医療用医薬品 : ロペラミド

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医薬品情報


総称名 ロペラミド
一般名 ロペラミド塩酸塩
欧文一般名 Loperamide Hydrochloride
製剤名 ロペラミド塩酸塩錠
薬効分類名 止瀉剤
薬効分類番号 2319
ATCコード A07DA03
KEGG DRUG
D00729 ロペラミド塩酸塩
JAPIC 添付文書(PDF)
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添付文書情報2024年4月 改訂(第2版)


商品情報 3.組成・性状

販売名 欧文商標名 製造会社 YJコード 薬価 規制区分
ロペラミド塩酸塩錠1mg「あすか」 (後発品) LOPERAMIDE HYDROCHLORIDE TABLETS 日医工 2319001F1060 6.1円/錠

2. 禁忌

次の患者には投与しないこと
2.1 出血性大腸炎の患者[腸管出血性大腸菌(O157等)や赤痢菌等の重篤な感染性下痢患者では、症状の悪化、治療期間の延長を来すおそれがある。]
2.2 抗生物質の投与に伴う偽膜性大腸炎の患者[症状の悪化、治療期間の延長を来すおそれがある。]
2.3 低出生体重児、新生児及び6ヵ月未満の乳児[外国で、過量投与により、呼吸抑制、全身性痙攣、昏睡等の重篤な副作用の報告がある。]
2.4 本剤の成分に対し過敏症の既往歴のある患者

4. 効能または効果

下痢症

6. 用法及び用量

ロペラミド塩酸塩として、通常、成人に1日1〜2mgを1〜2回に分割経口投与する。
なお、症状により適宜増減する。

8. 重要な基本的注意

8.1 止瀉剤による治療は下痢の対症療法であるので、脱水症状がみられる場合、輸液等適切な水・電解質の補給に留意すること。
8.2 本薬の薬理作用上、便秘が発現することがあるので、用量に留意し、便秘が発現した場合は投与を中止すること。
8.3 眠気、めまいが起こることがあるので、本剤投与中の患者には自動車の運転等危険を伴う機械の操作に従事させないよう注意すること。

9. 特定の背景を有する患者に関する注意

9.1 合併症・既往歴等のある患者
9.1.1 感染性下痢の患者
治療上やむを得ないと判断される場合を除き、投与しないこと。治療期間の延長を来すおそれがある。
9.1.2 潰瘍性大腸炎の患者
治療上やむを得ないと判断される場合を除き、投与しないこと。中毒性巨大結腸を起こすおそれがある。
9.1.3 肛門疾患等の患者
特に便秘を避けなければならないため、注意して投与すること。本薬の薬理作用上、便秘が発現することがある。
9.3 肝機能障害患者
9.3.1 重度の肝機能障害患者
本剤の代謝及び排泄が遅延するおそれがある。
9.5 妊婦
妊婦又は妊娠している可能性のある女性には、治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与すること。
9.6 授乳婦
授乳を避けさせること。ヒトで母乳中に移行することが報告されている。
9.7 小児等
9.7.1 小児等を対象とした臨床試験は実施していない。
9.7.2 6ヵ月以上2歳未満の乳幼児
治療上やむを得ないと判断される場合を除き、投与しないこと。外国で、乳幼児(特に2歳未満)に過量投与した場合、中枢神経系障害、呼吸抑制、腸管壊死に至る麻痺性イレウスを起こしたとの報告がある。
9.8 高齢者
用量に留意するなど、注意して投与すること。一般に高齢者では生理機能が低下している。

10. 相互作用

相互作用序文
本剤は主として肝代謝酵素CYP3A4及びCYP2C8で代謝されることから、CYP3A4又はCYP2C8を阻害する薬剤と併用した際、本剤の代謝が阻害され血中濃度が上昇する可能性がある。また、本剤はP糖蛋白の基質である。
薬物代謝酵素用語
CYP3A4
薬物代謝酵素用語
CYP2C8
薬物代謝酵素用語
P糖蛋白
10.2 併用注意
ケイ酸アルミニウム
タンニン酸アルブミン
本剤の効果が減弱するおそれがあるので、投与間隔をあけるなど注意すること。これらの薬剤により、本剤が吸着されることが考えられる。
リトナビル1)
キニジン2)
16.7.116.7.2参照]
本剤の血中濃度が上昇することがある。これらの薬剤のP糖蛋白に対する阻害作用により、本剤の排出が阻害されると考えられる。
イトラコナゾール3)
16.7.3参照]
本剤の血中濃度が上昇することがある。イトラコナゾールのCYP3A4及びP糖蛋白に対する阻害作用により、本剤の代謝及び排出が阻害されると考えられる。
デスモプレシン(経口)4)
16.7.4参照]
デスモプレシンの血中濃度が上昇することがある。本剤の消化管運動抑制作用により、デスモプレシンの消化管吸収が増加すると考えられる。

11. 副作用

11.1 重大な副作用
次の副作用があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止するなど適切な処置を行うこと。
11.1.1 イレウス(0.1%未満)、巨大結腸(頻度不明)
消化器症状とともにイレウス、巨大結腸があらわれることがある。[11.2参照]
11.1.2 ショック(頻度不明)、アナフィラキシー(0.1%未満)
11.1.3 中毒性表皮壊死融解症(Toxic Epidermal Necrolysis:TEN)、皮膚粘膜眼症候群(Stevens-Johnson症候群)(頻度不明)
注)発現頻度は使用成績調査を含む。
11.2 その他の副作用
次の副作用があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止するなど適切な処置を行うこと。
 0.1〜5%未満0.1%未満頻度不明
過敏症  血管浮腫
中枢神経系  頭痛、傾眠傾向、鎮静、筋緊張低下、意識レベルの低下、筋緊張亢進、意識消失、昏迷、協調運動異常
肝臓 AST、ALT、γ-GTPの上昇 
消化器注1)腹部膨満腹部不快感、悪心、腹痛、嘔吐、食欲不振消化不良、口内不快感、味覚の変調、便秘、鼓腸
皮膚発疹蕁麻疹、そう痒感多形紅斑、水疱性皮膚炎
泌尿器  尿閉
その他 口渇、眠気、めまい、発汗、倦怠感疲労、体温低下、発熱、散瞳、縮瞳

13. 過量投与

13.1 症状
外国で、過量投与により昏睡、呼吸抑制、縮瞳、協調異常、筋緊張低下、傾眠、尿閉等の中毒症状が報告されている。また、腸管壊死に至る麻痺性イレウスにより死亡に至った例、QT延長、Torsade de Pointesを含む重篤な心室性不整脈、Brugada症候群の顕在化が報告されている。
13.2 処置
中毒症状がみられた場合にはナロキソン塩酸塩を投与する。本剤の作用持続性に比べ、ナロキソン塩酸塩の作用は短時間しか持続しないので、必要な場合にはナロキソン塩酸塩を反復投与する。また、QT延長のリスクがあるため、心電図異常に注意すること。

14. 適用上の注意

14.1 薬剤交付時の注意
PTP包装の薬剤はPTPシートから取り出して服用するよう指導すること。PTPシートの誤飲により、硬い鋭角部が食道粘膜へ刺入し、更には穿孔をおこして縦隔洞炎等の重篤な合併症を併発することがある。

15. その他の注意

15.1 臨床使用に基づく情報
乱用、誤用、又は故意により過量投与した患者において、休薬後に薬物離脱症候群の症例が認められたとの報告があるので、観察を十分に行い、用量に注意すること。
15.2 非臨床試験に基づく情報
動物実験において、大量投与で薬物依存性が認められているので、観察を十分に行い、用量及び使用期間に注意すること。

16. 薬物動態

16.1 血中濃度
16.1.1 生物学的同等性試験
健康成人男性にロペラミド塩酸塩錠1mg「あすか」6錠(ロペラミド塩酸塩として6mg)注)とロペミンカプセル1mg6カプセル(ロペラミド塩酸塩として6mg)注)をクロスオーバー法によりそれぞれ絶食単回経口投与して血清中ロペラミド濃度を測定し、得られた薬物動態パラメータ(AUC、Cmax)について統計解析を行った結果、両剤の生物学的同等性が確認された5)
 AUC0→33(pg・hr/mL)Cmax(pg/mL)Tmax(hr)T1/2(hr)
ロペラミド塩酸塩錠1mg「あすか」2159.4±1142.1157.9±49.04.71±1.6810.68±9.46
ロペミンカプセル1mg2146.7±1110.8148.8±52.95.29±1.2718.36±19.01
血清中濃度並びにAUC、Cmax等のパラメータは、被験者の選択、体液の採取回数・時間等の試験条件によって異なる可能性がある。
16.2 吸収
14C-ロペラミドをラットに単回投与したところ、14C-ロペラミドは投与量の約30%が未吸収で排泄され、約70%が腸管組織に一旦取り込まれた。腸管組織に取り込まれた後、投与量の約30%(腸管吸収量の約43%)以上に相当する代謝物が腸管腔内に直接排泄され、残りの投与量の約40%(腸管吸収量の約57%)が門脈を経て肝臓へ移行した。しかし、肝臓へ移行した大部分は肝臓から胆汁中に排泄され、結果的に全身循環への移行量は極めて少なかった6)
16.5 排泄
排泄経路
主として糞便中
排泄率
投与後7日間の尿中には投与放射活性の10%が、また投与後8日間の糞便中には42%が排泄され、未変化体はそれぞれ投与量の1%、12%であった7)。(健康成人(外国人)、3H-ロペラミド塩酸塩2mg1回投与)
16.7 薬物相互作用
健康成人を対象とした薬物相互作用の検討結果を以下に示す(外国人データ)。
16.7.1 リトナビル
ロペラミド塩酸塩16mg注)とリトナビル200mg1日2回を経口併用投与したとき、ロペラミドのCmaxとAUCがそれぞれ83%及び121%増加した1)。[10.2参照]
16.7.2 キニジン
ロペラミド塩酸塩16mg注)とキニジン600mgを経口併用投与したとき、ロペラミドのAUCが148%増加した2)。[10.2参照]
16.7.3 イトラコナゾール
ロペラミド塩酸塩4mg注)とイトラコナゾール100mgを経口併用投与したとき、ロペラミドのCmaxとAUCがそれぞれ185%及び281%増加した3)。[10.2参照]
16.7.4 デスモプレシン
ロペラミド塩酸塩4mg注)とデスモプレシン400μgを経口併用投与したとき、デスモプレシンのCmaxとAUCがそれぞれ130%及び210%増加した4)。[10.2参照]
注)本剤の承認された用法及び用量は、1日1〜2mgである。

18. 薬効薬理

18.1 作用機序
18.1.1 止瀉作用
マウス及びラットにおけるヒマシ油又はプロスタグランジン誘発下痢を強く抑制する8)
18.2 消化管輸送能抑制作用
マウスの小腸輸送能を用量依存的に抑制する。健康成人において硫酸バリウムの消化管内通過時間を延長させる。また、成人下痢患者(外国人)の小腸通過時間を服薬前に比較して有意に延長した8)9)10)11)
18.3 蠕動抑制作用
成熟モルモットの摘出回腸並びに生体位小腸及び結腸の蠕動を抑制する。成熟モルモットを用いたin vitro実験から、本剤の蠕動抑制作用には、腸壁内コリン作動性ニューロンの機能の抑制及び腸管の輪状筋方向の伸展によるアセチルコリンとプロスタグランジンの放出の抑制が関与していると考えられている12)13)14)
18.4 抗分泌作用
ラットを用いた実験で、プロスタグランジン又はコレラトキシンの投与によって起こる水、Na及びClの腸管腔内への分泌を吸収の方向へ逆転させた15)16)

19. 有効成分に関する理化学的知見

19.1. ロペラミド塩酸塩

一般的名称 ロペラミド塩酸塩
一般的名称(欧名) Loperamide Hydrochloride
化学名 4-[4-(p-Chlorophenyl)-4-hydroxy-1-piperidyl]-N,N-dimethyl-2,2-diphenylbutyramide hydrochloride
分子式 C29H33ClN2O2・HCl
分子量 513.50
融点 約225℃(分解)
物理化学的性状 白色〜微黄色の結晶性の粉末である。
酢酸(100)又はクロロホルムに溶けやすく、エタノール(95)にやや溶けやすく、水、無水酢酸又は2-プロパノールに溶けにくく、ジエチルエーテルにほとんど溶けない。
KEGG DRUG D00729

22. 包装

100錠[10錠(PTP)×10]

23. 主要文献

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  2. Sadeque,A.J.M.et al., Clin.Pharmacol.Ther., 68 (3), 231-237, (2000) »PubMed
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  16. Sandhu,B.K.et al., Gut., 22 (8), 658-662, (1981) »PubMed

24. 文献請求先及び問い合わせ先

文献請求先
あすか製薬株式会社 くすり相談室
〒108-8532 東京都港区芝浦二丁目5番1号
電話:0120-848-339
FAX:03-5484-8358
製品情報問い合わせ先
あすか製薬株式会社 くすり相談室
〒108-8532 東京都港区芝浦二丁目5番1号
電話:0120-848-339
FAX:03-5484-8358

26. 製造販売業者等

26.1 製造販売元
日医工株式会社
富山市総曲輪1丁目6番21
26.2 発売元
あすか製薬株式会社
東京都港区芝浦二丁目5番1号
26.3 販売元
武田薬品工業株式会社
大阪市中央区道修町四丁目1番1号

[ KEGG | KEGG DRUG | KEGG MEDICUS ] 2025/10/22 版