医療用医薬品 : ボノサップ

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医薬品情報


総称名 ボノサップ
一般名 ボノプラザンフマル酸塩
アモキシシリン水和物
クラリスロマイシン
欧文一般名 Vonoprazan Fumarate
Amoxicillin Hydrate
Clarithromycin
製剤名 ボノプラザンフマル酸塩錠、日本薬局方アモキシシリンカプセル、日本薬局方クラリスロマイシン錠
薬効分類番号 6199
ATCコード A02BD14
KEGG DRUG
D10775 ボノプラザン・アモキシシリン・クラリスロマイシン
JAPIC 添付文書(PDF)
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添付文書情報2024年9月 改訂(第3版)


商品情報 3.組成・性状

販売名 欧文商標名 製造会社 YJコード 薬価 規制区分
ボノサップパック400 VONOSAP Pack 400 武田薬品工業 6199104X1023 492.4円/シート 処方箋医薬品注)
ボノサップパック800 VONOSAP Pack 800 武田薬品工業 6199104X2020 616.6円/シート 処方箋医薬品注)

2. 禁忌

次の患者には投与しないこと
2.1 本製品に包装されている各製剤の成分に対する過敏症の既往歴のある患者
2.2 アタザナビル硫酸塩、リルピビリン塩酸塩、ピモジド、エルゴタミン酒石酸塩・無水カフェイン・イソプロピルアンチピリン、ジヒドロエルゴタミンメシル酸塩、スボレキサント、ロミタピドメシル酸塩、タダラフィル〔アドシルカ〕、チカグレロル、イブルチニブ、イバブラジン塩酸塩、ベネトクラクス(再発又は難治性の慢性リンパ性白血病(小リンパ球性リンパ腫を含む)の用量漸増期)、ルラシドン塩酸塩、アナモレリン塩酸塩、フィネレノン、イサブコナゾニウム硫酸塩を投与中の患者[10.1参照]
2.3 肝臓又は腎臓に障害のある患者で、コルヒチンを投与中の患者[9.2.19.3.110.2参照]
2.4 伝染性単核症のある患者[アモキシシリン水和物で紅斑性丘疹の発現頻度が高いとの報告がある。]
2.5 高度の腎障害のある患者[9.2.2参照]

4. 効能または効果

<適応菌種>
<適応症>
胃潰瘍・十二指腸潰瘍・胃MALTリンパ腫・特発性血小板減少性紫斑病・早期胃癌に対する内視鏡的治療後胃におけるヘリコバクター・ピロリ感染症ヘリコバクター・ピロリ感染胃炎

5. 効能または効果に関連する注意

5.1 進行期胃MALTリンパ腫に対するヘリコバクター・ピロリ除菌治療の有効性は確立していない。
5.2 特発性血小板減少性紫斑病に対しては、ガイドライン等を参照し、ヘリコバクター・ピロリ除菌治療が適切と判断される症例にのみ除菌治療を行うこと。
5.3 早期胃癌に対する内視鏡的治療後胃以外には、ヘリコバクター・ピロリ除菌治療による胃癌の発症抑制に対する有効性は確立していない。
5.4 ヘリコバクター・ピロリ感染胃炎に用いる際には、ヘリコバクター・ピロリが陽性であること及び内視鏡検査によりヘリコバクター・ピロリ感染胃炎であることを確認すること。

6. 用法及び用量

通常、成人にはボノプラザンとして1回20mg、アモキシシリン水和物として1回750mg(力価)及びクラリスロマイシンとして1回200mg(力価)の3剤を同時に1日2回、7日間経口投与する。なお、クラリスロマイシンは、必要に応じて適宜増量することができる。ただし、1回400mg(力価)1日2回を上限とする。

8. 重要な基本的注意

8.1 本製品に包装されている個々の製剤を単独、もしくは本製品の効能又は効果以外の目的に使用しないこと。また、用法及び用量のとおり、同時に服用すること。
<アモキシシリン水和物>
8.2 ショック、アナフィラキシー、アレルギー反応に伴う急性冠症候群、薬剤により誘発される胃腸炎症候群の発生を確実に予知できる方法はないが、事前に当該事象の既往歴等について十分な問診を行うこと。なお、抗生物質によるアレルギー歴は必ず確認すること。[9.1.111.1.5-11.1.7参照]
8.3 急性腎障害等の重篤な腎障害があらわれることがあるので、定期的に検査を行うなど観察を十分に行うこと。[11.1.9参照]
8.4 顆粒球減少、血小板減少があらわれることがあるので、定期的に検査を行うなど観察を十分に行うこと。[11.1.10参照]
<クラリスロマイシン>
8.5 血小板減少、汎血球減少、溶血性貧血、白血球減少、無顆粒球症があらわれることがあるので、定期的に検査を行うなど観察を十分に行うこと。[11.1.18参照]

9. 特定の背景を有する患者に関する注意

9.1 合併症・既往歴等のある患者
<アモキシシリン水和物>
9.1.1 ペニシリン系又はセフェム系抗生物質に対し過敏症の既往歴のある患者(ただし、アモキシシリン水和物に対し過敏症の既往歴のある患者には投与しないこと)8.2参照]
9.1.2 本人又は両親、兄弟に気管支喘息、発疹、じん麻疹等のアレルギー症状を起こしやすい体質を有する患者
9.1.3 経口摂取の不良な患者又は非経口栄養の患者、全身状態の悪い患者
観察を十分に行うこと。ビタミンK欠乏症状があらわれることがある。
<クラリスロマイシン>
9.1.4 他のマクロライド系薬剤に対する過敏症の既往歴のある患者
9.1.5 心疾患のある患者、低カリウム血症のある患者
QT延長、心室頻拍(Torsade de pointesを含む)、心室細動を起こすことがある。[11.1.16参照]
9.2 腎機能障害患者
ボノプラザンの排泄が遅延することにより血中濃度が上昇することがある。また、クラリスロマイシンの血中濃度が上昇するおそれがある。[16.6.1参照]
9.2.1 腎機能障害患者でコルヒチンを投与中の患者
投与しないこと。クラリスロマイシンとの併用によるコルヒチンの血中濃度上昇に伴う中毒症状が報告されている。[2.310.2参照]
9.2.2 高度の腎機能障害患者
投与しないこと。アモキシシリン水和物、クラリスロマイシンの血中濃度が上昇することがあり、本製品では各製剤の投与量を調節できない。[2.5参照]
9.3 肝機能障害患者
ボノプラザンの代謝、排泄が遅延することにより血中濃度が上昇することがある。また、クラリスロマイシンにより肝機能障害を悪化させることがある。[11.1.1716.6.2参照]
9.3.1 肝機能障害患者でコルヒチンを投与中の患者
投与しないこと。クラリスロマイシンとの併用によるコルヒチンの血中濃度上昇に伴う中毒症状が報告されている。[2.310.2参照]
9.5 妊婦
妊婦又は妊娠している可能性のある女性には、治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与すること。
<ボノプラザンフマル酸塩>
9.5.1 動物試験(ラット)において、40mg/日でのヒトにおけるボノプラザンの曝露量(AUC)の約28倍を超える曝露量で、胎児体重及び胎盤重量の低値、外表異常(肛門狭窄及び尾の異常)、並びに内臓異常(膜性部心室中隔欠損及び鎖骨下動脈起始異常)が認められている。
<クラリスロマイシン>
9.5.2 母動物に毒性があらわれる高用量において、胎児毒性(心血管系の異常、口蓋裂、発育遅延等)が報告されている。なお、国外における試験で次のような報告がある。SD系ラット(15〜150mg/kg/日)及びCD-1系マウス(15〜1,000mg/kg/日)において、それぞれ母動物に毒性があらわれる最高用量でラット胎児に心血管系異常並びにマウス胎児に口蓋裂が認められた。また、サル(35〜70mg/kg/日)において、母動物に毒性があらわれる70mg/kg/日で9例中1例に低体重の胎児がみられたが、外表、内臓、骨格には異常は認められなかった。
9.6 授乳婦
治療上の有益性及び母乳栄養の有益性を考慮し、授乳の継続又は中止を検討すること。
<ボノプラザンフマル酸塩>
9.6.1 動物試験(ラット)で母乳中へ移行することが報告されている。
<アモキシシリン水和物>
9.6.2 外国人データで母乳中へ移行することが報告されている1)
<クラリスロマイシン>
9.6.3 ヒト母乳中へ移行することが報告されており、また、動物試験(ラット)の乳汁中濃度は、血中濃度の約2.5倍で推移した。
9.7 小児等
小児等を対象とした臨床試験は実施していない。
9.8 高齢者
一般に肝機能、腎機能等の生理機能が低下している。アモキシシリン水和物による副作用が発現しやすく、クラリスロマイシンの高い血中濃度が持続するおそれがある。また、アモキシシリン水和物によるビタミンK欠乏による出血傾向があらわれることがある。[16.6.3参照]

10. 相互作用

相互作用序文
<ボノプラザンフマル酸塩>
主として肝薬物代謝酵素CYP3A4で代謝され、一部CYP2B6、CYP2C19及びCYP2D6で代謝される。また、ボノプラザンは弱いCYP3A4阻害作用を有する。
ボノプラザンの胃酸分泌抑制作用により、併用薬剤の吸収を促進又は抑制する可能性がある。
<クラリスロマイシン>
主としてCYP3Aにより代謝され2)、CYP3A、P-糖蛋白質(P-gp)を阻害する3)
薬物代謝酵素用語
CYP3A4
薬物代謝酵素用語
CYP2B6
薬物代謝酵素用語
CYP2C19
薬物代謝酵素用語
CYP2D6
薬物代謝酵素用語
CYP3A
薬物代謝酵素用語
P-糖蛋白質(P-gp)
10.1 併用禁忌
<ボノプラザンフマル酸塩>
アタザナビル硫酸塩(レイアタッツ)
2.2参照]
アタザナビル硫酸塩の作用を減弱するおそれがある。ボノプラザンの胃酸分泌抑制作用によりアタザナビル硫酸塩の溶解性が低下し、アタザナビルの血中濃度が低下する可能性がある。
リルピビリン塩酸塩(エジュラント)
2.2参照]
リルピビリン塩酸塩の作用を減弱するおそれがある。ボノプラザンの胃酸分泌抑制作用によりリルピビリン塩酸塩の吸収が低下し、リルピビリンの血中濃度が低下する可能性がある。
<クラリスロマイシン>
ピモジド4)
〔オーラップ〕
2.2参照]
QT延長、心室性不整脈(Torsade de pointesを含む)等の心血管系副作用が報告されている。クラリスロマイシンのCYP3Aに対する阻害作用により、左記薬剤の代謝が阻害され、それらの血中濃度が上昇する可能性がある。
エルゴタミン酒石酸塩・無水カフェイン・イソプロピルアンチピリン
〔クリアミン〕
ジヒドロエルゴタミンメシル酸塩
2.2参照]
血管攣縮等の重篤な副作用を起こすおそれがある。クラリスロマイシンのCYP3Aに対する阻害作用により、左記薬剤の代謝が阻害され、それらの血中濃度が上昇する可能性がある。
スボレキサント
〔ベルソムラ〕
2.2参照]
スボレキサントの血漿中濃度が顕著に上昇し、その作用が著しく増強するおそれがある。クラリスロマイシンのCYP3Aに対する阻害作用により、左記薬剤の代謝が阻害され、それらの血中濃度が上昇する可能性がある。
ロミタピドメシル酸塩
〔ジャクスタピッド〕
2.2参照]
ロミタピドの血中濃度が著しく上昇するおそれがある。クラリスロマイシンのCYP3Aに対する阻害作用により、左記薬剤の代謝が阻害され、それらの血中濃度が上昇する可能性がある。
タダラフィル
〔アドシルカ〕
2.2参照]
左記薬剤のクリアランスが高度に減少し、その作用が増強するおそれがある。クラリスロマイシンのCYP3Aに対する阻害作用により、左記薬剤の代謝が阻害され、それらの血中濃度が上昇する可能性がある。
チカグレロル
〔ブリリンタ〕
2.2参照]
チカグレロルの血漿中濃度が著しく上昇するおそれがある。クラリスロマイシンのCYP3Aに対する阻害作用により、左記薬剤の代謝が阻害され、それらの血中濃度が上昇する可能性がある。
イブルチニブ
〔イムブルビカ〕
2.2参照]
イブルチニブの作用が増強するおそれがある。クラリスロマイシンのCYP3Aに対する阻害作用により、左記薬剤の代謝が阻害され、それらの血中濃度が上昇する可能性がある。
イバブラジン塩酸塩
〔コララン〕
2.2参照]
過度の徐脈があらわれることがある。クラリスロマイシンのCYP3Aに対する阻害作用により、左記薬剤の代謝が阻害され、それらの血中濃度が上昇する可能性がある。
ベネトクラクス(再発又は難治性の慢性リンパ性白血病(小リンパ球性リンパ腫を含む)の用量漸増期)
〔ベネクレクスタ〕
2.2参照]
腫瘍崩壊症候群の発現が増強するおそれがある。クラリスロマイシンのCYP3Aに対する阻害作用により、左記薬剤の代謝が阻害され、それらの血中濃度が上昇する可能性がある。
ルラシドン塩酸塩
〔ラツーダ〕
2.2参照]
ルラシドンの血中濃度が上昇し、作用が増強するおそれがある。クラリスロマイシンのCYP3Aに対する阻害作用により、左記薬剤の代謝が阻害され、それらの血中濃度が上昇する可能性がある。
アナモレリン塩酸塩
〔エドルミズ〕
2.2参照]
アナモレリンの血中濃度が上昇し、副作用の発現が増強するおそれがある。クラリスロマイシンのCYP3Aに対する阻害作用により、左記薬剤の代謝が阻害され、それらの血中濃度が上昇する可能性がある。
フィネレノン
〔ケレンディア〕
2.2参照]
フィネレノンの血中濃度が著しく上昇するおそれがある。クラリスロマイシンのCYP3Aに対する阻害作用により、左記薬剤の代謝が阻害され、それらの血中濃度が上昇する可能性がある。
イサブコナゾニウム硫酸塩
〔クレセンバ〕
2.2参照]
イサブコナゾールの血中濃度が上昇し作用が増強するおそれがある。クラリスロマイシンのCYP3Aに対する阻害作用により、左記薬剤の代謝が阻害され、それらの血中濃度が上昇する可能性がある。
10.2 併用注意
<ボノプラザンフマル酸塩>
CYP3A4阻害剤
クラリスロマイシン等
16.7.1参照]
ボノプラザンの血中濃度が上昇する可能性がある。クラリスロマイシンとの併用によりボノプラザンの血中濃度が上昇したとの報告がある。
ジゴキシン
メチルジゴキシン
左記薬剤の作用を増強する可能性がある。ボノプラザンの胃酸分泌抑制作用によりジゴキシンの加水分解が抑制され、ジゴキシンの血中濃度が上昇する可能性がある。
イトラコナゾール
チロシンキナーゼ阻害剤
ゲフィチニブ
ニロチニブ
エルロチニブ
ネルフィナビルメシル酸塩
左記薬剤の作用を減弱する可能性がある。ボノプラザンの胃酸分泌抑制作用により左記薬剤の血中濃度が低下する可能性がある。
CYP3A4で代謝される薬剤
ミダゾラム等
16.7.2参照]
左記薬剤の作用を増強する可能性がある。ボノプラザンのCYP3A4に対する弱い阻害作用により、左記薬剤の代謝が阻害される。
強い又は中程度のCYP3A4誘導剤
リファンピシン
エファビレンツ等
16.7.3参照]
ボノプラザンの血中濃度が低下する可能性がある。左記薬剤のCYP3A4に対する誘導作用により、ボノプラザンの代謝が促進される可能性がある。
<アモキシシリン水和物>
ワルファリンカリウムワルファリンカリウムの作用が増強されるおそれがある。腸内細菌によるビタミンKの産生を抑制することがある。
経口避妊薬経口避妊薬の効果が減弱するおそれがある。腸内細菌叢を変化させ、経口避妊薬の腸肝循環による再吸収を抑制すると考えられている。
プロベネシドアモキシシリン水和物の血中濃度を増加させる。アモキシシリン水和物の尿細管分泌を阻害し、尿中排泄を低下させると考えられている。
<クラリスロマイシン>
ジゴキシン嘔気、嘔吐、不整脈等が報告されているので、ジゴキシンの血中濃度の推移、自覚症状、心電図等に注意し、異常が認められた場合には、投与量を調節する等の適切な処置を行うこと。クラリスロマイシンの腸内細菌叢に対する影響により、ジゴキシンの不活化が抑制されるか、もしくはP-gpを介したジゴキシンの輸送が阻害されることにより、その血中濃度が上昇する。
スルホニル尿素系血糖降下剤
グリベンクラミド
グリクラジド
グリメピリド等
低血糖(意識障害に至ることがある)が報告されているので、異常が認められた場合には、投与を中止し、ブドウ糖の投与等の適切な処置を行うこと。機序は不明である。左記薬剤の血中濃度が上昇する可能性がある。
カルバマゼピン
テオフィリン5)6)
アミノフィリン水和物
シクロスポリン
タクロリムス水和物
エベロリムス
左記薬剤の血中濃度上昇に伴う作用の増強等の可能性があるので、左記薬剤の血中濃度の推移等に注意し、異常が認められた場合には、投与量の調節や中止等の適切な処置を行うこと。クラリスロマイシンのCYP3Aに対する阻害作用により、左記薬剤の代謝が阻害される。
アトルバスタチンカルシウム水和物7)
シンバスタチン7)
ロバスタチン(国内未承認)
左記薬剤の血中濃度上昇に伴う横紋筋融解症が報告されているので、異常が認められた場合には、投与量の調節や中止等の適切な処置を行うこと。
腎機能障害のある患者には特に注意すること。
クラリスロマイシンのCYP3Aに対する阻害作用により、左記薬剤の代謝が阻害される。
コルヒチン
2.39.2.19.3.1参照]
コルヒチンの血中濃度上昇に伴う中毒症状(汎血球減少、肝機能障害、筋肉痛、腹痛、嘔吐、下痢、発熱等)が報告されているので、異常が認められた場合には、投与量の調節や中止等の適切な処置を行うこと。クラリスロマイシンのCYP3Aに対する阻害作用により、左記薬剤の代謝が阻害される。
ベンゾジアゼピン系薬剤
CYP3Aで代謝される薬剤
トリアゾラム8)、ミダゾラム9)
非定型抗精神病薬
CYP3Aで代謝される薬剤
クエチアピンフマル酸塩
アリピプラゾール
ブロナンセリン等
ジソピラミド
トルバプタン
エプレレノン
エレトリプタン臭化水素酸塩
カルシウム拮抗剤
CYP3Aで代謝される薬剤
ニフェジピン、ベラパミル塩酸塩等
リオシグアト
ジエノゲスト
ホスホジエステラーゼ5阻害剤
シルデナフィルクエン酸塩10)、タダラフィル〔シアリス、ザルティア〕等
クマリン系抗凝血剤
ワルファリンカリウム等
ドセタキセル水和物
アベマシクリブ11)
オキシコドン塩酸塩水和物12)
フェンタニル/フェンタニルクエン酸塩
左記薬剤の血中濃度上昇に伴う作用の増強等の可能性があるので、異常が認められた場合には、投与量の調節や中止等の適切な処置を行うこと。
なお、トルバプタンにおいては、クラリスロマイシンとの併用は避けることが望ましいとされており、やむを得ず併用する場合においては、トルバプタンの用量調節を特に考慮すること。
クラリスロマイシンのCYP3Aに対する阻害作用により、左記薬剤の代謝が阻害される。
ベネトクラクス(再発又は難治性の慢性リンパ性白血病(小リンパ球性リンパ腫を含む)の維持投与期、急性骨髄性白血病)ベネトクラクスの副作用が増強するおそれがあるので、ベネトクラクスを減量するとともに、患者の状態を慎重に観察すること。クラリスロマイシンのCYP3Aに対する阻害作用により、左記薬剤の代謝が阻害される。
抗凝固剤
CYP3Aで代謝され、P-gpで排出される薬剤
アピキサバン、リバーロキサバン
左記薬剤の血中濃度上昇に伴う作用の増強等の可能性があるので、異常が認められた場合には、投与量の調節や中止等の適切な処置を行うこと。クラリスロマイシンのCYP3A及びP-gpに対する阻害作用により、左記薬剤の代謝及び排出が阻害される。
抗凝固剤
P-gpで排出される薬剤
ダビガトランエテキシラート、エドキサバントシル酸塩水和物
左記薬剤の血中濃度上昇に伴う作用の増強等の可能性があるので、異常が認められた場合には、投与量の調節や中止等の適切な処置を行うこと。クラリスロマイシンのP-gpに対する阻害作用により、左記薬剤の排出が阻害される。
イトラコナゾール13)
HIVプロテアーゼ阻害剤
リトナビル14)
ロピナビル・リトナビル
ダルナビル エタノール付加物等
クラリスロマイシンの未変化体の血中濃度上昇による作用の増強等の可能性がある。
また、イトラコナゾールの併用においては、イトラコナゾールの血中濃度上昇に伴う作用の増強等の可能性がある。異常が認められた場合には、投与量の調節や中止等の適切な処置を行うこと。
クラリスロマイシンと左記薬剤のCYP3Aに対する阻害作用により、相互に代謝が阻害される。
リファブチン15)
エトラビリン16)
左記薬剤の血中濃度上昇に伴う作用の増強等の可能性がある。
また、クラリスロマイシンの未変化体の血中濃度が低下し、活性代謝物の血中濃度が上昇し、クラリスロマイシンの作用が減弱する可能性がある。
異常が認められた場合には、投与量の調節や中止等の適切な処置を行うこと。
クラリスロマイシンのCYP3Aに対する阻害作用により、左記薬剤の代謝が阻害される。また、左記薬剤のCYP3A4に対する誘導作用により、クラリスロマイシンの代謝が促進される。
リファンピシン17)
エファビレンツ
ネビラピン
クラリスロマイシンの未変化体の血中濃度が低下し、活性代謝物の血中濃度が上昇する可能性がある。クラリスロマイシンの作用が減弱する可能性があるので、投与量の調節や中止等の適切な処置を行うこと。左記薬剤のCYP3A4に対する誘導作用により、クラリスロマイシンの代謝が促進される。
天然ケイ酸アルミニウム18)クラリスロマイシンの吸収が低下するとの報告がある。左記薬剤の吸着作用によるものと考えられる。

11. 副作用

11.1 重大な副作用
次の副作用があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止するなど適切な処置を行うこと。
<ボノプラザンフマル酸塩>
11.1.1 ショック、アナフィラキシー(いずれも頻度不明)
11.1.2 汎血球減少、無顆粒球症、白血球減少、血小板減少(いずれも頻度不明)
11.1.3 肝機能障害(頻度不明)
11.1.4 中毒性表皮壊死融解症(Toxic Epidermal Necrolysis:TEN)、皮膚粘膜眼症候群(Stevens-Johnson症候群)、多形紅斑(いずれも頻度不明)
<アモキシシリン水和物>
11.1.5 ショック、アナフィラキシー(いずれも0.1%未満注1)
不快感、口内異常感、眩暈、便意、耳鳴、発汗、喘鳴、呼吸困難、血管浮腫、全身の潮紅・じん麻疹等の異常が認められた場合には投与を中止し、適切な処置を行うこと。[8.2参照]
11.1.6 アレルギー反応に伴う急性冠症候群(頻度不明)[8.2参照]
11.1.7 薬剤により誘発される胃腸炎症候群(頻度不明)
投与から数時間以内の反復性嘔吐を主症状とし、下痢、嗜眠、顔面蒼白、低血圧、腹痛、好中球増加等を伴う、食物蛋白誘発性胃腸炎に類似したアレルギー性の胃腸炎(Drug-induced enterocolitis syndrome)があらわれることがある。主に小児で報告されている。[8.2参照]
11.1.8 中毒性表皮壊死融解症(Toxic Epidermal Necrolysis:TEN)、皮膚粘膜眼症候群(Stevens-Johnson症候群)(いずれも0.1%未満注1)、多形紅斑、急性汎発性発疹性膿疱症、紅皮症(剥脱性皮膚炎)(いずれも頻度不明)
発熱、頭痛、関節痛、皮膚や粘膜の紅斑・水疱、膿疱、皮膚の緊張感・灼熱感・疼痛等の異常が認められた場合には投与を中止し、適切な処置を行うこと。
11.1.9 急性腎障害等の重篤な腎障害(0.1%未満注1))[8.3参照]
11.1.10 顆粒球減少(0.1%未満注1)、血小板減少(頻度不明)[8.4参照]
11.1.11 偽膜性大腸炎等の血便を伴う重篤な大腸炎(0.1%未満注1)
腹痛、頻回の下痢があらわれた場合には直ちに投与を中止するなど適切な処置を行うこと。
11.1.12 肝機能障害、黄疸(いずれも0.1%未満)
AST、ALTの上昇等を伴う肝機能障害、黄疸があらわれることがある。
11.1.13 間質性肺炎、好酸球性肺炎(いずれも頻度不明)
咳嗽、呼吸困難、発熱等が認められた場合には、速やかに胸部X線、胸部CT等の検査を実施すること。間質性肺炎、好酸球性肺炎が疑われた場合には投与を中止し、副腎皮質ホルモン剤の投与等の適切な処置を行うこと。
11.1.14 無菌性髄膜炎(頻度不明)
項部硬直、発熱、頭痛、悪心・嘔吐あるいは意識混濁等を伴う無菌性髄膜炎があらわれることがある。
注1)発現頻度はアモキシシリン水和物の承認時までの臨床試験又は製造販売後調査の結果に基づく。
<クラリスロマイシン>
11.1.15 ショック、アナフィラキシー(いずれも頻度不明)
呼吸困難、痙攣、発赤等があらわれることがある。
11.1.16 QT延長、心室頻拍(Torsade de pointesを含む)、心室細動(いずれも頻度不明)
QT延長等の心疾患のある患者、低カリウム血症のある患者においては特に注意すること。[9.1.5参照]
11.1.17 劇症肝炎、肝機能障害、黄疸、肝不全(いずれも頻度不明)
劇症肝炎、AST、ALT、γ-GTP、LDH、AL-Pの上昇等を伴う肝機能障害、黄疸、肝不全があらわれることがある。[9.3参照]
11.1.18 血小板減少、汎血球減少、溶血性貧血、白血球減少、無顆粒球症(いずれも頻度不明)[8.5参照]
11.1.19 中毒性表皮壊死融解症(Toxic Epidermal Necrolysis:TEN)、皮膚粘膜眼症候群(Stevens-Johnson症候群)、多形紅斑(いずれも頻度不明)
異常が認められた場合には、投与を中止し、副腎皮質ホルモン剤の投与等の適切な処置を行うこと。
11.1.20 PIE症候群・間質性肺炎(いずれも頻度不明)
発熱、咳嗽、呼吸困難、胸部X線異常、好酸球増多等があらわれることがある。このような症状があらわれた場合には、投与を中止し、副腎皮質ホルモン剤の投与等の適切な処置を行うこと。
11.1.21 偽膜性大腸炎、出血性大腸炎(いずれも頻度不明)
偽膜性大腸炎、出血性大腸炎等の重篤な大腸炎があらわれることがある。腹痛、頻回の下痢があらわれた場合には、投与を中止し、適切な処置を行うこと。
11.1.22 横紋筋融解症(頻度不明)
筋肉痛、脱力感、CK上昇、血中及び尿中ミオグロビン上昇があらわれることがある。横紋筋融解症による急性腎障害の発症に注意すること。
11.1.23 痙攣(頻度不明)
痙攣(強直間代性、ミオクロヌス、意識消失発作等)があらわれることがある。
11.1.24 急性腎障害、尿細管間質性腎炎(いずれも頻度不明)
乏尿等の症状や血中クレアチニン値上昇等の腎機能低下所見が認められた場合には、投与を中止し、適切な処置を行うこと。
11.1.25 IgA血管炎(頻度不明)
11.1.26 薬剤性過敏症症候群19)(頻度不明)
初期症状として発疹、発熱がみられ、さらに肝機能障害、リンパ節腫脹、白血球増加、好酸球増多、異型リンパ球出現等を伴う遅発性の重篤な過敏症状があらわれることがある。投与中止後も発疹、発熱、肝機能障害等の症状が再燃あるいは遷延化することがあるので注意すること。
11.2 その他の副作用
次の副作用があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止するなど適切な処置を行うこと。
<胃潰瘍又は十二指腸潰瘍におけるヘリコバクター・ピロリ感染症>
 5%以上0.1〜5%未満
消化器下痢(10.6%)味覚異常、口内炎、腹部不快感、腹部膨満感
過敏症 発疹
肝臓 AST、ALTの上昇
次の副作用があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止するなど適切な処置を行うこと。
ボノプラザンフマル酸塩、アモキシシリン水和物及びクラリスロマイシンでは、他にもそれぞれに次の副作用が認められている。
<ボノプラザンフマル酸塩>
 0.1〜5%未満
消化器便秘、下痢、腹部膨満感、悪心
過敏症発疹
肝臓AST、ALT、AL-P、LDH、γ-GTPの上昇
その他浮腫、好酸球増多
次の副作用があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止するなど適切な処置を行うこと。
ボノプラザンフマル酸塩、アモキシシリン水和物及びクラリスロマイシンでは、他にもそれぞれに次の副作用が認められている。
<アモキシシリン水和物>
 0.1〜5%未満注2)0.1%未満注2)頻度不明注2)
過敏症発熱、発疹、じん麻疹 そう痒
血液 好酸球増多、貧血 
肝臓 AST、ALTの上昇 
消化器下痢、悪心、食欲不振 黒毛舌
菌交代症 口内炎、大腸炎(カンジダ、非感受性のクレブシエラ等による) 
ビタミン欠乏症 ビタミンK欠乏症状(低プロトロンビン血症、出血傾向等)、ビタミンB群欠乏症状(舌炎、口内炎、食欲不振、神経炎等) 
その他  梅毒患者の場合:ヤーリッシュ・ヘルクスハイマー反応(発熱、全身倦怠感、頭痛等の発現、病変部の悪化)
次の副作用があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止するなど適切な処置を行うこと。
ボノプラザンフマル酸塩、アモキシシリン水和物及びクラリスロマイシンでは、他にもそれぞれに次の副作用が認められている。
<クラリスロマイシン>
 0.1〜5%未満0.1%未満頻度不明
過敏症発疹そう痒感 
精神神経系 めまい、頭痛幻覚、失見当識、意識障害、せん妄、躁病、眠気、振戦、しびれ(感)、錯感覚、不眠
感覚器 味覚異常(にがみ等)耳鳴、聴力低下、嗅覚異常
消化器悪心、嘔吐、胃部不快感、腹部膨満感、腹痛、下痢食欲不振、軟便、口内炎、舌炎、口渇口腔内びらん、胸やけ、歯牙変色、舌変色
血液好酸球増多  
肝臓AST、ALT、γ-GTP、LDH、AL-P上昇  
筋・骨格  筋肉痛
その他 倦怠感、浮腫、カンジダ症、発熱動悸、CK上昇、脱毛、頻尿、低血糖

12. 臨床検査結果に及ぼす影響

12.1 ヘリコバクター・ピロリの除菌判定上の注意
アモキシシリン水和物やクラリスロマイシン等の抗生物質の服用中や投与終了直後では、13C-尿素呼気試験の判定結果が偽陰性になる可能性があるため、13C-尿素呼気試験による除菌判定を行う場合には、これらの薬剤の投与終了後4週以降の時点で実施することが望ましい。

14. 適用上の注意

14.1 薬剤交付時の注意
PTP包装の薬剤はPTPシートから取り出して服用するよう指導すること。PTPシートの誤飲により、硬い鋭角部が食道粘膜へ刺入し、更には穿孔をおこして縦隔洞炎等の重篤な合併症を併発することがある。

15. その他の注意

15.1 臨床使用に基づく情報
<ボノプラザンフマル酸塩>
15.1.1 ボノプラザンの投与が胃癌による症状を隠蔽することがあるので、悪性でないことを確認のうえ投与すること。
15.1.2 海外における複数の観察研究で、プロトンポンプインヒビターによる治療において骨粗鬆症に伴う股関節骨折、手関節骨折、脊椎骨折のリスク増加が報告されている。特に、高用量及び長期間(1年以上)の治療を受けた患者で、骨折のリスクが増加した。
15.1.3 海外における主に入院患者を対象とした複数の観察研究で、プロトンポンプインヒビターを投与した患者においてクロストリジウム・ディフィシルによる胃腸感染のリスク増加が報告されている。
15.2 非臨床試験に基づく情報
<ボノプラザンフマル酸塩>
15.2.1 マウス及びラット2年間経口投与がん原性試験において、20mg/日でのヒトにおけるボノプラザンの曝露量(AUC)と等倍程度の曝露量で胃の神経内分泌腫瘍が、約300倍で胃の腺腫(マウス)が、また、約13倍以上(マウス)及び約58倍以上(ラット)で肝臓腫瘍が認められている。
<アモキシシリン水和物、クラリスロマイシン>
15.2.2 ラットにアモキシシリン水和物(2,000mg/kg/日)、ランソプラゾール(15mg/kg/日以上)を4週間併用経口投与した試験、及びイヌにアモキシシリン水和物(500mg/kg/日)、ランソプラゾール(100mg/kg/日)、クラリスロマイシン(25mg/kg/日)を4週間併用経口投与した試験で、アモキシシリン水和物を単独あるいは併用投与した動物に結晶尿が認められているが、結晶はアモキシシリン水和物が排尿後に析出したものであり、体内で析出したものではないことが確認されている。

16. 薬物動態

16.1 血中濃度
16.1.1 ボノプラザン、アモキシシリン水和物及びクラリスロマイシン併用時
健康成人男子を対象にボノプラザンとして20mg、アモキシシリン水和物として750mg(力価)及びクラリスロマイシンとして400mg(力価)を1日2回朝食後及び夕食後に7日間投与(投与最終日は朝食後1回)した時、投与7日目の薬物動態学的パラメータは下表のとおりである20)
ボノプラザン未変化体
Cmax(ng/mL)Tmax(h)AUC0-12(ng・h/mL)T1/2(h)
70.2±17.33.0(1.0,4.0)538.8±134.19.8±1.8
アモキシシリン未変化体
Cmax(μg/mL)Tmax(h)AUC0-12(μg・h/mL)T1/2(h)
10.1±2.33.0(2.0,4.0)34.9±5.71.3±0.1
クラリスロマイシン
 Cmax(μg/mL)Tmax(h)AUC0-12(μg・h/mL)T1/2(h)
未変化体2.9±0.92.0(1.0,6.0)18.3±4.94.6±0.5
代謝物0.9±0.22.0(1.0,4.0)7.5±0.18.0±1.2
16.6 特定の背景を有する患者
16.6.1 腎機能障害患者
(1)ボノプラザン単独投与時
腎機能正常者(eGFR:90mL/min/1.73m2以上)、軽度(eGFR:60〜89mL/min/1.73m2)、中等度(eGFR:30〜59mL/min/1.73m2)及び高度腎機能障害者(eGFR:15〜29mL/min/1.73m2)、並びに末期腎不全(ESRD)(eGFR:15mL/min/1.73m2未満)患者を対象にボノプラザンの薬物動態に及ぼす腎機能障害の影響を検討した臨床試験において、ボノプラザンのAUC(0-inf)及びCmaxは、軽度、中等度及び高度腎機能障害者では腎機能正常者と比較してそれぞれ1.3〜2.4倍及び1.2〜1.8倍高く、腎機能の低下に伴い増加し、また、ESRD患者におけるAUC(0-inf)及びCmaxは、腎機能正常者と比較してそれぞれ1.3倍及び1.2倍高かった21)(外国人データ)。[9.2参照]
(2)クラリスロマイシン単独投与時
腎機能正常者と種々な程度の腎機能障害者に200mg(力価)を空腹時単回経口投与したときのクラリスロマイシン(未変化体)の血中濃度パラメータは下表のとおりであった22)(測定法:Bioassay)。[9.2参照]
クレアチニンクリアランス(mL/min)Cmax(μg/mL)Tmax(h)T1/2(h)AUC(μg・h/mL)
Ccr≒100(n=5)2.021.242.388.89
Ccr≒50(n=5)2.151.895.7421.69
Ccr≒30(n=5)2.550.964.6918.73
Ccr≒5(n=5)3.541.486.1336.89
16.6.2 肝機能障害患者
(1)ボノプラザン単独投与時
肝機能正常者、並びに軽度(Child-Pugh分類スコアA)、中等度(Child-Pugh分類スコアB)及び高度肝機能障害者(Child-Pugh分類スコアC)を対象にボノプラザンの薬物動態に及ぼす肝機能障害の影響を検討した臨床試験において、ボノプラザンのAUC(0-inf)及びCmaxは、軽度、中等度及び高度肝機能障害のある患者では肝機能正常者と比較してそれぞれ1.2〜2.6倍及び1.2〜1.8倍高かった23)(外国人データ)。[9.3参照]
16.6.3 高齢者
(1)クラリスロマイシン単独投与時
重篤な基礎疾患のない66〜82歳(平均72.2歳)の女性3名に200mg(力価)を空腹時単回経口投与したときのクラリスロマイシン(未変化体)の血中濃度パラメータは下表のとおりであった24)(測定法:Bioassay)。[9.8参照]
 Cmax(μg/mL)Tmax(h)T1/2(h)AUC(μg・h/mL)
n=33.722.34.219.20
16.7 薬物相互作用
16.7.1 ボノプラザン、クラリスロマイシン併用時の薬物動態
外国健康成人男子を対象に1日目及び8日目にボノプラザンとして40mgを朝食30分後に単回投与し、3〜9日目にクラリスロマイシンとして500mg(力価)を1日2回、朝夕食30分前に反復投与したとき、ボノプラザンのAUC(0-inf)及びCmaxは、単独投与時と比較してクラリスロマイシンとの併用投与時に1.6倍及び1.4倍増加した25)。[10.2参照]
16.7.2 ボノプラザン、ミダゾラム併用時の薬物動態
外国健康成人を対象に1日目及び9日目にミダゾラム2mgを単回経口投与し、2〜10日目にボノプラザンとして20mgを1日2回反復経口投与した試験の結果、ミダゾラムのAUC(0-inf)及びCmaxは、単独投与時と比較してボノプラザンとの併用時にいずれも1.9倍増加する26)。[10.2参照]
16.7.3 生理学的薬物速度論モデルによるシミュレーション(リファンピシン、エファビレンツ)
ボノプラザンとして10、20、40mgを単回投与又は10mgを1日1回、20mgを1日1回若しくは2回、7日間反復経口投与し、リファンピシン600mgを1日1回併用投与したときで、ボノプラザンのAUCtauは78〜81%低下、Cmaxは71%又は72%低下することが推定された。
ボノプラザンとして10、20、40mgを単回投与又は10mgを1日1回、20mgを1日1回若しくは2回、7日間反復経口投与し、エファビレンツ600mgを1日1回併用投与したときで、ボノプラザンのAUCtauは54%低下、Cmaxは44〜46%低下することが推定された27)。[10.2参照]

17. 臨床成績

17.1 有効性及び安全性に関する試験
17.1.1 胃潰瘍又は十二指腸潰瘍におけるヘリコバクター・ピロリ感染
(1)国内第III相試験(二重盲検比較試験)
ヘリコバクター・ピロリ陽性の胃潰瘍又は十二指腸潰瘍瘢痕患者を対象に、ボノプラザン20mg又はランソプラゾール30mg、アモキシシリン水和物及びクラリスロマイシンの3剤を1日2回7日間経口投与した二重盲検比較試験における除菌率は下表のとおりであり、ランソプラゾールを用いた3剤併用療法群に対するボノプラザンを用いた3剤併用療法群の非劣性が認められた28)
ヘリコバクター・ピロリ一次除菌注1)
各薬剤の1回投与量除菌率群間差
ボノプラザン20mg
アモキシシリン水和物750mg(力価)
クラリスロマイシン200mg(力価)又は400mg(力価)
92.6%
(300/324例)
16.7%
[11.172%,22.138%]注2)
p<0.0001注3)
ランソプラゾール30mg
アモキシシリン水和物750mg(力価)
クラリスロマイシン200mg(力価)又は400mg(力価)
75.9%
(243/320例)
副作用発現頻度は、ボノプラザン群では20.4%(67/329例)であった。主な副作用は、下痢(35例)及び味覚異常(13例)であった。

18. 薬効薬理

18.1 作用機序
アモキシシリン水和物は細菌の細胞壁合成を阻害することにより効果を発揮し、また、クラリスロマイシンは細菌の70Sリボソームの50Sサブユニットと結合し蛋白合成を阻害することにより効果を発揮する29)30)
ボノプラザンは酸による活性化を必要とせず、可逆的でカリウムイオンに競合的な様式でH,K-ATPaseを阻害する。ボノプラザンは塩基性が強く胃壁細胞の酸生成部位に長時間残存して胃酸生成を抑制する。ボノプラザンは抗ヘリコバクター・ピロリ活性及びヘリコバクター・ピロリウレアーゼ阻害活性は示さない31)。アモキシシリン水和物及びクラリスロマイシンとの3剤療法におけるボノプラザンの役割は胃内pHを上昇させることにより、アモキシシリン水和物及びクラリスロマイシンの抗菌活性を高めることにあると考えられる。
18.2 薬理作用
18.2.1 抗菌作用
(1)アモキシシリン水和物及びクラリスロマイシンはヘリコバクター・ピロリに対し殺菌的な抗菌作用を示す。
(2)クラリスロマイシンの抗菌力はpHの影響を受け、酸性では中性に比べて減弱する。一方、アモキシシリン水和物はクラリスロマイシンと比べてpHの影響は少ない。
(3)アモキシシリン水和物とクラリスロマイシンとの併用における抗菌力には、相乗又は相加作用が認められ、いずれの菌株においても拮抗作用は認められていない。

19. 有効成分に関する理化学的知見

19.1. ボノプラザンフマル酸塩

一般的名称 ボノプラザンフマル酸塩
一般的名称(欧名) Vonoprazan Fumarate
化学名 1-[5-(2-Fluorophenyl)-1-(pyridin-3-ylsulfonyl)-1H-pyrrol-3-yl]-N-methylmethanamine monofumarate
分子式 C17H16FN3O2S・C4H4O4
分子量 461.46
融点 194.8℃
物理化学的性状 ボノプラザンフマル酸塩は白色〜ほとんど白色の結晶又は結晶性の粉末である。ジメチルスルホキシドにやや溶けやすく、N,N-ジメチルアセトアミドにやや溶けにくく、メタノール及び水に溶けにくく、2-プロパノール及びアセトニトリルにほとんど溶けない。
理化学知見その他 19.1 ボノプラザンフマル酸塩
KEGG DRUG D10466

19.2. アモキシシリン水和物

一般的名称 アモキシシリン水和物
一般的名称(欧名) Amoxicillin Hydrate
略号 AMPC
化学名 (2S,5R,6R)-6-[(2R)-2-Amino-2-(4-hydroxyphenyl)acetylamino]-3,3-dimethyl-7-oxo-4-thia-1-azabicyclo[3.2.0]heptane-2-carboxylic acid trihydrate
分子式 C16H19N3O5S・3H2O
分子量 419.45
融点 約195℃(分解)
物理化学的性状 アモキシシリン水和物は、白色〜淡黄白色の結晶又は結晶性の粉末である。水又はメタノールに溶けにくく、エタノール(95)に極めて溶けにくい。
理化学知見その他 19.2 アモキシシリン水和物
KEGG DRUG D00229

19.3. クラリスロマイシン

一般的名称 クラリスロマイシン
一般的名称(欧名) Clarithromycin
略号 CAM
化学名 (2R,3S,4S,5R,6R,8R,10R,11R,12S,13R)-5-(3,4,6-Trideoxy-3-dimethylamino-β-D-xylo-hexopyranosyloxy)-3-(2,6-dideoxy-3-C-methyl-3-O-methyl-α-L-ribo-hexopyranosyloxy)-11,12-dihydroxy-6-methoxy-2,4,6,8,10,12-hexamethyl-9-oxopentadecan-13-olide
分子式 C38H69NO13
分子量 747.95
融点 220〜227℃
物理化学的性状 クラリスロマイシンは白色の結晶性の粉末で、味は苦い。アセトン又はクロロホルムにやや溶けやすく、メタノール、エタノール(95)又はジエチルエーテルに溶けにくく、水にほとんど溶けない。
理化学知見その他 19.3 クラリスロマイシン
KEGG DRUG D00276

20. 取扱い上の注意

アルミ袋を開封後も湿気を避けて保存すること。本品は高防湿性の内袋により品質保持をはかっている。

22. 包装

<ボノサップパック400>
PTP入り 7シート(1シート×7、乾燥剤入り)
<ボノサップパック800>
PTP入り 7シート(1シート×7、乾燥剤入り)

23. 主要文献

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24. 文献請求先及び問い合わせ先

文献請求先
武田薬品工業株式会社 くすり相談室
〒103-8668 東京都中央区日本橋本町二丁目1番1号
電話:フリーダイヤル 0120-566-587 受付時間 9:00〜17:30(土日祝日・弊社休業日を除く)
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製品情報問い合わせ先
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26. 製造販売業者等

26.1 製造販売元
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26.2 提携
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〒101-8535 東京都千代田区神田司町2-9

[ KEGG | KEGG DRUG | KEGG MEDICUS ] 2024/12/18 版