2.1 本剤の成分あるいは他のビスホスホネート系薬剤に対し過敏症の既往歴のある患者
本剤の適用にあたっては、日本骨代謝学会の診断基準等を参考に、骨粗鬆症との診断が確定している患者を対象とすること。
通常、成人には4週に1回アレンドロン酸として900μgを30分以上かけて点滴静脈内投与する。
8.1 患者には、食事等から十分なカルシウムを摂取させること。[
11.1.2参照]
8.2 低カルシウム血症がある場合には、本剤投与前に低カルシウム血症を治療すること。また、ビタミンD欠乏症又はビタミンD代謝異常のようなミネラル代謝障害がある場合には、あらかじめ治療を行うこと。[
2.2、
11.1.2参照]
8.3 ビスホスホネート系薬剤による治療を受けている患者において、顎骨壊死・顎骨骨髄炎があらわれることがある。報告された症例の多くが抜歯等の顎骨に対する侵襲的な歯科処置や局所感染に関連して発現している。リスク因子としては、悪性腫瘍、化学療法、血管新生阻害薬、コルチコステロイド治療、放射線療法、口腔の不衛生、歯科処置の既往等が知られている。
本剤の投与開始前は口腔内の管理状態を確認し、必要に応じて、患者に対し適切な歯科検査を受け、侵襲的な歯科処置をできる限り済ませておくよう指導すること。本剤投与中に侵襲的な歯科処置が必要になった場合には本剤の休薬等を考慮すること。
また、口腔内を清潔に保つこと、定期的な歯科検査を受けること、歯科受診時に本剤の使用を歯科医師に告知して侵襲的な歯科処置はできる限り避けることなどを患者に十分説明し、異常が認められた場合には、直ちに歯科・口腔外科を受診するように指導すること。[
11.1.4参照]
8.4 ビスホスホネート系薬剤を使用している患者において、外耳道骨壊死が発現したとの報告がある。これらの報告では、耳の感染や外傷に関連して発現した症例も認められることから、外耳炎、耳漏、耳痛等の症状が続く場合には、耳鼻咽喉科を受診するよう指導すること。[
11.1.5参照]
8.5 ビスホスホネート系薬剤を長期使用している患者において、非外傷性又は軽微な外力による大腿骨転子下、近位大腿骨骨幹部、近位尺骨骨幹部等の非定型骨折が発現したとの報告がある。これらの報告では、完全骨折が起こる数週間から数ヵ月前に大腿部、鼠径部、前腕部等において前駆痛が認められている報告もあることから、このような症状が認められた場合には、X線検査等を行い、適切な処置を行うこと。また、両側性の骨折が生じる可能性があることから、片側で非定型骨折が起きた場合には、反対側の部位の症状等を確認し、X線検査を行うなど、慎重に観察すること。X線検査時には骨皮質の肥厚等、特徴的な画像所見がみられており、そのような場合には適切な処置を行うこと。[
11.1.6参照]
9.2 腎機能障害患者
9.2.1 重篤な腎機能障害のある患者
(1)重篤な腎機能障害のある患者を対象とした臨床試験は実施していない。[
16.6.1参照]
(2)国内の医療情報データベースを用いた疫学調査において、骨粗鬆症の治療にビスホスホネート系薬剤を使用した腎機能障害患者のうち、特に、高度な腎機能障害患者(eGFRが30mL/min/1.73m
2未満)で、腎機能が正常の患者と比較して低カルシウム血症(補正血清カルシウム値が8mg/dL未満)のリスクが増加したとの報告がある
1)。[
11.1.2参照]
9.4 生殖能を有する者
妊娠する可能性のある女性には、治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与すること。
ビスホスホネート系薬剤は骨基質に取り込まれた後に全身循環へ徐々に放出される。全身循環への放出量はビスホスホネート系薬剤の投与量・期間に相関する。ビスホスホネート系薬剤の中止から妊娠までの期間と危険性との関連は明らかではない。
9.5 妊婦
妊婦又は妊娠している可能性のある女性には、治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与すること。
9.6 授乳婦
治療上の有益性及び母乳栄養の有益性を考慮し、授乳の継続又は中止を検討すること。
動物実験(ラット)でアレンドロン酸が乳汁中に移行することが報告されている。
9.7 小児等
小児等の骨粗鬆症を対象とした臨床試験は実施していない。
11.1 重大な副作用
次の副作用があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止するなど適切な処置を行うこと。
副作用の頻度は35mg錠(35mg/週)の臨床試験及び特定使用成績調査の合計より算出した。
11.1.1 肝機能障害、黄疸(いずれも頻度不明)
AST、ALTの上昇を伴う肝機能障害、黄疸があらわれることがある。
11.1.2 低カルシウム血症(0.09%)
痙攣、テタニー、しびれ、失見当識、QT延長等を伴う低カルシウム血症があらわれることがある。異常が認められた場合にはカルシウム剤の点滴投与等を考慮すること。[2.2、8.1、8.2、9.2.1参照]
11.1.3 中毒性表皮壊死融解症(Toxic Epidermal Necrolysis:TEN)、皮膚粘膜眼症候群(Stevens-Johnson症候群)(いずれも頻度不明)
11.1.4 顎骨壊死・顎骨骨髄炎(0.03%)[
8.3参照]
11.1.5 外耳道骨壊死(頻度不明)[
8.4参照]
11.1.6 大腿骨転子下、近位大腿骨骨幹部、近位尺骨骨幹部等の非定型骨折(頻度不明)[
8.5参照]
11.2 その他の副作用
次の副作用があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止するなど適切な処置を行うこと。
副作用の頻度は35mg錠(35mg/週)の臨床試験及び特定使用成績調査の合計より算出した。
| 1〜5%未満 | 1%未満 | 頻度不明 |
消化器 | 胃痛・心窩部痛、胃不快感・胃重感・腹部不快感 | 腹痛、嘔吐、食欲不振、腹部膨満感、口内炎、胃酸逆流、咽喉頭痛、咽喉頭不快感、おくび、嘔気、便秘、下痢、胃炎、消化不良 | 鼓腸放屁、口内乾燥、嚥下困難、歯肉腫脹 |
皮膚・皮膚付属器 | | 発疹、かゆみ、脱毛、蕁麻疹 | 紅斑、湿疹 |
血液 | | | 貧血(赤血球数減少、ヘモグロビン低下等)、白血球数減少、血小板数減少 |
肝臓 | | 肝機能異常(AST上昇、ALT上昇、γ-GTP上昇等) | |
腎臓 | | BUN上昇 | 頻尿、排尿困難 |
中枢・末梢神経系 | | 浮動性めまい、頭痛 | 回転性めまい、知覚減退 |
筋・骨格系 | | 関節痛注)、背(部)痛注)、筋肉痛注)、骨痛注)、筋痙攣 | |
精神・神経系 | | | 不眠(症) |
電解質代謝 | | | 血清リン低下、血清カリウム上昇 |
眼 | | 眼症状(かすみ、異和感等)、強膜炎 | ぶどう膜炎、上強膜炎 |
その他 | | 胸痛、倦怠(感)、味覚倒錯、末梢性浮腫、顔面浮腫、動悸、脱力(感)、発熱、気分不良、ほてり(顔面紅潮、熱感等)、CK上昇、血圧上昇 | 血管浮腫、LDH上昇、総コレステロール値上昇、血清アルブミン低下、下肢痛 |
14.1 薬剤投与時の注意
14.1.1 本剤は点滴静脈内投与にのみ使用し、30分以上かけてゆっくり投与すること。
14.1.2 カルシウム又はマグネシウムイオンと結合して不溶性沈殿物を形成することがあるので、カルシウム又はマグネシウムを含有する点滴溶液とは混和しないこと。
16.1 血中濃度
16.1.1 閉経後の女性にアレンドロン酸として100、200、400、800、1,600及び2,000μgを含有する注射剤を30分間かけて単回持続点滴静脈内投与したとき、tmaxは持続投与終了時である投与開始後0.5時間であった。Cmax、AUCt、血中消失半減期の幾何平均値(CV%)は、以下のとおりであった
2)。
投与量(μg) | Cmax注1)(ng/mL) | AUCt注1)(ng・h/mL) | 血中消失半減期注1)(h) |
100 (n=7) | 8.89(8.3) | 8.53(8.9) | 0.650(3.6) |
200 (n=7) | 16.28(7.0) | 16.04(6.4) | 0.649(9.5) |
400 (n=7) | 35.32(13.4) | 34.62(12.4) | 0.632(5.9) |
800 (n=7) | 70.32(10.3) | 68.28(10.3) | 0.642(9.0) |
1,600 (n=7) | 141.18(8.0) | 137.69(6.0) | 0.645(5.6) |
2,000 (n=8) | 170.86(11.9) | 163.64(12.0) | 0.626(4.7) |
16.1.2 閉経後の女性に2パネル2期クロスオーバー法によるオープン試験にて、アレンドロン酸として200μgの単回点滴静脈内投与(n=23)及びアレンドロン酸として35mgの単回経口投与(n=24)を行ったとき、Cmaxの幾何平均値(CV%)はそれぞれ17.28(16.6)及び10.25(142.4)ng/mLであった。AUCtの幾何平均値(CV%)はそれぞれ16.35(15.8)及び16.29(149.7)ng・h/mLであり、AUCinfの幾何平均値(CV%)はそれぞれ18.59(14.6)及び26.59(126.1)ng・h/mLであった
3)。
16.4 代謝
アレンドロン酸ナトリウム水和物投与により、動物又はヒトで代謝物は認められていない。
16.5 排泄
16.5.1 閉経後の女性にアレンドロン酸として100、200、400、800、1,600及び2,000μgを含有する注射剤を、30分間かけて単回持続点滴静脈内投与したとき、投与開始から48時間まで(2,000μg群は投与開始から36時間まで)のアレンドロン酸の累積尿中排泄量の幾何平均値(CV%)は、以下のとおりであった。
投与量(μg) | 累積尿中排泄量注2)(μg) |
100 (n=8) | 46.19(17.6) |
200 (n=7) | 106.27(6.0) |
400 (n=8) | 186.27(17.5) |
800 (n=8) | 384.21(10.6) |
1,600 (n=8) | 855.10(7.6) |
2,000 (n=8) | 962.27(7.3) |
以上より累積尿中排泄量は、用量に依存して増加した。そのほとんどは投与後8時間までに排泄された
2)。
16.5.2 閉経後の女性に2パネル2期クロスオーバー法によるオープン試験にて、朝食30分前にアレンドロン酸として200μgの単回点滴静脈内投与(n=23)及びアレンドロン酸として35mgの単回経口投与(n=24)を行ったとき、投与開始時から48時間までの累積尿中排泄量の幾何平均値(CV%)はそれぞれ98.55(12.5)μg及び103.59(124.3)μgであった。累積尿中排泄率及び生物学的利用率は下記の結果が得られた
3)。
対象 | 尿中排泄率注3)(%) | 生物学的利用率注3)(%) |
静脈内投与 | 経口投与 |
閉経後女性 | 49.28(12.5) | 0.30(124.3) | 0.60(122.1) |
16.6 特定の背景を有する患者
16.6.1 腎機能障害患者
閉経後女性の腎機能正常者(n=7)及び軽度(n=8)・中等度(n=7)・高度(n=4)の腎機能低下患者にアレンドロン酸として900μgを含有する注射剤を単回投与したとき、各群の腎機能正常者に対するCmaxの幾何平均値の比率は、軽度群、中等度群、高度群でそれぞれ1.1、1.1、1.0であった。AUCtの幾何平均値の比率は、軽度群、中等度群、高度群でそれぞれ1.1、1.2、1.3であった。また、血中消失半減期の幾何平均値(CV%)は、腎機能正常者群、軽度群、中等度群、高度群でそれぞれ1.224(5.3)、1.381(7.2)、1.342(13.5)、1.692(6.8)hであった。また、投与開始から48時間までのアレンドロン酸の累積尿中排泄量の幾何平均値(CV%)は、正常者群、軽度群、中等度群、高度群でそれぞれ423.69(18.5)、445.73(17.2)、298.02(29.2)、154.47(25.8)μgであった。投与後48時間までの累積尿中排泄率の幾何平均値(CV%)は、正常者群、軽度群、中等度群、高度群でそれぞれ47.08(18.5)、49.53(17.2)、33.11(29.2)、17.15(25.9)%であった
4)。[
9.2.1参照]
(注)本剤の承認された用法及び用量は4週に1回アレンドロン酸として900μg点滴静脈内投与である。
20.1 製品の品質を保持するため、本品を包んでいる外袋は使用時まで開封しないこと。また、開封後は速やかに使用すること。
20.2 包装内に水滴が認められるものや内容液が着色又は混濁しているものは使用しないこと。
20.3 容器の液目盛りは、およその目安として使用すること。