17.1.2 国内第I相臨床試験(MKC-454-02試験)
HER2過剰発現の転移性乳癌患者を対象に、本剤を投与した(1〜8mg/kg)
注4)。抗腫瘍効果の成績は下表のとおりであった
19)。
副作用は14/18例(77.8%)に発現した。主な副作用は、発熱44.4%、AST増加22.2%、嘔吐16.7%、悪寒16.7%、倦怠感16.7%等であった。
HER2過剰発現乳癌患者に対する抗腫瘍効果
投与量 | CR | PR | MR | NC | PD | NE | 計 |
1mg/kg | − | − | − | 1 | 4 | 1 | 6 |
2mg/kg | − | − | 1 | − | 2 | − | 3 |
4mg/kg | − | 1 | − | − | 2 | − | 3 |
8mg/kg | 1 | − | 2 | 1 | 1 | 1 | 6 |
計 | 2(11.1) | 3 | 2 | 9 | 2 | 18 |
上記18例における本剤の投与期間は1〜10週(中央値:10週)であった。また、高齢者(65歳以上)への投与は行われなかった。
注4)承認された用法・用量は初回投与時4mg/kg、2回目以降2mg/kgを1週間間隔で投与(A法)及び初回投与時8mg/kg、2回目以降6mg/kgを3週間間隔で投与(B法)である。
17.1.3 海外第II相臨床試験(H0551g試験)
HER2過剰発現の転移性乳癌患者を対象に、本剤を単独投与した(初回250mg、2回目以降は100mgを7日毎に10週間投与)
注4)。評価可能例43例のうち奏効例は5例(11.6%)であった
20)。
副作用は28/46例(60.9%)に発現した。主な副作用は、さむけ21.7%、発熱17.4%、下痢15.2%等であった。
17.1.4 海外第II相臨床試験(H0552g試験)
HER2過剰発現の転移性乳癌患者を対象に、本剤をシスプラチンと併用で投与した(初回250mg、2回目以降は100mgを7日毎に8週間投与)
注4)。評価可能例37例のうち奏効例は9例(24.3%)であった
21)。
副作用は22/39例(56.4%)に発現した。主な副作用は、無力症28.2%、発熱18.0%、嘔気18.0%、さむけ15.4%、白血球減少症15.4%等であった。
17.1.5 海外第III相臨床試験(H0648g試験)
HER2過剰発現の転移性乳癌患者を対象に、本剤を他の化学療法と併用で投与した(初回4mg/kg、2回目以降は2mg/kgを1週間間隔で投与)。主要評価項目である病勢進行までの期間の中央値は、アントラサイクリン+シクロホスファミド(AC)併用群が9.08カ月、AC単独群が6.48カ月、パクリタキセル併用群が6.87カ月、パクリタキセル単独群が2.89カ月であった。HER2過剰発現の程度別の病勢進行までの期間の中央値は、AC併用群では3+群が9.05カ月、2+群が9.11カ月、パクリタキセル併用群では3+群が7.14カ月、2+群が5.30カ月であった。奏効例は、AC併用群が80/143例(55.9%)、パクリタキセル併用群が38/92例(41.3%)であった
22)。
副作用はAC併用群では122/143例(85.3%)、パクリタキセル併用群では78/91例(85.7%)に発現した。主な副作用はAC併用群では、発熱28.7%、嘔気25.9%、無力症25.2%、さむけ23.8%、嘔吐18.9%、下痢18.2%、疼痛17.5%、呼吸困難16.1%等、パクリタキセル併用群では、さむけ36.3%、無力症35.2%、発熱29.7%、嘔気23.1%、疼痛22.0%、下痢19.8%、発疹17.6%、嘔吐17.6%等であった。
17.1.6 海外第III相臨床試験(H0649g試験)
前化学療法1〜2レジメン施行後に再発が認められたHER2過剰発現の転移性乳癌患者を対象に、本剤を投与した(初回4mg/kg、2回目以降は2mg/kgを1週間間隔で投与)。主要評価項目である抗腫瘍効果について、ITT解析対象集団222例のうち奏効例は34例(15.3%)、評価可能例207例のうち奏効例は34例(16.4%)であった。病勢進行までの期間の中央値は3.1カ月であった。HER2過剰発現の程度別の病勢進行までの期間の中央値は、3+群が3.3カ月、2+群が1.9カ月であった
23)。
副作用は182/213例(85.4%)に発現した。主な副作用は、発熱36.6%、さむけ35.2%、無力症27.2%、嘔気21.1%、疼痛17.8%、頭痛15.0%等であった。
17.1.7 海外臨床試験(H0650g試験)
化学療法未治療のHER2過剰発現の転移性乳癌患者を対象に、本剤を投与した(初回4mg/kg又は8mg/kg、2回目以降はそれぞれ2mg/kg又は4mg/kgを1週間間隔で投与
注4))。主要評価項目である抗腫瘍効果について、評価可能例の奏効例は、4mg/kg→2mg/kg群が7/33例(21.2%)、8mg/kg→4mg/kg群が8/29例(27.6%)であった
24)。
副作用は4mg/kg→2mg/kg群では40/59例(67.8%)、8mg/kg→4mg/kg群では47/55例(85.5%)に発現した。主な副作用は4mg/kg→2mg/kg群では、無力症20.3%、疼痛20.3%、さむけ20.3%、発熱18.6%等、8mg/kg→4mg/kg群では、さむけ29.1%、発熱25.5%、無力症25.5%、嘔気18.2%、疼痛16.4%等であった。
17.1.8 海外臨床試験(H0659g試験)[H0648g試験からの継続試験]
海外第III相臨床試験(H0648g試験)に参加し転移性乳癌の進行が確認された患者を対象に本剤を投与した(放射線療法、化学療法、免疫療法及びホルモン療法との併用可能)。評価可能例155例のうち奏効例は22例(14.2%)であった
25)。
主な副作用は、無力症18.4%、さむけ18.4%、発熱16.4%、嘔気15.6%等であった。
17.1.9 海外臨床試験(H0693g試験)
化学療法を3レジメン以上施行後に、再発が認められたHER2過剰発現の転移性乳癌患者を対象に、本剤を標準的癌化学療法と併用で投与した(初回4mg/kg、2回目以降は2mg/kgを1週間間隔で投与)。評価可能例の奏効例は5/154例(3.2%)であった
26)。
副作用は240/360例(66.7%)に発現した。主な副作用は、発熱26.7%、さむけ25.8%、無力症10.6%、嘔気10.3%等であった。
17.1.10 国際共同第III相試験(HERA試験)
HER2過剰発現の手術可能乳癌患者で、手術、全身的な術前又は術後薬物療法及び放射線療法(適応となる場合)を完了した患者を対象注5)とし、本剤を初回8mg/kg(体重)、2回目以降6mg/kgを3週間間隔で1年間投与した群又は2年間投与した群と、本剤を投与しない対照群とで有効性を比較した。なお、本剤投与群においては、定期的なLVEF評価に基づき、本剤の投与継続あるいは中止が判断された。
中間解析結果
観察期間中央値12カ月時点で中間解析が実施され、本剤1年投与群は対照群に比べて、無病生存に関するイベント注6)発現率が有意に改善された。なお、本試験における国内からの登録被験者の同時点の解析におけるイベント発現率は、1年投与群7.3%(3/41)、対照群13.0%(6/46)であった。
HERA試験のうち本剤が投与された1,678例において、副作用が600例(35.8%)に認められた。主な副作用は、悪寒75例(4.5%)、頭痛61例(3.6%)、発熱58例(3.5%)、悪心52例(3.1%)、疲労51例(3.0%)、駆出率低下51例(3.0%)等であった。そのうち、本試験に参加した国内症例41例において、副作用が23例(56.1%)に認められ、主な副作用は悪寒6例(14.6%)、発熱5例(12.2%)、疲労5例(12.2%)、頭痛5例(12.2%)、爪の障害5例(12.2%)等であった。
最終解析結果
観察期間中央値8年時点で最終解析が実施された。本剤1年投与群は対照群に比べて、無病生存に関するイベント発現率が有意に改善された。本剤2年投与群と1年投与群の比較は、ランダム化の12カ月後に無病かつ生存している被験者に対して実施された。本剤2年投与群の無病生存に関するイベント発現率は23.6%(367/1,553)で、1年投与群(23.6%[367/1,552])に比べて有意な改善は認められなかった(HR:0.99、P=0.86)
27)。
また、安全性については、3,355例(1年投与群1,682例、2年投与群1,673例)が解析対象とされ、グレード3又は4の有害事象及び無症候性又は軽度症候性の左室駆出率(LVEF)低下は、1年投与群に比べて2年投与群で発現率が高い傾向が認められた[グレード3又は4の有害事象:1年投与群16.3%(275/1,682例)、2年投与群20.4%(342/1,673例)、無症候性又は軽度症候性の左室駆出率低下:1年投与群4.1%(69/1,682例)、2年投与群7.2%(120/1,673例)]。[
7.2.2参照]
注5)HERA試験では、非転移性で根治的手術が可能であった原発性乳癌患者を対象とした。なお、腋窩リンパ節転移陰性で腫瘍径1cm以下の患者、化学療法が適応されない患者は対象外であった。
注6)乳癌の再発(部位を問わない)、対側乳癌、乳癌以外の二次癌(皮膚の基底細胞癌及び扁平上皮癌、子宮頸部上皮内癌を除く)の発症、死亡(死因は問わない)
1年投与群及び対照群の無病生存に関するイベント発現率の比較
| | 症例数 | イベント注6)発現例数(発現率) | ハザード比 | P値 |
観察期間中央値 12カ月時点 | 対照群 | 1693 | 219(12.9%) | 0.54 | <0.0001 |
1年投与群 | 1693 | 127(7.5%) |
観察期間中央値 8年時点 | 対照群注7) | 1697注8) | 570(33.6%) | 0.76 | <0.0001 |
1年投与群 | 1702注8) | 471(27.7%) |
17.1.11 国際共同第III相試験(ToGA試験)
HER2過剰発現(IHC法3+又はFISH法陽性)の進行・再発の胃又は胃食道接合部腺癌患者(化学療法未治療)584例を対象に、化学療法(カペシタビン+シスプラチン又はフルオロウラシル+シスプラチン)と化学療法+本剤を比較する第III相臨床試験を実施した。本剤は初回8mg/kg(体重)、2回目以降6mg/kgを3週間間隔で、化学療法中止後も病勢進行が認められるまで同一の用法・用量で投与を継続した。化学療法は、カペシタビン1000mg/m
2の1日2回14日間経口投与又はフルオロウラシル800mg/m
2の5日間持続静脈内投与
注9)とシスプラチン80mg/m
2の静脈内投与を3週間間隔で行った。目標イベント数の75%時点の中間解析において、化学療法+本剤は化学療法単独に比べて、主要評価項目である全生存期間において有意な延長が認められた。なお、化学療法の内訳は584例中、カペシタビン+シスプラチンが511例、フルオロウラシル+シスプラチンが73例であった。国内では、全例(101例)においてカペシタビン+シスプラチンが使用された。
ToGA試験のうち本剤が投与された294例において、副作用が283例(96.3%)に認められた。主な副作用は、悪心186例(63.3%)、好中球減少症157例(53.4%)、嘔吐129例(43.9%)、食欲不振121例(41.2%)、疲労87例(29.6%)、下痢85例(28.9%)、手掌・足底発赤知覚不全症候群72例(24.5%)、口内炎66例(22.4%)等であった。そのうち、本試験に参加した国内症例51例において、副作用が50例(98.0%)に認められ、主な副作用は食欲不振43例(84.3%)、悪心41例(80.4%)、腎機能障害31例(60.8%)、好中球減少症30例(58.8%)、嘔吐29例(56.9%)、疲労29例(56.9%)、口内炎26例(51.0%)、しゃっくり20例(39.2%)、手掌・足底発赤知覚不全症候群19例(37.3%)、便秘18例(35.3%)等であった。[
5.4、
7.3参照]
注9)
フルオロウラシルの他の抗悪性腫瘍剤との併用における国内承認用法・用量
フルオロウラシルとして、通常成人1日5〜10mg/kgを他の抗悪性腫瘍剤と併用し、単独で使用する場合の方法に準じ、又は間歇的に週1〜2回用いる。
単独で使用する場合
フルオロウラシルとして、通常成人1日5〜15mg/kgを最初の5日間連日1日1回静脈内に注射又は点滴静注する。以後5〜7.5mg/kgを隔日に1日1回静脈内に注射又は点滴静注する。なお、年齢、症状により適宜増減する。
全生存期間のKaplan-Meier曲線
17.1.12 国内第II相試験(TRIUMPH試験)
化学療法歴のある
注10)HER2陽性の治癒切除不能な進行・再発の結腸・直腸癌患者
注11)30例を対象に、本剤をペルツズマブと併用で投与した。本剤は初回8mg/kg(体重)、2回目以降6mg/kg、ペルツズマブは初回840mg、2回目以降420mgを3週間間隔で投与し、疾患進行又は治験中止基準に該当するまで継続した。主要評価項目であるRECISTver.1.1に基づく治験担当医師判定による奏効率[95%信頼区間]は、腫瘍組織を用いた検査でHER2陽性の患者集団では29.6%[13.8,50.2](8/27例)、血液検体を用いた検査でHER2陽性の患者集団では28.0%[12.1,49.4](7/25例)であった。副作用は24/30例(80.0%)に発現した。主な副作用は、注入に伴う反応14例(46.7%)、下痢11例(36.7%)、口内炎4例(13.3%)、倦怠感3例(10.0%)等であった。[
5.9参照]
注10)フッ化ピリミジン系抗悪性腫瘍剤、オキサリプラチン、イリノテカン塩酸塩水和物及び抗上皮増殖因子受容体(EGFR)抗体医薬品(セツキシマブ又はパニツムマブ)に不応又は不耐の患者が組み入れられた。
注11)腫瘍組織検体において
RAS遺伝子野生型であることが確認されており、かつ腫瘍組織又は血液検体を用いた検査により以下のいずれかを満たす患者が対象とされた。なお、腫瘍組織を用いた検査結果に基づき組み入れられた27例全例がFISH法陽性であり、うち、IHC法3+及び2+はそれぞれ23例及び4例であった。
腫瘍組織を用いた検査
血液検体を用いた検査
次世代シークエンサー法でHER2遺伝子増幅(遺伝子コピー数が2.4以上)かつRAS遺伝子野生型(cell-free DNAにおいて、検出された最も頻度の高い遺伝子変異に対するRAS遺伝子変異の割合が30%以下)