頻回投与により眼圧下降作用が減弱する可能性があるので、1日1回を超えて投与しないこと
1)。
8.1 本剤の投与により、虹彩や眼瞼への色素沈着(メラニンの増加)による色調変化、あるいは眼周囲の多毛化があらわれることがある。これらは投与の継続によって徐々に進行し、投与中止により停止する。眼瞼色調変化及び眼周囲の多毛化については、投与中止後徐々に消失、あるいは軽減する可能性があるが、虹彩色調変化については投与中止後も消失しないことが報告されている
2)。混合色虹彩の患者では虹彩の色調変化は明確に認められるが、暗褐色の単色虹彩の患者(日本人に多い)においても変化が認められている。特に片眼投与の場合、左右眼で虹彩の色調に差が生じる可能性がある。これらの症状については、長期的な情報が十分に得られていないので、患者を定期的に診察し、十分観察すること。投与に際しては、これらの症状について患者に十分説明し、また、眼瞼色調変化、眼周囲の多毛化の予防あるいは軽減のため
3)、投与の際に液が眼瞼皮膚等についた場合には、よくふき取るか、洗顔するよう患者を指導すること。[
11.1.1、
14.1参照]
8.2 本剤投与中に角膜上皮障害(点状表層角膜炎、糸状角膜炎、角膜びらん)があらわれることがあるので、しみる、そう痒感、眼痛等の自覚症状が持続する場合には、直ちに受診するよう患者に十分指導すること。
8.3 本剤の点眼後、一時的に霧視があらわれることがあるため、症状が回復するまで機械類の操作や自動車等の運転には従事させないよう注意すること。
9.1 合併症・既往歴等のある患者
9.1.1 無水晶体眼又は眼内レンズ挿入眼の患者
のう胞様黄斑浮腫を含む黄斑浮腫、及びそれに伴う視力低下を起こすおそれがある。
9.1.2 眼内炎(虹彩炎、ぶどう膜炎)のある患者
9.1.3 閉塞隅角緑内障の患者
9.5 妊婦
妊婦又は妊娠している可能性のある女性には、治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与すること。動物実験では、妊娠ラットに10μg/kg/日(臨床用量※)の250倍)を静脈内投与した場合に、催奇形性が認められ、妊娠マウスに1μg/kg/日(臨床用量※)の25倍)を皮下投与、又は妊娠ラットに10μg/kg/日(臨床用量※)の250倍)を静脈内投与した場合に、着床後胚死亡率の増加及び胎児数の減少が認められた。また、妊娠ウサギに0.1μg/kg/日(臨床用量※)の2.5倍)を静脈内投与もしくは0.003%点眼液(体重当りの投与量として臨床用量※)の約10倍に相当)を投与した場合、全胚・胎児死亡が観察された。さらに、妊娠・授乳ラットに0.12μg/kg/日(臨床用量※)の3倍)以上の用量を妊娠7日目から授乳21日目に皮下投与した場合に、発育及び分化に対する影響(早期新生児の死亡率の増加、新生児の体重増加の抑制、又は眼瞼開裂の遅延等)が認められた。また、摘出ラット子宮を用いた実験では、日本人健康成人で認められた本剤の最高血漿中濃度(0.025ng/mL=0.05nmol/L)の約6倍以上の濃度(0.3nmol/L)で、用量依存的な子宮収縮作用が認められた。
※)本剤0.004%を体重50kgの患者に1回1滴(25μL)を両眼に投与したと仮定して算出された投与量(0.04μg/kg/日)との比較
9.6 授乳婦
治療上の有益性及び母乳栄養の有益性を考慮し、授乳の継続又は中止を検討すること。動物実験(ラット:皮下投与)で乳汁中へ移行することが報告されている。
9.7 小児等
9.8 高齢者
11.1 重大な副作用
次の副作用があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止するなど適切な処置を行うこと。
11.1.1 虹彩色素沈着(頻度不明)[
8.1参照]
11.2 その他の副作用
次の副作用があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止するなど適切な処置を行うこと。
| 5%以上 | 5%未満 | 頻度不明 |
眼 | 充血、眼そう痒症 | 眼周囲の多毛化、結膜炎、結膜濾胞、角膜びらん、角膜炎、ぶどう膜炎、虹彩炎、眼瞼炎、眼瞼そう痒症、眼瞼紅斑、眼瞼辺縁痂皮、眼瞼色素沈着、眼痛、眼の異物感、眼部不快感、眼乾燥、霧視、羞明、眼精疲労 | 睫毛の成長、睫毛剛毛化、睫毛乱生、睫毛変色、睫毛重生、睫毛色素過剰、前房内細胞析出、フレア、結膜浮腫、黄斑浮腫、アレルギー性結膜炎、虹彩毛様体炎、眼瞼溝深化注1)(上眼瞼がくぼむ、二重瞼になる等)、眼瞼浮腫、眼脂、眼刺激、流涙、視力障害、眼の異常感、白内障、結膜出血、視力低下、眼部単純ヘルペス |
精神神経系 | − | − | 頭痛、不安、めまい |
循環器 | − | − | 徐脈、低血圧、不整脈 |
呼吸器 | − | 鼻炎 | 咳嗽、喘息、呼吸困難、アレルギー性鼻炎 |
消化器 | − | − | 腹痛、悪心 |
皮膚 | − | − | 発疹 |
その他 | − | − | 過敏症、けん怠感、味覚異常、耳鳴り、筋骨格痛、前立腺特異性抗原増加、胸痛 |
16.1 血中濃度
16.1.1 反復投与
日本人及び外国人健康成人にトラボプロスト0.004%点眼液(ベンザルコニウム塩化物含有製剤)を両眼に反復点眼し、トラボプロスト遊離酸の血漿中濃度を測定したとき、多くは定量限界(10pg/mL)未満であった。定量限界以上であったものは、いずれも点眼後30分以内にCmaxに達し、平均Cmaxは日本人で15±6pg/mL、外国人で15±5pg/mLであり、薬物動態における差異は認められなかった。消失は速やかで、血漿中濃度は点眼1時間後には定量限界未満となった
5)6)7)。
16.4 代謝
トラボプロストはイソプロピルエステル型のプロドラッグであり、角膜通過の際にエステラーゼにより活性代謝物であるトラボプロスト遊離酸に加水分解される。
17.1 有効性及び安全性に関する試験
17.1.1 国内第II相試験
原発開放隅角緑内障又は高眼圧症患者を対象としたトラボプロスト点眼液(ベンザルコニウム塩化物含有製剤)の二重盲検による第II相用量反応試験(投与期間:14日間)において、眼圧下降値は、プラセボ群2.1mmHg(22例)、0.0001%群3.3mmHg(21例)、0.0015%群6.7mmHg(22例)、0.004%群7.4mmHg(21例)であり、有意な用量反応性が認められた。
眼圧下降値の用量反応曲線
副作用発現頻度は、トラボプロスト0.004%群で19.0%(4/21例)であった。主な副作用は、眼のそう痒感14.3%(3/21例)、眼脂、角膜炎、眼の充血、眼痛及びけん怠感が各4.8%(1/21例)であった
8)。
17.1.2 国内第III相長期投与試験
正常眼圧緑内障を含む原発開放隅角緑内障又は高眼圧症患者を対象としたトラボプロスト0.004%点眼液(ベンザルコニウム塩化物含有製剤)の第III相長期投与試験(投与期間:6ヵ月)において、 トラボプロスト0.004%群(70例)の眼圧下降値は4.8〜5.5mmHgであり、6ヵ月間を通して安定した眼圧下降効果が認められた。
眼圧下降値の推移
副作用発現頻度は、トラボプロスト0.004%群で51.4%(36/70例)であった。主な副作用は、眼の充血31.4%(22/70例)、皮膚変色(眼瞼色調変化)12.9%(9/70例)、毛髪障害(眼周囲の多毛化)7.1%(5/70例)及び虹彩色調変化4.3%(3/70例)であった
9)。
17.1.3 海外第III相試験(長期投与試験)
米国在住日本人原発開放隅角緑内障又は高眼圧症患者を対象としたトラボプロスト0.004%点眼液(ベンザルコニウム塩化物含有製剤)の第III相長期投与試験(投与期間:12ヵ月)において、トラボプロスト0.004%群(35例)の眼圧下降値は6.3〜7.7mmHgであり、12ヵ月間を通して安定した眼圧下降効果が認められた。
副作用発現頻度は、トラボプロスト0.004%群で30.6%(11/36例)であった。主な副作用は、眼の充血13.9%(5/36例)、眼のそう痒感及び眼の不快感が各8.3%(3/36例)であった
10)。
17.1.4 海外第III相試験(実薬対照試験)
原発開放隅角緑内障又は高眼圧症患者を対象とした、トラボプロスト0.004%点眼液(ベンザルコニウム塩化物含有製剤)のラタノプロスト0.005%点眼液及びチモロールマレイン酸塩0.5%点眼液との第III相二重盲検比較試験(投与期間:12ヵ月)において、トラボプロスト0.004%点眼液群(187例)の眼圧下降値は6.6〜8.0mmHgであった。眼圧値における比較においてチモロールマレイン酸塩0.5%点眼液群(187例)に対する優越性、並びにラタノプロスト0.005%点眼液群(188例)に対する非劣性が示された。
眼圧値(mmHg)の比較
投与群 | プール† |
8時 | 10時 | 16時 |
トラボプロスト0.004%群 | 平均 | 19.2 | 17.8 | 17.7 |
チモロールマレイン酸塩群 | 平均 | 20.1 | 19.2 | 19.1 |
ラタノプロスト群 | 平均 | 19.1 | 18.2 | 18.6 |
群間差 (0.004%群−チモロールマレイン酸塩群) | 平均 | −0.9 | −1.4 | −1.4 |
95%信頼区間 | −0.36〜−1.51 | −0.81〜−1.95 | −0.75〜−2.12 |
群間差 (0.004%群−ラタノプロスト群) | 平均 | 0.0 | −0.4 | −0.9 |
95%信頼区間 | 0.61〜−0.53 | 0.17〜−0.97 | −0.25〜−1.61 |
副作用発現頻度は、トラボプロスト0.004%点眼液群で56.0%(112/200例)であった。主な副作用は、眼の充血46.0%(92/200例)、眼の不快感7.0%(14/200例)、眼のそう痒感5.0%(10/200例)、眼痛4.5%(9/200例)、眼の異物感3.5%(7/200例)であった
11)12)。
17.1.5 海外第III相試験(併用療法試験)
原発開放隅角緑内障又は高眼圧症患者を対象とした、トラボプロスト0.004%点眼液(ベンザルコニウム塩化物含有製剤)のチモロールマレイン酸塩0.5%点眼液との併用療法によるプラセボとの第III相二重盲検比較試験(投与期間:6ヵ月)において、トラボプロスト0.004%点眼液とチモロールマレイン酸塩併用療法群(137例)はチモロールマレイン酸塩単独療法群(134例)に比べ有意な併用効果を示した。
眼圧値(mmHg)の比較
投与群 | プール† |
8時 | 10時 | 16時 |
トラボプロスト0.004%+チモロールマレイン酸塩群 | 平均 | 19.2 | 18.1 | 18.5 |
チモロールマレイン酸塩単独群 | 平均 | 23.8 | 22.9 | 22.8 |
群間差 (0.004%+チモロールマレイン酸塩群−チモロールマレイン酸塩単独群) | 平均 | −4.6 | −4.8 | −4.2 |
95%信頼区間 | −3.76〜−5.44 | −3.95〜−5.64 | −3.30〜−5.17 |
副作用発現頻度は、トラボプロスト0.004%点眼液とチモロールマレイン酸塩併用療法群で40.7%(59/145例)であった。主な副作用は、眼の充血33.8%(49/145例)、細胞(前房細胞の析出)4.1%(6/145例)、眼の乾燥、眼痛及び眼の不快感が各3.4%(5/145例)、羞明2.8%(4/145例)であった
13)14)。
17.1.6 海外第III相試験(生物学的同等性試験)
生物学的同等性の検証を目的に原発開放隅角緑内障又は高眼圧症患者を対象とした、トラボプロスト0.004%点眼液(ベンザルコニウム塩化物含有製剤)との第III相二重盲検比較試験(投与期間:3ヵ月)において、トラボプロスト0.004%点眼液(ベンザルコニウム塩化物非含有製剤)(322例)の眼圧下降値は7.4〜8.5mmHgであった。眼圧値の比較においてトラボプロスト点眼液(ベンザルコニウム塩化物含有製剤:339例)に対する同等性が示された。
眼圧値(mmHg)の比較
投与群 | プール† |
8時 | 10時 | 16時 |
BAC††非含有製剤 | 平均 | 18.7 | 17.7 | 17.3 |
BAC††含有製剤 | 平均 | 18.9 | 17.9 | 17.3 |
群間差 (BAC††非含有製剤−BAC††含有製剤) | 平均 | −0.2 | −0.1 | −0.0 |
95%信頼区間 | 0.3〜−0.6 | 0.3〜−0.6 | 0.4〜−0.4 |
副作用発現頻度は、ベンザルコニウム塩化物非含有製剤群で22.1%(76/344例)であった。主な副作用は、眼の充血6.1%(21/344例)、眼のそう痒感5.2%(18/344例)、眼の不快感3.8%(13/344例)、眼の異物感2.6%(9/344例)であった
15)16)。
17.3 その他
17.3.1 生物学的同等性試験
トラボプロスト点眼液0.004%「ニットー」又はトラバタンズ点眼液0.004%を、部分遮蔽、並行群間比較法により原発開放隅角緑内障又は高眼圧症患者の両眼に1回1滴1日1回4週間反復点眼し、眼圧値を測定した。得られたパラメータ(治療期4週10時におけるベースライン(トラボプロスト点眼液0.004%「ニットー」:22.09±2.13mmHg、トラバタンズ点眼液0.004%:21.86±2.25mmHg)からの眼圧変化量)について95%信頼区間法にて統計解析を行った結果、同等の許容域±1.5mmHgの範囲内であり、両剤の生物学的同等性が確認された
17)18)。
副作用発現頻度は、本剤群で25.0%(13/52例)であった。主な副作用は、眼充血9.6%(5/52例)、結膜充血5.8%(3/52例)、眼そう痒症5.8%(3/52例)であった。
眼圧値の比較(mmHg)
| トラボプロスト点眼液0.004%「ニットー」# | トラバタンズ点眼液0.004%## |
治療期4週(10時) | 16.86±3.04 | 16.53±2.90 |
眼圧変化量 | −5.31±2.78 | −5.32±2.47 |
投与群間差 [95%信頼区間] | 0.0176 [−0.950〜0.985] |