注射後15、30、60及び120分の4回採尿する。尿量が少ないとき(40mL以下)成績は不正確となる。尿量が少ない場合には排尿はカテーテルで行うことが望ましい。
各分画採取尿をそれぞれメスシリンダーに採り、25%水酸化ナトリウム溶液数滴(10%水酸化ナトリウム溶液5mLでも良い)を加え、十分に呈色させた後1,000mLの目盛まで水で希釈し、栓をして混和する。この各分画採取呈色尿をフェノールスルホンフタレイン標準液と比色し、色素排泄量を求める。
光電比色法による操作法は次のとおりである。
(1)各分画採取尿を1,000mLのメスシリンダーに採り、水で500mLに希釈する。それから5mLずつを採り水5mLを加え85%リン酸1滴を加え酸性とする。これを対照尿として用いる。
(2)シリンダー中の残部に10%水酸化ナトリウム溶液10mLを加え、十分発色させ、水で1,000mLに希釈する。
(3)前記対照尿を用い559nmで比色し、別に作製した検量線から尿中フェノールスルホンフタレインの濃度を求める。
なお、色素が退色するので、採尿後なるべく早く行う。
特に水酸化ナトリウム溶液で赤変させた尿は1時間以内に測定する。
(4)検量線の作製法:本剤1.0mLを試験尿と同様の方法で1,000mLに希釈し、これを100%標準液とし、5、10、15 (%)の希釈系列を作り、上記と同様に操作して検量線を作製する。
標準液の調製は、フェノールスルホンフタレイン注射液1.0mLを正確に1Lのメスフラスコに採り、精製水500mL及び10%水酸化ナトリウム溶液2.0mLを加えた後、さらに目盛まで精製水を加え希釈混和する。この液を100%標準液とし順次希釈して標準液系列を作る。(表参照)
なお、100%標準液は冷暗所に保存すれば6ヵ月間はほとんど退色しない。
標準液濃度(%) | 100 | 80 | 60 | 50 | 45 | 40 | 35 | 30 | 25 | 20 | 15 | 10 | 5 |
100%液(mL) | 5.00 | 4.00 | 3.00 | 2.50 | 2.25 | 2.00 | 1.75 | 1.50 | 1.25 | 1.00 | 0.75 | 0.50 | 0.25 |
精製水(mL) | 0 | 1.00 | 2.00 | 2.50 | 2.75 | 3.00 | 3.25 | 3.50 | 3.75 | 4.00 | 4.25 | 4.50 | 4.75 |
<参考>健康成人の時間別フェノールスルホンフタレイン排泄率は次のとおりである。
時間(分) | 最小(%) | 最大(%) | 平均(%) |
15 | 25 | 50 | 35 |
30 | 40 | 60 | 50 |
60 | 50 | 75 | 65 |
120 | 55 | 85 | 70 |
筋肉内注射の場合は、注射後第1時間尿に35〜60%、第2時間尿に15〜25%、すなわち2時間合計尿50〜80%をもって正常とし、50%以下の場合は腎機能障害がある。
また年齢別の15分値は概ね次のとおりである
1)。
年齢 | 平均値 | 棄却限界 |
小児 | 40% | − |
20〜29歳 | 41 | 52〜31% |
30〜39歳 | 36 | 50〜22 |
40〜49歳 | 36 | 50〜23 |
50〜59歳 | 33 | 47〜20 |
60〜69歳 | 31 | 43〜19 |
70〜79歳 | 29 | 40〜18 |
軽度の腎障害では120分値が正常であっても15分値は低値を示すことが多く重症の腎炎、ネフローゼ等では15分、120分ともに低値を示す。
一般的に静脈内注射で15分値が25%以下の場合には2時間の総排泄量のいかんにかかわらず腎機能、特に尿細管の障害を意味する。