本剤の成分又はリンコマイシン系抗生物質に対し過敏症の既往歴のある患者
本剤の使用にあたっては、12週間で効果が認められない場合には使用を中止すること。また、炎症性皮疹が消失した場合には、他の適切な維持治療を検討すること。なお、本剤を12週間を超えて塗布した際の有効性及び安全性は検討されていないため、12週間を超えて塗布する際はその必要性を慎重に判断すること。
8.1 過度に塗布しても上乗せ効果は期待されず、皮膚刺激が増すおそれがあるので注意すること。
8.2 本剤の使用中に皮膚剥脱、紅斑、刺激感、腫脹等があらわれることがある。紅斑や腫脹が顔面全体や頚部にまで及ぶ症例、水疱、びらん等があらわれ、重症化した症例も報告されているので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には本剤の使用を中止するなど適切な処置を行うこと。
8.3 全身性の過敏反応や重度の皮膚刺激症状が認められた場合には本剤の使用を中止すること。
8.4 本剤の使用中は日光への曝露を最小限にとどめ、日焼けランプの使用や紫外線療法は避けること。
8.5 本剤の使用にあたっては、耐性菌の発現等を防ぐため、疾病の治療上必要な最小限の期間の使用にとどめること。
9.1 合併症・既往歴等のある患者
9.1.1 抗生物質に関連した下痢又は大腸炎の既往歴のある患者
偽膜性大腸炎等の重篤な大腸炎があらわれるおそれがある。[
11.1.1参照]
9.1.2 アトピー性体質の患者
重症の即時型アレルギー反応があらわれるおそれがある。
9.5 妊婦
妊婦又は妊娠している可能性のある女性には、治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ使用すること。
9.6 授乳婦
治療上の有益性及び母乳栄養の有益性を考慮し、授乳の継続又は中止を検討すること。母乳中への移行は不明である。
9.7 小児等
低出生体重児、新生児、乳児、幼児又は12歳未満の小児を対象とした臨床試験は実施していない。
11.1 重大な副作用
次の副作用があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止するなど適切な処置を行うこと。
11.1.1 大腸炎
限局性腸炎、潰瘍性大腸炎、抗生物質関連大腸炎(偽膜性大腸炎を含む)等の大腸炎、出血性下痢(いずれも頻度不明)があらわれることがある。遷延性又は重症の下痢、出血性下痢あるいは腹部疝痛が認められた場合、それらの症状が大腸炎の可能性もあるため、直ちに本剤の使用を中止し、適切な検査を行うこと。[
9.1.1、
14.1.4参照]
11.2 その他の副作用
次の副作用があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止するなど適切な処置を行うこと。
| | 5%以上 | 5%未満 | 頻度不明 |
| 消化器 | − | − | 下痢、腹痛 |
| 皮膚 | 乾燥、皮膚炎(接触皮膚炎、湿疹を含む)、皮膚剥脱、紅斑、適用部位反応(疼痛、皮膚刺激、発赤、変色を含む)、そう痒症 | 灼熱感、蕁麻疹、ざ瘡悪化 | 光線過敏性反応、紅斑性皮疹、錯感覚、つっぱり感、グラム陰性菌毛嚢炎、脂性肌、腫脹、水疱、びらん |
| 肝臓 | − | − | AST、ALT、Al-P、総ビリルビンの上昇、ウロビリノーゲン陽性 |
| その他 | − | 過敏症 | 頭痛、白血球増加、血小板増加、総コレステロール低下、尿蛋白、尿糖 |
13.1 症状
重度の皮膚刺激感があらわれる可能性がある。過酸化ベンゾイルの外用により全身性の作用の発現に至る量は吸収される可能性が低い。一方、クリンダマイシンの過量の外用により全身性の作用の発現に至る量が吸収される可能性がある。
14.1 薬剤使用時の注意
14.1.1 他のざ瘡治療外用剤と併用する場合には、刺激感が増すおそれがあるので注意すること。
14.1.2 本剤は、毛髪や着色・染色された布織物を退色させるおそれがあるため、毛髪、布織物、家具及び絨毯に付着させないこと。
14.1.3 外用としてのみ使用すること。口腔、眼、口唇、その他の粘膜、刺激及び傷のある皮膚には使用しないこと。これらの部位に本剤が付着した場合は水で洗い流すこと。
14.1.4 誤飲により、クリンダマイシンを全身性に投与した場合と同様の消化器系の副作用が発現する可能性がある。そのような場合には対症療法を行い患者の状態を慎重に観察すること。[
11.1.1参照]
15.1 臨床使用に基づく情報
過酸化ベンゾイルとトレチノインを混合すると、トレチノインが分解されるとの報告がある
1)ため、本剤とトレチノインを同一部位に塗布した場合、トレチノインの効果が減弱する可能性がある。
15.2 非臨床試験に基づく情報
ヘアレスマウスを用いた1年間光がん原性試験で紫外線照射と2500mg/kg/日(7500mg/m2/日)までのクリンダマイシン1%−過酸化ベンゾイル5%ゲルを経皮投与した結果、紫外線照射単独群と比べ皮膚腫瘍発現時間の軽度短縮が認められた。
16.1 血中濃度
16.1.1 クリンダマイシン(日本人における成績)
健康成人男性(6例)の背部皮膚にクリンダマイシン(CLDM)リン酸エステルゲル1% 2gを単回塗布したときの血漿中CLDM濃度は多くの被験者で定量限界(13.2pg/mL)以下であった。また、CLDMリン酸エステルゲル1% 2gを12時間毎に9回反復塗布したときの塗布後12時間の血漿中CLDM濃度は3回塗布でほぼ一定となり、最終塗布後のCmaxは平均161.3pg/mLであった
2)。
16.1.2 クリンダマイシン(外国人における成績)
中等度から重度の尋常性ざ瘡患者(77例)の顔面にCLDMリン酸エステル1%−過酸化ベンゾイル(BPO)5%ゲル1gを1日1回及びCLDMリン酸エステルローション1% 0.5gを1日2回それぞれ4週間塗布したときの血漿中CLDM及びその代謝物であるS-酸化体の濃度を表-1に示す。
表-1 尋常性ざ瘡患者にCLDMリン酸エステル1%−BPO5%ゲル1gを1日1回及びCLDMリン酸エステルローション1% 0.5gを1日2回4週間塗布したときの血漿中CLDM及びS-酸化体濃度
| | CLDMリン酸エステル1%−BPO5% | CLDMリン酸エステルローション1% |
| CLDM(pg/mL) | S-酸化体(pg/mL) | CLDM(pg/mL) | S-酸化体(pg/mL) |
| 塗布後1〜4週 | 439.2±574.2(39) | 93.3±93.1(39) | 386.0±398.9(37) | 77.4±88.5(37) |
| 最終塗布後96時間 | 67.8±223.3(35) | 13.4±36.9(36) | 73.0±226.2(30) | 44.5±51.3(30) |
中等度から重度の尋常性ざ瘡患者(24例)の顔面、上胸部、上背部、肩に本剤約4gを1日1回5日間塗布したときのCLDM及びS-酸化体の薬物動態パラメータを表-2に示す
3)。
表-2 尋常性ざ瘡患者に本剤約4gを1日1回5日間塗布したときの血漿中CLDM及びS-酸化体の薬物動態パラメータ
| パラメータ | CLDM(24例) | S-酸化体(23例) |
| Cmax(pg/mL) | 1294.2±1011.3 | 220.0±139.1 |
| tmax(hr) | 5.8±2.68 | 7.9±3.47 |
| AUC(0-t)(pg・h/mL) | 17786.3±14769.4 | 3956.5±2860.3 |
16.1.3 過酸化ベンゾイル(日本人における成績)
尋常性ざ瘡患者の顔面に本剤約0.7gを1日2回7日間塗布したときの血漿中安息香酸濃度は12例中2例で定量可能(定量下限:100ng/mL)であった。塗布前及び反復塗布後の血漿中馬尿酸濃度は、それぞれ46.7〜84.8ng/mL及び38.2〜100.3ng/mLであった。
16.2 吸収
16.2.1 クリンダマイシンリン酸エステル水和物
In vitroにおいて、ヒト皮膚に本剤15.63mg/cm
2を塗布したとき、安息香酸、CLDMリン酸エステル又はCLDMとして塗布6時間後までに経時的に皮膚を透過したが、BPOとしての皮膚透過は確認されなかった
4)。
16.2.2 過酸化ベンゾイル
In vitroにおいて、ヒト皮膚に
14C-BPO4556μgを塗布したときの塗布後8時間には安息香酸として真皮側から1.9%が回収された。皮膚中には塗布量の2.6%(BPO及び安息香酸がおおむね同量)が、皮膚表面には95.5%(BPO)が残った
5)。
16.4 代謝
16.4.1 クリンダマイシン
CLDMリン酸エステルは生体内で速やかにCLDMに加水分解された
6)7)8)。また、
in vitro試験において、CLDMは主にCYP3A4でS-酸化体に代謝された
9)。
16.5 排泄
16.5.1 クリンダマイシン(日本人における成績)
健康成人男性(6例)の背部皮膚にCLDMリン酸エステルゲル1% 2gを単回塗布及び12時間毎に9回反復塗布したとき、CLDMの尿中排泄率は単回及び反復塗布のいずれにおいても塗布量の0.01%以下であった
2)。
16.5.2 クリンダマイシン(外国人における成績)
中等度から重度の尋常性ざ瘡患者(77例)の顔面にCLDMリン酸エステル1%−BPO5%ゲル1gを1日1回及びCLDMリン酸エステルローション1% 0.5gを1日2回それぞれ4週間塗布したとき、CLDMリン酸エステル1%−BPO5%ゲルの最終投与後24時間における尿中排泄量はCLDM及びS-酸化体でそれぞれ5.8及び5.4μgとCLDMリン酸エステルローション1%塗布時と同程度であった
3)。
16.5.3 過酸化ベンゾイル(日本人における成績)
尋常性ざ瘡患者の顔面に本剤約0.7gを1日2回7日間塗布したとき、尿中安息香酸濃度は12例中3例で定量可能(定量下限:100ng/mL)であり、塗布前及び反復塗布後の尿中馬尿酸濃度は、それぞれ36.0〜42.4μg/mL及び53.7〜55.6μg/mLであった。
医薬品リスク管理計画を策定の上、適切に実施すること。