過活動膀胱における尿意切迫感、頻尿及び切迫性尿失禁
5.1 本剤を適用する際、十分な問診により臨床症状を確認するとともに、類似の症状を呈する疾患(尿路感染症、尿路結石、膀胱癌や前立腺癌などの下部尿路における新生物等)があることに留意し、尿検査等により除外診断を実施すること。なお、必要に応じて専門的な検査も考慮すること。
5.2 下部尿路閉塞疾患(前立腺肥大症等)を合併している患者では、それに対する治療を優先させること。
通常、成人にはビベグロンとして50mgを1日1回食後に経口投与する。
9.1 合併症・既往歴等のある患者
9.3 肝機能障害患者
9.5 妊婦
妊婦又は妊娠している可能性のある女性には、治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与すること。動物実験(ラット)において胎児への移行が報告されている。
9.6 授乳婦
治療上の有益性及び母乳栄養の有益性を考慮し、授乳の継続又は中止を検討すること。動物実験(ラット)において乳汁中に移行することが報告されている。
9.7 小児等
9.8 高齢者
患者の状態を十分に観察しながら慎重に投与すること。一般に生理機能が低下している。[
16.6.3参照]
相互作用序文
ビベグロンはCYP3A4又はP-糖タンパク(P-gp)の基質であることが示唆されている。
薬物代謝酵素用語
CYP3A4
薬物代謝酵素用語
P-糖タンパク(P-gp)
10.2 併用注意
アゾール系抗真菌剤 イトラコナゾール等 HIVプロテアーゼ阻害剤 リトナビル等 [16.7.2参照] | ケトコナゾールと併用したとき、ビベグロンの血中濃度が上昇したとの報告がある。 | CYP3A4及びP-gpを阻害する薬物と併用することにより、ビベグロンの血中濃度が上昇する可能性がある。 |
リファンピシン フェニトイン カルバマゼピン | ビベグロンの作用が減弱する可能性がある。 | CYP3A4及びP-gpを誘導する薬物と併用することにより、ビベグロンの血中濃度が低下する可能性がある。 |
11.1 重大な副作用
次の副作用があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止するなど適切な処置を行うこと。
11.1.1 尿閉(頻度不明)
11.2 その他の副作用
次の副作用があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止するなど適切な処置を行うこと。
| | 1〜2%未満 | 1%未満 | 頻度不明 |
| 精神神経系 | | | 頭痛、めまい、不眠症、傾眠 |
| 消化器 | 口内乾燥、便秘 | | 悪心、腹部膨満、消化不良、胃炎、胃食道逆流性疾患、下痢、腹痛、食欲減退 |
| 循環器 | | | QT延長、動悸 |
| 泌尿器・腎臓 | 尿路感染(膀胱炎等)、残尿量増加 | | 排尿躊躇、膀胱痛、遺尿、排尿困難 |
| 皮膚 | | | 発疹、多汗症、そう痒症 |
| 眼 | | 羞明 | 眼乾燥、霧視 |
| 肝臓 | | AST上昇、ALT上昇 | 肝機能異常、γ-GTP上昇、Al-P上昇 |
| その他 | | | 疲労、ほてり、高脂血症、体液貯留、筋肉痛、浮腫、CK上昇、口渇、血圧上昇、胸部不快感 |
14.1 薬剤交付時の注意
PTP包装の薬剤はPTPシートから取り出して服用するよう指導すること。PTPシートの誤飲により、硬い鋭角部が食道粘膜へ刺入し、更には穿孔をおこして縦隔洞炎等の重篤な合併症を併発することがある。
16.1 血中濃度
16.1.1 単回投与
健康成人男性6例にビベグロン10〜300mg
注)を空腹時に単回経口投与したとき、Cmax及びAUCinfは投与量比以上の上昇を示したが、tmax及びt
1/2は投与量によらず一定であった。
図1 空腹時単回投与したときの血漿中濃度推移
表1 空腹時単回投与したときの薬物動態パラメータ
| 投与量 | Cmax(nmol/L) | tmax#(hr) | AUCinf(μmol・hr/L) | t1/2(hr) |
| 10mg | 6.57(60.9) | 1.00(1.00-4.00) | 0.212(30.3) | 60.5(40.8) |
| 50mg | 134(34.7) | 3.00(0.800-3.00) | 1.92(27.2) | 64.0(12.6) |
| 100mg | 360(70.3) | 2.50(0.500-4.00) | 3.89(23.1) | 58.9(21.3) |
| 200mg | 1090(40.3) | 2.00(0.500-4.00) | 11.5(16.2) | 59.1(16.7) |
| 300mg | 1580(36.8) | 2.00(1.00-4.00) | 13.7(25.5) | 60.7(15.7) |
16.1.2 反復投与
健康成人男性6例にビベグロン50、100及び200mg
注)を1日1回14日間空腹時反復投与したときのAUC
0-24は、投与1日目と比べて1.84〜2.29倍であった。ビベグロンの血漿中濃度は、投与開始後7日以内に定常状態に達した。
表2 反復投与したときの薬物動態パラメータ
| 投与量 | 投与日(日) | Cmax(nmol/L) | tmax##(hr) | AUC0-24(μmol・hr/L) | t1/2(hr) |
| 50mg | 1 | 90.1(73.7) | 1.00(0.500-4.00) | 0.559(69.4) | − |
| 14# | 110(67.2) | 3.00(0.500-3.00) | 1.28(43.5) | 69.6(9.9) |
| 100mg | 1 | 324(135.6) | 1.50(0.500-6.00) | 1.89(86.1) | − |
| 14# | 354(60.3) | 2.00(2.00-4.00) | 3.72(29.6) | 64.9(34.9) |
| 200mg | 1 | 778(57.4) | 2.00(1.00-4.00) | 5.31(46.3) | − |
| 14 | 1380(28.1) | 1.00(0.500-6.00) | 9.76(14.8) | 59.7(3.3) |
16.2 吸収
16.2.1 食事の影響
健康成人男性8例にビベグロン50mgを食後に単回経口投与したときの薬物動態パラメータは以下の通りであった。空腹時に投与したときのCmax及びAUCinfは、食後投与したときに比べ、それぞれ1.73及び1.40倍であったが、tmax及びt
1/2に影響は認められなかった。
表3 食後単回投与したときの薬物動態パラメータ
| Cmax(nmol/L) | tmax#(hr) | AUCinf(μmol・hr/L) | t1/2(hr) |
| 89.7(84.3) | 1.00(0.500-2.00) | 1.37(39.7) | 68.9(15.0) |
16.3 分布
ビベグロンの血漿タンパク結合率は49.6%〜51.3%であった。ビベグロンの血液/血漿中濃度比は0.8〜1.0であった(in vitro)。
16.4 代謝
ビベグロン経口投与後のヒト血漿中には主に未変化体として存在し、代謝物として3種のグルクロン酸抱合体及び2種の酸化的代謝物が認められた(日本人及び外国人データ)。
16.5 排泄
健康成人男性6例に14Cで標識したビベグロン100mg注)を単回経口投与したマスバランス試験の結果、投与後20日までに、投与放射能の20.3%が尿中に、59.2%が糞中に排泄された。未変化体は尿中放射能の92.7%、糞中放射能の91.0%を占めた(外国人データ)。
16.6 特定の背景を有する患者
16.6.1 腎機能障害患者
ビベグロン100mg注)を単回経口投与したときのCmax及びAUCinfを健康成人と比べると、軽度の腎機能障害者(eGFR 90〜60mL/min/1.73m2)ではそれぞれ1.96及び1.49倍、中等度の腎機能障害者(eGFR 60〜30mL/min/1.73m2)ではそれぞれ1.68及び2.06倍、高度の腎機能障害者(eGFR 30mL/min/1.73m2未満)ではそれぞれ1.42及び1.83倍であった(外国人データ)。
16.6.2 肝機能障害患者
ビベグロン100mg
注)を単回経口投与したときのCmax及びAUCinfを健康成人と比べると、中等度の肝機能障害者(Child-Pughスコア7〜9)ではそれぞれ1.35及び1.27倍であった(外国人データ)。[
9.3.1参照]
16.6.3 高齢者
健康高齢男性(65〜74歳、6例)にビベグロン100mg
注)を1日1回14日間反復経口投与したときのCmax及びAUC
0-24は、健康成人男性(23〜39歳、5例)と比べて、それぞれ1.88及び1.45倍であった。[
9.8参照]
16.7 薬物相互作用
16.7.1 トルテロジン
健康成人12例にビベグロン100mg注)とCYP2D6の基質であるトルテロジン4mgを併用投与したとき、ビベグロンのCmax及びAUC0-24は、ビベグロンを単独投与したときと比べて、それぞれ1.03及び1.08倍であった。また、トルテロジンのCmax及びAUC0-24は、トルテロジンを単独投与したときと比べて、それぞれ1.12及び1.08倍であった(外国人データ)。
16.7.2 ケトコナゾール
健康成人10例にビベグロン100mg
注)と強いCYP3A4及びP-gpの阻害剤であるケトコナゾール
※200mgを併用投与したとき、ビベグロンのCmax及びAUCinfはそれぞれ2.22及び2.08倍であった(外国人データ)。[
10.2参照]
※:経口剤国内未発売
16.7.3 ジルチアゼム
健康成人12例にビベグロン100mg注)と中程度のCYP3A4及びP-gpの阻害剤であるジルチアゼム240mgを併用投与したとき、ビベグロンのCmax及びAUCinfはそれぞれ1.68及び1.63倍であった(外国人データ)。
注):本剤の承認用量は50mgである。
17.1 有効性及び安全性に関する試験
17.1.1 国内第III相プラセボ対照二重盲検比較試験
過活動膀胱患者1107例を対象にビベグロン50mg、100mg
注)又はプラセボを、1日1回食後に12週間経口投与したときの主要評価項目である1日平均排尿回数の変化量、並びに副次評価項目である1日平均尿意切迫感回数の変化量及び1日平均切迫性尿失禁回数の変化量の成績を次に示した。二重盲検比較試験の結果、いずれの評価項目でも、ビベグロン50mg群及び100mg群でプラセボ群に比べ有意な改善が認められた
1)。
副作用発現頻度は、ビベグロン50mg群で7.6%(28/370例)、100mg群で5.4%(20/369例)及びプラセボ群で5.1%(19/369例)であった。主な副作用は、50mg群で便秘1.6%(6/370例)、口内乾燥1.4%(5/370例)であった。
表1 12週時の1日平均排尿回数の変化量
| 投与群 | 症例数 | 投与前 | 変化量# | プラセボ群との比較## |
| プラセボ群 | 369 | 11.20±2.40 | −1.21(−1.40,−1.03) | − |
| ビベグロン50mg群 | 370 | 11.13±2.37 | −2.08(−2.27,−1.89) | p<0.0001 |
| ビベグロン100mg群 | 368 | 11.08±2.25 | −2.03(−2.22,−1.84) | p<0.0001 |
表2 12週時の1日平均尿意切迫感回数の変化量
| 投与群 | 症例数 | 投与前 | 変化量# | プラセボ群との比較## |
| プラセボ群 | 369 | 3.77±2.23 | −1.77(−1.96,−1.58) | − |
| ビベグロン50mg群 | 370 | 3.70±2.08 | −2.28(−2.46,−2.09) | p=0.0001 |
| ビベグロン100mg群 | 368 | 3.77±2.25 | −2.44(−2.63,−2.25) | p<0.0001 |
表3 12週時の1日平均切迫性尿失禁回数の変化量
| 投与群 | 症例数 | 投与前 | 変化量# | プラセボ群との比較## |
| プラセボ群 | 333 | 1.88±1.33 | −1.08(−1.21,−0.96) | − |
| ビベグロン50mg群 | 329 | 1.97±1.48 | −1.35(−1.48,−1.23) | p=0.0015 |
| ビベグロン100mg群 | 327 | 1.86±1.31 | −1.47(−1.60,−1.34) | p<0.0001 |
17.1.2 国内第III相長期投与試験
過活動膀胱患者166例を対象に、ビベグロン50mgを1日1回食後に52週間経口投与した。また、ビベグロン50mgを8週間投与した後、効果が不十分、かつ安全性に問題ないと治験担当医師が判断し、かつ被験者も増量を希望した場合に限り、1日1回100mg
注)へ増量した。8週時及び52週時の1日平均排尿回数の変化量、1日平均尿意切迫感回数の変化量及び1日平均切迫性尿失禁回数の変化量の成績を次に示した。いずれの評価項目でも、ビベグロン50mg用量維持例及び100mg増量例ともに投与前からの改善が認められ、52週時まで減弱することなく維持された
2)。
副作用発現頻度は、ビベグロン50mg維持例で18.1%(21/116例)、100mg増量例で11.8%(6/51例)であった。主な副作用は、50mg維持例で残尿量増加4.3%(5/116例)、口内乾燥及び膀胱炎2.6%(3/116例)、便秘1.7%(2/116例)、100mg増量例で便秘及び口内乾燥3.9%(2/51例)、関節リウマチ及びそう痒症2.0%(1/51例)であった。
表4 1日平均排尿回数の変化量
| 投与群 | 症例数 | 投与前 | 8週時変化量# | 52週時変化量# |
| ビベグロン50mg維持例 | 115 | 10.62±1.88 | −2.52(−2.90,−2.13) | −2.71(−3.21,−2.21) |
| ビベグロン100mg増量例 | 51 | 12.78±2.95 | −1.85(−2.42,−1.28) | −3.16(−3.90,−2.41) |
表5 1日平均尿意切迫感回数の変化量
| 投与群 | 症例数 | 投与前 | 8週時変化量# | 52週時変化量# |
| ビベグロン50mg維持例 | 115 | 3.79±2.59 | −2.72(−3.14,−2.29) | −2.91(−3.43,−2.39) |
| ビベグロン100mg増量例 | 51 | 5.56±3.57 | −2.19(−2.82,−1.55) | −3.42(−4.20,−2.65) |
表6 1日平均切迫性尿失禁回数の変化量
| 投与群 | 症例数 | 投与前 | 8週時変化量# | 52週時変化量# |
| ビベグロン50mg維持例 | 93 | 1.81±1.39 | −1.49(−1.78,−1.20) | −1.55(−1.88,−1.22) |
| ビベグロン100mg増量例 | 45 | 2.79±2.60 | −1.49(−1.91,−1.07) | −2.29(−2.76,−1.81) |
注):本剤の承認用量は50mgである。
18.1 作用機序
本剤は膀胱平滑筋に存在するβ3アドレナリン受容体を選択的に刺激し、膀胱を弛緩させることで蓄尿機能を亢進し、過活動膀胱における尿意切迫感、頻尿及び切迫性尿失禁を改善する。
18.2 βアドレナリン受容体に対する作用
ヒトβ3アドレナリン受容体を安定発現させた細胞において、濃度依存的な細胞内cAMP濃度上昇作用を示した。一方、ヒトβ1及びβ2アドレナリン受容体発現細胞においては、細胞内cAMP濃度上昇作用をほとんど示さなかった(in vitro)。
18.3 摘出膀胱組織に対する作用
電気刺激により収縮させたヒト摘出膀胱組織において、濃度依存的な膀胱収縮抑制作用を示した(in vitro)。
18.4 膀胱機能に対する作用
18.4.1 麻酔下のアカゲザルにおいて、用量依存的に膀胱容量を増加させた。
18.4.2 無麻酔下のカニクイザルにおいて、用量依存的に膀胱容量を増加させた。
医薬品リスク管理計画を策定の上、適切に実施すること。