通常、成人には、透析終了直前にマキサカルシトールとして、1回2.5〜10μgを週3回、透析回路静脈側に注入(静注)する。なお、血清副甲状腺ホルモン(PTH)の改善効果が得られない場合は、高カルシウム血症の発現等に注意しながら、1回20μgを上限に慎重に漸増する。
7.1 初回は血清インタクト副甲状腺ホルモン(intact-PTH)が500pg/mL未満[あるいは血清高感度副甲状腺ホルモン(HS-PTH)が40,000pg/mL未満]では、本剤を1回5μg、血清intact-PTHが500pg/mL以上(あるいはHS-PTHが40,000pg/mL以上)では、1回10μgから開始する。
7.2 血清intact-PTHが150pg/mL以下に低下した場合は本剤の投与を中止する。[
8.2、
8.5参照]
8.1 本剤は従来の経口活性型ビタミンD剤により効果が十分に得られない症例に対して経口活性型ビタミンD剤から切り換えて投与すること。また、本剤により改善、維持された場合には、経口活性型ビタミンD剤への切り換えも考慮すること。
8.3 本剤は血清カルシウム上昇作用を有するので、本剤投与中、血清カルシウム値を定期的(少なくとも2週に1回)に測定し、血清カルシウム値が11.5mg/dL(5.75mEq/L)を超えないよう投与量を調節し、超えた場合には投与を中止(休薬)すること。
また、目安として血清カルシウム値が11.0mg/dLを超えたときには、さらに測定頻度を高くし(週に1回以上)、減量あるいは中止すること。投与の再開については、血清カルシウム値が11.0mg/dL(5.5mEq/L)未満に回復したことを確認した後に投与量を減じて行うことが望ましい。
低アルブミン血症(血清アルブミン量が4.0g/dL未満)の場合には補正値を指標に用いることが望ましい。[
8.2、
9.1.1、
10.2、
11.1.1参照]
補正カルシウム値算出方法
補正カルシウム値(mg/dL)=血清カルシウム値(mg/dL)−血清アルブミン値(g/dL)+4.0
8.4 慢性腎不全における二次性副甲状腺機能亢進症においては、しばしば高度の高リン血症を呈し、これが増悪因子のひとつとなることがあるので、定期的に血清無機リン値を測定し、そのコントロールを行うこと。[
8.2参照]
8.5 本剤の長期投与により血清カルシウム値の上昇頻度が高くなることが認められている。これは、本剤の効果により血清PTHの低下に伴って骨代謝が正常化しやすくなることによると考えられる。[
7.2、
8.2、
9.1.1、
10.2、
11.1.1参照]
9.1 合併症・既往歴等のある患者
9.2 腎機能障害患者
9.2.1 透析患者
本剤の投与に際しては心電図検査等の観察を十分に行うこと。心疾患の合併がみられることが多く、また、透析時には体外循環及び除水などによる心機能への影響が大きいことなどから、心電図異常を発現しやすい。[
15.1参照]
9.5 妊婦
妊婦又は妊娠している可能性のある女性には、治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与すること。[
16.3.2参照]
9.6 授乳婦
治療上の有益性及び母乳栄養の有益性を考慮し、授乳の継続又は中止を検討すること。周産期及び授乳期の静脈内投与試験(ラット)で、1.1μg/kg/日投与で出生児に体重増加抑制がみられた。また、分娩後哺乳中のラットに静脈内投与したとき、乳汁中への移行を示唆する報告がある。[
16.5.2参照]
9.7 小児等
9.8 高齢者
9.8.1 用量に注意すること。一般に生理機能が低下している。
9.8.2 本剤を65歳以上の高齢者に投与したとき、副作用発現による投与中止は、96例中12例(12.5%)であり、64歳以下の成人の場合は881例中83例(9.4%)であった。
11.1 重大な副作用
次の副作用があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止するなど適切な処置を行うこと。
11.1.1 高カルシウム血症(22.2%)
本剤には血清カルシウム上昇作用が認められるので、高カルシウム血症によることが考えられる臨床症状(そう痒感、いらいら感など)の出現に注意すること。[
8.2、
8.3、
8.5、
9.1.1、
10.2参照]
11.2 その他の副作用
次の副作用があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止するなど適切な処置を行うこと。
| 0.1%以上 | 0.1%未満 |
皮膚 | そう痒症、発疹 | 脱毛症 |
精神神経系 | いらいら感、不眠症、頭痛 | 不穏、興奮、焦躁感 |
消化器 | | 胃・腹部不快感、食欲不振 |
肝臓 | AST上昇 | ALT上昇 |
代謝異常 | CK上昇、血中リン増加、血中ミオグロビン上昇、LDH上昇、Al-P上昇 | 総蛋白減少、血中尿酸増加、血中アルミニウム上昇 |
呼吸器 | | 胸部X線異常 |
心・血管系 | 高血圧 | |
血液 | 白血球分画異常(リンパ球、好酸球等) | 白血球減少 |
その他 | 四肢不快感、倦怠感 | |
15.1 臨床使用に基づく情報
本剤の承認時までの臨床試験において投与された維持透析患者977例中、34例(3.5%)、38件に心電図異常が認められた。その主なものは左室肥大15件、I度AV Block、T波異常の各6件、心室性期外収縮、心房細動の各3件であった。[
9.2.1参照]
15.2 非臨床試験に基づく情報
がん原性について、ラット(F344/DuCrj)に週1回24カ月間静脈内投与した結果、副腎においてF344ラットに好発する良性の褐色細胞腫の発現頻度が増加した。ラットでは血清カルシウム値の上昇に伴って発生が増加すると考えられている。マウスでは週1回18カ月間投与で発がん性は認められなかった。
17.1 有効性及び安全性に関する試験
17.1.1 国内第II相試験
二次性副甲状腺機能亢進症を伴う慢性腎不全維持透析患者203例(プラセボ29例、マキサカルシトール5μg/回58例、10μg/回58例、15μg/回
注)58例)を対象とした後期第II相二重盲検比較試験(プラセボ、マキサカルシトール5、10及び15μg/回を週3回透析回路静脈側より投与)において、intact-PTHの低下及びPTH改善度を中心とする臨床効果、有用度で有意な用量相関性が認められた。また、10μg/回のintact-PTH抑制効果は5μg/回よりも優れ15μg/回と同等であったが、その血清カルシウム上昇作用は15μg/回より小さく5μg/回と類似していた。
注)本剤の初回投与量は、マキサカルシトールとして、1回5あるいは10μgである。
5μg/回の安全性評価対象例57例中14例(24.6%)に副作用が認められた。主な副作用は、高カルシウム血症8例(14.0%)、そうよう感4例(7.0%)等であった。
10μg/回の安全性評価対象例55例中32例(58.2%)に副作用が認められた。主な副作用は、高カルシウム血症30例(54.5%)、そうよう感4例(7.3%)等であった。
7)
17.1.2 国内第III相試験
慢性腎不全維持透析患者34例(プラセボ12例、マキサカルシトール5μg/回5例、10μg/回17例)を対象とした第III相二重盲検比較試験(プラセボ、マキサカルシトール5及び10μg/回を週3回透析回路静脈側より投与)において、PTH改善度、全般改善度、有用度でマキサカルシトール投与群はプラセボ投与群に比し有意に優れ、明らかな二次性副甲状腺機能亢進症改善効果が認められた。
5μg/回の安全性評価対象例5例では副作用は認められなかった。
10μg/回の安全性評価対象例17例中8例(47.1%)に副作用が認められた。主な副作用は、高カルシウム血症7例(31.8%)等であった。
8)
17.1.3 国内一般臨床試験
二次性副甲状腺機能亢進症を伴う慢性腎不全維持透析患者161例を対象としたマキサカルシトール26週間投与の長期投与試験において、血清カルシウム上昇に留意しながらマキサカルシトールを投与することで、PTH抑制の維持効果が持続することが示された。
安全性評価対象例160例中87例(54.4%)に副作用が認められた。主な副作用は、高カルシウム血症77例(48.1%)、CPK上昇13例(8.1%)、そうよう感9例(5.6%)等であった。
9)10)
17.3 その他
17.3.1 骨代謝への影響
臨床薬理試験での骨生検による骨組織形態計測において、骨代謝改善効果(異常な線維組織の減少及び高代謝回転骨の低下、是正)が示された。また、マキサカルシトール投与により、骨代謝回転を反映する骨代謝マーカーの改善が認められた。
7)11)12)
17.3.2 血清中intact-PTHとHS-PTHの相関
血清中intact-PTHと血清中HS-PTHが高い相関を示すことが報告されており、また、マキサカルシトールの臨床試験成績からもこれらの指標の関連が強いことが確認された。
13)14)
<マキサカルシトール静注透析用2.5μg「トーワ」>
<マキサカルシトール静注透析用5μg「トーワ」>
<マキサカルシトール静注透析用10μg「トーワ」>