2.1 本剤又はポルフィリンに対し過敏症の既往歴のある患者
2.2 ポルフィリン症の患者[症状を増悪させるおそれがある。]
炎症部位では偽陽性を生じることがあり、BCG又は抗がん剤の膀胱内投与や膀胱生検等により膀胱内に炎症が生じている場合があるため、本剤を用いた経尿道的膀胱腫瘍切除術(TURBT)施行の適否を慎重に判断すること。
通常、成人には、アミノレブリン酸塩酸塩として20mg/kgを、膀胱鏡挿入3時間前(範囲:2〜4時間前)に、水に溶解して経口投与する。
7.1 本剤投与後に体内で生成されたプロトポルフィリンIX(PPIX)は、400〜410nmの波長域を含む青色励起光により励起され、635nmをピークとする赤色蛍光を発する。
上記の青色励起光を発する光源装置を用いて膀胱内壁を照射し、膀胱鏡によりPPIXの赤色蛍光の有無を観察する。
7.2 PPIXの赤色蛍光は、青色励起光の照射により退色が生じ、偽陰性となる場合があるため、以下の点に留意して、本剤を用いたTURBT施行時の観察を行うこと。
・青色光源下による観察は白色光源下による観察と併用し、可能な限り短時間とすること。
・白色光源にも、赤色蛍光の退色の原因となるPPIXの励起波長が含まれている可能性があるため、本剤使用時には、必要以上の時間の曝露は避けること。
8.1 本剤投与後少なくとも48時間は、強い光(手術室の照明、直射日光又は明るい集中的な屋内光等)への眼及び皮膚の曝露を避け、照度500ルクス以下
注1の室内で過ごさせること。[
15.2.3参照]
注1:日本産業規格の照明基準総則(JIS Z 9110:2010)では、病院の照度について、病室100ルクス、食堂300ルクス、一般検査室・診察室・薬局500ルクスと規定している。
8.2 肝機能障害があらわれることがあるので、定期的に肝機能検査を行うなど、患者の状態を十分に観察すること。[
11.1.1、
15.2.1参照]
9.1 合併症・既往歴等のある患者
9.1.1 心血管系疾患のある患者
収縮期及び拡張期血圧、肺動脈圧並びに肺血管抵抗が低下するおそれがある。
9.2 腎機能障害患者
腎機能障害のある患者を対象とした有効性及び安全性を指標とした臨床試験は実施していない。
9.3 肝機能障害患者
肝機能障害のある患者を対象とした有効性及び安全性を指標とした臨床試験は実施していない。
9.5 妊婦
妊婦又は妊娠している女性には投与しないこと。妊娠ラットに投与した場合、胎児の発育遅延が、また、マウス、ラットの妊娠子宮及び胎児に直接光照射した場合、胎児毒性が生じるとの報告がある。[
2.3、
15.2.2参照]
9.6 授乳婦
診断上の有益性及び母乳栄養の有益性を考慮し、授乳の継続又は中止を検討すること。
9.7 小児等
小児等を対象とした有効性及び安全性を指標とした臨床試験は実施していない。
11.1 重大な副作用
次の副作用があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止するなど適切な処置を行うこと。
11.1.1 肝機能障害(19.4%)
AST(21.4%)、ALT(17.3%)、血中ビリルビン(11.2%)、γ-GTP(10.2%)、LDH(9.2%)、Al-P(2.0%)の増加等を伴う肝機能障害があらわれることがある。[
8.2、
15.2.1参照]
11.1.2 低血圧(1.0%)
手術後も、低血圧が遷延し、昇圧剤の持続投与が必要な症例が報告されている。
11.2 その他の副作用
次の副作用があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止するなど適切な処置を行うこと。
| 5%以上 | 0.1〜5%未満 | 頻度不明 |
一般・全身 | | | 悪寒、発熱 |
血液 | | | 貧血 |
精神・神経 | | 頭痛 | 脳浮腫、感覚鈍麻、片麻痺、失語症、痙攣、半盲 |
心・血管 | | 心室性不整脈 | 血栓塞栓症、深部静脈血栓症 |
呼吸器 | | | 呼吸不全 |
胃腸 | 嘔吐、悪心 | 腹痛 | 下痢 |
皮膚・皮下組織 | | 蕁麻疹 | 光線過敏性反応、光線性皮膚症、紅斑 |
筋骨格・結合組織障害 | | | 頚部痛 |
腎・尿路障害 | | | 血尿 |
臨床検査 | | アミラーゼ増加、好酸球数増加 | 白血球数増加、リンパ球数減少、血小板数減少 |
13.1 症状
外国の臨床試験で過量投与(38mg/kg)された1例において、術中に呼吸不全が報告されている。
14.1 薬剤調製時の注意
本剤1包に水50mLを加えて溶解後、24時間以内に使用する。24時間を過ぎた溶解液は廃棄する。
18.1 測定法
本剤による診断の原理は、本剤投与後に体内で代謝されて生成したPPIXが腫瘍組織に集積し、青色光線(400〜410nm)により励起されPPIXが赤色蛍光を発することを利用して、腫瘍組織を可視化することにある。
18.2 PPIXの腫瘍組織への蓄積
18.2.1 in vitroにおける悪性腫瘍細胞及び正常細胞を用いたアミノレブリン酸添加時のPPIX生成量は、正常細胞に比べて悪性腫瘍細胞では顕著に増加し、高い蓄積が認められている
5)。
18.2.2 膀胱への分布に関しては、アミノレブリン酸塩酸塩を経口又は静脈投与した正常ラットにおいてアミノレブリン酸とPPIXの膀胱への分布が確認されており
6)、担癌マウスでは、正常な膀胱よりも腫瘍組織においてPPIXが多く蓄積することが示されている
7)。
この作用機序として、腫瘍細胞では正常細胞に比べてPPIX生成までの酵素活性が高いこと及びPPIXからヘムを触媒する酵素活性が低いことから、腫瘍細胞では正常細胞に比べてより多くのPPIXが蓄積すると考えられている
8)9)。
医薬品リスク管理計画を策定の上、適切に実施すること。