2.1 閉塞隅角緑内障の患者[抗コリン作用により、眼圧が上昇し症状を悪化させるおそれがある。]
2.2 前立腺肥大等による排尿障害がある患者[抗コリン作用により、尿閉を誘発するおそれがある。][
9.1.5参照]
2.3 本剤の成分に対し過敏症の既往歴のある患者
5.1 本剤は慢性閉塞性肺疾患の症状の長期管理に用いること。
5.2 本剤は慢性閉塞性肺疾患の増悪時の急性期治療を目的として使用する薬剤ではない。[
8.1参照]
5.3 本剤は気管支喘息治療を目的とした薬剤ではないため、気管支喘息治療の目的には使用しないこと。
通常、成人にはアノーロエリプタ1吸入(ウメクリジニウムとして62.5μg及びビランテロールとして25μg)を1日1回吸入投与する。
8.1 用法及び用量どおり正しく使用しても効果が認められない場合には、本剤が適当でないと考えられるので、漫然と投与を継続せず中止すること。[
5.2参照]
8.2 本剤の吸入後に気管支痙攣があらわれることがある。そのような状態では、患者の生命が脅かされる可能性があるので、気管支痙攣が認められた場合には、直ちに本剤の投与を中止し、適切な処置を行うこと。
8.3 過度に本剤の使用を続けた場合、不整脈、場合により心停止を起こすおそれがあるので、用法及び用量を超えて投与しないよう注意すること。患者に対し、本剤の過度の使用による危険性を理解させ、本剤を1日1回なるべく同じ時間帯に吸入するよう(1日1回を超えて投与しないよう)注意を与えること。[
13.1参照]
9.1 合併症・既往歴等のある患者
9.1.1 甲状腺機能亢進症の患者
9.1.2 心疾患を有する患者
抗コリン作用により心不全、心房細動、期外収縮が発現又は悪化するおそれがある。β
2刺激作用により上室性頻脈、期外収縮等の不整脈が発現又は悪化するおそれがある。また、QT延長が発現するおそれがある。[
11.1参照]
9.1.3 高血圧の患者
9.1.4 糖尿病の患者
血糖値をモニタリングするなど慎重に投与すること。高用量のβ2刺激剤を投与すると、血糖値が上昇するおそれがある。
9.1.5 前立腺肥大(排尿障害がある場合を除く)のある患者
9.1.6 気管支喘息を合併した患者
9.5 妊婦
妊婦又は妊娠している可能性のある女性には、治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与すること。ビランテロールの高用量の吸入又は皮下投与により、ウサギの胎児に眼瞼開存、口蓋裂などの所見及び発育抑制が報告されている。
9.6 授乳婦
治療上の有益性及び母乳栄養の有益性を考慮し、授乳の継続又は中止を検討すること。ラットの授乳期にビランテロールを経口投与又はウメクリジニウムを皮下投与したとき、生後10日の出生児血漿中にビランテロール又はウメクリジニウムが検出された(それぞれ1/54及び2/54例)。
9.7 小児等
9.8 高齢者
患者の状態を観察しながら注意して投与すること。一般に、生理機能が低下している。
11.1 重大な副作用
次の副作用があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止するなど適切な処置を行うこと。
11.2 その他の副作用
次の副作用があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止するなど適切な処置を行うこと。
| 0.5%以上 | 頻度不明 |
過敏症 | | 発疹、蕁麻疹、血管性浮腫 |
感染症 | | 咽頭炎 |
精神神経系 | | 振戦、味覚異常、頭痛 |
循環器 | 頻脈、動悸 | |
呼吸器 | 咳嗽 | 発声障害、口腔咽頭痛 |
消化器 | 口内乾燥 | 便秘 |
筋骨格系 | | 筋痙縮 |
腎臓・泌尿器 | 排尿困難 | 尿閉 |
眼 | | 眼圧上昇、霧視、眼痛 |
16.1 血中濃度
16.1.1 健康成人
健康成人75例にウメクリジニウム・ビランテロール(以下、UMEC・VI)125・25μg
注)を1日1回10日間吸入投与した時、投与10日目の血漿中UMEC及びVIの濃度推移及び薬物動態パラメータは以下のとおりであった(外国人データ)。
図1 健康成人にUMEC・VI 125・25μgを1日1回10日間吸入投与した時の血漿中UMEC及びVIの濃度推移(平均値+標準偏差、74例)
表1 健康成人にUMEC・VI 125・25μgを1日1回10日間吸入投与した時の血漿中UMEC及びVIの薬物動態パラメータ
測定薬物 | Cmax(pg/mL) | tmax(h)注1) | AUC0-τ(pg・h/mL) |
UMEC | 334[294,379] | 0.10(0.08-0.15) | 495[431,569] |
VI | 340[307,376] | 0.10(0.08-0.15) | 429[379,486] |
16.1.2 慢性閉塞性肺疾患患者
慢性閉塞性肺疾患患者にUMEC・VI 62.5・25μgを吸入投与した時の定常状態における曝露量について、母集団薬物動態解析を用いて算出された曝露量は以下のとおりであった。
表2 慢性閉塞性肺疾患患者での血漿中のUMEC及びVIの定常状態における曝露量(母集団薬物動態解析による予測値)
患者 | 例数 | UMEC | VI |
Cmax(pg/mL) | AUC0-τ(pg・h/mL) | Cmax(pg/mL) | AUC0-τ(pg・h/mL) |
日本人 | 20 | 79.4[64.8,99.7] | 365.3[299.2,450.4] | 126.8[103.1,160.6] | 677.3[568.7,806.2] |
外国人 | 390 | 68.0[64.5,71.6] | 305.4[291.3,320.6] | 127.9[121.8,134.6] | 609.2[584.9,633.9] |
16.2 吸収
健康成人9例にUMEC 1000μgを単回吸入投与した時のUMECの絶対的バイオアベイラビリティは12.8%であった(外国人データ)。
健康成人16例にVI 100μgをフルチカゾンフランカルボン酸エステル(以下、FF)800μgと併用で吸入投与した時のVIの絶対的バイオアベイラビリティは27.3%であった(外国人データ)。
16.3 分布
16.3.1 分布容積
健康成人6又は16例にそれぞれUMEC 65μg又はVI 55μgを静脈内投与した時の定常状態における分布容積の幾何平均値はそれぞれ86及び165Lであった(外国人データ)。
16.3.2 血漿蛋白結合率
In vitroでのUMEC及びVIのヒト血漿蛋白結合率は、それぞれ88.9及び93.9%であった。
16.3.3 血球移行
In vitroでのUMEC及びVI(いずれも50〜500ng/mL)のヒト血液/血漿比は、それぞれ0.541〜0.560及び0.73〜0.81であった。
16.4 代謝
In vitro試験において、UMEC及びVIはそれぞれ主にCYP2D6及びCYP3A4で代謝された。UMECの主な代謝経路は酸化(他に、水酸化及びO-脱アルキル化)であり、さらに抱合体(グルクロン酸抱合等)を生成し、VIからは主にO-脱アルキル化された代謝物が生成する。[
10.参照]
16.5 排泄
健康成人6例に14C-UMEC 65μgを単回静脈内投与した時に放射能は主に代謝物として尿・糞中に排泄され、放射能の尿・糞中排泄率はそれぞれ約22及び58%であった(外国人データ)。
16.6 特定の背景を有する患者
16.6.1 腎機能低下者
重度の腎機能低下者(CLcr:30mL/分未満)及び健康成人各9例にUMEC・VI 125・25μg
注)を単回吸入投与した時のUMECのCmax及びAUC
0-2は健康成人と比べてそれぞれ2%低下及び10%増加し、VIのCmax及びAUC
0-1はそれぞれ3及び21%増加した
1)(外国人データ)。
16.6.2 肝機能低下者
中等度の肝機能低下者(Child-PughスコアB)及び健康成人各9例にUMEC・VI 125・25μg
注)を単回吸入投与した時のUMECのCmax及びAUC
0-tは健康成人と比べてそれぞれ15及び6%低下し、VIのCmax及びAUC
0-tはそれぞれ22及び26%低下した。重度の肝機能低下者にUMEC・VIを投与する試験は実施されていない
2)(外国人データ)。
16.7 薬物相互作用
16.7.1 ケトコナゾール
健康成人18例にVI 25μg(FF 200μgと同時に吸入投与)とCYP3A4阻害薬であるケトコナゾール400mg(経口)を反復併用投与した時の薬物相互作用を検討した。その結果、併用投与時のVIのCmax及びAUC
0-t'の平均値はそれぞれ22及び65%増加した
3)(外国人データ)。[
10.2参照]
16.7.2 その他の薬剤
健康成人16例にUMEC・VI 500・25μg
注)とCYP3A4阻害作用及びP-gp阻害作用を有するベラパミル240mg(経口)を反復併用投与した時の血漿中薬物動態に及ぼす影響を検討した。その結果、UMECのCmax及びAUC
0-τの平均値はそれぞれ11%低下及び37%増加し、VIのCmax及びAUC
0-2の平均値はそれぞれ5及び14%増加した
4)(外国人データ)。
注)本剤の承認用量は、UMEC・VI 62.5・25μg1日1回吸入投与である。
17.1 有効性及び安全性に関する試験
17.1.1 国際共同第III相試験
慢性閉塞性肺疾患患者1532例(日本人患者68例を含む)を対象に実施したプラセボ対照無作為化二重盲検並行群間比較試験において、UMEC・VI 62.5・25μgを1日1回24週間投与した時のトラフFEV
1値(L)は下表のとおりであった
5)。
| UMEC・VI 62.5・25μg群 | UMEC 62.5μg群 | VI 25μg群 | プラセボ群 |
全体集団 |
トラフFEV1(L) | ベースライン | 1.282±0.556(413) | 1.199±0.488(417) | 1.247±0.485(421) | 1.200±0.469(280) |
投与24週後 | 1.461±0.557(330) | 1.357±0.516(322) | 1.358±0.492(317) | 1.226±0.475(201) |
変化量 | 0.164±0.246(330) | 0.123±0.225(322) | 0.083±0.234(317) | 0.004±0.230(201) |
プラセボ群との差[95%信頼区間]注1) p値注1) | 0.167[0.128,0.207] p<0.001 | 0.115[0.076,0.155] p<0.001 | 0.072[0.032,0.112] p<0.001 | / |
UMEC・VI 62.5・25μgとの差[95%信頼区間]注1) p値注1) | / | 0.052[0.017,0.087] p=0.004 | 0.095[0.060,0.130] p<0.001 | / |
日本人部分集団 |
トラフFEV1(L) | ベースライン | 0.890±0.328(20) | 1.118±0.349(18) | 1.094±0.450(18) | 1.204±0.508(12) |
投与24週後 | 1.079±0.342(19) | 1.329±0.453(13) | 1.184±0.509(18) | 1.286±0.564(8) |
変化量 | 0.201±0.153(19) | 0.205±0.144(13) | 0.091±0.170(18) | −0.006±0.140(8) |
プラセボ群との差[95%信頼区間]注2) | 0.201[0.013,0.388] | 0.215[0.018,0.412] | 0.114[−0.076,0.303] | / |
UMEC・VI 62.5・25μgとの差[95%信頼区間]注2) | / | −0.014[−0.177,0.149] | 0.087[−0.067,0.241] | / |
副作用発現頻度は、UMEC・VI 62.5・25μg群で6%(25/413例)であった。主な副作用は、頭痛1%未満(4/413例)であった。
17.1.2 国内第III相試験
慢性閉塞性肺疾患患者130例を対象に実施した52週間の国内長期投与試験において、UMEC・VI 125・25μg
注)を1日1回投与したところ、治療期間を通しFEV
1の改善が維持された
6)。
副作用発現頻度は、6%(8/130例)であった。主な副作用は、高血圧2%(2/130例)であった。
17.3 その他
17.3.1 心電図に対する影響
健康成人103例にUMEC・VI 125・25μg
注)、500・100μg
注)、UMEC 500μgを1日1回10日間反復吸入投与した時のQTcF間隔の最小二乗平均値のプラセボとの差(及び90%信頼区間上限値)の最大値は、それぞれUMEC・VI 125・25μg
注)投与後10分で4.3(6.4)msec、UMEC・VI 500・100μg
注)投与後30分で8.2(10.2)msec、UMEC 500μg投与後30分で−0.8(1.1)msecであった
7)(外国人データ)。[
10.2、
13.1参照]
注)本剤の承認用量は、UMEC・VI 62.5・25μg1日1回吸入投与である。
18.1 作用機序
UMECは長時間作用性の選択的ムスカリン受容体拮抗薬であり、気管支平滑筋に存在するムスカリン受容体へのアセチルコリンの結合を競合的に阻害することにより気管支平滑筋収縮を抑制する。
VIは長時間作用性β2刺激剤であり、アデニル酸シクラーゼを活性化し細胞内の環状アデノシン一リン酸を増加させることで、気管支平滑筋を弛緩させる。
18.2 ムスカリン受容体への作用
UMECはin vitroですべてのムスカリン受容体サブタイプ(M1〜M5受容体)に対して高い親和性を示し、UMECのM3受容体に対する拮抗作用は緩徐な回復性を示した。
18.3 気管支収縮に対する作用
UMECはモルモットへの単回気管内投与によりアセチルコリン誘発気管支収縮に対して長時間持続性の抑制作用を示した。
VIはモルモットへの単回噴霧投与によりヒスタミン誘発気管支収縮を持続的に抑制した。