次の副作用があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止するなど適切な処置を行うこと。
11.1.1 肺障害
間質性肺炎(0.2%、2.5%
注1))、急性肺水腫(0.5%、0.4%
注1))、胸水(0.1%、1.6%
注1))、急性呼吸窮迫症候群(0.1%、頻度不明
注1))があらわれることがある。国内の臨床試験及び市販後の報告において、本剤との因果関係の否定できない肺障害(間質性肺炎)による死亡例が認められており
1)2)、海外と比較して肺障害の発生頻度が高い可能性がある。なお、肺障害の対処方法及び可能性のあるリスク因子について臨床試験では確認されていない。急性骨髄性白血病に対し、本剤、ダウノルビシン塩酸塩及び高用量シタラビンの24時間持続点滴(2000mg/m
2/日)を併用した海外の臨床試験において、本剤との因果関係を否定できない急性呼吸窮迫症候群による死亡が報告されている。[
1.3.1、
1.3.2、
8.1、
9.1.1参照]
11.1.2 心障害
うっ血性心不全(1.3%)、心嚢液貯留(0.1%)、心原性ショック(0.1%)、心停止(0.1%)、心肺停止(頻度不明)があらわれることがある。また、投与前の左室駆出率に異常の無い患者においても左室駆出率低下が報告されている。海外臨床試験においてQT間隔延長の報告があるが、薬剤との関連性については明らかになっていない。再発又は難治性の多発性骨髄腫を対象とした海外第III相試験において、本剤群及びデキサメタゾン群で発現した心障害の発現頻度はそれぞれ14%及び12%であった。そのうち心不全等(急性肺水腫、心不全、うっ血性心不全、心原性ショック、肺水腫)の発現頻度はそれぞれ5%及び4%であった。[
8.2参照]
11.1.3 末梢神経障害
末梢性感覚ニューロパチー(28.2%)、神経障害性疼痛(14.8%)、錯感覚(8.6%)、末梢性ニューロパチー(8.1%)、感覚減退(3.6%)、末梢性運動ニューロパチー(2.3%)、灼熱感(0.4%)があらわれることがあり、重症の感覚性ニューロパチーも報告されている。本剤の投与により、感覚障害による末梢性ニューロパチーが主に認められるが、感覚障害と運動障害が混在するニューロパチーの発現例も報告されている。末梢性ニューロパチーに加えて、起立性低血圧やイレウスを伴う重度の便秘等、一部の有害事象に自律神経ニューロパチーが関与している可能性があるが、十分な情報は得られていない。また、本剤の投与により糖尿病性ニューロパチー等の基礎疾患を悪化させる可能性がある。再発又は難治性の多発性骨髄腫を対象とした海外第III相試験においてGrade 2以上の末梢性ニューロパチーを認めた患者では用量調整により末梢性ニューロパチーの改善あるいは回復が51%で認められた。また、海外第II相試験においてGrade 3以上の末梢性ニューロパチーを発現した患者又はGrade 2のニューロパチーを呈し、投与を中止した患者では、末梢性ニューロパチーの改善あるいは回復が73%で認められた。[
7.1、
8.4、
9.1.3参照]
11.1.4 ギラン・バレー症候群、脱髄性多発ニューロパチー(頻度不明)
11.1.5 骨髄抑制
血小板減少(39.0%)、好中球減少(34.8%)、貧血(21.9%)、白血球減少(17.9%)、リンパ球減少(10.9%)、発熱性好中球減少症(2.8%)、汎血球減少(0.1%)があらわれることがある。骨髄機能が抑制された結果、感染症(敗血症性ショック等)や出血等の重篤な副作用が発現することがある。再発又は難治性の多発性骨髄腫を対象とした海外第III相試験における重症の出血(Grade 3以上)の発現率は本剤群で4%、デキサメタゾン群で5%であった。血小板数は各サイクルの11日目に最低値に達し、通常は次サイクル開始前までに回復した。血小板数の減少と回復のパターンは週2回投与の8サイクルにわたり一貫しており、蓄積性の血小板減少症は認められなかった。再発又は難治性の多発性骨髄腫を対象とした海外第III相試験において血小板数の最低値の平均は、投与開始前の約40%であった。再発又は難治性の多発性骨髄腫を対象とした海外第III相試験における投与開始前の血小板数と血小板減少症の重症度との関係を以下の表に示す。[
8.5、
8.6参照]
再発又は難治性の多発性骨髄腫を対象とした海外第III相試験における投与開始前の血小板数と血小板減少症の重症度との関係
投与開始前の血小板数注2) | 患者数(n=331)注3) | 10,000/μL未満の患者数(%) | 10,000〜25,000/μLの患者数(%) |
75,000/μL以上 | 309 | 8(3%) | 36(12%) |
50,000/μL以上75,000/μL未満 | 14 | 2(14%) | 11(79%) |
10,000/μL以上50,000/μL未満 | 7 | 1(14%) | 5(71%) |
11.1.6 イレウス(0.7%)
食欲不振、嘔吐、便秘、腹部膨満感等の症状があらわれた場合には適切な処置を行うこと。[
8.7参照]
11.1.7 肝機能障害
ASTの増加(0.7%)、ALTの増加(0.7%)、γ-GTPの増加(0.6%)、ALPの増加(0.5%)及び血中ビリルビンの増加(0.6%)等を伴う肝機能障害(B型肝炎ウイルスの再活性化によるものを含む)があらわれることがある。[
8.3、
8.8、
9.1.2参照]
11.1.8 低血圧
低血圧(3.0%)、起立性低血圧(2.2%)があらわれることがある。低血圧の機序は不明であるが、一部は自律神経ニューロパチーが関与している可能性がある。[
8.9、
9.1.4参照]
11.1.9 腫瘍崩壊症候群(0.3%)[
8.11参照]
11.1.10 皮膚粘膜眼症候群(Stevens-Johnson症候群)、中毒性表皮壊死症(Toxic Epidermal Necrolysis:TEN)(頻度不明)
11.1.11 発熱(12.4%)
本剤の投与日から翌日にかけて高頻度にGrade 1〜2の薬剤性の発熱があらわれることがあるので、患者の状態を観察し、必要に応じて解熱剤等による処置を考慮すること。また発熱が持続する場合や呼吸器症状を伴う場合には、肺障害の可能性について注意すること。
11.1.12 可逆性後白質脳症症候群(頻度不明)
痙攣、血圧上昇、頭痛、意識障害、錯乱、視覚障害等があらわれることがある。
11.1.13 進行性多巣性白質脳症(頻度不明)
本剤の治療期間中及び治療終了後は患者の状態を十分に観察し、意識障害、認知障害、麻痺症状(片麻痺、四肢麻痺)、言語障害等の症状があらわれた場合は、MRIによる画像診断及び脳脊髄液検査を行うとともに、投与を中止し、適切な処置を行うこと。
注1)日本人における発現率(多発性骨髄腫を対象とした静脈内投与における国内臨床試験、特定使用成績調査及び使用成績調査、並びにマントル細胞リンパ腫、多発性骨髄腫及び全身性ALアミロイドーシスを対象とした国際共同試験(日本人症例のみ)の集計)