量

通常、12歳未満の患者又は体重50kg未満の患者には、システアミンとして1日1.3g/m2(体表面積)、体重50kgを超える12歳以上の患者には、システアミンとして1日2gを4回に分割し経口投与する。
投与は少量より開始し、4〜6週間以上かけて上記用量まで漸増する。
なお、患者の状態に応じて適宜増減するが、1日1.95g/m2(体表面積)を上限とする。

7. 用法及び用量に関連する注意

7.1 開始用量は推奨維持投与量の1/4〜1/6量を目安とし、患者の状態、腎機能検査値(血中クレアチニン、クレアチニンクリアランス等)、白血球中シスチン濃度等を参考に用量を漸増して、維持用量を設定する。
7.2 維持用量設定後も、定期的に患者の状態、腎機能検査値(血中クレアチニン、クレアチニンクリアランス等)、白血球中シスチン濃度等を確認し、用量の調節を行うこと。
7.3 白血球中シスチン濃度を測定する際には、以下の点に留意すること。
7.3.1 本剤投与5〜6時間後をめどに測定すること。
7.3.2 高脂肪食摂取後又は高蛋白食摂取後に投与した場合、絶食時投与よりもCmax及びAUCが低下したとの報告があるため、食事の影響を考慮すること1)。[16.2.1参照]

8. 重要な基本的注意

8.1 1日1.95g/m2(体表面積)を超える高用量で治療された小児に、エーラース・ダンロス症候群様の症状が認められたとの報告があるので、高用量投与時には注意すること2)。[11.1.3参照]
8.2 本剤の投与により、眠気があらわれることがあるので、自動車の運転等、危険を伴う機械の操作に従事する際には注意するよう患者に十分に説明すること。
8.3 投与開始に先立ち、主な副作用及びその初期症状について患者に説明し、特に、良性頭蓋内圧亢進(偽性脳腫瘍)又は視神経乳頭浮腫、エーラース・ダンロス症候群様の症状、痙攣、脳症等の中枢神経系症状、消化性潰瘍、消化管出血の初期症状が認められた場合には速やかに主治医に相談するよう指導すること。[11.1.2-11.1.5参照]
8.4 エーラース・ダンロス症候群様の症状として、皮膚血管障害、関節痛、皮膚の過伸展、骨病変があらわれることがあるので、定期的な皮膚の診察や必要に応じて骨病変を評価するためのX線検査を行うなど観察を十分に行うこと。また、皮膚や骨に異常が認められた場合には速やかに受診するよう患者に指導すること。[11.1.3参照]

9. 特定の背景を有する患者に関する注意

9.1 合併症・既往歴等のある患者
9.1.1 消化性潰瘍又はその既往歴のある患者
消化性潰瘍を悪化又は再発するおそれがある。
9.1.2 嚥下困難を合併する等、誤嚥を起こすおそれのある患者
投与する際には十分注意すること。誤嚥による窒息の危険性がある。
9.2 腎機能障害患者
9.2.1 透析中の患者
本剤投与の可否を慎重に検討するとともに、投与する場合には定期的に患者の状態を観察しながら用量を調節すること。血液透析中患者において、血漿中システアミンのAUCが21-66%低下したとの報告がある3)(外国人データ)。また、副作用の発現が増加する傾向がある。
9.3 肝機能障害患者
9.3.1 肝障害又はその既往歴のある患者
これらの患者を対象とした臨床試験は実施していない。
9.4 生殖能を有する者
妊娠する可能性のある女性に投与する場合には、本剤による催奇形性について十分に説明すること。[9.5参照]
9.5 妊婦
妊婦又は妊娠している可能性のある女性には、治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与すること。また、これらの患者に投与する場合には、本剤による催奇形性について十分に説明すること。動物実験(ラット)において、ヒトの臨床用量を下回る用量で催奇形性(口蓋裂、脊柱後弯、心室中隔欠損、小頭症、外脳症)を含む胎児毒性が認められている。また、動物試験(ラット)において、2.25g/m2の用量(推奨維持用量の1.7倍)で受胎能の低下が報告されている4)5)。[9.4参照]
9.6 授乳婦
治療上の有益性及び母乳栄養の有益性を考慮し、授乳の継続又は中止を検討すること。動物実験(ラット)でシステアミンを投与された母動物に哺育された児動物に離乳時生存率の低下が報告されている5)
9.7 小児等
誤嚥の危険性がある小児に投与する際には十分注意すること。誤嚥による窒息の危険性がある。
9.8 高齢者
9.8.1 誤嚥の危険性がある高齢者に投与する際には十分注意すること。誤嚥による窒息の危険性がある。
9.8.2 患者の状態を観察しながら慎重に投与すること。一般に生理機能が低下していることが多い。

11. 副作用

11.1 重大な副作用
次の副作用があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止するなど適切な処置を行うこと。
11.1.1 中毒性表皮壊死融解症(Toxic Epidermal Necrolysis:TEN)、皮膚粘膜眼症候群(Stevens-Johnson症候群)、多形紅斑(頻度不明)
11.1.2 良性頭蓋内圧亢進(偽性脳腫瘍)、視神経乳頭浮腫(頻度不明)
頭痛、悪心・嘔吐、一過性視力障害や複視等の症状が認められた場合には減量又は投与を中止するなど、適切な処置を行うこと。また、無症状のことがあるので定期的な眼科の診察を行うなど注意すること。[8.3参照]
11.1.3 エーラース・ダンロス症候群(Ehlers-Danlos症候群)様の症状(頻度不明)[8.18.38.4参照]
11.1.4 痙攣、脳症(頻度不明)[8.3参照]
11.1.5 消化性潰瘍、消化管出血(頻度不明)[8.3参照]
11.1.6 間質性腎炎(頻度不明)
腎不全を伴う尿細管間質性腎炎があらわれることがある。
11.2 その他の副作用
次の副作用があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止するなど適切な処置を行うこと。
 10%以上1〜10%未満0.1〜1%未満
肝臓 γ-GTP増加、AST増加、ALT増加、ALP増加等の肝機能検査値異常 
血液  白血球減少症
消化器嘔吐、悪心、下痢腹痛、呼気臭、消化不良、胃腸炎 
筋骨格系  関節過伸展、下肢痛、X脚、骨減少症、圧迫骨折、側弯症
精神・神経系 頭痛傾眠
代謝食欲不振  
皮膚 皮膚臭異常、発疹毛髪変色、皮膚線条、皮膚脆弱性(肘にモルスクム様偽腫瘍)
その他嗜眠、発熱  

12. 臨床検査結果に及ぼす影響

尿中ケトン体検査では、偽陽性を呈する可能性がある。

13. 過量投与

13.1 症状
進行性の嗜眠があらわれるおそれがある。
13.2 処置
システアミンは血漿タンパク質との結合が弱いので血液透析を考慮すること。

14. 適用上の注意

14.1 薬剤交付時の注意
14.1.1 酸性の飲料水(オレンジジュース等)は、カプセルの内容物との混合性が悪い場合や、凝固することがあるので避けるよう指導すること。
14.1.2 本剤の100カプセル容器のふたはチャイルドロックを施しているため、ふたを強く押しながらねじって開封すること。

15. その他の注意

15.2 非臨床試験に基づく情報
15.2.1 ラットを用いた反復投与生殖発生毒性試験では、システアミンは1日75mg/kg(体重)の経口投与(1日0.45g/m2(体表面積):体表面積当たりのヒトでの推奨用量の0.4倍)で受胎能及び繁殖成績に影響を及ぼさなかった6)
15.2.2 動物実験(ラット)で生後1〜6日にシステアミン200mg/kg/日を皮下投与された動物に白内障が認められた7)

16. 薬物動態

16.1 血中濃度
16.1.1 単回投与
健康成人男性6例に、ニシスタゴンカプセル150mgを7カプセル(システアミンとして1,050mg)注)絶食時に単回経口投与した場合の血漿中システアミン濃度推移及び薬物動態パラメータは以下のとおりであった8)
Cmax(μg/mL)AUC0-24h(μg・h/mL)Tmax(h)T1/2(h)
4.83±0.5714.08±1.590.92±0.564.90±0.65
注)承認最大用量は1日1.95g/m2(体表面積)である。
16.1.2 反復投与
国内腎性シスチン症患者(1例)に本剤1,200〜1,800mg/日、分4を投与したとき、投与12週目及び投与20週目の血漿中システアミンの薬物動態パラメータ及び血漿中システアミン濃度、白血球中シスチン濃度の推移は以下のとおりであった8)
血漿中システアミンの薬物動態パラメータ
 Cmax(μg/mL)AUC0-6h(μg・h/mL)Tmax(h)T1/2(h)CL/F(mL/min)Vss(L)
投与12週時
(本剤1,600mg/日、分4)
3.718.031.001.64830.3100.9
投与20週時
(本剤1,800mg/日、分4)
3.4410.681.501.55702.1106.6
血漿中システアミン濃度及び白血球中シスチン濃度の推移
測定時期血漿中システアミン濃度(μg/mL)白血球中シスチン濃度(nmol/1/2cystine/mg protein)
投与12週時
(本剤1,600mg/日、分4)
投与前1.1613.9
投与0.5時間後1.10
投与1時間後3.712.07
投与1.5時間後2.84
投与2時間後2.053.10
投与3時間後0.891.44
投与6時間後0.409.40
投与20週時
(本剤1,800mg/日、分4)
投与前0.891.30
投与0.5時間後0.66
投与1時間後1.111.27
投与1.5時間後3.44
投与2時間後2.981.01
投与3時間後2.410.61
投与6時間後0.541.45
16.2 吸収
16.2.1 食事の影響
健康成人(8例)に本剤500mgを絶食下、高脂肪食摂取後又は高蛋白食摂取後に経口投与したときの血漿中システアミンの薬物動態パラメータは以下のとおりであった1)(外国人データ)。[7.3.2参照]
本剤500mgを絶食下及び食後投与した時の薬物動態パラメータ
投与条件\血漿中濃度Cmax(μg/mL)AUC(μg・h/mL)
絶食時投与26.3±3.53,618±372
高脂肪食摂取後22.4±5.62,799±405
高蛋白食摂取後17.2±2.62,457±353
16.3 分布
健康成人男性(in vitro)における本薬(2.5μg/mL)の血漿蛋白結合率(平衡透析法、平均値±標準偏差)は54.1±1.5%であった。小児腎性シスチン症患者(in vivo)における本薬の血漿蛋白結合率(平衡透析法、平均値±標準偏差)は、本剤投与1.5及び6時間後において53.1±3.6及び51.1±4.5%であった。本薬の主な結合蛋白はアルブミンであった9)(外国人データ)。

17. 臨床成績

17.1 有効性及び安全性に関する試験
17.1.1 国内第II/III相試験
国内腎性シスチン症患者6例を対象に、本剤を32週間経口投与した時の白血球中シスチン濃度(主要評価項目)及びクレアチニンクリアランス(副次的評価項目)の推移は以下のとおりであった。いずれも治験薬以外のシステアミンによる治療を受けていた患者であった8)
性別男性男性男性女性女性男性
年齢(歳)343326151316
体重(kg)45.342.133.031.016.740.7
体表面積(m21.371.321.141.030.721.32
腎移植の有無無(透析併用)
用法・用量(mg/日、分4)800〜1,800800〜1,8001,200〜1,800200〜1,400200〜8001,200〜2,400
白血球中シスチン濃度(nmol/1/2cystine/mg protein)治験薬投与開始前(−1週)8.6122.48.543.03算出不能4.93
治験薬投与開始後2週3.2524.62.15算出不能算出不能1.07
4週3.615.1831.817.127.41.62
6週2.545.891.379.669.370.439
8週5.884.227.386.526.630.379
10週8.465.5410.36.210.808
12週6.7613.97.1012.60.652
18週10.8
20週4.281.301.080.7570.952
24週4.76
28週7.3713.21.827.7423.90.490
クレアチニンクリアランス(mL/min)治験薬投与開始前(−2週)50.14419.67544.65886.3144.40016.454
治験薬投与開始後4週48.34217.19240.69681.5664.24715.079
8週49.56117.30341.99978.7043.66717.434
12週51.12841.64677.6683.84417.790
20週51.25517.36040.11170.7403.90815.931
24週15.639
28週56.90313.24146.32777.6684.99816.978
6例中4例(66.7%)22件に副作用が認められた。認められた副作用は嘔吐、γ-GTP上昇(各2例[33.3%])、頭痛、口腔咽頭痛、腹部不快感、悪心、発熱、口腔カンジダ症、ALP増加、ALT増加、AST増加、食欲減退、不眠、慢性腎不全(各1例[16.7%])であった8)

18. 薬効薬理

18.1 作用機序
腎性シスチン症では、シスチン輸送を担うシスチノシン遺伝子の変異により、ライソゾーム内にシスチンが蓄積することにより、各種臓器障害が生じる10)
システアミンは、ライソゾームに蓄積するシスチンと反応し、システイン−システアミン混合ジスルフィド及びシステインを生成し(ジスルフィド交換反応)、細胞内のシスチン濃度を低下させる11)12)

19. 有効成分に関する理化学的知見

19.1. システアミン酒石酸塩

一般的名称 システアミン酒石酸塩
一般的名称(欧名) Cysteamine Bitartrate
化学名 2-Aminoethanethiol mono-(2R,3R)-tartrate
分子式 C2H7NS・C4H6O6
分子量 227.24
融点 118〜121℃
物理化学的性状 白色の粉末である。
水に溶けやすい。
KEGG DRUG D10468

20. 取扱い上の注意

本剤は吸湿性であるため、開封後は湿気を避けて保存すること。

22. 包装

<ニシスタゴンカプセル50mg>
100カプセル[瓶、バラ、乾燥剤入り]
500カプセル[瓶、バラ、乾燥剤入り]
<ニシスタゴンカプセル150mg>
100カプセル[瓶、バラ、乾燥剤入り]

23. 主要文献

  1. Ranjan D,et al., Clin Pharmacol Drug Dev., 1, 170-174, (2012)
  2. Martine TP,et al., J Pediatr., 159 (6), 1004-1011, (2011)
  3. Martine B,et al., Pediatr Nephrol., 26 (4), 639-640, (2011)
  4. Beckman DA,et al., Teratology., 58 (3-4), 96-102, (1998) »PubMed
  5. Woodard Research Corporation:Report to Walter Reed Army Institute of Research., (1966)
  6. Assadi FK,et al., Teratology., 58, 88-95, (1998) »PubMed
  7. Truong T,et al., Invest Ophthalmol Vis Sci., 28 (10), 1710-1713, (1987) »PubMed
  8. 西田智, ちば県薬誌, 61 (11), 667-674, (2015)
  9. 社内資料:血漿蛋白結合率に関する資料(承認年月日:2014.7.4、CTD2.7.2.2)
  10. Gahl WA,et al., N Engl J Med., 347 (2), 111-121, (2002) »PubMed
  11. Gahl WA,et al., Biochem J., 228 (3), 545-550, (1985) »PubMed
  12. Thoene JG,et al., J Clin Invest., 58 (1), 180-189, (1976) »PubMed

24. 文献請求先及び問い合わせ先

文献請求先
ヴィアトリス製薬合同会社 メディカルインフォメーション部
〒106-0041 東京都港区麻布台一丁目3番1号
電話:フリーダイヤル 0120-419-043
製品情報問い合わせ先
ヴィアトリス製薬合同会社 メディカルインフォメーション部
〒106-0041 東京都港区麻布台一丁目3番1号
電話:フリーダイヤル 0120-419-043

26. 製造販売業者等

26.1 製造販売元
ヴィアトリス製薬合同会社
東京都港区麻布台一丁目3番1号

[ KEGG | KEGG DRUG | KEGG MEDICUS ] 2025/12/17 版